光のギャル、終わりました。   作:クレナイハルハ

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CHASER~追い付く過去と逃げる今~

 

ゲームセンターで隣にいた女の子との対戦は無事勝利で終えることが出来た。

なんとか勝てたことに安堵していた私だったが、先程までゲーム中に彼女に言った言葉がフラッシュバックした。

 

『とれるか!戦友!』

 

『前に出る、私に構わず撃ち続けろ!』

 

『外しはしないっ!』

 

『間に合え!間に合えぇええ!』

 

『貴様の機体より、私の機体の方が優れていることを証明してやる!』

 

思わず頭を抱えてゲーム筐体に突っ伏す。

顔が、体が熱いっ!また、また私やっちゃった……繰り返しちゃった。

私は昔から調子に乗ると、かなり喋る事がある。それも、キャラの技名や名言を言いながら行動をする癖があるのだ。

例えるなら帰り道に好きなゲームの曲を聞きながら、一人で何役の台詞を真似して独り言をいい続けたり、その作品に登場するキャラのポーズをとったりだ。

ギャルを演じてたときは、家に帰るまでのほとんど周りに気を遣っていたしすることはなくなっていったけど、久々のゲームが楽しすぎたのもあって、完全に私の自分をセーブする鎖が引き千切れてしまっていたみたいだ。

きっと、隣で遊んでいた彼女はすごく引いていたと思う。だって、急に話しかけられたと思ったら、話しかけてきた人が変な言葉を言いながらずっとゲームをしているのだから。

 

一言、謝らないと……。

 

後から後悔の波が押し寄せてくる中、覚悟を決めて顔を上げて隣をみると私をみてオロオロと困った様子で両手を彷徨わせている女の子がいた。

 

「その、ごめんね」

 

「う、え?」

 

「その、急に話しかけたり指示したりして…ウザかったよね」

 

「そ、そんな事は……ない、です」

 

「優しいんだね、ありがとう」

 

優しい子みたいで良かった、そう思いながら椅子から立ち上がり筐体にぶつからないよう椅子から離れる。

1度ゲーム辞めて、適当にそこら辺歩こうかな。

何せ、今の私は連邦生徒会の仕事もないしシャーレの仕事もない、所属していたあの学園には退学届けを出した。

何人か、一人にしたらダメな気がする知り合いもいたけど、全部を捨ててしまったからなにも出来ない。

 

「そ、その……Hyperionさん」

 

タッグを組んだ女の子、たしかUZQueenさんだっけ?彼女が私のゲームでの名前を呼んできたので振り返る。それにしても、その名前で呼ばれるのもあの大会以来だ。いつも名前か名字で呼ばれていたから、ユーザーネームで呼ばれるのは少し新鮮な気がする。

彼女はすこし深呼吸をすると意を決した様子で口を開いた。

 

「その、五年前の大会の動画を見てずっと憧れてました。い、一緒にゲームできてその……楽しかったです!」

 

彼女の言葉に心臓がドクンと跳ねる、五年前の大会。

あの日、あの大会に出たことが私にとって最高の思い出でありすべての元凶とも言える日だ。

あの日、あの大会に出たことがきっかけで私の地獄の日々は始まった。

そんな私の大会のゲーム動画で、憧れたと本心で言ってくれた彼女の言葉が本当だって分かって、嘘じゃないんだと理解できて、暖かくて、込み上げてくるものを抑えきれなくて。

 

「え!?あ、あの!?」

 

目から涙が溢れてしまった。

 

「ありがとう」

 

私が泣いたことに驚いたのか、先程より慌てた様子の彼女にもう一度感謝の言葉を伝える。

 

「そんな言葉、初めて貰ったから。じゃあね」

 

そう言いながら私は両目をモッズコートの袖で拭ってから、今度こそ筐体から離れてゲームセンターの出口へと向かう。

初めて、私はあの日あの大会に出たことが良かったと思えた。だってこんな私でも、あの子の憧れに成っていた。

偽り続けてきた私じゃなくて、本当の私を憧れだと言ってくれたのはたぶん初めてだ。

ゲームセンターの出入り口を一歩でると、外は雨が降っていた。

ザーザーという音と、落ちた雨音からそこまでつよい雨じゃない事が分かったのでヘッドフォンを着けてからフードを被り店を出た。

 

なんとなく、雨に濡れたい気分だった。

 

道を歩いていれば、コートが雨水を吸って少しだけ重くなる、傘をもって歩く人達とすれ違う、時折驚いた表情や怪訝な表情を向けられるが気にしない。

そういえば、雨はストレスを軽減させてリラックスさせてくれる効果があるんだっけ?

そう思いながら歩いていると、何処か見覚えのある車が隣を通った気がして足を止める。

そして、その車が少し先で停車するのを見て私は即座に踵を返して──。

 

「カリナッ!」

 

聞こえてきた声に、先ほどまでの軽かった心が鉛のように重くなるのを感じつつ振り返る。

そこには、傘も差さずに私へと走ってくる鬼方カヨコさんと傘を指して走ってくる小鈎ハレさん、早瀬ユウカさんそして先生が見えた。

駆け寄ってくるカヨコさんの腕に、今朝銃ショップで売却したP90が抱えられているのが見える。

あれ、カヨコさんが買ったんだ…カヨコさんが使うのは拳銃だし少し意外かも。

カヨコさんの後ろを走ってきたハレさんは肩で息をしながら傘を差している方の手の反対の手で持っていた傘を此方へと差し出してくる。

 

「カリナ、濡れちゃうよ?傘、使った方が──」

 

「いらない、大丈夫」

 

ハレさんの言葉を遮るように話してしまった私の言葉、いや声だろうか?を聞いたカヨコさんとハレさんは驚いたのか目を見開いた。

二人の少し後ろから歩いてくるユウカさんと先生が見える、ユウカさんも目を見開いたように見えたが気のせいだろうか。

 

「ねぇ、何かあったの?」

 

そう話すカヨコさんは雨で服が濡れているが、抱えているP90は濡れていない。

P90を濡れないよう前傾姿勢で抱えているからだろう、カヨコさんはいつもの冷静な様子は見る影もなく、焦りと心配が一目で分かるほど表情に出ている。

そしてハレさんは驚いたまま固まっており、口がパクパクとして言葉が出ない様子だった。

 

「別に、何もない──」

 

「嘘だ、いつもの元気そうな話し方も明るい服も、髪も全部が違う!まるで別人みたいな……()()()()()()()じゃない」

 

いつものカリナ?

 

「私たち、友達だよね?何かあったなら話してくれれば力になるよ?()()()()()()()がしてくれたみたいに───」

 

「ねぇ、さっきから言ってる()()()()()()()ってなに」

 

普段よりも低い私の声が雨音の中にやけに響いて聞こえる。

 

「え」

 

「カリナ?」

 

「あなた達の知ってる私は、あなた達がカリナって呼ぶ私は、()()()()じゃない。」

 

私の声が、やけに大きくて響いて聞こえる。

普段ならその事に気付いて、声量を抑えることも出来たかもしれない、でも今の私には出来なかった。

 

「今までの私は全部、嘘。私が演じてきただけ、

優しくしたのも、遊んだのも、一緒に過ごした全部、ぜんぶ、私が()()()()()だけなんだよ!」

 

いつもの私、もう居ない苦しくて辛いあの私を求める声ばかりが聞こえてくる。まるで影のように、私の足を掴む金髪の私がいる。

 

もう演じるのは嫌だ、疲れた、終わりにしたい。

 

今の私を誰も受け入れてくれない、自分が変わっても世界は変わらない、私を受け入れない。

集団で生活するには、自分に素直に生きることが許されない。

あぁ、やっぱり……なんども諦めないで、見ないふりをしてたけど、やっぱりそうだ。

 

たった一人のちっぽけな存在が変わったところで、今生きているこの世界は、何も変わらない。

それが現実なんだ。

 

「貴方達が望んでるのは、明るい私であって今の私じゃないんでしょっ!あなた達の"望む私"を、"私"に押し付けないでよ!」

 

気がついたとき、私は自分のことを制御出来ずに思っている事を、抑えてきた何かを全部口から話していた。

私の言葉に目の前の二人が呆然とした表情で固まっていて、二人の後ろでは二人と同じように呆然としたユウカさんと少しだけ焦ったような様子の先生が見えた。

私はこの場にいるのが気まずくて、嫌で、苦しい気がして全員に背を向けて走った。

頬を伝う、雨とは違うそれを拭うこともなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私に背を向け走り去っていくカリナ、そんな彼女を追いかけなきゃと思うのに体は動かなかった。

 

『今までの私は全部、嘘。私が演じてきただけ、

優しくしたのも、遊んだのも、一緒に過ごした全部、ぜんぶ、私が()()()()()だけなんだよ!』

 

彼女の言葉に、怒りと悲しみが交じった表情を浮かべながら彼女が吐露した真実に私はショックを受けていた。

演じていた?今まで全部?

 

『カヨッピみてみて!ジャーン!なんとカヨッピが好きなブラック・デス・ポイズンのサイン付きCD!あ、転売じゃなくてしっかりライブ会場並んで買ったから安心だよ!なんとなんと更にサプライズ!カヨッピへのプレゼントと説明してサインにも鬼方カヨコさんへって書いて貰っちゃったのよ!これマジヤバくね!?あの音楽グループの人たちこころ広すぎまじアビドス砂漠超えてキヴォトスレベルで器でかすぎやばたにえん!』

 

誕生日わからないから今年の分ねと急に渡してきた、今でも大切に持っている彼女からのプレゼント。態々、私との雑談で少ししか話さなかった好きな音楽グループのライヴへ行き、私のためにプレゼントを買ってきて渡してくれたカリナも。

 

『カヨッピ!カヨッピ!警官捕まったらウチの名前だしていいし、証明のためにもすぐ電話しても良きよ?シャーレ所属連邦生徒会の権力なめんな的な?』

 

警官に話しかけられたときの対策として自分の名前を出しても良いと、言ってくれたのも。 

 

『ウチら、ずっ友っしょ!』

 

全部、ぜんぶ……うそ?

 

そう感じた、理解した瞬間に彼女との思い出の映像に、大きな罅が現れそして壊れる。

バリンッガシャン!という幻聴が、聞こえた。

 

「あ、あぁ……」

 

遠退いていく彼女の後ろ姿に手を伸ばすことも、声を飛ばすことも出来ない。ただ、雨が体を冷やしていく。

呆然としたからか、力が抜けたせいか私が抱えていた彼女の銃が手の中からすり抜け、雨に濡れたアスファルトに落ちる。

雨のビチャリと水の跳ねる音と、金属が落ちたときのガチャンという音が同時に鳴り響き、呆然としていた私を現実に引き戻した。

 

一人の掛け替えのない友人と、私のこれまでの全てが大きな音を立てて壊れていく。

私は落ちた彼女の銃を拾い上げることも出来ず、雨と一緒に頬から伝う液体が彼女の銃へと降り注ぐのをみていることしか出来なかった。

 

「カリ、ナ………」

 

 

 





ご愛読下さりありがとうございます。

感想、お気に入り登録、高評価

お待ちしています。

晴崎カリナの使用キャライメージ
1位 星を観るもの
2位 天へ昇る階段
3位 抹消された試作強襲機

続きは温泉開発部が爆破しました。
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