Re.ゼロから始める姉弟生活   作:黎川暁明

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というわけでエリオットとフレデリカのデート回です。
頑張ります!


第3話 お買い物デート!

「どどどどうしましょう!」

 

日が落ちて夜空に月が輝き始めてしばらく経ったころ、メイザース辺境伯領メイザース邸の使用人の自室の一つから、若い女性の焦った声が響いていた。

 

「明日着ていく服が決まりませんわ〜〜〜!」

 

どうやら、つい先日恋心を自覚した相手とも逢い引き…デートに着ていく服が決まらないようだった。

 

「夜中に煩いわよ、フレデリカ。ラムが寝れないでしょう」

 

「どうされたのですか?フレデリカ様」

 

明日のデートに着ていく服に悩んでいるメイド…フレデリカの部屋に彼女の同僚の双子のメイド、桃色の髪で左目を隠しているメイド、ラムと水色の髪で右目を隠しているメイド、レムが二人で訪ねてきた。

 

「二人とも、ちょうどいいところに!明日の買い出しの時に着る服が決まらないのです、助けてください!」

 

「…? ああ、ラムとレムがお膳立てしてあげた逢い引きね」

 

「…? ああ、レムと姉様がフレデリカ様を応援しようと突如計画した逢い引きですね」

 

「当っていますけれど…ラム、もう少し言い方というものはありませんの?」

 

「無いわ」

 

「もう清々しいですわね」

 

あきらめたようにフレデリカがいう。

 

「それで?一体どういう風に悩んでいるのかしら?」

 

「…はい、明日の午後、エリオット様と二人でアーラム村に買い出しに行くのですが…」

 

「知ってるわ。ラムたち二人が計画したんだもの」

 

「話の腰を折らないでくださいまし。それで、どんな服を着ていけば良いのかと…」

 

「レム、レム、フレデリカが面倒なことで悩んでいるわ」

 

「姉様、姉様、フレデリカ様がいつになく悩んでおられます」

 

「お二人はエリオット様の女性の好みや服の好みをご存知ですか?」

 

「ハンッ!ラムが知るわけないでしょう」

 

「私も分かりません」

 

「そうですか…」

 

心なしか、体が小さくなったように見えるほど気落ちしていた。

 

「でも、知っていそうな人?なら知ってます!」

 

「本当ですか!教えてくだまし!」

 

「エミリア様が契約しておられる大精霊様です。なんでもあのお方はお二人の幼少の頃から父親代わりとして一緒に暮らしていたそうなので、きっと相談に乗ってくださいますよ」

 

「なるほど、行ってきますわ!」

 

「頑張ってくださいね〜」

 

「ねえレム」

 

「何でしょう姉様」

 

「この間大精霊様が「リアはともかく、エリオは男の子だし、良い歳だから必要だとは思うんだけど未だにそういった教育(・・・・・・・)が出来てなくいんだよね…どうしよう」とロズワール様にボヤいていたのを聞いたのだけれど」

 

「…先は長そうですね。フレデリカ様、頑張ってください…」

 

「…そうね、フレデリカには頑張ってほしいと思うわ」

 

二人のメイドの願いは、澄んだ星空に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

こんこん

 

「はーい!」

 

「エミリア様、フレデリカですわ。エミリア様と大精霊様に折り入ってお聞きしたいことがありますの」

 

「フレデリカが私にお願いだなんてすごーく驚いちゃった。任せて!私に答えられる事なら何でも教えてあげるから!」

 

「ん〜、リアがそう言うならボクもやぶさかではないよ」

 

「ありがとうございます、お二人とも」

 

「それで、聞きたいことってなあに?」

 

「…わ、わたくしは明日、エリオット様と二人で買い出しに行くのですが」

 

「わぁーっ!そうなの?良いわね!楽しんできて!」

 

「ふーん、いいじゃない。我が子の春…か…」

 

「それで…ですね…少しでもエリオット様にか、かわ、いいと思って、欲しいの、です、が、え、エリオット様は、どんな女性が、どんな服装が好み、なの、か、教えていただければ、と…」

 

だんだんと小さく尻すぼみになっていくフレデリカの声。声が小さくなるにつれて、反比例するにつれて顔はリンガのように赤くなっていく。

 

「あぁ、へぇ〜?」

 

灰色の子猫型精霊が心底楽しくて仕方がないとでもいうふうにによによとしながら愛息子の成長を喜ぶ。

と思えば姉は、

 

「フレデリカもエリオのことが好きなのね!」

 

と、真っ正面からぶった斬りにいった。

 

「え?あ、いえ、そんな…」

 

狼狽するフレデリカ。そりゃあそうだろう、せっかくオブラートに包んで遠回しに尋ねたというのに、この想い人の姉ときたら隠すためのベールを軒並みひっぺがしてきたのだ。

 

「分かるわ、エリオカッコいいもの!私もエリオのこと大好き!おんなじね!」

 

しかし悲しいかな、彼女は恋愛を知らぬ。自分がパックに向ける家族愛も、弟に向ける姉弟愛も、フレデリカが(エリオット)に向ける恋愛もおなじようなものだと思っている。

つまりは恋愛方面において彼女(エミリア)はアーラム村の子供たちにも劣る弱者なのだ。

 

「…エミリア様はよくわかっておられないようですわね。助かりましたけど」

 

「ボクの娘はそんなところも可愛いだろう?」

 

「否定はいたしませんわ」

 

「それで、エリオの好み…だっけ?」

 

「! はい!ご存知ですか?」

 

「んー、あの子も年ごろの男の子のはずなんだけどなぁ。大森林で長らくボクらとしか関わらない生活を送ってたせいか、そういう欲(・・・・・)があるのかすらわかんない」

 

「そんな…」

 

ショックを受けたようにフレデリカが数歩後ずさる。また振り出しに戻ってしまった。望みはない、もうどうすればいいんだ。

 

「ねぇフレデリカ。ちょっと思ったんだけどね、そんなに悩むことかしら?」

 

「どういう意味でしょうか?」

 

「たぶん、たぶんなんだけどね、エリオなら、フレデリカがどんな格好しててもきっと褒めてくれると思うの」

 

「……」

 

「だから、フレデリカの着たい服を着て一緒にお買い物に行けばいいと思うわ」

 

「…そうですわね、きっとエリオット様ならきっとそうしてくださいますわ。ありがとうございました、エミリア様、大精霊様。きっといつかこのお礼を」

 

「頑張ってね、フレデリカ!」

 

「近いうちに孫の顔がみれることを楽しみにしておくよ」

 

「〜〜〜〜ッッッ!!」

 

 

 

__________________________

 

コンコン!

「失礼します、メイザース辺境伯」

 

「なんのようかーぁな?エリオット君?」

 

時を同じくして、メイザース辺境伯ーロズワール・L・メイザースの執務室に一人の青年があらわれる。美しい銀の髪、紫水晶(アメジスト)の相貌、女性のような線の細い美貌ー。エミリアの双子の弟、エリオットである。

 

「明日、僕はフレデリカさんと二人でアーラム村まで買い出しに行きます」

 

「そのようだねぇ。昨日のフレデリカの一日休みの埋め合わせだとか」

 

「はい。そのことについてなのですが、男女が二人で出かける際には、男が先に待っておくものだと聞きました」

 

「ふーぅん?それで?」

 

「メイザース辺境伯であれば何かご存知ないかと」

 

「なーぁるほど、そういうわけかい」

 

「何かそういった作法についてご存知ですか?」

 

「わーぁたしが知っているのは舞踏会だとかの公の場での作法ぐらいだからねぇ。まあ君の思うように、いつもどおりに接してあげればいいと思うよ。普段よりもうちょっと正直になればなお良いかな」

 

「ありがとうございます。このお礼はまた後ほど、何かあれば力を尽くすことを約束します」

 

「…ふふ、この程度で“白”の全力を一回買えるなら安いものだね」

 

「“白”だなんて、買い被りも良いところですよ」

 

そういって彼は執務室を後にした。

一人だけ残った執務室に一人の男のコが響く。

 

「…よく言う。この国に私と対等にやり合える存在が何人いると思っているんだ。」

 

 

 

__________________________

 

 

 

昨日は全然眠れませんでしたわ。

エリオット様との逢い引…買い出しが楽しみで不安で…

買い出しは午後からですから午前中は普通にお仕事だったのですけれどほとんど上の空だった気がします。

ラム達には迷惑をかけてしまいましたわね。

 

約束では昼食を済ませ、少し食休みをしたらメイザース邸の正門前に。

昨日決めた服を着て、髪を整えて、お財布の確認をして、もう一度髪を整えて、正門へと向かいます。

 

「行ってまいりますわね、ラム、レム」

 

「さっさと行ってくるがいいわ、フレデリカ」

 

「行ってらっしゃいませ、フレデリカ様」

 

 

 

「お待たせしてしまいましたか?、エリオット様」

 

「今来たところだよ、フレデリカさん」

 

深い藍色の髪(・・・)を風に揺らせる、白いシャツにズボン、黒灰色のコートとアメジストのループタイが光る普段は見られない姿のエリオット様。それでも澄んだ紫の目と柔らかい微笑みはいつもと変わらなくて。普段とは違った姿に胸が高鳴る思いですわ。

 

「いつものメイド服のフレデリカさんも可愛いと思うけれど、今日は一段と綺麗だね。フレデリカさんの背が高いからかな、その分よく似合ってるよ。フレデリカさんの綺麗な金髪と白いワンピースが太陽の光に煌めいて凄く綺麗だ」

 

そう言ってまた太陽のように笑ってくれました。顔に熱がこもるのを感じます。可愛い服だと思って買ったけれど、着る勇気が出なくてしまいこんでいた白いワンピース。うふふ、頰が緩んでしまいますわ、気を強く持ちませんと。

 

…? なんでしょうか?なぜエリオット様がわたくしに左手を?

 

「聞いた話によると男女が二人で出かける時は手を繋ぐものらしいんだ。だからフレデリカさん」

 

「は、はい!」

 

ど、どこでそんな話を聞いたのでしょう。もしかしてエリオット様も恋愛小説を嗜まれるのでしょうか?

…始めて握ったエリオット様の手は、色白で細くて、でも大きくてしっかりとした、男の人の手でしたわ。

 

 

__________________________

 

「あ、」

 

「どうしたの?レム」

 

「今日は夕方ごろ雨が降るかもしれないということを伝え忘れていました」

 

「フレデリカなら自分で気づくでしょう」

 

「今日は朝から上の空のようでしたが」

 

「…マズいかもしれないわね」

 

「マズいかもしれないです」

 

__________________________

 

 

 

「おう、エリオット君じゃねぇか!元気してたか?」

 

「元気ですよ、おじさんも体には気をつかってくださいよ」

 

「あら本当、エリオット君!この前はありがとうね!」

 

「あれぐらいお安いご用ですよ」

 

「おおエリオット君、今日は随分と可愛い女の子連れとるじゃないか」

 

「でしょう?二人で買い出しに来たんですよ」

 

 

 

フレデリカです。エリオット様がアーラム村に着いてもまだ手を離してくださいません。村の方々に微笑ましいものを見るような目で見られてもうわたくしはゆだってしまいそうです。

 

 

 

「あ!エリオットにいちゃんだ!」

 

「ひさしぶり〜」

 

「フレデリカさんもいる〜」

 

「手つないでる〜」

 

「げんきだった?」

 

「フレデリカさんとどういうかんけーなの〜」

 

「みんな久しぶり。僕は元気だったよ〜」

 

一気に子供たちが駆け寄ってきてエリオット様目掛けて飛びついてきます。…あ、手を離されてしまいました。恥ずかしいと思っていたのに、離されるとどこか寂しいですわね。

 

「やっぱりエリオットにいちゃんつえ〜」

 

 

「いまなん人くらいのってる〜?」

 

「ぜーいんのってる〜」

 

「とーちゃんより力持ち〜」

 

あれだけ子供たちにまとわりつかれているのに平然としています…あの細身のどこにそんな力があるんでしょう?あれならわたくしを抱き上げられても不思議は…

 

「エリオットにいちゃんフレデリカさんとどーゆーかんけー?」

 

「気になるー」

 

「つきあってるのー?」

 

…触れないでいましたが先程からわたくしとエリオット様の関係を聞いてくる子供がいますわ。…エリオット様は、一体どのようにお答えするのでしょう。期待半分恐れ半分といったところでしょうか。

 

「僕とフレデリカさんかぁ…んー」

 

「フレデリカさんのことすきー?」

 

「ああ、そういう事なら。うん、僕はフレデリカさんのこと好きだよ」

 

「「「わー!」」」

 

「「きゃー!」」

 

彼の「好き」は親愛の意味だろうということはわかっています。気づいています。…それでも、口角は上がってしまうものですね。嬉しい、うふふ♪

 

「それじゃあまたね、みんな。フレデリカさん、行こっか?」

 

そう言って手を差し伸べてくださいます。離されてしまったときに少し寂しく思っていたことに気づかれていたのでしょうか。わたくしの行動はすでに決まっています。

 

「はい、まいりましょうか」

 

 

 

 

 

 

「ーーこれで必要なものは全部買ったかと」

 

「だね。屋敷に帰ろっか」

 

屋敷への帰路につきます。わたくしも持つと申しでたのに全部一人で持ってしまって。きっと彼からすれば特別でもなんでもない、当たり前のことに過ぎないのでしょう。

 

他愛もない話を続けながら帰路を歩いておりました。

 

「ーーそっか、フレデリカさんには弟がいるんだ。会ってみたいな」

 

「はい、まだ小さいですけれど…あら、雨?」

 

ぽつぽつと空から水滴が落ちてきました。

と思えば雨はどんどん強くなって、瞬く間にざんざん降りになってしまいました。

 

「フレデリカさん!ここから行くなら屋敷よりアーラム村の方が近い!走ろう!」

 

「分かりましたわ!」

 

エリオット様とアーラム村へ向けて駆け出します。…ダメですわ、ワンピースでは走りづらくて早く走れません。

 

「フレデリカさん、一旦止まってくれる?」

 

「は、はい!」

 

「コレ持って」

 

「分かりましたわ」

 

「失礼するね」

 

「え?きゃっ!?」

 

「ごめんね?フレデリカさん、走りにくそうだったから」

 

「あ、あわ、ち、ちか」

 

ち、近いですわ!?抱き上げられて、エリオット様のお顔がすぐ近くにあって、体も触れ合って…顔から火が出そう…

 

「荷物持ってて」

 

エリオット様がわたくしを抱き上げたまま駆け出しました。決して軽くないはずのわたくしを抱き上げたまま、先程までと変わらないどころか先程以上の速さです。

 

走りだして数分でアーラム村に着いてしまいました。ちょっとだけ寂しく思ったことは誰にも秘密です。

 

少し周りよりも大きい家の玄関に着いたところで降ろされました。たしか…ここはムラオサ様のお宅でしたっけ?

 

コンコン…

 

「こんな雨の中、誰かの?」

 

「すいません、エリオットです。帰る途中で雨に降られてしまって。少しの間雨宿りさせてもらえませんか?」

 

「おお、エリオット君か!君ならええよ、好きなだけ休んで行きなさい」

 

「ありがとうございます!おじゃまさせていただきます」

 

「フレデリカさん、上がらせて貰おっ、か…」

 

「エリオット様?」

 

エリオット様がこちらを向いてわたくしを見たと思ったらそのまま固まってしまいました。女性のような線の細いお顔も赤みを増していっているような…?

 

「きゃあ!?なんでいきなり服を…!」

 

と思ったらエリオット様がいきなりコートを脱ぎ始めました。

 

「すぐにこれ着て。内側は濡れてないから大丈夫」

 

「あの、一体なぜ…?」

 

「…その、服が」

 

「服が?」

 

「服が雨に濡れて体に貼り付いて、体の線が出てて…下の服も少し透けて見えてるから…」

 

「え?きゃあっ!?」

 

み、見られた、見られてしまいましたわ!?他の誰でもないエリオット様に!思わず両腕で体を抱えてしゃがみこんでしまいました。

 

「だから、コレ…」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

もうエリオット様の顔を見られません…

 

 

__________________________

 

 

 

「ーーこれで必要なものは全部買ったかと」

 

「だね。屋敷に帰ろっか」

 

フレデリカさんと屋敷への帰り道を歩き始めた。フレデリカさんは自分も持つって言ってくれたけど、そんなに多いわけでもないし、全部僕一人で持つことにした。

 

そのまま他愛もない話を続けながら帰ってたらー。

 

「ーーそっか、フレデリカさんには弟がいるんだ。いつか会ってみたいな」

 

「はい、まだ小さいですけれど…あら、雨?」

 

ぽつぽつと雨が降り始めた。雨足はどんどん強くなって瞬く間にざんざん降りになってしまった。

どうする…あんまり濡れたらフレデリカさんが風邪をひくかもしれない…

 

「フレデリカさん!ここから行くなら屋敷よりアーラム村の方が近い!走ろう!」

 

「分かりましたわ!」

 

フレデリカさんとアーラム村へ向けて走る。…フレデリカさん、走りにくそうだな。裾の長いワンピースだからそれもそうか。よし!

 

「フレデリカさん、一旦止まってくれる?」

 

「は、はい!」

 

「コレ持って」

 

「分かりましたわ」

 

「失礼するね」

 

「え?きゃっ!?」

 

「ごめんね?フレデリカさん、走りにくそうだったから」

 

「あ、あわ、ち、ちか」

 

よし!フレデリカさん、暖かくていい匂いがする。エミリア姉さんとはまた違った匂い。こっちの方が好きだな。

 

「荷物持っててね」

 

もう一回アーラム村まで走る!使うのは…流法だけでいいや。…フレデリカさん、やっぱり軽すぎると思う。もっと食べた方がいいと思うんだけど。っとコレ言っちゃダメなんだった、気をつけないと。

 

走りだして数分でアーラム村に着いた。なんでだろ、ちょっとだけ寂しいような感じがする。

 

雨宿り、ムラオサさんに頼んでみよう。させてくれるかな。

 

コンコン…

 

「こんな雨の中、誰かの?」

 

「すいません、エリオットです。帰る途中で雨に降られてしまって。少しの間雨宿りさせてもらえませんか?」

 

「おお、エリオット君か!君ならええよ、好きなだけ休んで行きなさい」

 

「ありがとうございます!おじゃまさせていただきます。じゃあフレデリカさん、上がらせて貰おっ、か…」

 

「エリオット様?」

 

雨の音が聞こえない。フレデリカさんの服が雨で濡れて肌に貼り付いてる。下の服も薄く透けて見えて…

なんかわからないけどダメだ!今にフレデリカさんを見てると、なんか…こう…初めて魔法を使った時みたいな、顔に熱が集まって心臓がうるさい、そんな感じがする。

 

「え、エリオット様!?なんでいきなり服を…!」

 

「すぐにこれ着て。内側は濡れてないから」

 

フレデリカさんに脱いだコートを渡す。僕の身長に合わせてあるから全身を隠せる筈だ。

 

「あの、一体なぜ…?」

 

「…その、服が」

 

「服が?」

 

「服が雨に濡れて体に貼り付いて、体の線が出てて…下の服も少し透けて見えてるから…」

 

「え?きゃあっ!?」

 

「だから、コレ…」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

なんでかわからないけど凄く気恥ずかしい。

まだ心臓がうるさい、一体この感覚はなんなんだ。

 

 

__________________________

 

 

 

「ありがとうございました。雨が止んだので屋敷に戻ります」

 

「ええよええよ。エリオット君にはうちの村の子供らがようなついとるし、また遊びにおいで」

 

「はい、また遊びに来ます」

 

 

「…じゃあフレデリカさん、行こっか」

 

「は、はい…」

 

顔を見れない。さっきのフレデリカさんの姿がチラついて仕方がない。どうすれば良いのかわからない。フレデリカさんもさっきから俯いてるし……助けてパック…助けてエミリアお姉ちゃん…

いやダメだ。パックは茶化してきそうだしエミリア姉さんは何故だかまるで頼りになる気がしない。

 

「あの、さ、雨も止んだし、来るときみたいに手、繋がない…?」

 

「は、はい!」

 

もう一度、アーラム村に行った時のように手を繋ぐ。来るときは気にしなかったのに、いまこうしてみると、自分より小さくて柔らかいフレデリカさんの手が凄く特別なものに思えてしまう。

 

「遅くなってしまいましたし、ラムたちに文句を言われてしまうかもしれませんわ」

 

「そうなったら僕も一緒に謝るよ」

 

「はい。そうなったらお願いいたしますわ」

 

そんなことを話しながら屋敷への道を歩く。

 

「着きましたわね」

 

「うん。遅くなっちゃった」

 

「エリオット様、突然の大雨という不運には見舞われましたけど、今日の買い出しは楽しかったですわ」

 

「僕も楽しかった。また機会があれば二人で」

 

「はい、ぜひ!」

 

 

__________________________

 

 

「進んだかなぁ」

 

「進んだかしら」

 

「進んでいるといいけど」

 

「進んだのでしょうか」

 

「みーんないじわるしちゃって!私にも教えてくれたっていいじゃない!」

 

そんな二人を、楽しげな三人と一匹、そして少し不機嫌な少女が屋敷の窓から眺めていた。




というわけでデート編終了です。
上手くかけてるといいんですが。本編開始前に二人には最低でも両片思いにはなってもらうつもりなので。
スバル君が出てくるのはいつの日か…。

ああ、そうそう。エリオットは外出するとき髪を染料で染めています。男とはいえ、女性と見紛うほどの美貌に銀髪のハーフエルフともなればマズいので。一応普段から伸ばした髪である程度耳は隠していますが。
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