Re.ゼロから始める姉弟生活   作:黎川暁明

10 / 44
オリ展開入りまぁすッ!
コレで前話までの罪の意識も軽減されるぜ!


第10話 大切なものの為ならば

「ちくしょう…全然見つからない…!」

 

エリオットが薄暗くなり始めた道を一人歩きながら愚痴るように呟く。

可能性として存在していた詰所には居らず、入れ違いになったかと一度探したところを二度ならず三度四度までも探したが見つからず。

 

姉の今日の服装を目印に道行く人に尋ねてみても芳しい結果は無く、彼は途方にくれていた。

 

「一体何処に行ったんだよ…エミリア姉さん…」

 

もう会えないのではないかという、最悪の想像が頭によぎる。頭を振ってそんな想像を追い出そうとしても、脳内に湧いた“最悪”はこびりついたように離れない。

 

そんな時、一つの可能性に気づく。

 

「もしかして…エミリア姉さんは裏路地に入ったのか…?」

 

始めに除外していた可能性。危険だから入ってはダメだと再三伝えていたが故に気づかなかった。しかし何か止むに止まれぬ事情があったなら?きっと姉は動くはずだ。パック(父親がわり)も姉には甘い。

そうとなれば行動は決まっている。

 

「エミリア姉さん…!」

 

薄い胸に僅かな希望と焦燥を抱えて路地裏に走る。

否、走ろうとした瞬間。

 

体の動きが止まり、世界が闇に包まれる。

 

「(なんっだコレ…!)」

 

混乱するエリオットの前に黒いドレスを着た女性が現れる。

 

ーああ、あの子(・・・)によく似てるー

 

彼女の、真っ白な繊手が頰を撫で、聞こえないはずの声が脳内に響く。

 

ーお願いー

 

あの人(・・・)を助けてあげてー

 

ー私の、可愛い、……ー

 

最後の言葉は聞こえなかった。

 

 

____________________

 

 

 

「――どうしたよ、嬢ちゃ…わりぃ、男なんだったな。兄ちゃん。急に呆けた面して。そっちの黒髪の兄ちゃんもだ」

 

「え?」

 

「は――?」

 

厳つい顔立ちの中年にそう声をかけられ、思わず間抜けた反応が出てしまう。左側からも何処か気の抜けた声が響く。

こちらの応答に中年は皺の目立つ眉間をさらに寄せて、

 

「だーかーら、けっきょくどーすんだよ。リンガ、買うのか買わないのか」

 

「は――?」

 

「リンガだよ! 食いたいんだろ? 自分でそう言って話しかけてきといて、急に目がイッちまうんだからビビったぜ。……で、どーすんだよ」

 

筋骨隆々のスカーフェイスが、その掌にちょこんと可愛らしい赤い果実を乗せている。

突き出されてくるリンゴに酷似した果物、それと中年の顔を見比べて、

 

「あー、実は俺、不倶戴天の一文無し」

 

「……んだよ、じゃあ、ただの冷やかしじゃねーか。なら行った行った!そっちの兄ちゃんは銅貨六枚な!」

 

「え?あ、はい…お釣りください」

 

「あいよ、リンガ二個とレモム一個。それとお釣りの銅貨二枚な」

 

おざなりに手振りでその場からどかされて、素直にそそくさと移動する。

彼――ナツキ・スバルはあたりを見回しながら、

 

「え? え? ――どゆこと?」

 

 疑問と当惑に、誰へ向けたものでもない問いを吐き出すのが精いっぱいだった。

 

 

____________________

 

 

「ありがとうございます…」

 

一体どういう事か、未だ混乱覚めやらぬままに店主に代金を支払い商品とお釣りを受け取る。

さっきまで夕暮れだったはずだ。なぜまだ辺りが明るいんだ?僕はさっきまで大通りにいたハズだ。なぜ僕はここにいる?わからないことが多すぎる。一体何が起きて…

 

「お、おい!エリオット!」

 

後ろからかけられた聞き覚えのある低い声に振り向く。

 

「お前、覚えてるか!?」

 

随分と切羽詰まった様子で声をかけられる。

 

「スバル、君、だよね。さっきのは…夢…?」

 

「! 良かった、俺だけじゃなかった!」

 

「スバル君、どう言うこと!?何か分かってるなら教えて!」

 

「俺だってまだ何も分かってねえよ。ああそうだ!サテラ…お前のお姉さんに会ったぞ!」

 

「待ってスバルく…。いや、嘘偽り無く僕の質問に答えろナツキ・スバル!」

 

「お、おい?いきなりどうしたんだよ!?」

 

「煩い、口答えするんじゃない。僕の質問にだけ答えるんだ」

 

「わ、分かったよ…」

 

「ナツキ・スバル!お前は分かって姉さんをそんな風に呼んだのか!」

 

「なんの事かわかんねえよ」

 

「そんなハズがあるかぁ!」

 

端正な顔立ちを歪め、怒りに顔を赤くしてエリオットが吼える。

 

「お前はそんな外見で判断をするような人間なのか!ふざけるなよナツキ・スバル!」

 

「んなこと言われても本当に分かんねえんだよ!あの子が自分からそう名乗ったんだ!」

 

スバルからすればたまったものではない。この世界で始めて出来た友人に、彼の姉に会ったことを伝えたら、わけも分からぬまま相手が激昂したのだ。

 

「そんなハズがないだろうが!姉さんが、どれだけその名前(・・・・)に苦しんだと思ってる!」

 

「知らねえよ!俺だってわけが分かんねえんだ!なんでせっかく話が通じる相手とこんな怒鳴り合いしなきゃならねえんだ!」

 

お互いに息を切らし、怒鳴り合いが一時中断される。強く怒鳴り返したスバルに多少気圧された様子で、エリオットはスバルに問う。

 

「本当に、本当に知らないのか?」

 

「ああ、もう何が何だかわっかんねえよ…」

 

「…嘘はついてないのか。わかった、いいよ。説明してあげる」

 

そうして二人は噴水に腰掛け、会話を始めた。

 

「姉さんに会ったの?」

 

「会ったよ。エリオットの言う通り、凄い美少女だったよ」

 

「でしょ?じゃない説明だ。まず、400年前の大事件は知ってる?」

 

「悪い、分からん」

 

「本当にスバル君はどこから来たの?まあいいや、400年前、とある魔女が世界の半分を飲み込んだ。多くの生き物が死んで、このまま放っておけば世界が滅びてしまう」

 

「めちゃくちゃヤバいじゃんそれ」

 

「うん。すごーくヤバかった。その時に立ち上がったのが当時の剣聖、神龍、賢者。三人は協力して世界を滅ぼさんとした魔女を打ち倒した。」

 

「おお!」

 

「で、その世界を滅ぼそうとして三人の英雄に倒されたのが“嫉妬の魔女 サテラ”」

 

「ッ!」

 

「彼女は銀髪のハーフエルフだったとされている。そのせいで姉さんは姿を見せれば陰口を叩かれ、酷ければ石すら投げられる。自分が罪を犯したわけでもないというのに。まるで生まれてきたことが罪だとでも言うかのように」

 

エリオットの声に、暗い、殺意にも似た感情が混じる。どれほど歯痒かっただろうか。どれほど憎たらしかっただろうか。彼以外の誰にも、その感情はわからない。

 

「…どれほどの事か、分かってくれた?スバル君」

 

「…謝って済む事じゃないのは分かってる。でも、本当にごめん。知らなかったで済ませていい事じゃねえ」

 

「分かってくれたなら良いよ。気をつけてね。それで、何が起きたかだけれど」

 

「ああ、俺は…」

 

「スバル君?」

 

スバルがにわかに青ざめる。そして何か恐ろしい事でも思い出したかのようにカタカタと震え始める。カチカチという高い音の出所を探してみれば、歯の根が噛み合わないスバルだった。

 

「そうだ…俺は一度死んだ…死んで…戻ってきた…?」

 

「…ねえスバル君。辛い事を聞くようだけど、答えて。スバル君は、いつごろ“死んだ”?」

 

「俺が死んだのは夕暮れ時、盗品蔵に入った時で…」

 

「僕も夕暮れ時ごろの記憶がある。姉さんが裏路地に入ったのかもって思って裏路地に向かおうとしたら次の瞬間あそこにいた」

 

「そうだ!サテ…じゃない、お前のお姉さんが危ないんだ!」

 

「どういう事!?答えて!」

 

「俺が盗品蔵で殺された時、あの子も一緒に殺されたんだ。早く行かないと…!」

 

「そっか、夕暮れ時…。ちくしょう…パックが役に立たない時間じゃないか…」

 

「エリオット、行こう!俺はお前のお姉さんを助けたい!」

 

「ああ!やってやる!協力してくれ、スバル君!」

 

「こっちから行ける!ついて来てくれ!」

 

「頼む!」

 

二人が駆け出していった盗品蔵への道、その途中にある路地から下卑た声が響く。

 

「よお、兄ちゃん達。少し俺らと遊んでいこうや」

 

一人の少女を救わんとする二人の青年は、路地を塞ぐように立ちはだかる、三人の男によって目的を邪魔される憂き目をみせた。

 

「おいおい、呆けた面してどうしたよ」

 

「状況がわかってないんだろ。教えてやったらいいんじゃないか」

 

恫喝に対して無反応のスバルを見て、男たちは嘲笑するように唇の端を歪める。

そんな彼らの態度を、まるで滑稽な芝居でも見せられているような心境でスバルは見ていた。

 

男の数は三人。その身なりはお世辞にも整っているとはいえず、顔立ちは育ちと性格の野卑さがそのまま浮き彫りになったような典型的なチンピラ面。

 

「まぁ、弱いとこ狙いたくなる気持ちはわかるから、悪いとは言わねぇよ俺は。でも、ちょっとタイミングが悪いというか……」

 

スバルは目の前の三人の男達よりも後ろにいるさっきから無言の青年(シスコン)の方が怖い。

 

「なに言ってんだ、アイツ。頭おかしいんじゃねえのか」

 

ここは穏便に話し合いで、と解決の方法を探るスバルを男たちが嘲弄する。

その態度にさすがのスバルもカチンとくるものがあった。穏便に済ませよう、というのはあくまで状況的に急いでいるからであって、本来のスバルはかなり短気な人間だ。

それでも、事態の深刻さを思えば些細な侮蔑――そう堪える心構えでいたのだが、

 

「いいさ、兄ちゃん達。とりあえず持ち物全部置いてけ。それで勘弁してやっから」

 

「ああ、はいはい。持ち物全部ね。急いでっから、それでいいや、ホント」

 

「ふん!」

 

「うぎゃあ!?」

 

真ん中にいる平均的な背の高さの男の顔に、エリオットがぶん投げた重そうな袋が突き刺さる。

 

「僕らは急いでるんだ!お前らの小遣い稼ぎ何ぞに付き合っていられるかァ!」

 

スバルは唖然とする。この一見柔和に見える青年はここまで苛烈な面を孕んでいたのかと。

 

「選別がわりにくれてやる!僕の全財産だ。さっさとどっか行け!行こう、スバル君!」

 

「お、おう!」

 

後ろからは

 

「ラチンス〜!」

 

だとか

 

「嘘だろ、おい!聖金貨が何枚も入ってるぞ!」

 

という声が聞こえてくる。

 

 

 

「おい、良かったのかよ」

 

「何が」

 

「全財産って」

 

「良い。姉さんの方が大切だ。それに絶対買っておきたかったものはもう買ってる」

 

そう言ってエリオットは薄く笑った。




おし!
ようやくちゃんと始まりました!
エリオットはスバルと一緒に死に戻り出来ます。
さぁて、なんでなんでしょうねぇ?(すっとぼけ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。