光のギャル、終わりました。   作:クレナイハルハ

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HALLUCINATION~過去を辿って~

ヘルメット団複数の生徒ととトリニティ自警団一人の戦闘に参加した後、私は家に帰ってきた。

鍵を取り出してドアノブの真ん中にある鍵穴に鍵を挿して捻り、ドアを開けて中にはいる。

ただいまは言わない、だって誰もお帰りと言ってくれないし意味がないから。

太ももと腰に着けた銃のホルスターを外して適当に置いて、お風呂を沸かす為にボタンを押してから濡れたモッズコートを部屋のハンガーに掛け濡れた服を洗濯機に放り込む。

部屋の壁に背中を預けて座り、膝に顔を埋めてお風呂が沸くのを待つ。

それにしてもあの子達、どうしてミレニアムやトリニティであんなに風に生きられるんだろう。

私と同じ派手な髪色なのに、なんで?あんなに自分に正直で元気で、自分らしくいられるの?どうして?

そんな先程の戦闘を思い出していて、ふと気づいた。

 

「あれ、私は……なんで()()()()()()()()()()?」

 

戦闘したとき、何故か私はまるでゲームをしている時と似たような言動をしていた。でも、私はそんな感じで話そうなんて、戦闘しようと意識してない。

()()()()となんて、してないはずなのに。

 

背筋を、冷たい何かが伝う。

 

思わず私は両手で頭を抱えた。

 

おかしい、可笑しい可笑しい可笑しい!私は、あれは私じゃない!私は、私は陽キャなギャルじゃないし、あんな荒々しい戦いかたじゃなかった。

 

なんで?なんでなの?

 

思考の海に思考が沈んでいく、そんな私の意識をお風呂が沸いたことを知らせる電子音声が引き上げる。部屋に鳴り響くその声は静かな部屋にはやけに響いて聞こえた。

体を冷して風邪を引く前にお風呂に入るために洗面所へと移動する、ふと洗面台をみた時だった。

その鏡に映る私は、金髪で連邦生徒会の服を着ていた。

 

「え」

 

そして鏡に映る私は、クチをニヤリと三日月の形へと変え此方をみた。

 

『ねぇ、もういい加減気付けば?ウチは明るくて前向き!キヴォトスの殆どの生徒とは友達で頼れる女の子!そんなウチこそ()()()()()()()()なんだしさ』

 

まるで悩みを打ち明けた友人に寄り添うような、諭すように優しい声色で話す目の前の私。

鏡に、なんで私じゃない私が映っているの?

なんで?今の私はもう金髪じゃない、髪だって元の髪色に戻した筈。

自分の髪に触れる、毛先が少し金髪の残りが所々に残っているものの桃色の髪が見えた。困惑しながらも、目の前の鏡に映る自分の言葉を否定する言葉がすぐに出てきた。

 

「違う、ちがう……ちがう、ちがう!私は陽キャじゃない!ギャルでもない!他人と関わるのが面倒で、苦手で!」

 

『みんなと過ごすのが好きで?』

 

「周りの人を気遣うことが出来なくて、空気が読めないし、名前を覚えるのも簡単に出来なくて」

 

『いつもと違う様子の子には寄り添って、名前はすぐに覚えるしあだ名だってつけちゃう』

 

「殆どの人が知らないような、マイナーな曲が好きで……」

 

『みんなで盛り上がれる曲やそのとき流行っている曲はみんなと共有しやすくて大好きで?』 

 

「好きな、ことは……ゲームセンターで」

 

『好きなことはみんなと出掛けて遊ぶこと!みんなと過ごす時間が最高にアガるっしょ?』

 

「わた、しは……」

 

『ウチは?』

 

あれ?本当に、今の私が……本当の私なのかな。

今の私こそが、演じている偽物の私ってことなの?分からない、わからないわからない!

私は、私は……どんなだったの?本当の私ってどんな……。

 

『ね?そんなの止めて、ウチに戻ろ?』

 

鏡に映る私を睨み付ける。

 

『そんな意地はらないでさ、そうすればもう』

 

「うるさい、うるさい!うるさい!もう、もう戻りたくない!戻りたい訳ない!頑張って、虐められないように笑って、自分を偽るのはもう嫌だ!」

 

もう演じるなんて嫌だ、自分を偽るなんて嫌だ。

 

「私は自由に生きたい!好きなことを好きっていいたい!好きなことを好きにしたい!周りなんて気にしたくない!」

 

『出来ると思う?周りに合わせて生きる方が、ラクダシ、タノシイッショ?』

 

「どうせもう戻っても私を友達だという人はいない!みんなが私を虐めるだけ!私は周りに合わせるために生きてるんじゃない!私は、私はッ!」

 

結局、世界は自分が変わっても変わらない!結局、結局は私の目の前の光景は変わらない。

どれだけ笑っていて、周りに合わせてもいつかは、私は弾かれる。

『誰にでも良い顔をするよね』『うわ、あの子前に……』『トリニティに相応しい生徒とは程遠いですわね』『同じクラスにいるなんて信じられない』『私、出来るだけ話さないようにする』

 

「ッ」

 

私は気が付けば、洗面所から出て部屋に乱雑に置いたグロック18C月映鏡(ツクバカガミ)をとってホルスターから引き抜いて洗面台にある鏡に銃口を突きつける。

 

「消えろ、消えろ!消えろッ!!」

 

何度も、何度も何度も何度も引き金を引いた。

鏡に映る自分の声が、聞こえないように撃ち続けて、弾切れでツクバカガミから放たれる銃声が止みカチカチと引き金を引く音だけが聞こえた時、洗面台の鏡は割れ床に鏡の破片が散らばっていた。

それを見て、私は手に握っていたツクバカガミの引き金にかけた指を放しだらりと手を下に下ろした。

 

「あぁ……掃除、しないと」

 

結局、私はお風呂に入るのは掃除をしてからになり温くなったお風呂のお湯をおいだきしながら入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリニティ総合学園で晴崎カリナについて調べ始めた先生と小鈎ハレ、浦和ハナコが呼んだ補習授業部は、ティーパーティーの桐藤ナギサの協力の元でトリニティ総合学園での過去の資料を漁っていた。

 

「"うーん、一年前のトリニティのイベントの写真があったんだけど、映ってたカリナは金髪だった。桃色の髪の時の姿は見つからないね"」

 

「急にハナコちゃんに呼ばれたので来ましたけど、まさかカリナちゃんがそんなことになっていたなんて……びっくりです」

 

「彼女が金髪じゃなくて性格も暗い姿か、先生達から聞いたが、やはり少し想像しにくいな……」

 

阿慈谷(あじたに)ヒフミと白州(しらす)アズサは並んで過去の資料のページを捲りながらそう話す。

彼女たち、補習授業部が晴崎カリナと長く関わったのは補習授業部が学園の除籍を逃れるために行われたテスト勉強の時だ。

先生の手伝いとして、勉強を教えるためカリナはやってきた。

トリニティに所属しているために選ばれた彼女は金髪で制服を気崩した彼女の見た目や積極的な様子に時々、下江(しもえ)コハルによるエ駄死判定を受けていたこともある。

だが、勉強は分かるまで根気よく付き合ってくれる上に教え方もうまかった。故に補習授業部の面々もカリナには好印象を持っていたのだ。

 

「そもそもカリナ先輩ってなんで髪を染めてあんな風な性格を演じてたの?みんなから慕われてて、結構充実してたように見えたけど」

 

「確かに、コハルちゃんの言う通りそれも不思議ですよね。明るい自分を演じるなんて、何でそうなったんでしょうか?」

 

「何かきっかけがあったんじゃないか?例えば、苛められていたとか」

 

アズサの言葉に、ヒフミとコハルは彼女が補習授業部へと入れられた原因でもある出来事の一つであろうことを思い出す。

彼女は陰湿ないじめを行っていた生徒をこらしめたことをきっかけで正義実現委員会に目をつけられる事となった。

晴崎カリナがあのような明るくて頼りになる少女を演じるようになったきっかけがもしそうならば、何故そのような自分を演じることになったのか。

何故、突如として演じることを止めたのか。

 

「一度、彼女がこの学園に入学する前の事を調べたらどうだ?」

 

「確かに、入学したときには既に私たちが知るカリナちゃんでしたし」

 

「そうだな、先生はどう思う?」

 

「"私もそれで良いと思うよ、ならさっき見たカリナの入学時に提出された資料が役立つかも"」

 

「えっと、これね!」

 

そういってトリニティ総合学園入学時に提出されたカリナの書類が入った封筒を見つけたコハルは、それを先生に渡す。

先生は早速封筒の中に入っていた書類を補習授業部の三人が見えるようテーブルの上に広げる。

 

「ここの前に通っていた学校の名前もしっかり書いてあるな」

 

「なにこれ……転校、転校、転校…….カリナって何回転校してんのよ!?」

 

「先生、私もアリウスからトリニティに転校してきた身ではあるが『転校手続き』とはこんなに積み重なるものなのか?」

 

「“これは……流石に妙だね”」

 

「ここに行けばカリナちゃんについて何か分かるかも知れません!」

 

「今日はもう遅いし、明日に行けばいいんじゃない?」

 

そういうコハルの言葉に先生とヒフミ、アズサは窓から差し込む夕日に目を細める。

 

「"学校の方には私から連絡しておくよ"」

 

「ありがとうございます、ハナコちゃんやハレさんにもこの事はモモトークで報告しておきますね」

 

そういってモモトークを開いて連絡を取るヒフミを見て、カリナの通っていた学校へ訪問の連絡をするため先生は部屋を出る。

そんなヒフミ達を他所に、ハナコとハレはトリニティの様々な場所でカリナについての聞き込みを行っていた、のだが。

 

「殆ど、同じような答えばっかりだね」

 

「そうですね」

 

晴崎カリナについての聞き込みの内容の殆どは明るいものだった。『この前一緒に遊んだよ!』『いつも明るくて一緒にいると元気になるよね』『なんで止めちゃったのかな?さみしい』トリニティの生徒からも慕われていたことが分かる内容だ。

だが、いい言葉ばかりではない。

『誰にでも良い顔するよね、あのこ』『正直うざい』『トリニティ生徒として、もう少し落ち着いて行動した方がいいと思う』『友達と意見で割れたときどっちの味方もしないから嫌われて当たり前』『何処の派閥にも入らない異端』

怒りを出さずに応対した自分を褒めたいと感じる二人は、聞き込みを一度止めて休憩していた。

 

「その、ハレさんはカリナの姿を見たんですよね」

 

「うん、いつもの雰囲気も声色も服も全部が全部違くて……最初は信じられなかった」

 

そう話すハレは目を伏せながら、ベンチに深く座り込む。そんなハレのとなりに座り、呟くような小さな声でそう声を漏らすハナコ。

 

「カリナはなんで、ずっと元の性格とあの姿を隠してきたんでしょうか」

 

「知られたくなかった、とか?」

 

「その場合はカリナは私達に何を知られたくなかったのでしょうか……」

 

「分からない」

 

カリナについての意見交換をしていたハナコの携帯に、ヒフミから明日にトリニティ総合学園へ入学する前に卒業したカリナが通っていた学校へ向かうことになった報告があり、ハナコはモモトークの画面をハレに見せて内容を共有する。

 

「カリナの通っていた学校で何か分かるといいけど」

 

「まだカリナの担任が在籍しているならチャンスはありますね、あと校長でもそうですが取りあえず明日に行ってみてからですね」

 

「そうだね、取りあえず先生達と合流しよう」

 

そういってハナコとハレはベンチから立ち上がりヒフミ達のいる場所へと向かうのだった。

 

 





ご愛読ありがとうございます。

多くのかたが気になっているかと思われるので記載します。
本作品はブルーアーカイブの時系列で言うところエデン条約後になる予定です。

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お待ちしています

続きはパンちゃんの下敷きになりました。

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