暗闇の中、揺れ動く光がある。
それは炎。命あるものを喰らい高く燃え上がる輝き。
時に厄災として全てを奪い、時に救いとして数多を生かす。
人が離れ、忘れ去られた無人島。あるはずの無い光と、焼き切れる薪の音が闇を掻き消し静寂を破る。
「・・・・・・」
炎に照らされるのは、巨大な人型。
何をするでもなく炎を見つめ、微動だにしない巨大な影。
「・・・・・・また来たか」
「貴方は、こんな事に意味があると?」
「意味か。それを追い求めて何になる?追い詰めれば虚しいだけだ」
「・・・・・・拙者は貴方と」
「やめろ」
「!・・・・・・そうやって避け続ける。死んだように生きて、何になる!?かつての貴方であれば!」
「あのな・・・・・・俺は、もう疲れたんだよ。ただひたすらに欲し、調子付き、その先に何があったと思う?手にしたと思った栄華は尽く偽りだった。俺はもう、立ち上がれない」
「情けない・・・・・・情けないにも程がある!」
腰の刀を抜き、炎に俯く影に斬りかかる。
「!?」
「・・・・・・」
しかし、振り下ろされた刀は後ろ向きのまま刀で受け止められた。
「それ程までの実力がありながら・・・・・・何故向上しようとしない!腑抜けが!」
「・・・・・・お前は、なにも分かっちゃいない。それは、ただ戦うためだけのものじゃない。俺はそれに気づくのに時間がかかってしまった」
「世迷い言を・・・・・・戦う術に、それ以外など・・・・・・!」
「なっちゃいないのはお前だよ。ドリフト・・・・・・」
「よく集まってくれた。授業中にすまない」
この日、IS学園スクランブルシティのメトロフレックスに、先日結成されたスカウトチームの3人とリワインドが呼ばれていた。
「呼ばれたってことは、反応があったんですね?」
「ああ。それも二つ。幸先が良いな」
「今回反応があったのは、茨城県から東に行ったところにある無人島だ」
マイスターが説明し、司令室のモニターに地図が映し出された。
「今回は初めてということもあって不安要素が多い。そこで、サイバトロン軍からは2人同行することにする」
「初めてだから2人・・・・・・じゃあ、これ以降は1人か、なしってこと?」
「ああ。これ以降同行するサイバトロンは1人になるよ。鈴音君」
「今回は移動のために、旅客機に変形できるオクトーン。戦闘をこなせるアイアンハイドが同行します。危なくなったら、ぜひ頼ってやってくれ。そういうのを気にするタイプだからね。2人とも」
「オクトーンはこのメトロフレックスを出て右にある滑走路で待機している。それでは、サイバトロンスカウトチーム!出動せよ!」
ブレードコンボイの号令を聞き、一夏達はISを展開。リワインドは変形し、滑走路へ向かった。
「来たぞオクトーン。飛行回路は問題ないな?」
「飛行中の暇潰しまで問題無しさ」
到着した一夏達はオクトーンに乗り込み、出発した。
「あれか・・・・・・へへへ・・・・・・折角だ。手柄は頂きだぜ・・・・・・」
「見えてきたぞ」
「よし。着陸できるようにトランスフォームする。スカウトチームは一足先に降りておいてくれ」
開け放たれた貨物用扉からISを展開して着陸する。
「トランスフォーム」
ロボットモードに変形する際にアイアンハイドは降り、無人島に到着した。
「念の為ISは着ておいてくれ。リワインド、君もそのままで」
「分かった。アイアンハイド」
「でも、こんな島にトランスフォーマーが本当にいるって言うの?こんな島、すぐに衛星で見つけられると思うけど・・・・・・」
「お嬢ちゃんの意見は最もだ。だが反応が出たんだ。調べる価値はある」
「取り敢えず進んでみましょう。いるとしたら奥の方でしょうし」
一夏の意見に頷き、島の奥へ進む。この無人島は手入れがされておらず、木々が伸び放題で道という道は一つとして無かった。
「まだこんな島残ってたんだな・・・・・・」
「情報によると、この島は第二次大戦中に日本軍が基地を建設しようとしていたが、終戦で有耶無耶になったらしい。その後70年代から、この島には鬼火伝説が出来て、誰も近寄らなくなったらしい」
「鬼火伝説?そりゃなんだいアイアンハイド?」
「なんでも、夜中この島の付近を通ると、木の燃える音やぼんやりとした光が見えるらしい。それが鬼火と呼ばれたわけだ」
「気味が悪い場所ですのね・・・・・・」
「おい、ありゃなんだ?」
「洞窟だな」
森を進む中オクトーンが見つけたもの。それはトランスフォーマーが入れる程の大きさの洞窟だった。
「ずいぶん大きいな」
「さて中は・・・・・・おい!こりゃすげえぞ!」
「どうした、オクトーン!」
「すげぇ・・・・・・いろんな惑星の金だ!どれも最高金額の貨幣に紙幣・・・・・・この島には億万長者でもいるのか!?」
「欲しければくれてやる」
突如背後から聞こえた声に全員が振り返る。
そこには、巨大な人型ロボット、トランスフォーマーがいた。
「そのインシグニア・・・・・・サイバトロンか。だがしかし何故この星の原住民が一緒にいる?いや、サイバトロンのことだ。大方結託したとかだろうな」
「貴方は・・・・・・そうか、拾ったスパークシグナルは貴方のものだったのか」
「ちょっと待て。この金全部、くれるってのか!?」
「そう言ったろう。俺にはもう必要の無いものだ」
「おいおいマジかよ・・・・・・」
「何が目的か知らないが、俺は応じるつもりはない」
落ちている枝を拾いながら、トランスフォーマーは立ち去ろうとした。
「待って!俺達は貴方に会いに来たんだ!」
「言ったろう。何であれ応じる気は無い」
「じゃあせめて話くらいは聞いてよ!それくらいはできるでしょ!」
「・・・・・・」
「どうなのよ」
「・・・・・・強情な目だ。分かった。聞くだけ聞いてやる。ついてこい」
トランスフォーマーに連れられ、辿り着いた場所は開けた平地だった。
「適当に座れ」
焚き火跡の周りにある大きな丸太に腰掛け、一夏達は促されるまま向き合うように座した。
「リワインド、ISはしまっておくから」
「分かった。トランスフォーム」
誠意を示すためISを解除し、リワインドもロボットモードに変形した。
「で、何を話すと?」
「単刀直入に言おう。サイバトロンに加入してほしい」
アイアンハイドは包み隠さず打ち明かした。
「今サイバトロンはデストロンとの戦争状態にある。一人でも戦力が欲しいんだ」
「・・・・・・そんなことだろうと思ったさ。断る」
「やはり、戦ってもらうための交渉は難しいのですね」
「そうだ!何故断る!?」
「誰だ!?」
突如木霊した叫び声のした方を見ると、そこにはもう1人トランスフォーマーがいた。
「・・・・・・なんの用だ。ドリフト」
「貴方を説得しに来た。貴方は強い。何故戦いを避ける!?バンザイトロン!」
「待った。バンザイトロンだって?」
「知ってるのか?リワインド?」
「ああ。バンザイトロンっていば、いろんな惑星で廃材を売ったり戦利品を売ったり・・・・・・とにかく金儲けばかりする守銭奴って話だが・・・・・・」
「そんな奴が金がいらないってな、どういう風の吹き回しだ?」
「・・・・・・金の価値が分からなくなった」
オクトーンの疑問に、バンザイトロンは静かに答えた。
「どれだけ集めようと、満たされることはなかった。満ちたと思ってもさらに欲をかく。そして求めるままに金を欲した。だが、いつしか気づいた。金そのものには意味も価値も無い。欲望と理性が価値を作り出しているだけだと。集めたとて、虚しいだけだと。それから、何もかもが馬鹿らしくなった」
「それで、貴方は戦いからも身を引いた・・・・・・それこそ滑稽だ!」
ドリフトは再び強く訴える。
「強さには責任が伴うものだ。貴方はその全てを放棄している!」
「ドリフト・・・・・・お前は勘違いをしている。力は力だ。責任は行動に伴う」
「!・・・・・・貴方はいつもそうだ。そうやって人の話を聞こうともしない!」
「聞いてる。お前は自分の意見だけを通したがる。まずはそれを直せ」
「! ・・・・・・」
ドリフトは苦虫を噛み潰したような顔で森の中へ消えた。
「行っちゃった・・・・・・」
「ふん。バツが悪くなるとすぐ逃げる」
「あの、失礼ですけど、彼とはどういう関係で?」
「・・・・・・ドリフトは、かつての敵だ」
一夏の問いかけに答える。
「奴とは俺がまだ欲に塗れていた時分に出会った。奴は自分の実力に酔っていた。そんな中俺が奴を完膚なきまでに叩きのめした・・・・・・それからだ。奴は俺に戦いを挑み、己の実力を試し始めた。戦って、戦って、戦って・・・・・・いつしか奴の中で、俺の打倒が目標になってしまったんだろうな」
「倒されよう、とは思わなかったのですか?」
「クリスタロキューション」
「へ?」
「俺の使う武術だ。急所を一気に攻撃する・・・・・・俺はそれを剣術に応用しているが、もとより手加減のできないものだった」
セシリアの疑問にバンザイトロンは答えた。
「とにかく、サイバトロンが戦力を欲していると言うなら、ドリフトにしておけ。奴は若い」
「・・・・・・私、追いかけてくる!」
バンザイトロンの言葉に思うことがあったのか、鈴音はドリフトの跡を追った。
「良いこと聞いたぜ〜?ヒャハハッ!」
「!?」
突如空から響いた声。それは、滞空する戦闘機から発せられていた。
「ホバリング・・・・・・あれは普通の戦闘機ではありません!」
「ああ。デストロンだ。それにあの声は・・・・・・サンダークラッカー!」
「へへへ・・・・・・サンダークラッカー!トランスフォーム!」
空中に現れたデストロン兵、サンダークラッカーは地面に降り立ち、大量の小型戦闘機を空中に待機させている。
「まさかバンザイトロンなんて大物に出会えるとは、ついてるぜ」
「サイバトロンの次はデストロンか・・・・・・」
「悪いことは言わねえ。デストロンに投降しろ!そんでサイバトロンを駆逐するんだ!」
「断る」
「は!だと思ったぜ。ジェットストーム!トランスフォーム!」
サンダークラッカーが叫ぶと、空中て待機していた戦闘機達が一斉にロボットモードに変形し、サンダークラッカーの近くで滞空している。
「オクトーン、あれが・・・・・・」
「ああ。足の無いロボットモード、ジェットストームって名前、間違いねえ。あの野郎、ドローン軍団を連れてきやがった!」
「ドローン軍団!?」
「デストロンの雑兵共だ。スパークを持ってない、ただの人形だ!」
「ジェットストーム!アタック!」
「来る!」
「トランスフォーム!」
襲い来るジェットストーム達を迎え撃つべく、一夏達はISを展開しリワインドも左腕に変形した。
「オクトーン、援護を!」
「任せな!」
自分達に向かって来るジェットストームに、アイアンハイドは殴りかかりオクトーンは銃で応戦する。
「くうっ、はっ!数が多い!」
一夏はジェットストームを斬りつけセシリアは狙撃していく。
しかし、その数は一向に減ることはなかった。
「ははは!ジェットストームだってな、スパークは無いが俺達と同じ回路をしてるんだ。むしろ自我が無い分、動ける以上動き続ける!・・・・・・さて、バンザイトロン、覚悟しな!」
未だに丸太に座るバンザイトロンに肩の銃を向ける。
「・・・・・・」
「へへへ・・・・・・生きてりゃ良いんだ・・・・・・」
「ねえ、ちょっと!」
「うん?・・・・・・君は・・・・・・」
森の中へ消えたドリフトを追いかけた鈴音は、ようやくドリフトに追いついた。
「あんた、ドリフトっていうんでしょ?ちょっと話しましょうよ」
「話す?君達はバンザイトロンに用があったのだろう?拙者に構うな」
「違う違う!貴方にも用があるのよ!」
「拙者も・・・・・・?」
鈴音の言葉に歩みを止め振り返る。
「そう!私達はこの島に2人トランスフォーマーがいるって聞いて来たの!貴方がそのもう1人目!」
「そうか・・・・・・だが、拙者は大した戦力にはならんぞ?現にバンザイトロンには一度も勝てていない」
「・・・・・・ねえ、貴方にとってバンザイトロンってなんなの?」
「はて?」
「ちょっと気になって。ずっとバンザイトロンについて喋ってたし」
「そうだったか?」
「そうそう」
「・・・・・・バンザイトロンは、拙者にとって、標だ」
「しるべ?」
「うむ。超えるべきもの。そして、目指すべきものだ。あの強さは、拙者に無いものだから」
「・・・・・・」
「だから、今のバンザイトロンは、嫌だ。無気力で、戦いの意志の無い、今のバンザイトロンは・・・・・・」
「じゃあ、さっき何で断るって言ったのは・・・・・・」
「サイバトロンは戦争状態だろう?戦場に戻れば、昔のバンザイトロンが戻ると思って・・・・・・」
「・・・・・・そっか。私と似てるね。貴方」
「拙者が、君と?」
「うん。貴方は昔を、過去を見続けてる。私もそう。言っちゃえば、私も過去に好きになった人を追いかけ続けてて、他が見れてない」
「過去を見続けている、か。確かにそうかもしれない。拙者はずっと、あの言葉を覚え続け、バンザイトロンに挑んでいるんだから」
「あの言葉?」
「クリスタロキューションは、武術は戦うだけの術ではない。という言葉だ。拙者は武術を戦いのためのものだと思い続けている。なあ、君は、どう思う?」
「うーん、難しいけど・・・・・・武術ってさ、実戦以外にも演舞があるじゃない?」
「そうなのか?」
「ええ。少なくともこの星ではね。私が思うに、武術って、生き方なんだと思う」
「生き方?」
「精神修養っていうの?体を鍛えて、技を磨いて。そうするとさ、誰かに襲われるかもしれないとかの不安が軽減されて、心に余裕ができる。その余裕をどうするかを突き詰めていくのが、武術の一つの側面なんじゃないかな?」
「・・・・・・そうか。そうだな。確かに拙者は、ずっと戦うことだけを考えていた。拙者の心に余裕があったことなど、ありはしなかった・・・・・・バンザイトロンは、拙者の心を見抜いていたのか?」
「そうかもね。それじゃあ、みんなのところに戻りましょう!もう一度バンザイトロンにあって、答え合わせをしましょうよ!」
「ああ・・・・・・ああ!そうと決まれば、トランスフォーム!」
ドリフトはフレアパターンのあるスポーツカーに変形した。
「行こう!乗ってくれ!」
「悪いけどパス。飛んでいくわ!」
鈴音はISを展開し、ドリフトを置いて一夏達の元へ飛んだ。
「遅れるわけにはいかないな!」
「生きてりゃ良いんだ・・・・・・どうせこいつは金で買える類・・・・・・!」
「・・・・・・」
「喰らえぇっ!」
「みんなー!お待たせー!」
「な、なんだ!?」
肩の銃を発射しかけた時、森の中から赤いISとスポーツカーが飛び出した。
「ドリフト!トランスフォーム!」
「お前、何者だ!」
「拙者、ドリフト!バンザイトロン、助太刀に罷り越した!」
「フン。お前が何を思い知ったかは知らないが、その目は迷いの無い目だ」
丸太から立ち上がり、バンザイトロンはドリフトの前に立つ。
「助太刀と言ったな?なら背中は任せるぞ」
「〜〜〜!」
サンダークラッカーの方へ振り返り、腰の刀を抜くバンザイトロン。ドリフトはこの瞬間を噛み締めていた。
「な、なんだよ!増えたくらいで!ジェットストーム!やれやれやれ!」
「なにあれ!?」
「ドローン軍団!いわゆる雑魚敵ってやつだよ!」
「へえ?じゃあ、アタシの出番ね!」
向かって来るジェットストームに龍砲を放ち、みるみるうちにジェットストームを撃墜していく。
「そうか!見たところあの龍砲ってのは連射とはいかずとも、一撃がデカいし周囲への余波があるから敵を一掃するにはピッタリってわけだ!」
オクトーンが鈴音の戦いぶりに感心している中、サンダークラッカーは気が気ではなかった。
「んだよあのインチキ!?」
「フン!」
「うおあがっ!?」
バンザイトロンがサンダークラッカーに斬りかかり、片方の翼を切り裂いた。
「あああああっ!なにしやがる!なにしやがるっ!」
「はあああっ!」
「うっ!があっ!」
よろめきながら睨むサンダークラッカーに、ドリフトは間髪入れずに左腕の肘から先を切り落とした。
「う、ぐぅ・・・・・・」
「なんだ。思った以上にやるな、ドリフト。いや、敵が弱いのか?」
「てめえ・・・・・・バカにするな!」
激昂したサンダークラッカーは肩の銃を乱射する。
「「トランスフォーム!」」
ドリフトとバンザイトロンはスポーツカーに変形してサンダークラッカーの背後に回り込む。
「ドリフト!クリスタロキューションは使えるか!?」
「いや、使えない!」
「なら合わせろ!トランスフォーム!」
「トランスフォーム!」
背後に回り込むとロボットモードに変形し、サンダークラッカーに飛び掛かった。
「おりゃああああ!」
「フンッ!」
「んなっ!あっ!」
バンザイトロンは振り返ったサンダークラッカーの首と胸の間に刀身を突き刺し、ドリフトは腹に斬りかかる。
「あ、ああ・・・・・・があっ!」
「う、おおおおおっ!」
「ヌンッ!」
バンザイトロンは刀を上に斬り上げ頭部を切り裂き、ドリフトは腹を切断した。
「・・・・・・衰えていないもんだな。俺も」
「はあ、はあ、はあ・・・・・・共に戦うというのも、良いものだな」
「ふん。知ったような口をきくのは治らないな。お前の癖だ」
「あはは・・・・・・」
「おーい2人共!手伝ってくれ!」
2人がサンダークラッカーの相手をしている間、一夏達はジェットストームのおよそ半分を倒していた。
「ああ!このドリフト、サイバトロンに協力いたす!」
「調子の良い・・・・・・まあ良い。これもなにかの巡り合わせだ」
ドリフトは再び刀を構え、ジェットストームに向かう。
「ジェットストーム!スイッチオフ!」
突如バンザイトロンがそう叫ぶと、ジェットストーム達は一斉に機能を停止。
一機、また一機と地面に落ちていく。
「あれ?なんで・・・・・・」
「バンザイトロン、一体何を?」
「こいつを使った」
アイアンハイドの問いかけに答えるバンザイトロンの手にはサンダークラッカーの発生装置があった。
「デストロンには昔出入りしていたからな。ドローン兵を停止させるコマンドも知っていた。しかしずっと同じコマンドを使っているとはな。杜撰にも程がある」
「とにかく。これで終わり、で良いんですよね?」
「ああ。終わりだ」
そう言うとバンザイトロンは発生装置を握り潰した。
「さてと・・・・・・このジェットストーム達はスクランブルシティに運ぼうぜ。ここに置いていくわけにもいかんだろ」
「そうだなオクトーン。そうだ。2人とも、これを」
アイアンハイドはバンザイトロンとドリフトにあるものを手渡した。
「これは・・・・・・?」
「サイバトロンインシグニア。サイバトロンに所属していることを示すものだ。君達には是非、サイバトロンに入って欲しい」
「はい!拙者、これからもサイバトロンに助力しましょう。これから他者と協力し、己を高めていきたい所存!」
ドリフトはインシグニアを胸に貼りつけた。
「・・・・・・」
「バンザイトロン?貴方は?」
ドリフトに催促されると、バンザイトロンはインシグニアを二つに割った。
「な、何をしているんだ!」
「悪いが、俺はサイバトロンには入らない。だが・・・・・・」
バンザイトロンは割れたインシグニアの一部を肩に貼り付けた。
「気は変わった。俺はこの星を巡る」
「この星を巡る?それとそのインシグニアと何の関係が?」
「・・・・・・思い出したんだ。渇きを」
「渇き?」
一夏の疑問に答えたバンザイトロンだったが、その答えはさらな疑問を抱かせた。
「かつて金を求め続けていた、あの頃の渇きが、俺の中に戻ってきた。一瞬だったが、再び戦場に立った時、今までに見えていなかった景色が見えた。海が、焚き火の跡が、全て鮮明に映った。それから、何故だろうな。もっと、色々な物を見てみたくなった。この星の、この島以外を、この目に映してみたくなったんだ。今思えば、俺がこの島にいたのは、この星に来た時、初めて見たものがあったからだろうな」
「バンザイトロン・・・・・・」
「作りかけの設備。切り倒され、再生途中の木々。あの時の感覚が、久しぶりに戦って蘇った。このインシグニアは、まあ予約のようなものだ。俺がこの星を巡り終えた時、入る気になっていれば、インシグニアを付け足そう。だが、変わっていなければ外そう。だから、これは預かっておいてくれ」
そう言うとバンザイトロンは膝をつき、割れたインシグニアの破片を一夏に渡した。
「なんで、俺に?」
「一瞬目に映っただけだが、お前は筋が良い。鍛え続ければ、剣豪と言える程にはなろう。悪いな。伝える方法がこれしか思い浮かばなんだ。じゃあな」
手を振り歩き出したバンザイトロンの背中は広く、決して悲しさを感じさせないものだった。
「バンザイトロン・・・・・・また会おう」
「さて、ここは広い。トランスフォームするから、ジェットストームを乗せてくれ。トランスフォーム」
「よし。ドリフト、君の初仕事といこう。ジェットストームの回収だ」
「サンダークラッカーはどうする?」
「そうだな。一応回収しておこう。ブレードコンボイ司令官に言えば、弔ってくれるだろう」
「そういやあアイアンハイド、お前が言ってた鬼火伝説ってのは、バンザイトロンの焚き火だったのかもな」
「確かに、そうだな」
雑談を交えながら、旅客機に変形したオクトーンに島に散らばっている残骸を運び入れていく。
「なあ、セシリア」
「なんですか?一夏さん」
「セシリアはさ、戦闘訓練って、その、ああいう感じの、やったことあるのか?」
「ああいう?」
「今日の戦いみたいな。俺は、相手がただのマシーンだから戦えた気がして。たぶん、俺はバンザイトロンとドリフトみたいには戦えない。生きている相手に・・・・・・」
「一夏さん・・・・・・私も、今日のようなことは初めてです。あんな大量に相手をしなければならないなんて。一夏さんは、恐れているのですか?いつか、その手を汚さなければならない。と」
「・・・・・・」
「確かに、サイバトロンとデストロンは戦争状態。いずれその時は来てしまうかもしれません。ですが、その時は、いえ、どんな時でも頼ってくださいまし。私だけではありません。悔しいですが、一夏さんには、頼れる方が大勢いらっしゃるでしょう?ですから、決して1人で背負い込まないで。もしもの時は、全力でサポートいたしますわ!」
「・・・・・・ありがとう。鈴も、そう思ってくれてるよな?」
「ええ。当然でしょ」
聞き耳を立てていた鈴音も同意した。
「当然、俺もな。一夏」
「ああ。リワインド。ありがとう。みんな、ありがとう」
「・・・・・・サンダークラッカー、しくじったか」
太平洋海底にあるデストロンシティの玉座の間。そこのモニターにはサンダークラッカーの生命活動が停止したことが映し出されていた。
「もう良い。消せ」
バイオメガトロンの指示によりモニターは閉じられた。
「ブ~ン、納得いかないブ~ン!どうして僕がサイバトロンの基地に発信機取り付けなんて偉業を成し遂げたのに、肩書が変わってないんだブ~ン!」
「どうしてって、そりゃデストロンには与えられるだけの階級も役職も無いからだろうがよ」
呆れたように言い放つスタースクリーム。
「ブ~ン!情報参謀の席が空いてるだろ〜!?じゃあそこでいいじゃんか〜!」
「ならん。サウンドウェーブは必ず連れ戻す。その時まで情報参謀の席は空席のままだ」
「ブ~ン!!!」
バイオメガトロンの言葉に地団駄を踏むワスピーターを一瞥し、玉座の間の前を通り過ぎる影があった。
「相変わらず頭が足りないようね。見ていて飽きないわ」
「あら。そんなこと言って、嫉妬しちゃいそうよ?ロディ?」
「フフフ。嫉妬している貴女も素敵よ。ロッド」
デストロンの火炎兵、ロディとロッド。
「それにしても、このアースにいる無所属のトランスフォーマーに目をつけるなんて、卑しいものよね。まるで仲間を信じていないよう」
「サイバトロンも底が知れている。ということよ、ロッド。でもちょっと私達には都合が悪いのも事実・・・・・・もしサイバトロンに強〜いトランスフォーマーが加入すると、私達が不利になる」
「だったら、取られる前に取らなきゃね?ロディ」
「そうね。ロッド。幸い私達のいるバイオメガトロン派はデストロンの中でも理想が平和的・・・・・・大デストロン帝国に感謝しなきゃね」
「ロックダウンにつかなくて正解だったわね。あれは永遠の戦いを求めてるから、過去の私達に感謝ね。ロディ」
「それじゃあ、繰り出すとしましょう。スパークシグナル、だったかしら?スパークの電波を強くするのは簡単なこと。念入りに準備しなくちゃね、ロッド」
「ええ。備えあればなんとやら。サイバトロンを出し抜いて見せようじゃないの。ふふふ・・・・・・楽しみね、ロディ」
「そうね、ロッド」
「ロディ・・・・・・」
「ロッド・・・・・・」
バンザイトロンはオルタニティをイメージしています。