随分お久しぶりですね……丁度一年ぶりですか。色々な作品を投稿しましたが、原点はやっぱりここなんですよね。色んな思い出が詰まってます。
これからも不定期ではありますが、投稿していきたいと思っています。現在投稿できていない作品共々、ご一読頂けると嬉しいです。
「ん…‥」
窓際から差し込む柔らかな日の光で目が覚める。
未だ体を動かすことに慣れないため、少しの伸びと、軽くストレッチをしてから学校へ行く準備を始める。
「今日は一日中晴れか…‥一応、折り畳みの傘だけはカバンに入れておこうかな。」
パンとエネルギー補給用ゼリーという簡易的な朝食を済ませた後、今日必要な物を確認しながら、テレビで天気予報を確認する。
降水確率は0%だが、なにかあってからでは遅い。念のため、折り畳み式の傘をカバンに入れておく。
これで安心だ。
「よし。…‥じゃ、行ってきます。」
これは、一つの奇跡の後の物語。
一羽の鳥と一人のお姫様による、壮大な後日談である。
あれから五日。ナギサの尽力、ティーパーティーそのものが烈火の如く働いたことにより、トリニティは一連の大混乱を沈め、なんとか元の日常に戻ろうとしていた。
『ミカさん、先生……その、先ほどから尋ねようと思っていたのですが……彼は?』
『あぁ……その、何て言ったらいいのかな……』
『ナギちゃん!シルベだよ!シルベ!』
『……バカなことを言わないで下さい。シルベは鳥でしょう?数時間前にも目撃情報があります』
『ねぇミカ?ナギサはどうしたら信じてくれると思う?』
『そうだなぁー、あ!ゴニョゴニョ』
『……いいね、それでいこう』
『貴方、ミカさんと距離が近すぎじゃないですか?それではまるで……!ち、近づかないで下さい』
『懐かしいね。君が子供の頃、僕に色々相談していたこと』
『!?……』
『ミカとどうすれば仲良くなれるか聞かれたこともあった。時には、行き場のない感情をぶつけられたことも』
『……試してみましょう。ミカさんが幼少期、一日だけ実践して諦めたことは?』
『君に見せたのなら、プリンセスの真似』
『認めるしかないようですね……』
ナギサがあれで完全に信じてくれたわけがない。おそらく、あの場は話を納めてくれたのだろう。シマエナガ達に聞いたところ、セイアの説得もあったらしいし。
「……それにしても、こうやって足で歩くのはやっぱり慣れないなぁ」
青空に覆われた世界を、辺りの風景を楽しみながら登校すること自体は、悪くない。
アスファルトの道が体に伝える感覚は新鮮だし、連なるビル群を眺めるのもいい。人々の話に耳を傾けるのも面白い。
だが、どうにも両翼が疼いてしまう。
(でも初日、飛んで登校したらちょっとした騒ぎになったしなぁ……ミカにもナギサにも注意を受けたし、気を付けよう)
考え事をしながら歩いていたら、いつの間にか着いてしまったようだ。
トリニティ総合学園。三大学園の一校にして
僕、"白鳥シルベ"が通う学校だ。
「あ、おはよー」
「おはようございます」
「おはよう」
僕のクラスは比較的、平和であると思う。鳥の頃知ったこの学園の負の側面が、ここにはないと断言できるぐらい。
「おはようございます、シルベさん」
「おはよう、マリーさん」
それも、この少女が一因であると思う。
夕陽のような鮮やかさを誇る髪。慈愛すらも感じさせる柔らかな青い瞳。身に纏う空気からも、平和を望んでいるのがよく分かる。
名前は伊落マリー。僕の、初めての友達だ。
「今日は大丈夫ですか?忘れ物などは」
「うん。何日も迷惑をかけるわけにもいかないから、ダブルチェックもしたし授業の予習もした。手間をかけさせることはないと思うよ」
「そうですか……困ったことがあれば、またいつでも仰って下さい。私もとい、シスターフッドは救いを求める人の味方ですから」
「凄いねぇ……僕、また頼っちゃうかも」
「是非」
今のところ、友達といえるのはマリーさんだけ。けれど、これ以上関わりを持つ必要がないと思ってしまうくらい、彼女は人として魅力的だ。
(……まぁ、本当にそれでもいいかも。)
授業が終わり、放課後。僕はティーパーティーの部屋を訪れていた。
入った時セイアがいなかったからどうしたのかと聞くと、体調が優れないらしく来られるか分からないそうだ。
「どうですか?シルベさん。学校生活の方は」
「お陰様で、楽しくやっているよ。友人もできたし」
「それはそれは……大変、喜ばしいですね」
最初は本当に驚いた。『トリニティに通いなさい』と、ナギサが本来存在しない男子用の制服と手続き書類を持って僕の家に来た時は。
しかも……
(身分証まで作ってもらってるんだよね……どんなルートを使ったんだか)
というか、家でだって用意してもらってるし。
「シ~ルベ!今日も食べさせてあげる!」
そういって、ミカは僕の口元にロールケーキを差し出してくる。ここに来るとミカは決まってこれをするので、最早恒例行事になってしまった。
「ミカ、まだ僕のことを鳥のままだと思ってるの?」
「だって~、食べさせた時の顔、前とそっくりだもん!」
彼女の僕を見る目は、あの時とほとんど変わらない。あくまで母親が子供を見るような、そんな瞳。
(……君にとって、僕はずっとペットのままなの?)
「ほら、あーん!」
「……おいしい」
「あら、それは良かったです。私が作ったので」
「相変わらず、ナギサはお菓子作りが上手いね。……こうやって食べることができて、本当に嬉しい。前は見てるだけだったから」
羨ましかった、と思わなかったわけがない。けれどそれは、スイーツを食べられなかった、という理由ではなかった。
皆と、同じ食事がしたかった。ただ、それだけだった。
「……これからは、いっぱい一緒に食べようね」
「えぇ。私も、腕を振るいましょう」
「ありがとう、二人とも」
「これはこれは……蜜月の一時を邪魔してしまったかな?」
そんな風に談笑していると、重厚な開閉音をたてながら最後のティーパーティー、百合園セイアが入って来た。
「セイアちゃん!体は大丈夫なの?」
「無理をされては、後に祟りますよ?」
「心配は無用さ。それに、用事もあったことだしね」
優雅と表すしかない、まるで水面の上を歩いているように繊細な動きで、セイアは僕に近づいて来た。
「な、何?」
「シルベ、少し話せるかい?二人で、ね」
続きはいつになるか未定です。首を長くして、お待ち下さい。
最後まで読んでいただきありがとうございます。お気に入り登録や、感想を書いていただけると作者が狂ったように喜びます。