目が覚めれば、何故かベッドに寝ていた筈のセイアさんが私の隣で眠っていた。
ベッドに寝ていた筈なのになぜ?案外、寝相が悪いのだろうか?
そんなことを考えつつ、体を起こして布団から出て被っていた布団をセイアさんにかける。
ティーパーティー、トリニティ総合学園のトップに存在する彼女が…風邪にでもなったら大変だろう。
そう思いながら鏡のない洗面台で顔を洗っていると、玄関先に何かが置かれるポスッという音が聞こえて私は即座に玄関に向かう。何もネットスーパーや宅配は頼んでいない筈と思いつつも扉を開けるとそこには小さな小包が置かれていた。小包には自分の名前と住所、そしてミレニアムサイエンススクールの校章が印刷されていた。
小包を取って部屋に戻り、早速小包を開けるとそこには四角い液晶画面のついた腕時計のようなものと手紙が入っていた。
昨日、エンジニア部に頼んだばかりのバリア発生装置をそんなに早く製作しきる事が可能なのだろうか?
手紙を開く、どうやらウタハさんからのもので手紙にはこの液晶のついた腕時計について記載していた。
なんでも光波シールド発生装置のままでは戦闘時にしか使わないだろう、なので光波シールド発生装置兼時計やアラームといった様々な機能を付与したスマートウォッチという形で製作してみたらしい。
「このスマートウォッチ……アマノイワト?これで体を覆うシールドの展開が?」
元ネタから考えるなら、あまりにも小さすぎるし展開箇所が1つで全体を覆えるなんてありえない。
説明書をみる限り、手動で操作する他にも音声認識による展開が可能らしい。
展開段階としては、ウォッチの画面部分から三角形の形をしたバックラー程の光波シールドを展開する『アマノイワト、シールド展開』。
原作のように自身を囲む全方位ガードの光波シールドを展開させる事が出来る『アマノイワト、最大展開』。この二種類がある、どちらも最大30秒間展開できるが連発はおすすめ出来ないらしい。
取りあえず試運転の為にも一度外に出てみる必要があるか。
私は左手の手首にアマノイワトを着け、レッグホルダーへ仕舞われているストックの存在しないサブマシンガンのVector、
そして家を出てしばらく歩いたが朝だからなのかまだ不良の姿は見えない。せっかくアマノイワトを試すチャンスだと思ったのに、何故会いたいときに出てこず邪魔なときばかり出てくるんだ。
「おー!お前いかす時計もってるじゃん!」
背中から聞こえてきた声にようやくかと振り向く、そこには予想通り長いスカートに×マークのついたマスクを着けた3人のスケバンが立っていた。
「……それで?」
そう返事すると、スケバンはニヤニヤとした表情を浮かべながら言った。
「くれよ、あいにくとアタシら金欠でさぁ……ソイツを売れば良いお金になりそうだし。痛い目に遭いたくなかったら──」
スケバンが言いきる前にうしろに後ろへ飛んで距離をとって右手で太もものホルスターから
「へぇ、やる気?後で泣いても知らないからなぁ!」
そう言いながらスケバンが此方へとアサルトライフルを向けて引き金を引こうとするのが見えた瞬間、私は左手のアマノイワトの液晶画面がスケバンの方に向けられるよう構え口を開いた。
「アマノイワト、シールド展開ッ」
私の言葉にアマノイワトの液晶画面がスライドし、液晶画面の下から何かの装置らしき物が浮上してくる。そして浮上したそれは、アマノイワトの少し上に光でできた三角形のビームシールドを展開させた。
そして展開させたと同時に此方へと向けて発射された弾丸は左手で構えたアマノイワトによって展開されたビームシールドに触れた瞬間に溶けて蒸発した。
「ハァ!?」
「それ盾にもなるのかよ!?」
「囲め!盾があったとしても、囲んで撃てば防げないはすだ!」
しっかりと、シールドによって弾丸が防ぐことが出来たのを確認した私は此方を囲むように3人で向かってくるスケバン達に思わず口がニヤリとしてしまう。こんな、最大展開を試すのに丁度良い陣形を敷いてくれるなんてね。
私はビームシールドを停止させつつ、彼女たちが私を囲むのを邪魔しない程度に
「当たらねぇよバーカッ!」
「囲んでしまえば盾なんて意味ねぇんだよ!」
「最初に大人しく時計を渡していれば良かったなぁ!」
ちょうど私を囲むように三方向から銃を向けられ私は即座に口を開いた。
「アマノイワト、最大展開ッ!!」
私の言葉に反応するように先程のように画面部分がスライドすると、私の周囲360度全方位に光で出来たビームシールドが展開され私を覆いつくした。それと同時にスケバンのそれぞれの銃から放たれた弾丸が放たれ、先ほどと同様に光波シールドアマノイワトによって阻まれる。
全ての銃弾が私に当たること無く、無力化されていく。その様子に先程までの余裕そうな表情を浮かべていたスケバン達は、即座に驚愕と恐れの表情を浮かべる。
「クハッ!アハハハ!一旦展開されたアマノイワトを破る手段などないっ!」
そう言いながら
「撃ってみろよ!どうせ私らと同じように銃弾はその壁に防がれっ!?」
言葉を待たずに引き金を引いて
これらもきちんと原作通りに再現されているとか、はは……ミレニアムの科学力なら、これほどまでに再現できるってこと……最高。
「おまえ達も、すぐに終わらせてやる」
そう言いながら左手で
「もっと、もっとだ!私を楽しませろッ!」
わざと致命傷になら無い場所を狙い戦闘を長引かせる、どんどんとスケバン達は銃弾により服が敗れ、逃げようとしたスケバン達だったがやがて倒れ伏した。
それを見てアマノイワトを解除する、するとアマノイワトは即座に画面部分がスライドして元の時計の状態へと戻った。
アマノイワト、これがあれば…私は──。
「なにを、してるん…ですか」
聞こえてきた、何処かで聞いたことがあるような声に振り向く。そこにはショットガンを両手で持ち此方を呆然とした様子で見つめる、水色の髪に星型のアクセサリーを着けた少女がいた。
「答える必要があるか?敗者に相応しいエンディングを迎えた、それだけだ……キヴォトスでは当たり前の光景だろう?」
「だから、だからってここまで執拗にボロボロにするなんて酷すぎます」
「酷すぎる、か……」
そうだ、私は酷いやつなんだ。
ずっと、ずっとずっと周りすべてを騙してきた。
自らを偽り、友と言ってきた相手を利用し、自分が望む生活が出来るように使ってきただけだ。
全ては我が身可愛さに、周りを利用し続けて騙し続け、全てに嘘をついてきた。
私は、私は許されてはいけない。
私は誰かの友達になる権利なんてない。
友達を作る権利なんてない。
誰かに優しくされる権利も、歩み寄り共に過ごす権利もない。
私に、自由に生きる権利なんてないのだ。
全てに嘘をつき、多くの人々を騙し続けてきた私なんかに明るい未来を、すべてから解放される自由を夢見る資格なんて、はじめから存在しない。
あるのは、全部を手放すという、選択だけだ。
「くく、アハハ……甘いやつだ、なぜお前のような奴がこのような場所で真っ直ぐ生きられるのか、本当に、分からないよ」
「っ、あなたは!……あなただけはっ」
「許せないか?」
「っ!?」
「図星か?当然か、ならその正義の炎に更に燃料を投下してやる。トリニティ学園のトップ、ティーパーティーが一柱、百合園セイアの身柄は私が預かっている、助けたければ私を倒してみせろッ!」
「あなたは、トリニティの騎士である私が……トリニティ自警団エースのこの宇沢レイサが止めてみせます!」
そう言った瞬間だった、私のいた場所……正確には私の頬のすぐ横を一発の銃弾が通りすぎる。
今のは目の前の奴が撃ったものでないのは確か、なら誰だ?
「なるほど、百合園セイア様の誘拐犯はあなたということですね」
聞き覚えのある声に目の前の少女の背後をみれば、真っ黒な制服に黒い翼が特徴的でスコープのついていないスナイパーライフルを手に歩いてくる一人の少女。
正義実現委員会の副委員長、羽川ハスミが此方を睨みながら歩いてきた。彼女の後ろには正義実現委員会の生徒達が大勢おり、その手に銃を持っていた。
そして次の瞬間、私とショットガンを持った少女の間に彼女が降ってきた。
「救護が必要な患者を拉致した不届き者は、貴方ですか!」
降ってきたのは手に持ったショットガンとライオットシールドを構える青い翼とその真っ白な白衣が特徴的な救護騎士団団長、蒼森ミネ。
ここに百合園セイアの失踪から誘拐と想定され捜査をしていた全員が、晴崎カリナの前に敵意をもって現れた。
目が覚める、顔を向ければそこにいたはずの桃色の髪の彼女はそこにはいなかった。部屋を見渡し、頭部の耳を澄ませるがなにかを動かしたりする様子の音が一切聞こえなかった。
「全く、こんなにも可愛い妹を放って出掛けるとは」
そう呟きながら見れば、部屋のテーブルには小包らしき箱が置かれており箱の近くには説明書や入っていたのであろう梱包材が散乱していた。
「これは、確か姉さんが昨日ミレニアムに頼んでいた」
そう呟きながら説明者を確認する、姉さんが頼んでいた物の内容を流し読みしていく。
これがミレニアムの科学力によって作られた物か、実に興味をそそられる。
銃撃を弾くビームシールド、更にはそれを自分の周囲に展開させるとは……私も欲しいな。後で秘密裏にミレニアムのエンジニア部に作って貰うよう手紙を……。
そんなことを考えていた時だった、部屋の入り口。玄関からガチャガチャとドアノブに鍵を差し込む音が聞こえ、私は帰ってきた彼女をどのようにして揶揄しようと考えていると入ってきたのは予想出来ない人物だった。
「百合園セイア様っすね、お助けに参りました。いやぁ、無事でよかったっす」
トリニティの正義実現委員会に所属する仲正イチカ、そして彼女の後ろには数人の正義実現委員会の生徒達が警戒した様子で立っていた。
「な、なぜ君たちがここを……」
「いやぁ、誘拐犯が
そう言いながら早く逃げましょう、そう安心させるような声色言ってくる目の前の少女が口にした言葉に私は耳を疑った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!誘拐犯が自白って……そもそも姉さんは誘拐犯じゃ」
「姉さん?これ、もしかして洗脳……もしくはストックホルム症候群って奴っすか」
ストックホルム症候群、それは確か誘拐や監禁などにより拘束下にある被害者が、加害者と時間や場所を共有することによって、加害者に好意や共感、さらには信頼や結束の感情まで抱くようになる現象だったか?
「違うんだ、私は自らトリニティ総合学園から抜け出して」
「そういう設定って訳っすね、こりゃあ暫くは矯正局から出られないっすよカリナっち」
「待ってくれ!彼女は、彼女はこの件に関係ないんだ!全ては私がっ!」
「こりゃあ救護騎士団で診察して貰った方が良さそうっすね、みんな頼んだっすよ……これ以上、元同学園の知人が罪重ねるの許せないんで、自分は向こうの応援に向かうっす」
不味い、今の私は彼女たちから見たら間違いなく洗脳されたかストックホルム症候群によって彼女を庇おうとしているようにしか見られていない。
どうにかして、彼女が私を誘拐していないことを証明しなければ……。
姉さん、どうにか逃げてくれ……私もどうにか彼女たちの誤解を解くために動く。
だから、だから捕まらないでくれ、姉さん……。
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