次の日、シャーレへと集まった補習授業部の全員と小鈎ハレは先生と共にカリナの在席していた学校へと向かっていた。補習授業部と小鈎ハレ、シャーレの先生とかなりの人数ゆえに先生がレンタルした大型の車で移動である。
「そういえば先生、あの子。ゲヘナの子は来なかったの?」
車内だからか靴を脱ぎ更には靴下も脱いで裸足となったハレは膝にあるエイブックレアでの作業を止めて、先生に質問を投げ掛け片手に持った妖怪MAX缶を口に運ぶ。
「"あー、まぁ彼女は彼女の仲間にお願いしてきたから大丈夫だと思うよ。暫くすればこっちにも合流……できるかな?"」
「だ、大丈夫なんでしょうか……」
ハレの質問に運転しながら話す先生の声が途中から不安そうなモノに変化していったのに対してヒフミは心配そうにそう呟きつつ、車に乗った際に自身の膝へと下ろしたペロロのリュックサックを抱き締める。
「うーん、だいぶショックを受けてたしね。少しは寝込むんじゃないかな」
「その、ハレさんは大丈夫だったんですか?」
「嫁の全てを受け入れるのが旦那である私の役目だからね」
「???」
シリアスから一変してドヤ顔を決めるハレとその発言に頭部に?の草原を発生させるヒフミ、ハレの発言や脱いだ靴下と素足を交互に見て目を猫のように変化させ頭の羽をパタパタさせるコハルと、それをニヤニヤと見つめるハナコ、そしてウェーブキャットのアイマスクでつくまで仮眠を取ると言って寝息をたてているアズサ。
車内の空気にシリアスは少なく、自由だった。
トリニティ総合学園から離れた場所にある学校、そこが晴崎カリナの通っていた場所であった。
着いて早々にトリニティと同じ感じの空気感と雰囲気に気づいたハナコは、即座に笑顔を作る。
その様子に先生はこの学園で何かあるのだと直感であるが感じた。
昨日、先生はシャーレへ戻ったあとアロナに頼んでカリナの転校した学校のすべてのカリナの写真について調べていた。学校のイベント、運動会や遠足などの写真はネットに公式で投稿されていることもある。まぁ、アロナ頼りのハッキングとなるが入学時の写真等も調べることが出来た。
その結果、この学校から転校したカリナの全てが金髪でありここに在学中はずっとあの桃色の髪であることがわかった。恐らくカリナがあのようになった原因はここにある。
「"じゃあ、私はカリナの担任だった人に話を聞いてくるよ"」
「私達も、いろいろ……探してみますね♡」
「頑張って」
先生がそういうと、職員室から出て談話室へ向かう。ハレやハナコ達は見学者であることを示す首から下げた許可証を持ってこの学校を散策することになった。
「取りあえず、図書室とか見とく?学校の資料があるみたいだし」
「可能なら資料室も確認したいですが恐らく、いえ確実に鍵がかかってそうですね」
「ピッキングくらいなら……」
「それはダメ!あくまで私達は見学生徒なんだから!」
ハレとハナコの言葉にポケットから細い針金などを取り出そうとするアズサを即座にコハルが止める。そんな様子にアハハと苦笑しつつ、ヒフミは先程この学校の職員から渡された資料から図書室と資料室の場所を確認する。
「図書室は2階で、資料室は1階みたい。近いのは資料室ね」
「私とアズサちゃん、コハルちゃんで図書室に行くのでハナコちゃんとハレさんは念のため資料室を確認しに行ってダメそうなら一度図書室にもどって貰うのはどうでしょうか?」
ヒフミの持つ資料を覗き込んだコハルの言葉に続いてヒフミが提案した案に全員が頷くと行動を開始した。
一方で先生は早々に嫌な予感ともいえるそれが現実になったことに、溜め息を着きそうなのを耐えていた。生徒達と離れた先生は談話室に通され、当時カリナの所属していた、クラスの担任の教師と面会していた。
「晴崎カリナさんですか……少し、周りとコミュニケーションを
「"他の問題というのは?"」
「学校に入学してすぐでしたか、学校や両親にも言わず、放課後に
「"ミレニアムの?あの、それの何が問題に?"」
「我が校の教訓は『トリニティの生徒たるもの、常にトリニティの誇り忘れることなからず…ノブレスオブリージュの精神にのっとった行動を』彼女は、勉学に励むどころかそのようなトリニティの生徒として相応しくない振る舞いをした上に、結果を出してしまった。たかが遊びのために教訓を無視したのです。」
カリナが放課後にミレニアムに出掛けてゲーム大会に出場した、確かに学校や両親にも伝えなかったのは問題かもしれないが、それが原因であのように周りに自分を偽ろうとするのは流石におかしい。
なんで学校で問題になった?結果を残したのならむしろ表彰されたりするのが
そもそも転校してきたカリナが教訓を知らなかった可能性だってある訳だし、本当にそれ以外に問題は起きなかったのか?
「この問題には軽い注意以外、
「"…そうですか、お話しして下さりありがとうございます"」
特に問題は起こさなかった、か。
やけに強調してる気がするのは気のせい、では無さそうだと思う。そう感じた先生はこれ以上は話を聞けなさそうだと感じ、今回は突然の訪問でしたのにありがとうございましたと頭を下げた。
「いえいえ、どうぞゆっくり見学していって下さいね」
そう言って笑う担任だった相手に挨拶をして談話室を出る。
取りあえずカリナについて新しく情報を得ることは出来た、過去にミレニアムのゲームの大会に出場してトリニティ生とは思えない振る舞いで結果を残した。
カリナの両親が転勤族なのは、このキヴォトスの様々な場所へ転校していたので何となくは察していたが……それにしても、ミレニアムのゲームの大会に出場して結果を残したなら当時のことを知ってそうな子に話を聞けないかな?ゲーム開発部の誰かなら知ってるかもしれない。
この学校からトリニティ総合学園に進学したり転校した子にも話を聞いてみた方が良いかもしれない。
みんなと合流してこのことを共有しないと。
先生はアロナにみんながいる場所を教えて貰い、図書室へと向かうのだった。
そんな先生達一行を他所に、カリナによる『今までのは全部演技だったんだよ』発言によって、心にショックを受けてしまった鬼方カヨコ、彼女は便利屋68の事務所にてボーッとした様子でソファに座り込んだまま動いていなかった。
「カヨコ課長!猫!それも子猫!拾ってきたわよ!ほら!この子で元気出して!!」
「ア、アニマルセラピーが良いって先生が言ってたのでその……か、かなり引っ掻いてきましたけど頑張って捕まえてきました……すいません」
事務所の扉を勢い良く開いて現れたのは、顔の鼻の辺りに小猫に引っ掻かれたのであろう傷の出来た便利屋68社長、陸八魔アル。
そしてそんな彼女の後ろから入っていたのは同じように腕や頬に引っ掻かれた後があり、捕まえて来た猫を入れて来たのだろう猫の鳴き声が聞こえるダンボールを持った伊草ハルカだった。
普段ならば猫の鳴き声に反応するであろうカヨコはまさかの無反応であり、ずっと虚空を見つめたままである。
そんな二人にお帰りと声を掛けるのは、同じく便利屋68で陸八魔アルの幼馴染みである浅黄ムツキ。彼女はいつものニヤニヤとした様子ではなく何処か心配そうな表持ちでカヨコの向かいに座っていた。
「昨日からずっとあの様子なんだけど……」
「アニマルセラピーなら間違いないって先生も言っていたし、きっと大丈夫よ!」
「き、きっと大丈夫……ですよね?」
ハルカは猫達の入ったダンボール箱をカヨコの近くに置いて蓋を開ける、するとダンボールに入っていた猫達が次々とダンボールから抜け出し便利屋68の事務所を警戒した様子で見つめ散策を始める。
やがて一匹の猫がカヨコの方を向き、暫くするとカヨコの座るソファに飛び乗りカヨコの膝の上に座ると、恐る恐るといった様子で自身の頭をカヨコのお腹へと擦り付け始めた。
その一匹に続くように、ダンボールから出て毛繕いをしていた猫や他の猫と喧嘩していた猫達もカヨコの方を見ると、即座に彼女の側へと向かっていく。
ソファにつかれた両手には撫でろとばかりに猫達が頭を擦り付け続け、膝には何匹かの子猫がまるまっている。
「ねぇアルちゃん、無理やり連れてきた筈なのにみんなカヨコっちの様子見てすぐに寄り添ってくんだけど………」
「こ、これが先生の言っていた猫の力なのね!?それにしても変ね、野良猫なのにカヨコ課長に懐いてるような」
アルはカヨコに身を寄せる猫の一匹を撫でようと手を近付けると即座にシャーッと威嚇の様子を見せ、アルは思わず一歩足を引いて伸ばしていた手を引っ込める。
「猫とはいえアル様にそのような反応……許さない許さない許さない許さない」
「ハルカちゃん落ち着きなって、相手は猫だよー?」
そんな猫の様子にショットガンを握りしめたハルカをムツキが笑いながら宥める。本来ならばこういうのはカヨコちゃんの役回りなんだけどなぁ、とムツキは肩をすくめつつカヨコの様子を見守る。
「そ、それにしてもカヨコ課長は晴崎さんとは、凄く仲が良かったんですね……」
「そうね、よく一緒に出掛けていたわ。それにしても、先生から聞いた話は驚きだったわね」
「カリナっち、ずいぶんと変わっちゃったらしいもんね……」
「せ、先生達は今頃カリナさんが通っていた学校に行ってるんですかね」
「そのはずね、カヨコが大丈夫そうなら私達も行きたいところだけど。あんな様子のカヨコを連れていくわけにはいかないわ」
そういいながらカヨコを見つめるアルは、自分のデスクに向かう。そしてデスクの引き出しを開けて、以前に依頼を通して知りあった情報屋の連絡先が描かれている名刺を取り出す。
「ハルカの件で知ってるけど、もし晴崎カリナさんが変わった理由が
そういって陸八魔アルは電話の受話器を手に取った。
陸八魔、お前今一番かっこいいよ
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