いや、ほんと、二章はマジで難産で……
頑張りますので読んでいただけたら嬉しいです。
評価、コメントよろしくお願いします!
――遠くで、鐘が鳴っているような音が聞こえる。
激しく押し寄せ、波のように引いては戻り、引いては戻りを繰り返す鐘の音。痛みを伴うそれが耳鳴りに類するものだと、尾を引く慟哭を上げるスバルは気付かない。
酷くこめかみが痛み、鼻の奥に熱いものがこみ上げるのを感じる。だが、舌を噛み、唇を切り、血を味わうことで鋭い痛覚に意識を集中する。
胸の内を抉るような痛みを、現実感を伴わぬ喪失感を、理不尽に対して吠えたけることしかできない怒りを――全てを目先の血の味で塗り潰す。
「お客様、お客様、苦しんでいるようだけど、大丈夫ですか?」
「お客様、お客様、お腹が痛そうだけど、漏らしちゃったの?」
近く、こちらを慮る二つの声が聞こえる。
まだ短い時間ではあったが、聞き慣れた声だ。時に煩わしく、時にうっとうしく、時に安堵して、時に信を寄せた声音。
――それが今、まったく別の響きをまとってスバルの鼓膜を残酷に揺らす。
「――ああ、平気だよ」
視線を感じながら短く応じて、スバルは目を閉じたまま顔を上げる。
顔面を布団に押し付ける原因、込み上げる激情はどうにか波間に消えた。目を開けばその名残でかすかに瞳が赤いかもしれないが、閉じている分にはそれを察せられることはあるまい。
静かに呼吸を繰り返し、スバルは己の心の平静に努める。
最初の衝撃を抜けて、じわじわと真綿で絞めるような絶望感を乗り越え、今もひしひしと感じる喪失感が胸の内ですすり泣きを上げている。
それでも、動き出す切っ掛けを掴むくらいはできるはずだ。
「心配かけて、その、悪かった。なんだ、少し寝起きでボケたというか」
口を開けば舌が回る。心にもない軽口を乾いた唇で紡ぎ、スバルは「はは」と掠れる笑声を作る。――まだ、瞳は開けられない。
瞼を閉じて闇を見る間に、世界が塗り変わってしまえばいいと思う。あるいはまどろみが見せる泡沫の夢、そんなオチでも構わない。
ああ、全てがロズワールの目論見で、スバルを騙そうとしているだけなんて考えはどれだけ素敵で腹立たしくて、嬉しいことだろう。
そんな思いつきがやたらと名案に、真実の一端を突いているような気がして、スッと胸のつかえがとれたような気がする。
自分で自分の心の言い訳に救われたような気になって、スバルは小さく抜けるような吐息を漏らして、
「――ああ、そうだよな」
震える瞼を開き、一瞬ぼやけて広がる世界に――現実を押し付けられた。
ベッドの両側に立ち、寝台に手を着いてこちらを見る双子。ラムとレムの見慣れた二人は、相変わらずの無表情でスバルを見つめていた。
そこにはなんの感情も見通すことはできない。四日間の時間で、彼女たちとの間に少なからず積み重ねたはずの、なにかはどこかへ霞のように消えた。
「「お客様――?」」
戸惑いの声は二つの唇から同時に紡がれていた。
彼女たちの視線は一転、ベッドから跳ねるように飛び起きたスバルを追っている。当のスバルはまるで寒気を感じたように、急き立てられる怖気に従って彼女らから距離を取っていた。
「お客様、急に動かれてはいけません。まだ安静にしていないと」
「お客様、急に動くと危ないわ。まだゆっくり休んでいないと」
こちらに手を伸ばしてくる指、それから反射的に身をよじって逃れる。ふっと、彼女らの瞳が痛ましげに細められるが、スバルはその変化に気付いてやれるような精神状態にはなかった。
耐えがたい感覚。
こちらが見知った人間に、あちらからは知らない他人扱いされる感覚。
つい先日、同じ感覚を雑踏で、路地裏で、廃屋で味わったばかりだ。だが、そのときとは決定的に違う。状況が違う、時間が違う、経験が違う。
ほとんど互いを知らなかった彼女らとのやり直しではない。確かに信頼を結んだはずの相手との、一方的なやり直しなのだ。
知っている人間が別人になってしまうような違和感に、胸がむかつき吐き気が押し寄せてくる。
震える瞳に恐怖に似た感情を宿し、自分たちを見つめるスバルの異変に双子のメイドも気付き始めていた。
室内にはわずかに沈黙が落ち、互いに相手の出方をうかがって行動に出ることができない。
から、
「悪い――今は、無理だ」
ドアノブに組みつき、転がるように廊下に飛び出――そうとして何かにぶつかった。
顔を上げればそこに居たのは、今その瞬間ドアを開け、部屋に入ろうとしていたエリオットだった。
「エリ……オ……?」
「スバル!」
白い肌はほのかに上気し、息も微かに荒くなっている。ここまで走って来てくれたであろう事が見てとれた。
「ひぐっ…くっ……ううっ…、うわぁぁぁぁぁぁ!」
目から涙が溢れでて止まらない。こちらが見知った人間に、あちらからは知らない他人扱いされる絶望感。そこからすくいあげてくれたただ唯一“死に戻り”を共有できる親友。救いを見つけた喜びゆえか安堵ゆえか、スバルの涙は栓の壊れた蛇口の様に止まることがなかった。
背の高い彼の胸元に子供の様に縋りついて嗚咽を漏らす。
「――よしよし、大丈夫だよ、スバル。泣かないで、僕がいるよ」
いつかの母親の様に頭を撫でてくれるその手が優しくて、一層涙が止まらなくなった。
「ラムさん、レムさん、彼は僕が預かるから、他の仕事に戻ってくれて大丈夫だよ。出来ればしばらく人払いしておいて欲しいかな」
「分かりました。それでは失礼させていただきます」
「分かったわ。私とレムに感謝しなさい」
「二人ともありがとう。それじゃあよろしくね」
バタン、とドアが閉まる音と共に、部屋には二人の青年が残された。
「ひっく、悪い、エリオ。迷惑、かけた」
エリオットの服がスバルの涙でぐしょ濡れになった頃、ようやくスバルは落ち着いた。目元が腫れ、情けないやら恥ずかしいやらで顔は赤くなっていたものの、壊れた蛇口の様に止まらなかった涙はひとまずなりを潜めた。
「大丈夫だよ。…何があったか、僕にも教えてくれる?」
「…ずび、ああ。お前も一緒に考えてくれ」
二人で並んでベットに座り、会話を始める。
「まず聞かせてくれ。今日って、何月何日だ……? 今が何時だかわかるか?」
「日にちはスバルがこの屋敷に来た初めの日。時間は陽日八時……の少し前ぐらい、だね」
エリオットの言を聞き、連鎖的にかろうじて記憶に引っかかる光景が思い出され、スバルは合点がいく。
メイドの双子が揃ってスバルを起こしにきたのはあの日だけ。しかも、スバルが客室のベッドを利用する身分だったのも初日だけのことだ。
つまり――、
「なるほどな……つまり、今の俺がいるのは……ロズワールの家で二度目に目覚めたときか」
「二度目?」
「ん? ああ、1回目に起きた時は禁書庫でドリルロリに昏倒させられたかんな。んで、俺は五日後から、四日前まで戻ってきたって、そういうことか……?」
「……うん。多分そうだ。なんでかは分かんないけど、僕らは五日後から、今日この日に戻って来てる」
親友と二人で現状を見つめ直し、スバル達は今の状態をそう定義した。
何がしか不可思議な力の導きにより、再び時間を遡行したのだ。それも、スバルの望まぬ形で望まぬ時間軸へと。
「メイド姉妹がよそよそしいわけだよな。向こうは初対面と変わんねえんだからよ」
先ほど起きた時の恐怖が今一度首をもたげる。まだ記憶に新しい、喪失感や孤独感からくる不安が胸中を埋め尽くす恐怖を思い出し、ベットに座っているにも関わらず膝ががくがくと震え始める。無様なそれを抑えようと伸ばした指先も、まるで酒の切れたアル中のように震えることをやめようとしない。
「紙相撲でもしたら、いい線いくかもな、はは」
自嘲の言葉にはキレがなく、乾いた笑いは虚無感を際立たせるばかりだ。
そんなスバルの手を、白い、スバルよりも大きい手が上から包む。
ハッとして顔を上げれば、哀しそうな顔の親友が目に入った。
「……僕は元からラムさんやレムさんと繋がりがあったし、スバルの心を全部理解する事は出来ない。けど、悲しかったよね、辛かったよね、苦しかったよね。でも、僕は覚えてるよ、スバルと一緒に立ち向かえるよ。だから、安心して」
自分の手に重ねられた手と、再び背に添えられた手から伝わる温もりがスバルの心中の暗闇を溶かしていく様で、もう一度スバルは泣きたくなった。
「……ズズッ、悪いな、エリオ。何度も迷惑かけて…」
「ううん、良いんだよ、スバル。でもこういう時は、ごめんよりもありがとうのほうが嬉しいな」
「ああ、ありがとな。もう落ち着いた」
「どういたしまして。じゃあ、もう一回考えよっか」
その言葉を皮切りに、二人はもう一度思考の海に沈む。スバルらは何がしか不可思議な力の導きによって再び時間を遡行した。その現実を理解はできる、だが納得はそれとは別の話だ。
スバルは頭を抱えて、こうして戻ってきてしまった原因が何なのか考える。
『時間遡行』をスバルが行ったのは、異世界召喚初日の一日だけだ。三度の死を糧にエミリアを救い、ループから抜け出したものと判断していた。
事実、『死に戻り』と定義した時間遡行はこれまで行われず、ロズワール邸での五日間は極々平和に過ぎていたはずだ。
それがここへきて、突然の時間遡行――前触れも何もあったものではない。
「前回とは条件が違う、のか? 死んだら戻るって勝手に思ってたけど、実は約一週間で巻き戻るとか……いや、だとしたら」
こうして、この日を選んで巻き戻った理由に説明がつかない。
時間遡行の原理は不明だが、あの繰り返した時間を思えばある程度のルールは存在したはずだ。そのひとつに、復活場所の問題がある。
もしもあのループから逃れられていないのなら、スバルが目覚めるのはまたしても八百屋のスカーフェイスの前でなくてはならない。
「でも、現実には傷面の中年から見た目は天使のメイド二人だ。受け取るこっちの心境は、天国と地獄が反対だったけどな」
言いながら、スバルは己の体をぺたぺたと触って無事を確かめる。
これまでの条件に従うのならば、スバルがこうして時間を遡った理由は明確だ。即ち――死んだのである。
ただ、問題は、
「死んだとしたら、どうして死んだ? 寝る前まで全部普通だったぞ。眠ったあとも、少なくとも『死』を感じるような状況には陥ってねぇ」
眠りへの導入が効きすぎていたにしても、殺される瞬間を欠片も記憶できない『死』などあるのだろうか。
毒やガスで、それこそ眠ったまま、意識に永遠に蓋をされたという可能性。しかしそれはつまり暗殺を意味し、そうされる理由がスバルになくては成立しない。現状、それだけの価値が自分にあるとは欠片も思えない。
「となるとあるいは、クリア条件未達による強制ループ」
ゲームに見立ててしまえば、必要なフラグを立てなかったことの影響だ。が、誰が目論んだフラグかわからない上に、何がトリガーとなるタイプのフラグなのかの見当もつかない。
フラグのON・OFFがはっきりしていない作品の攻略は難しい。つい、攻略サイトを頼ってしまいがちなのはネットの悪い弊害だ。
「口コミで友達と情報交換して、ウソ情報とか掴まされながらちょっとずつ進む……それが本来の楽しみ方ってもんだろ」
「スバルが何言ってるのかは分かんないけど、条件が変わったとかは無いと思う……確定したことは言えないけどね」
「十分だよ。俺は魔法の知識はまるで無いんだから多分でも遥かに参考にならぁ」
「でも、結局のところどうして戻ったんだろう……?何かスバルが死んじゃう様なことって……?」
「あ〜〜〜もうぜんっぜんわっかんねえ!」
声を上げて後ろのベッドに倒れこむ。今の状況では圧倒的に情報が少なすぎる。いくら考えたところで今は答えを出せないだろう。
なら、
「よし、エリオ! エミリアたんのところ行こうぜ!」
「え? 大丈夫なの、スバル?」
「良いんだよ。どうせ今分かってることだけじゃあ答えは導き出せねえしな。それなら癒されに行こうぜ」
「……まあ、スバルが良いならいいか。行こっか、ラムさん達にもお礼言わなきゃね」
「だな。行こう」
ドアノブをひねり、ひんやりとした廊下に足を踏み出す。そのまま庭に出れば、風に短い前髪が揺らされ、かすかに目に痛みを感じて顔を腕で覆う。
そして風がやみ、足の裏に芝生の感覚――その視界の中に、
「ああ、やっぱ綺麗だ」
庭先でかすかに息を弾ませる、銀色の少女を見つけて心が逸った。
そして、
「――スバル! エリオも!」
こちらに気付いた少女が紫紺の瞳を見開き、慌てた様子で駆け寄ってくる。その唇から銀鈴の音となってこぼれたのは、何度呼ばれても心に新鮮な震えをもたらすたった三文字の絆だ。
自然、駆けてくる少女の方へスバルらの足も動く。
向かい合い、スバルの全身を眺めた彼女の目尻が安堵に下がる。が、すぐに気を取り直したように姿勢と目つきを正し、
「もう、心配するじゃない。目が覚めたって聞いたからお見舞いに行こうとしたのに、ラムとレムはダメだって言うし、いつも起こしに来てくれるエリオは来てくれないし……」
「ん、ゴメン。ちょっと色々あって」
「ごめんね、姉さん。二人でちょっとね」
「もう……、心配かけさせないで。あんまり心配させるんだったら私でも怒るんだからね」
心配げに身を寄せてくる美貌――エミリアの無防備な姿に、スバルは思わず手を伸ばしかけて、その弱い己の心を自制した。
ここでそれをすれば、短慮に過ぎる。エリオットとの不義理でもあるし、隣のシスコンに物理的に排除されかねない。
憂い顔のエミリアに、曖昧な微笑みで応じるしかないスバル。そんなスバルのらしくない態度に、しかしエミリアはどこか余所余所しく深入りしてこない。
当たり前のことだ。今のスバルが『らしくない』など、出会ってほんの小一時間しか一緒の時間を過ごしていない彼女に、わかるはずがない。
彼女と自分の間には、埋まらない四日間の溝があるのだ。
自分だけが知っていて、彼女の知らない四日間が、確かにあったのだ。
「なんか電波入ってるみたいな考えだな、俺」
「でん、ぱ……? なに、どういうこと?」
「そんなに気にしないで良いと思うよ。これは多分下らないことだし」
「ちょっと詩人な俺に酔ってたとこだよエミリアたん。エリオにはバレてたみたいだけどね。それにしても、なんだ、無事でよかった」
膝上のスカートに黒いニーソックス。全体的に黒を基調でまとめたアクティブなスタイルは、初日にスバルを歓喜させたものと同様。
当然、その服の下の肢体も万事無事なままあの盗品蔵を超えたはずだ。
「服の下の肢体とか、ちょっと俺の脳内でエロいな」
「助けてくれてありがとう……って言おうと思ってたのに、なんだかすごーくその目つきが嫌なんだけど」
「ス〜バ〜ル〜? 不埒なこと考えてなぁい?」
二人からじと目で睨みつけられて、スバルはどうにか自然に苦笑。
少しずつではあるものの、調子がいつものものへと戻りつつある。ギアの回転を上げ、唇を舌で湿らせて、菜月・昴を始めなくてはならない。
そも、考えようによってはラッキーな話なのだ。
今回は八百屋の前からスタートではない。トンチンカンにやられる微小な犬死フラグもなければ、エミリアにバカを言って好感度最低スタートな展開も起こらない。最初からエリオットという助けてくれる人もいる。エルザの腸フェスティバルENDなどもってのほかだ。
あの盗品蔵の戦いを乗り越え、互いに死生を共にした二人(エリオットとの関係の方が遥かに深いがそれは考えない)の間には、他者の介在できない情熱的な絆が燃え上がっているはず。
今は小さな火種でしかないそれも、ちょっとしたきっかけで一気に大火として大輪の花を咲かせることとなるだろう。
「俺、ポジティブシンキング」
そうして前向きに後ろを振り返ってみれば、これはチャンスでもある。
あの盗品蔵の絶対死線を越えなければならなかった前回と違い、今回はループの直接的原因と相対するまでの間に、危機的状況は何もない。
つまり、スバルは落ち着いて予習済みのルートを、より模範解答となるように修正しつつなぞるだけでいいのだ。
まったく同じルートを通るだけでも、あの月夜の約束は交わされる。
――ならば、より上等なルートを通れば、月夜の約束はどれほど期待度の高いものへと昇華されることだろうか。
「ふっ、今回の俺は最初っからクライマックスだぜ……!」
「なんだか盛り上がってるみたいだけど、体は平気なのよね?」
「体は大丈夫だと思うよ。……頭はどうかわかんないけど」
「失礼だな!? 体も頭も快調最高絶好調だぜ! ちょっと血が足りなくて、ごっそり精気が持ってかれてて、気力体力共に寝起きの時点でがりがり削られて、精神耐性にもバットでフルスイングされたみたいなダメージあるけど、元気だよ!」
「それって満身創痍って言わない?」
「ピンチがチャンスで野球は九回裏ツーアウトから、ってルビ振るのさ」
指を鳴らしてサムズアップ。
そのスバルの態度にエミリアは毒気が抜かれたように肩を落とし、
「とにかく、元気ならいいの。えっと、屋敷に戻る? 私はちょっと、ここに用事があるから残るんだけど」
「じゃあ僕は姉さんと一緒に居ようかな。スバルはどうするの?」
「精霊トークタイムだな? 邪魔しないから俺も一緒にいていい? パックも起こしてやって、寝起きモフモフしたいしさ」
「別にいいけど、ホントに邪魔しちゃダメよ? 遊びじゃないんだから」
「きっと大丈夫だよ。ね、スバル」
「おうよ、任せろ」
指をわきわきと動かすスバルに首を傾け、エミリアは子どもに言いつけるようにそう告げる。
そんなお姉さんぶった彼女の仕草がどうにも愛おしくて――スバルの心には決意の炎が灯る。
「んじゃま、行こう行こう。時間は有限で世界は雄大、そして俺とエミリアたんの時間はまだまだ始まったばっかりだ」
「そうね……え? 今、なんて言ったの? たんってどこからきたの?」
「僕も混ぜてよスバル。寂しいじゃん」
「んじゃ俺とエミリアたんとエリオの時間はまだまだ始まったばっかりって事で」
「よし」
「だからたんって何なの?」
異議申し立てを行うエミリアを「いいからいいから」と背中を押しながら定位置へ誘導。
呼びかけを続けるうちに、すっかり訂正する気力をなくすのはすでに知っての通り。そして、それすらも失われた四日間で築き上げる絆のひとつ。
「――取り戻すさ」
不満そうな顔で庭園の奥へ向かう背に続きながら、小さくそうこぼす。
ふと足を止めて、遠ざかる銀髪を眺め、それから空に視線を送る。
――まだ低い東の空に、太陽が憎たらしく昇るのが見える。
あと五回、それが繰り返され、そして約束のときが迎えられればいい。
月が似合う少女と交わした約束を、太陽が迎えにくるのを見届ければいい。
――時間はある、そして答えは知っている。頼りになる親友もいる。
「誰の嫌がらせか知らねぇが、全部まとめて取り返してほえ面かかせてやんよ。あんまし、キレやすい現代っ子を舐めんじゃねぇ」
空に向かって拳を握りしめ、誰にともなく宣戦布告。
それはスバルがこの世界にきて、初めて自分に『召喚』と『ループ』を課した存在への、明確な反逆の宣言だった。
二度目のループとの戦いが始まる。
ロズワール邸の一週間を乗り越えて、あの日々の続きを知るために。
あの夜の約束を、交わした約束を、守るために――。
「運命様、上等だ――!」
書いてて思ったこと言いますね。
スバルくんエリオットルート入ってません?
え、逆? エリオットがスバルくん攻略してる?