その日、鬼方カヨコはたまたまシャーレの近くを歩いていた。
というのも、彼女の所属している便利屋68は社長である陸八魔アルが率いる金さえ貰えば何でもやる何でも屋である。
彼女たちはこれまで様々な仕事を受けてきた、アビドス学園の襲撃から迷子の猫探しと様々な種類の仕事を請け負ってきた。
そして今日、飼い猫が帰ってこない依頼主から迷子の猫探しの依頼を受け4人で別れて猫を探すこととなり、カヨコはシャーレ近くの町を散策している。
スマホに表示された猫の画像を確認しながら周囲を見渡していると、ふと銃ショップが目に入った。
キヴォトスにおいて銃は珍しくない、銃なんてブラックマーケットやこうした町の銃ショップやコンビニでも買えるようなもの、なにせ手榴弾やスモークグレネードですら自販機で売っているのだ。
しっかりと入り口の扉が閉まっているし猫があのような場所にはいる可能性はないと思って視界から銃ショップを外そうとした。
その時だった、鬼方カヨコの視界。
店内の端に見覚えのある白が特徴的な銃が映った気がして、気のせいだと感じつつももう一度銃ショップの方を見る。
そしてそれが何であるか理解すると同時に、少女は駆け出していた。
今朝、正確には昨日からなのかスマホにインストールされたモモトークを便利屋68内以外で使うことがなく、昨日確認した時には晴崎カリナのアカウントは消えていた。
その画面を皆に見せた時の会話が脳裏に過る。
『流石に心配しすぎじゃないかしら?仮にも先生の補佐よ?』
『し、心配しすぎ……じゃないですかね?』
『前に新しくスマホ買い替えるって言ってたし、モモトークのアカウントの移行ミスったんじゃない?』
上から陸八魔アル、伊草ハルカ、浅黄ムツキの順である。
皆はそこまで心配しなかった、確かに彼女は友人がおすすめしてくれた新しいスマホへと買い替える予定だと話していた。
明るくて、お人好しで、頼りになって近く居たら暖かく感じる彼女。
その時は心配しすぎだと思い自分を落ち着かせたが、胸騒ぎは消えなかった。
だからこそ、気のせいだ。
きっと良く似たデザインで、たまたま彼女の持つ銃と同じ銃が売られていただけのはずなんだと、そう思い店内に入り会計にいるロボットの店員へと話しかける。
「すいません、あの銃なんですけど見せて貰ってもいいですか?」
「構いませんよ、あのP90ですよね?今お持ちしますね。」
店員さんから手渡されたP90を手に持つ、その白い配色も傷も全部が見たことがあるもので、知っているもので、彼女が毎日持っていた愛銃だったものだ。
「これは、どこで仕入れたの」
自分の声が、何故かいつもより低く感情を感じしないものに聞こえた。
「け、今朝開店してすぐに来店した方がお売りになったものでして……」
そのせいか、店員さんは少し怯えた様子でこの銃を仕入れた説明をする、店員さんから聞いた言葉に私は自身の感じていた胸騒ぎが気のせいではないことを知った。
「これ、いくら」
「は、はい此方は───」
なんでカリナの銃が売られていたのか分からない、誰が売ったのかも店側の守秘義務とかなんだかで聞くことは叶わなかった。
とにかく、今は先生に話を聞くことが優先だ。
便利屋の全員にカリナの銃が売られていたことをモモトークで伝えた私は、買ったカリナの銃を抱えて先生の元へ、シャーレへと向かう道すがら私は彼女と出会ったときの事を思い出した。
それは夕方、シャーレ付近へと来ていた私が職務質問を受けていた時の事だ。私の見た目が怖く、怪しいから、そういう理由でしつこく職務質問をしてくるロボット。
何もしていないと主張するが、相手は話を聞こうとしない。
怪しそうだから、それだけでここまで迫る。
何度も何もしていないと、そう丁寧に返すのも限界があって。
『だからッ、何もしてないって──』
しつこく迫る目の前の警官に、対してそう怒鳴りそうになった時だった。
『迎えに来てくれてありがとうカヨッピ~!』
まるで親友や友人、いや恋人に話すような甘さが含まれた言葉と共に私へと抱きついてきた少女に、驚きのあまり何も出来なかった。
綺麗な金色の髪、幸せそうに目を細めて笑い私を抱き締める目の前の少女は、見覚えがあった。
それはアビドス学園を襲撃する依頼を請け負ったとき、襲撃した相手にいた先生の傍にいた少女だ。
連邦生徒会、シャーレ先生補佐の晴崎カリナ。
少なくとも、連邦生徒会に所属するような彼女が私のような警官と話している途中の人に、突如として抱きつくような人物ではないはずだ。
『あ、貴方は……』
『ウチはこんなんだけど?で、彼女ウチの彼ピだけど、なんかあったん?』
『かの!?』
彼女は私の片腕を抱き締めるようにして組むと、片手を組んだまま、首をかしげるともう片方の手で連邦生徒会とシャーレ所属である証を見せる。
『連邦生徒会!?それにシャーレ!?』
発言に目の前の警官は驚いた様子で私と彼女を交互に見る、正直私も彼女の発言には驚きを隠せなかった。
私たちはそんなに深い関り合いだって無い、なんなら敵同士でもあった筈だ。それなのに、何故?
『ウチに合わせて………アハハ!ウチの彼ピはちょっと怖く見えるだけで普通だしー?あ!もし心配ならシャーレ所属のウチが責任もって一緒に帰るから問題なし!』
彼女はその言うと首から下げた連邦生徒会でありシャーレ所属であることを示す証明カードが入ったパスケースをひらひらと揺らす。
『それなら、構いませんが……』
連邦生徒会であることを確認出来たのか、あきらめて引き下がる警官の様子にようやく解放されると溜め息が漏れた。
『おけまるー……あれ?これって実質お持ち帰り!?やば!?ウチまだ心の準備が……』
『なに言ってんの……早く帰るよ』
驚いた様子で片手で口に手を当てた後に、にやけた表情を浮かべ両手を頬に置いて体をくねらせる彼女に付き合ってられない、そう思いながら警官に背中を見せて歩き出す。
『あぁん、まってよカヨッピ~!』
するとそう言いながらまた彼女が走って私へと近付くと、パーカーのポケットに両手を入れた私の腕を邪魔しないように片腕を組んできた。
恐らくはまだ演技が続いているのだろう、本当に、ネットで見るカップルの画像を絵に描いたような感じの腕の組み方だ。
目を細め幸せそうに笑い、組まされた腕を抱き締める彼女から目線をそらしながら歩く。
こんなことをすれば、彼女の評価は変わる。
連邦生徒会の生徒が目の前の警官や周囲の人から恋に盲目となりバカになった一人の少女になり下がる筈だ。
なのに、なのになんで……
『ねぇ、なんで私を助けたの』
気がつけば私はそう口にしていた、もとは敵同士。最後には共闘したとはいえ、私はここまで彼女と親密になった気はない。
アビドスで共闘したときも話すことだって事務的なものだった筈だ。
『え、なんでって、カヨッピが大変そうだっし?ウチら友達じゃん!友達助けるのって当たり前じゃね?』
そんな考えを気にもしない様子で彼女はキョトンと首をかしげると可笑しそうに笑いながらそう言った。
『友達って私が?』
『え?ウチらずっ友じゃないん?!マジショックなんだけど?マージマジテンサゲ、カナシミー……』
あのような短い付き合いで、事務的なことしか言わなかったのに友達で、ここまでしてくれる?
本当に、本当にこの人のお人好しは先生と同じレベルだ。
こうして近くにいたら、調子が可笑しくなる。
近くにいれば暖かくて、優しくて寄りかかりたくなる。
そんな、まるで止まり木みたいな彼女だからなのだろうか?最初は困惑していたのに、こうして一緒に歩くのが自然な状態になっているのは。
『うぅ……乙女の心を傷付けた罰として、カヨッピが帰る場所までウチとのデートの刑にしょす!どうだ!帰ってからムッキーにいじられるが良い!』
『それは勘弁して欲しいんだけど……』
してやったりとニヤリと笑いながら私を見つめる彼女に、この状態で事務所へと戻ったときのムツキの反応を想像して笑ってしまう。
確かに、ムツキなら絶対にからかってくるであろう状態だ。
『えぇ、でもカヨッピ笑ってるよ?実は嬉しかったり?』
『………知らない』
あれから何度も友人として出掛けたり、私が警官に捕まっているのを助けてくれた。
あの日の彼女との会話が、この繋がりが今の私とカリナを繋いでくれている。
そんな彼女がもし、もし何者かに襲われて銃も取り上げられたなら?
はたして彼女はどのような状態になっている?
銃も取り上げられ、腕を縛られ抵抗することが不可能な状態で、ナニヲサレル?
嫌だ、お願いだから、私が想像しているような最悪な結果だけはやめて欲しいと心から願う。
どうかこの考えが私の思い過ごしであって欲しい、シャーレについたらいつものように彼女が出迎えてくれる筈だとそう思いたどり着いたシャーレの先生がいつも仕事をしている部屋の扉を開いた。
部屋では先生と先生と話しているミレニアムの生徒がおり、カリナの姿は見えなかった。
「先生!」
「"カヨコ?今日は当番じゃ……"」
「貴方は確か……便利屋の?」
「カリナは何処にいるか知らない先生!?」
「"カヨコ、カリナは───"」
先生から聞かされたのは、衝撃的な物だった。
昨日、どうやら私と先生だけではなくカリナとモモトークをしていた全員からカリナのアカウントは消えていたらしい。
それを知って先生も話を聞こうとしたところ、今朝現れたのは以前の面影が見られないほどに変わり果てたカリナの姿だった。
笑顔も微笑みも見せず、明るい金髪はピンク色で少しだけ金髪が毛先に残っており服装もどちらかと言えば暗いものに変わっていて更には持っていた銃も別のものになっていた。
そしてそんな彼女はここで先生にシャーレを辞めることを記した辞表を置いて行き、そのあとは連邦生徒会でも辞表を出してそのまま何処かへ向かったらしい。
連邦生徒会は分からないが、シャーレに関しては先生の判子も必要なためカリナはシャーレを完全に辞めた状態ではない。
私は抱えていた真っ白なP90を先生達にも見せる。
「それはカリナの銃よね?なんで貴方が?」
「ここから近い銃ショップで売られてたから買ったの、今朝誰かが売りに来たみたい。これを見てもしかしたらって思って持って来たんだけど」
ミレニアムの生徒、早瀬ユウカへとこの銃を購入した経緯を説明していると先生が手元のシッテムの箱と呼ばれるタブレットのようなデバイスに触れていた。
「先生?」
「"カリナは今、ミレニアムの方に向かってるみたい。取りあえずその銃はカヨコが持っていてくれる?"」
「わかった」
「"今すぐミレニアムに行こう、どうして髪を染めたのかとか色々と分からないことがあるし、ちゃんと話を聞かないとね。カヨコ、一緒に来てくれる?ユウカも"」
「分かったわ、ミレニアムなら確かハレがカリナと仲良かった筈よね?モモトークで連絡してみるわ」
そう言ってスマホでモモトークを開くユウカと、椅子から立ち上がり近くにおかれたスーツの上着を羽織る先生。
その二人についていく形で私は、ミレニアムへと向かう。
手に持った彼女の銃を落とさないよう、傷付けないようしっかりと抱き締めて。
ご愛読下さりありがとうございます
こちらギャルだった頃の晴崎カリナです。
顔のみ
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こちら元に戻ったとき頃の晴崎カリナです。
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続きはモモイがデータ整理の際に間違えて消しました。