晴崎カリナの通っていた学校を訪れた補習授業部と小鉤ハレ、先生だったのだがカリナに関する重要な情報は得られず帰りの車では沈黙が場を支配していた。
その学校の職員からは恐らくはカリナについての詳細を聞くことも叶わず補習授業部も図書室や資料室を探したが特に新たな発見は無かった。
その事に悔しさを堪えながら車を運転していた先生だったのだが。
「そういえば……あの紙」
チラリとルームミラーを見ればそう言いながらコハルが鞄からノートを破って作られたような紙が出てきた。
「あら?コハルちゃん、それは何ですか?」
ハナコの疑問の言葉にコハルはどこか言いにくそうに口を開いた。
「その、図書室にあった本棚の本と本の間に挟まってたの。怪しいと思ってたら帰ることになって慌てて鞄にしまっちゃってたみたい」
そう言いながらコハルはその紙、折りたたまれたらしきそれを開くと中にはびっしりと文章が記されていた。
「なにこれ!?」
文章を読んでいたコハルが上げた声に、車内の視線が一気に集まる。
「えっと、何が書かれてたの?」
助手席にいるハレが後ろを振り返るが、コハルは黙って読み続けている。だが、その顔色はどんどんと酷くなっていくため、酷い内容なのが察せられる。
「コハルちゃん?」
「コハル?」
コハルは持っていた紙を元のように折りたたむと先生の方を向き口を開いた。
「これは、先生が読んで」
「"わかった、シャーレについたらその紙を貸して貰える?"」
コハルの言葉に車内の全員が口を出すことが無かった、彼女が紙の文章を読んでいたときに浮かべた表情から、内容は気になるがコハルの先生へと託す選択に誰も何も言うことは無かった。
貴方がこれを読んでいる時、私は恐らくこの学校を卒業した後だと思います。
これは私の罪、いやこの学校全員の罪を記した記録になると思います。
学校の職員や生徒に見つかり、この紙が処分されていないことを祈ります。
この学校の職員は転校生である晴崎さんへの虐めを見ていたのにも関わらず知らない振りをしていました。
虐めの内容は私が目にした限りですが『晴崎さんの持ち物を隠す』『晴崎さんを無視する』『晴崎さんの根も葉もない噂を流す』で、もしかしたら私の知らないところで他にも何かあったのかもと思います。
特に晴崎さんがミレニアムでのゲーム大会で結果を残した日から、それらの行動に更に拍車がかかった事を覚えています。
私は、こんなことはしちゃいけないと分かっています。ですが、もし意を唱えればその矛先が私にも向けられるのではないか、職員からも何かあるのではないか、そう考えると怖くて恐くて何も出来ませんでした。
これが私の罪です、虐めを見ていながら晴崎さんを助けることも声をかけることも叶いませんでした。全部、我が身可愛さに自分の身を優先した私が悪いです、背負うべき業なのも分かっています。こんなことを書いたとしても彼女が救われないのも分かっています。
ですが、何もせずにこの学校を去るのも出来ないと思いました。
なので、こちらに晴崎さんの虐めの内容と職員が虐めを容認してきた事実をここに記します。
この紙を見付けた貴方に、この事実を託します。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
どうか、どうか彼女がこの虐めから逃れることを祈ります。
補習授業部のみんなと小鉤ハレを送り届けシャーレへと帰ってきた先生はコハルから預かった紙に記された内容を確認し、昼に出会った学校の職員の様子への納得と沸き立つ怒りを抑えるため深いため息をついた。
「"これが、カリナがあんな風になった原因か"」
恐らくカリナはここでの虐めが原因で、自分を偽るようになった。そして無理してずっと明るい自分としてまわりに振る舞っていたけど、心が限界になったということなのかな。
とにかく、これをみんなにどう伝えてどう行動するか考えないと……。
『先生!そろそろ休まないと体に悪いですよ!』
テーブルに置かれたシッテムの箱、タブレット端末に移った水色の髪に青いセーラー服を着た少女、サポートAIであるアロナが腰に手を当ていかにも私怒ってます!といった風にそう先生へと告げる。
「"で、でもまだ仕事が"」
『そんなこと言って!また残業するようなら救護騎士団に連絡をいれますよ!』
「"う、それは……でも生徒のためだし"」
『あ、あんな所にミネ団長が』
「"やめ!?やめろー!?"」
『では、しっかり休んで下さいね!先生!』
アロナの言葉に本当に休まなければ不味いと感じ取った先生は、シッテムの箱を持ち仮眠室へと向かった。
トリニティ地区の公園、ブランコに座り込んだ宇沢レイサはブランコに座り揺れることもなくただ俯いていた。
理由は、前にトリニティ自警団としてパトロールしていた時の事だ。彼女は四人のヘルメット団と対峙した、だがそこへと乱入してきた一人の少女がいた。彼女はレイサを助ける側、味方側になってくれたと言うのにレイサは彼女の戦いかたに怯えたヘルメット団の味方をして、助けに入ってくれた彼女を否定した。
『気に入らぬから人を蔑み、気に入らぬから人を貶しめる、そんな人の皮を被った怪物ばかりのこの場所で、何故そのように折れず真っ直ぐでいられるッ』
1日がたった今でも、彼女の言葉がレイサの脳内を離れずにいた。
『消え行く者に、名乗る名前なんてない』
最後に見せた、あの悲しそうな表情が余計にレイサの罪悪感を、申し訳なさを加速させる。
「もっと言い方を、考えるべきでしたよね………助けに入ってくれた人だったのに」
「どうしたのさ、アンタ……らしくない」
その声と共に隣のブランコに誰かが座る音がきこえ、そちらを見れば制服の上から猫耳付きフードの付いたパーカーを着ている幼馴染みといっていいのか、少し迷う人がいた。
「杏山カズサ」
「アンタ、いつもの元気はどうしたのさ」
「……きいて、くれますか?」
「じゃなきゃ、声かけてなんてないわよ」
「ありがとうございます杏山カズサ、実は──」
レイサの話を聞いたカズサは少しの沈黙のあと、口を開いた。
「別に、そこにそこまで気にしなくていいんじゃない。そもそもキヴォトスじゃそんなの日常的なんだし」
「それは……」
「そこまで気にしてるなら、さっさとソイツを探しだして謝ればいいじゃない」
杏山カズサの言葉と優しい笑顔に、レイサは迷うことを止めてブランコから立ち上がるといつものように笑いながら言った。
「そうですね、私は彼女を探します!そして謝ってみます!!」
そう言いながら公園から走り去るレイサを眺めていたカズサは若干赤くなった頬を冷ますように手で仰ぎながら呟いた。
「なんか、私らしくないことしたなぁ……さて、みんなと合流しよ。今日はどのお店だっけ」
ご愛読ありがとうございました
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お待ちしています。
続きはスミレが明後日の方向へ投球しました。
ところで、書いてなかった期間ブルアカのガチャでミネ団長とサクラコ様きたんですけど、これって早く書けっていみですかね?少し恐くなった作者できた。