光のギャル、終わりました。   作:クレナイハルハ

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STELLA~堕ちた者の見る小さな星~

 

 

ザーザーと雨が降る道を、ビチャビチャと濡れて気持ち悪い感触がするスニーカーでどれだけ走ったのだろうか。

荒い呼吸で肺に酸素を取り入れながら夢中で走って気が付けば、私にとって嫌な思い出しかない学園のある地区へと足を踏み入れていた。

 

ここまで来れば、もう追いかけてこないかな。

 

そう思いながら、私はふらつく足で近くの建物同士の陰に入り建物の壁に背中を預け曇り空を見上げた。

私の息を吸って吐く呼吸音がやけに煩く聞こえるほどに、その場所は静かだった。

雨に冷やされて冷静な頭で自分が彼女達に言った言葉を思い出す。

 

『今までの私は全部、嘘。私が演じてきただけ、優しくしたのも、遊んだのも、一緒に過ごした全部、ぜんぶ、私が演じてきただけなんだよ!』

 

あぁ、言ってしまった……拒絶してしまった。

 

あの時、モモトークのアカウントを消した時には既に覚悟していた筈だった。

 

もう全部捨てた筈だった、それなのに何故だろう。彼女たちとの関係は苦しかった筈なのに、辛かった筈なのになんで、なんでこんなに()()してるの?悲しんでるの?なんで?

辛かった筈なのに、苦しかった筈なのに……どうして?私は一人の方が気楽で良くて、一人でいる方が好きなのに?

 

「わけわかんないよ…」

 

分からない、分からないわからない。

 

背中を壁に預けたまたずりずりと地面に座り込んで膝に顔を埋める。

トリニティ総合学園、私にとって最悪な場所。

自分を偽らなければならなくなった原因であるこの場所に、なんで来てしまったのだろう。

雨音が荒れた私の心を癒してくれるような気がして、ずっと濡れたズボンの膝に顔を埋める。

ふと雨が屋根へ落ちる音だけの静かな空間に、銃声が鳴り響いた。

こんな雨なのに、銃撃戦が起こるのは流石はキヴォトスだ。他の自治区と比べれば安全なこのトリニティでも、こういった事はあり得ない話ではない。

 

「うるさい」

 

そう思った、銃撃戦と比べたなら小さいと思える銃声が、やけに煩く聞こえる。

今まで、先生と行動した際は様々な銃撃戦に参加してきた。そのどの銃撃戦より小さなもののはずなのに、やけに耳に響いて聞こえる。

でも、私はこの場所でその原因である銃撃戦に参加して元凶の存在を撃つことは出来ない。

このトリニティ地区で、連邦生徒会所属の生徒が勝手に武力を行使したとなれば学園と連邦生徒会との問題に……。

 

「あ」

 

そこで私は、私が連邦生徒会に所属していた状態の私として考えていることに気づいて間抜けた声を漏らした。

 

「そっか、私はもう……なにも気にする必要なんて無いんだ」

 

私はもう連邦生徒会所属の生徒じゃない、トリニティ総合学園には退学届を提出したからもう私は何処にも所属していない。

脳裏に、温泉を作るためと様々な場所で暴れまわる生徒や美食のためなら店を爆破することもある生徒達が過る。

みんな、自分の好きなことに眩しいくらいに真っ直ぐで、目的のために楽しそうに笑っていて自由だった。

仮面を被って、自分を鎖で縛り付けていた私と違って自由に、その翼を広げて遥か遠くを飛んでいた。

でも、今の私にはそんな鎖はもうない。

そうだ、私はもう……気に入らないから、嫌だから、そんな理由で撃っていいんだ。

そう思った私は立ち上がって、今朝に銃ショップで適当に選んだ二丁の銃を手に取る。

モッズコートの中に身に付けたベルトから繋げられている右太ももに取り付けたレッグホルダーへ仕舞われているストックの存在しないサブマシンガンのVector、須佐薙(スサナギ)を右手で引き抜く。

続いて左手を後ろの腰に斜めに取り付けたCQCホルスターへ向け、CQCホルスターのセーフティを解除しながらハンドガン、レーザーサイトが装着されたグロック18Cの月映鏡(ツクバカガミ)を取り出した私は、聞こえてくる銃声の方へと向かって歩きだした。

 

太陽は堕ちた、ならどんぞこまで堕ちても変わらない。

 

もう捨てるものは何もないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリニティ地区の外れ、そこでは一人の少女とヘルメットを被った四人の少女による銃撃戦が行われていた。

ヘルメット団を名乗る彼女たちから少しはなれた遮蔽物に隠れ私は手にもった愛銃であるシューティング☆スターに銃弾を装填する。

たまたまトリニティの外れの方をパトロールしていた私は、近くにあったコンビニのエンジェル24に強盗に入ったヘルメット団を名乗る少女達との戦闘になっていた。

に強盗に入ったヘルメット団を名乗る少女達との戦闘になっていた。

他の人達に比べて少し打たれ強い私なら暫くは耐えられるけど、この人数に一人はかなり分が悪い。自警団の援軍が来るのを待つ?でも連絡したら、その隙に逃げられるのは明らかだ。

この状況をどうにか打開できないかと考えていた、その時だった。

私の近く、正確には後ろの方からビチャリと雨で濡れた地面を歩く足音が聞こえて、ヘルメット団の増援かと警戒しながら振り向く。

そこには俯いた一人の少女が立っていた。

首にはヘッドフォンをかけ、黒いモッズコートを羽織り緑のカーゴパンツを履いた彼女は、自分の紫色と水色の混じった髪より目立つ桃色の髪に金髪が混じった髪だった。

 

「お、なんだ?コイツの仲間か?」

 

「おいおい、たった二人でウチらガナガナヘルメット団を相手にする気かw」

 

「俯いちゃって、怖いならさっさと逃げろよなー!」

 

「ま!こんな安全な自治区で過ごすお嬢様にはアタシらと戦うなんて無理か!」

 

そういって笑い声を上げるヘルメット団に、思わず顔をしかめつつ、この場から逃げるよう声をかけようとした時だった。

 

「お前ら、私を笑ったな……」

 

彼女から聞こえた低い声に、私は何故か背中に冷たいものが伝うのを感じた。次の瞬間、彼女は右手にもったサブマシンガンの銃口を近くにいたフルフェイスのヘルメットを被ったヘルメット団一人に向けて引き金を引いた。

そして笑っていたヘルメット団は彼女の放った弾丸を受けて、痛みからか弾丸の当たった横腹を押さえる。

 

「ハンドガンにはこういう使い方もある」

 

「うぐっ!?」

 

その時にはすでに彼女はそのヘルメット団へと肉薄していた。

彼女は左手に持ったハンドガンを横薙ぎに振るい、フルフェイスヘルメットを殴り付けた。殴られたヘルメット団は勢いでそのまま仰向けに倒れる。

桃色の髪の彼女は、顔と腹部を押さえているヘルメット団へと近付くとゆっくりと左足をあげ倒れたヘルメット団の腹部を踏みつけた。

 

「ごぼっ!?おえっ!」

 

それだけでは止まらず左手に持ったハンドガンをゆっくりと踏みつけているヘルメット団のフルフェイスのヘルメットへと向けた。レーザーサイトの光は、銃弾が外れることを祈るヘルメット団の子の希望を打ち砕くように、しっかりと彼女のフルフェイスヘルメットへと当たっている。

 

「貴様には地べたがお似合いだ……」

 

「ごべんなざい!わだじが!わだじがわるがったでず!だがらやべでぐだざッ!」

 

ヘルメット団の言葉を遮るように、一発の銃声がその場に響き渡る。その後も彼女はハンドガンの引き金を引いた、それも何発も。

フルフェイスのヘルメットが歪み、変形しても銃声が止むことはなく最初こそ、逃げ出そうとしたのか恐怖からか苦しそうに踠き動いていたヘルメット団の女の子はやがて腕や足がピクリとも動かなくなっていた。

き、気絶しただけですよね?先程まで撃ち合っていたのにも関わらず、目の前で倒れるヘルメット団の子が心配になる。

 

「クハッ!ハハハ!そうか、そうなんだ、これが自由?!もう、私を縛るものは何もない!アハハハ!!」

 

気が付けばシューティング☆スターを持つ腕が、いや腕だけではなく体が震えていた。

それは、いま彼女によって倒れたヘルメット団の子の仲間も同じだった。

 

「お、おいアイツヤバいって!」

 

「こ、このままじゃアタシらもアイツみたいに...」

 

「い、嫌だぞ!?このヘルメット買ったばっかりなのに!」

 

恐怖からか、ヘルメット団達は慌てた様子で話し合う。そんな中で何人かは半歩ほど足が引いている状態の人もいた。

ヘルメット団を踏みつけていた足を退けた彼女はユラリとまるで幽霊のように未だ銃を持つヘルメット団達の方へと向き直ると右手にもったサブマシンガンの銃口をヘルメット団の人達にへと向けた。

 

「逃げるなよ、先程までの威勢はどおした?なぁ、なぁ!」

 

そこでようやく彼女の顔が見えた、まるで狂ったような虚ろな瞳と、笑う口元。そしてそんな彼女はゆっくりとヘルメット団の元へと歩きだす

 

「ひぃっ!?」

 

「アイツみたいになるのはやだ!やだ!やだ!やだよぉ……」

 

ヘルメット団の人達は恐怖からか座り込んでいる人もいた、だがそんなこと関係ないとばかりに彼女はゆっくりとサブマシンガンを構えたままヘルメット団達の場所へと歩きだす。

 

これ以上はダメです、止めないと。

 

「やめてください!」

 

何故か、これ以上彼女を進めてはならない。

止めないといけないと言う考えた私は気が付けば、歩く彼女とヘルメット団の人達の間に立っていた。

 

「お、お前なんで!?」

 

シューティング☆スターを握る腕が震えている、足だって震えている。

傍観したら駄目だ、トリニティ自警団としてトリニティにいる()()()()()()の安全を守るのが私の仕事。

引いたら駄目だ、恐れず彼女の瞳を正面から見てゆっくりと息を吸い込んで叫んだ。

 

「ガラガラヘルメット団の人達にこれ以上、自己防衛を越えた攻撃を加えるのはトリニティの騎士であるこの宇沢レイサが許しません!!」

 

「えっと、ガラガラじゃなくてガナガナ」

 

「………ガナガナヘルメット団の人達にこれ以上、自己防衛を越えた攻撃を加えるのはトリニティの騎士であるこの宇沢レイサが許しません!!」

 

ガナガナヘルメット団の子達からの訂正に即座に先ほどの台詞を言い直す。今のやり取りで少し体の震えが収まった気がした、代わりに頬がすごく熱いけど。

私の言葉に、サブマシンガンを構えたままの彼女は何も答えない。暫くの沈黙のあと不意に彼女が口を開いた。

 

「なぜ、何故こんな場所で強く生きられる」

 

「ぅえ?」

 

「気に入らぬから人を蔑み、気に入らぬから人を貶しめる、そんな人の皮を被った怪物ばかりのこの場所で、何故そのように折れず真っ直ぐでいられるッ………」

 

彼女の言葉は、私に言っているのでしょうか?

それとも?とにかく彼女がいつ引き金を引いても良いように身構えていると、やがて彼女はため息をついてサブマシンガンの銃口を下に向けた。

 

「帰る」

 

そういって彼女は踵を返すと歩きながら両手に持った銃をそれぞれのホルダーへとしまいながら歩いていく。

その背中が、さっきまでの恐怖を感じさせないほど悲しくて、孤独に見えて一人させたらいけない気がして、でもどう繋ぎ止めれば良いかわからなくて、私は思わず叫んだ。

 

「あのっ!あなたの名前を…教えて、下さい!」

 

私の言葉に、少し先を歩いていた桃色の髪の人は顔だけ振り向いてこちらを見つめてくる。そんなその人は、何処か悲しそうな表情を浮かべながら口を開いた。

 

「消え行く者に、名乗る名前なんてない」

 

「あ...」

 

そういってそのまま歩いていくあの人は、まるで これ以上私からの言葉を聞く気はないというようにヘッドフォンを被って離れていった。

 

『気に入らぬから人を蔑み、気に入らぬから人を貶しめる、そんな人の皮を被った怪物ばかりのこの場所で、何故そのように折れず真っ直ぐでいられるッ』

 

何故かあの人の言葉が、頭から離れなかった。

彼女の言葉にはどのような意味があるのか、彼女は何故トリニティをそのような言葉で表現したのか、私には分からなかった。

ただ、恐怖の対象から逃れることが出来てヘルメット団のみんなと安堵からか泣きそうになるのを耐えて、倒れたヘルメット団を助けるため急いで救護騎士団を呼ぶために無線機を手に取った。

 

 

 

 






STELLA、ステラ(バコパ)の花言葉は「小さな強さ」「愛らしい」です、宇沢ですね。

ご愛読ありがとうございます。

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