モンスターハンターストーリーズ~The Re-bloomed Lily~   作:暇を持て余す火の玉

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〜前回までのあらすじ〜
新たなオトモン、イャンクックの“フーミン”を仲間にした事をレマに報告するユリ。
そんなユリに対しレマはオトモン達を休ませる為、今日1日は修行をお休みにすると言う。
ゴマ達と共に楽しく遊ぶユリに対し、レマとケイナは抱いていた違和感について話し合うが、ユリに何の話をしていたかを聞かれて咄嗟に誤魔化すレマだったが、匂いで嘘を吐いている事をすぐに見破られてしまったり、その様子を見ていたケイナが言った「匂いは誤魔化せない」と言う言葉によって記憶の一部がフラッシュバックしたり、その後にレマが実はカナヅチである事がわかったりと、平和な1日を過ごしていた。

そんな中、孤絶の獄狼竜は護りレウスの森に向かって嘆き悲しむ様な遠吠えを放つのだった…。


第11話:激闘!孤絶の獄狼竜!

???

『ギャインッ…!』

痛々しい悲鳴と共に、鉄の臭いが鼻を突く。

臭いの元がある方へ目を向けると、大きな鉤爪が付いた触手に体を刺し貫かれ、大量の血を流して事切れた“小さなジンオウガ亜種”の姿があった。

触手を辿って見上げた先には、翼を羽ばたかせながら此方を見下ろす巨大な影が。

 

redelcielo

『グギィイヤアアアアアアオオオォォッ!!!!!』

金切音の様な耳障りに感じる甲高い咆哮を放ち、影は翼からもう一本の触手を伸ばし、ソレを自分に振り下ろして来たー

 

〜〜〜

 

ユリ

「ーっ!?…ハァ…ハァ…。」

そこで、目を覚ましたユリは息を荒げながら飛び起きた。

胸に手を当てると、激しく動く心臓の鼓動を感じ取れた。

 

ユリ

「…よかった。

起きてないみたい。」

後ろの方を見ながら、ホッとした様に呟くユリ。

その視線の先では、穏やかな寝息を立てながら眠るゴマの顔がある。

ここはゴマの厩舎の中。

ユリはゴマの翼に包まれる形で眠っていた。

目覚めた際にかなり勢いよく体を起こしたので、ゴマを驚かせていないか心配になったのだが、どうやら大丈夫だった様だ。

 

ユリ

「…今の…なんだったんだろう…?」

少し落ち着いたユリは、先程自分が見ていた夢を思い出す。

あれは、どう考えても忘れている記憶の欠片ではない。

夢の中で見たあの場所は、間違いなくこのハコロ島の何処かだ。

そして、先程の夢でユリは気になった事が二つある。

一つは、あの光景を見ていた自分自身から感じた匂いが“孤絶の獄狼竜から感じ取った匂いと同じだった”事。

もう一つは、自分達を襲っていたあのモンスターだ。

どことなくレウスに似ていた気がするが、それ以上にユリが気になったのは“モンスターの翼”。

月明かりに照らされたモンスターの翼は、“鈍色に輝く鎧の様な金属質の外殻”に包まれていたのだ。

そして…何故かユリはその外殻を()()()()()()()()()()()()

あの翼と似たモノを、何処かで見た事がある様な気がする。

いったい何処で?

 

ユリ

「…うぅ…ダメだ〜…。」

しかし、思い出せない。

思い出す途中で、まるで絵本のページが破り取られたかの様に映像が途切れるので、最初から思い出し直す。

それを何回も繰り返している内に再び眠たくなってきたユリは、再びゴマの翼に包まって眠りにつくのだった。

 

〜〜〜

 

その日の昼、レマはガラに呼び出されていた。

 

ガラ

「来たか、レマ。」

レマ

「ガラ様、お呼びでしょうか?」

ガラ

「うむ…呼び出したのは他でもない。

“孤絶の獄狼竜”の事だ。」

レマ

「!

孤絶の獄狼竜ですか…。」

ガラ

「うむ。

ここ最近、孤絶の獄狼竜の活動が活発化しているらしくてな…モナ草原で他の大型モンスターと縄張り争いをしている姿が目撃されているらしい。

小型モンスターも縄張り争いに巻き込まれているとの報告も入っている。」

レマ

「以前のイャンクックの時と同じ…いや、それ以上に厄介な事になってるんですね。」

ガラ

「ああ。

モンスター達は、村にとっても大切な恵み…今の状態をこのままにしておけば、そう遠くない内に村にも影響が出てくるだろう。

そこで、お前に孤絶の獄狼竜の撃退を頼みたいのだ。

あの獄狼竜を本来の住処に帰してやって欲しい。」

レマ

「わかりました、ガラ様。」

真剣な表情で頷くと、レマはオトモン達が待つ厩舎へと向かった。

 

ユリ

「おかえり!

レマ、ガラと何を話していたの?」

厩舎では、フーミンのお世話をしていたユリが待っていた。

フーミンは、ユリをライドできる程に大きくなっていた。

 

レマ

「孤絶の獄狼竜の撃退を頼まれたのよ。」

ユリ

「っ!

孤絶の獄狼竜…あの時のジンオウガ亜種が…。

げきたい…って事は、追い払うの?」

レマ

「そうよ。

ガラ様が、本来の住処に帰してやって欲しいって。

今晩撃退に向かうつもりよ。」

ユリ

「それなら、私も一緒に行く!」

同行する意思を示したユリに、レマは眉を顰める。

村人達からのサブクエストを受けたり、1人で村の外へ出てモンスターと戦う自主トレをしたりして着実に力を付けており、レマやケイナが同行していればプケプケなどの大型モンスターも相手に出来る位には強くなっていた。

しかし、今回の相手は大型モンスターの中でもかなり危険度が高いジンオウガ亜種の異名持ち個体。

生半可な力では、瞬く間に叩きのめされるのは火を見るより明らかだ。

 

レマ

「ユリ。

その意気込みは良いけど、今回相手にするのは今まで相手にして来たモンスターとは違うわ。

正直、私でも苦戦する程の手強いモンスターなのよ?」

ユリ

「わかってる。

でも、あれから私もゴマ達も強くなったし、レマと一緒に力を合わせればなんとかなるよ!」

レマ

「…。」

ユリ

「それにね…私、気になってる事があるの。」

レマ

「気になってる事?」

ユリ

「うん。

あの時の孤絶の獄狼竜から、怒ってる匂いと一緒に…何かを怖がっている匂いと、とても悲しい匂いがしたの…。」

レマ

「何かを怖がってる匂いと、とても悲しい匂い?」

ユリ

「うん。

私、どうしてそんな匂いがしたのかを知りたい。

だからお願い、私も連れてって!」

レマ

「!」

ユリの言葉を聞いたレマは、過去に冒険の途中で出会ったとあるライダーの事を思い出した。

そのライダーは、“モンスターが村を潰す為に行動する訳がない”と言っていた。

実際、モンスターが通常と異なる行動をするのには、必ず何かしらの理由がある。

そもそも、ジンオウガ亜種と言うモンスターは本来、“護りレウスの森”の奥地を住処にしているモンスター。

それも、ハコロ島に生息しているモンスターの中でも強者の部類に数えられる存在だ。

そんなモンスターが、本来の生息地からだいぶ離れた位置にある“南カムナ岬の古代巣”に住処を移す事自体、普通ではない事だ。

孤絶の獄狼竜にも、もしかしたら何か事情があってあそこに居るのかもしれない。

本来の住処を離れなければならない様なナニカが…。

そう思ったレマは、ユリを信じてみる事にした。

 

レマ

「…わかった、一緒に行きましょう。」

ユリ

「!

ありがとう、レマ!」

レマ

「ただし、絶対に無理をしない事。

これだけは約束してちょうだい。」

ユリ

「うん、約束する!」

レマ

「ところでユリ。

あなた、指笛って吹ける?

オトモンを呼び出したり、交代させたりするのに必要な事なんだけど…。」

ユリ

「ゆびぶえって、指を咥えてやるアレだよね?

やってみる!」

そう言って、ユリはレマや他のライダー達が指笛を吹く時の様子を思い出しながら、指笛を吹こうとする。

 

ーフスーッフスーッー

 

ユリ

「?

もう一回!」

 

ーブブゥーッ!ー

 

ユリ

「??」

しかし、いくらやっても上手く鳴らず、ユリは首を傾げる。

 

ナビルー

「あー、やっぱり吹けなかったかー…。」

レマ

「意外と難しいのよね。

私も小さかった頃は全然吹けなかったし。」

ユリ

「むぅ〜…。」

レマ

「とはいえ、このまま指笛を吹く練習してたら日が暮れそうね…。

よし、“アレ”を使ってみましょうか。」

ユリ

「?“アレ”って?」

レマ

「ちょっと待っててちょうだい。

確か、マイハウスの中にしまってた筈だから。」

そう言うと、レマはマイハウスの中に入って行った。

 

レマ

「待たせたわね。

ユリ、コレをあげるわ。」

それから少しして戻ってきたレマがユリに差し出したのは、5センチ位の長さの細長い円柱形をした小さな笛だった。

 

ユリ

「?

なにこれ?」

レマ

「“呼笛(よびぶえ)”って言うのよ。

ユリみたいに指笛を吹くのが苦手なライダーは、その笛を使ってオトモンを呼んだりするのよ。」

ユリ

「へぇ〜。」

ナビルー

「でも、これ使って大丈夫なのか?」

レマ

「心配はいらないわよ、ナビルー。

それは元々は私が使う予定だったんだけど、オトモンにライドできる頃には上手く吹けるようになって、結局使わずじまいになってたの。

一度も使っていない未使用品だから、ユリが使っても問題ないわよ。

大切に使ってね?」

ユリ

「うん!

ところで、オトモンってどうやって呼び出すの?」

レマ

「呼び出したいオトモンを思い浮かべるか、オトモンの名前を呼びながら呼笛を吹き鳴らせば呼び出せるわよ。」

ユリ

「結構簡単だね。

わかった!」

レマ

「さて、指笛問題も解決したし、準備をしましょう。

薬草とか、龍属性やられ対策にウチケシの実と万能ウチケシ薬も必要ね。

後は防具も…。」

こうして、レマとユリは“孤絶の獄狼竜”との戦いに向けて準備を始めるのだった。

 

〜〜〜

 

それから時間が経ち、日が沈んだ頃。

準備を整えたレマとユリは、南カムナ岬の古代巣の前にいた。

因みに、レマはボロスに、ユリはゴマにライドしている。

そんな二人は今、思わぬハプニングに見舞われていた。

 

ユリ

「あの子、巣にいなかったね。」

レマ

「ええ。

ちょっと想定外だったわ…。」

後頭部を軽く掻きながら言うレマ。

思わぬハプニングとは、今二人が言った通り。

“孤絶の獄狼竜”が、古代巣の中にいなかったのである。

 

ボロス

『ったく、気合い十分で乗り込んだってのに肩透かしを喰らっちまったぜ。』

ユリ

「レマ、どうする?」

レマ

「日が沈んでからそんなに時間はたっていないし、まだ近くにいる筈…。

ガラ様の話だと、“モナ草原”の方に出没してるらしいし、そっちへ行って探してみましょう。」

ユリ

「でも、モナ草原って結構広いよね?

走り回って探すの?」

レマ

「その手もアリと言えばアリだけど、それだと時間もかかるし、体力も消費しちゃうでしょう…。

こういう時はね、“コレ”を使って痕跡を追いかけるの。」

そう言って、レマは縦長の虫籠を取り出した。

虫籠の中では、蛍の様な黄緑色に光る小さな蟲が動き回っている。

 

ユリ

「?

それなに?」

レマ

「ああ、そういえばユリに見せるのは初めてだったわね。

これは“導蟲(しるべむし)”といって、痕跡を辿ってモンスターのいる場所へ導いてくれるの。

丁度良い機会だし、ユリにも一つあげるわ。」

そう言いながら、レマは導蟲が入った虫籠をユリに手渡した。

ユリが受け取ると、虫籠から飛び出した導蟲がユリの周りを飛び回る。

 

ユリ

「ありがとう、レマ!

綺麗だねー。」

レマ

「気に入った様で何よりね。

導蟲の使い方だけど、まずは“モンスターの痕跡(こんせき)”を集める必要があるわ。」

ユリ

「こんせき?」

レマ

「モンスターがいた場所には、何かしらの痕跡が残されているの。

わかりやすい物だと、食べ残しや足跡、モンスターのh…オトシモノとかね。」

ユリ

「最後なんて言おうとしたの?」

レマ

「キニシナクテイイワヨー。

まあ、とにかく!

実際に使ってみながら、孤絶の獄狼竜を探しましょう。」

モナ草原の方へ飛んでいく導蟲を見ながら言うと、レマ達はその後を追い始めるのだった。

 

〜〜〜

 

それから数分後、二人は夜のモナ草原で痕跡を集めていた。

ユリ

「そういえば、今日はレウスにライドしてないんだね。」

レマ

「レウスの力が必要な時とか、一緒に行きたいって言う時はライドしてるけどね。

他のオトモン達にもライドしてあげないと可哀想だし。」

ユリ

「そっか。

…ねえ、レマ。」

レマ

「何かしら?」

ユリ

「さっきからずっと気になっていたんだけど…アプトノスとかランポスがいないのは何で?」

ユリの言った通り、モナ草原にいる筈のアプトノスやケルビ、ランポスと言った小型モンスターの姿が忽然と消えていたのだ。

 

レマ

「恐らく、孤絶の獄狼竜から身を隠しているのよ。」

ナビルー

「オレのヒゲもピリピリしてるし、当然だよな。」

ユリ

「昼間はあんなに賑やかなのに、夜になると誰もいなくなっちゃう…。

…なんだか寂しいね。」

そう呟いた時。

レマ達の虫籠の中から導蟲が飛び出し、北の方角へと飛んで行った。

 

ユリ

「導蟲が!」

レマ

「導蟲が孤絶の獄狼竜の追跡を始めたわ!

この方角…“北カムナの岬”に向かったみたいね。

ユリ、追いかけるわよ!」

ユリ

「うん!」

ボロスにライドしながら言うレマに頷きながら、ユリはゴマにライドし、導蟲の後を追いかけた。

 

〜〜〜

 

~北カムナの岬~

 

それから少しして、北カムナの岬に近づいてきた時ー

 

ーウォオオオオオオオーーン…ッ!!ー

 

レマ達

『!!?』

静寂を引き裂く遠吠えが響いた。

 

ユリ

「レマ、あそこ!」

レマ

「…ビンゴね。」

遠吠えが聞こえてきた方を睨みながら呟くレマ。

その視線の先には、空気を瞬時に張り詰めさせる程のプレッシャーを放つ黒い狼の様な姿をしたモンスター…“孤絶の獄狼竜”が、岬の先端で月を背にする岩山を見上げながら静かに佇んでいた。

 

孤絶の獄狼竜

『…!

…グルルルルゥ…!』

レマ

「やっと見つけたわよ、孤絶の獄狼竜!」

ユリ

「…。」

(…やっぱり、何かを怖がってる様な匂いがする。

それに…とても悲しい匂いも…。)

レマ達に気付き、低い唸り声を上げながらゆっくりと距離を詰める孤絶の獄狼竜を指差すレマ。

しかし、ユリは初めて会った時と同じ匂いを孤絶の獄狼竜から感じ取り、表情が少し暗くなる。

 

ナビルー

「それじゃあ、久しぶりに“アレ”をやるか!」

その時、今までレマの頭の上に乗っていたナビルーは、地面に飛び降りて何かのポーズを取る。

 

レマ

「え゛…このタイミングで?」

ナビルー

「何事も形から、だからな!

ほら、ユリもやるぞ!」

レマ

「はぁ〜…わかったわよ。

こんな時で申し訳ないけど…ユリ、少し付き合って。」

ユリ

「?

わかった。」

ため息を吐きながらナビルーと同じポーズを取るレマに促され、ユリも真似をする。

ただし、左右が逆転しているが…。

 

レマ

「ナビルーの掛け声に合わせて、絆石を掲げて!」

ユリ

「わかった!」

ナビルー

「さあ、ライドオンの時間だぜ!

ライドーーー…オン!!」

ナビルーの掛け声と共に、レマとユリは絆石を天に掲げるポーズを取った。

 

孤絶の獄狼竜

『ガルルルル…ウォオオオオオオオーーン!!』

それを見た孤絶の獄狼竜は、天へ向けて咆哮を放つ。

それが合図となり、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

〜〜〜

 

最初に動いたのは、孤絶の獄狼竜だった。

俊敏な動きでレマとの距離を詰めると同時に、回転しながら尻尾を叩き付ける攻撃を繰り出す。

 

レマ

「危なっ!?

いきなり攻撃とはやってくれるわね!」

咄嗟に転がって攻撃を回避したレマは、起き上がりながら、大剣“クロームデスレイザー”を盾の様に構え、力を溜めながら突進する“チャージタックル”を放つ。

 

孤絶の獄狼竜

『ガルルルルルッ!』

突進を喰らった孤絶の獄狼竜はレマから跳び退いて距離を取ると、唸り声を上げながらユリへ向かって走り出した。

 

レマ

「攻撃が来るわよ!

気を付けなさい、ユリ!」

ユリ

「うん!」

飛ばされた警告に対し、ユリは頷きながら攻撃を躱しつつ、昼間にレマから教えてもらった事を思い出していた。

 

ユリ

(ジンオウガ亜種はテクニック攻撃を得意としているモンスターだけど、怒った時と赤い光を纏った時に攻撃が変化する。

今は怒ってもいないし、赤い光を纏ってもいないから…。)

「パワー攻撃が効く!

行くよ、ゴマっ!」

ゴマ

『ジャーッ!』

ユリ

「いっせーの…せっ!」

掛け声に合わせてゴマとユリは同時に飛び出し、孤絶の獄狼竜に交差する様に攻撃を仕掛けた。

 

ナビルー

「ダブルアタック、決まったな!」

ボロス

『アイツら、中々やるみたいだな。

だが、先輩として負けられないよなぁ、姉貴?』

レマ

「当然!

ボロス、一発気合い入れ頼むわよ!」

ボロス

『おうよ!

ブォオオオオオオーッ!!!!』

レマの言葉に頷いたボロスが咆哮を放つと、レマ達の体に力が漲り始める。

味方全員の力を底上げする、ボロスの伝承スキル“突撃の咆哮”だ。

 

ボロス

『今だ姉貴!』

レマ

「ありがとね!

ぶちかまさせてもらうわよっ!」

お礼をしながら、レマは猛ダッシュして距離を詰め、孤絶の獄狼竜の懐に潜り込むと、溜めていた力を解放した。

 

レマ

「キッツイの行くわよ…!

はぁあああ…ウォオリャアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

ーザグゥウッ!ー

 

孤絶の獄狼竜

『グォッ…!』

溜め込んでいた力を解き放ちながら、大剣を思い切り振り下ろして攻撃するスキル、“溜め斬り”が炸裂し、孤絶の獄狼竜は苦悶の鳴き声を上げた。

 

孤絶の獄狼竜

『ガルルル…ウォオオオオオオオーーン!!!!』

しかし、孤絶の獄狼竜もやられてばかりではなかった。

素早く体勢を立て直すと、天を仰ぎながら空気をビリビリと震わせる咆哮を放つと同時に、雰囲気が一変する。

 

ユリ

「…怒ってる匂いに変わった!」

レマ

「まあ、これだけ攻撃すればそりゃ怒るわよね。

行動パターンが変化するわよ!

気を付けなさい!」

鋭い棘が目立つハンマー“滅尽の一撃”に持ち替えながら、レマは警告を飛ばす。

 

孤絶の獄狼竜

『グォオオオーン!!』

その時、孤絶の獄狼竜は突然遠吠えをした。

すると、その周囲にユリ達が見覚えのある赤黒い光の玉が集まって来た。

 

ユリ

「大蝕龍蟲が集まって来た!?」

レマ

「“虫寄せ”で大蝕龍蟲を呼び寄せたのね…!」

顔を顰めたレマがそう呟いた時ー

 

孤絶の獄狼竜

『ガルルルッ!!』

ユリ

「っ!?」

唸り声と共に、孤絶の獄狼竜が距離を詰めると同時に噛み付く攻撃をして来た。

あまりに急だった為、ユリは少しだけ反応が遅れてしまう。

 

ユリ

「くっ…!?」

レマ

「ユリ!?」

ユリ

「大丈夫、掠っただけ!」

辛うじて直撃を避ける事は出来たが、ユリは内心で冷や汗をかいていた。

ジンオウガ亜種は、怒り状態の時はスピード攻撃をしてくる。

なので、テクニック攻撃で迎撃するのが最善だが…。

 

孤絶の獄狼竜

『ガルルルルッ!!』

ユリ

「うっ…!」

孤絶の獄狼竜の攻撃を間一髪で防ぐユリ。

頭では分かっていても、孤絶の獄狼竜の攻撃はかなり出が早く、攻撃を防ぐので精一杯だ。

 

レマ

「ユリ!

攻撃は私が引き受けるから、あなたは回避と防御を徹底して!

余裕が出来たら、すぐにオトモンを交代させなさい!

いらっしゃい、“ネキュラ”!」

そう叫びながら、レマは指笛を鳴らす。

ボロスと入れ替わって来たのは、ネルスキュラのネキュラだ。

 

ネキュラ

『ちょっなんで私!?』

レマ

「ユリがオトモンを交代させる時間を稼ぐ為に、奴らの注意を私達に集中させるためよ!」

ネキュラ

『えぇ…で、でも…なんか凄く怒ってるし…。』

レマ

「あーだこーだ言ってないで頑張りなさい!

目潰し頼むわよ!」

ネキュラ

『ひぃいいっ!わ、わかりましたーっ!?

キシャァアッ!』

孤絶の獄狼竜がのしかかり攻撃をして来たところにハンマーを振り上げて反撃しながら怒鳴るレマ。

涙目になりながらネキュラが叫んだ瞬間、背中の棘から眩い閃光が放たれる。

閃光で敵の視界を潰す、ネキュラの伝承スキル“フラッシュ”だ。

 

孤絶の獄狼竜

『グルルッ!?』

突然の閃光によって、孤絶の獄狼竜の動きが止まる。

大蝕龍蟲に至っては前が見えていないのか、攻撃の狙いが定まらなくなっている。

 

レマ

「まさかネルスキュラが閃光を放つとは思わなかったでしょう?

さらに追い討ち掛けさせてもらうわよ!

“ダブル…フル、スイングッ”!!」

突撃してきた大蝕龍蟲をかち上げながら叫ぶと、ハンマーを水平に構えて左右に大きく振り回す技、“ダブルフルスイング”を打ち込む。

ただし、大ダメージを与えはしたが、倒すまでには至らなかった。

 

レマ

「仕留めきれなかったか…でも、想定内!

追撃頼むわよ、ラギアス!」

ラギアス

『承知した!』

しかし、それはレマの想定内。

すかさず、再び指笛を鳴らしてオトモンをラギアスに交代させる。

 

ラギアス

『失せよ羽虫共!

グォオオオオッ!!!』

荒々しい雄叫びと共に、ラギアスの口から青白い電流のブレスが放たれる。

雷属性のブレスで敵を一掃する技、“プラズマブラスター”によって、集まっていた大蝕龍蟲は消し飛んだ。

 

ラギアス

『ふん。

口ほどにもないな。』

レマ

「良くやったわ、ラギアス!

ユリ!

オトモンを交代させるなら今の内よ!」

ユリ

「わかった!

来て、“フーミン”!」

レマの言葉に頷くと、ユリはその名を呼びながら呼笛を口に咥えて、思い切り吹いた。

 

ーピィーーーーッ!ー

 

フーミン

『クワーッ!』

甲高い笛の音が響くと同時に、ゴマと入れ替わる様にして、イャンクックのフーミンが駆け付けた。

 

ユリ

「行くよ、フーミン!」

フーミン

『クワッ!』

鳴き声をあげるフーミンと共に、ユリはレマと合流する。

 

ユリ

「お待たせ、レマ!」

レマ

「なんとか交代できたみたいね。」

ナビルー

「守るのは終わりだな!」

レマ

「ええ!

攻勢に出るわよ!」

ユリ

「うんっ!」

ラギアス

『先陣は我が切る。

後に続け!』

そう言うと同時に、ラギアスの体から落雷の様な放電と共に全身に電流が迸り、背電殻と角が青白く光り始める。

 

ユリ

「ラギアスがビリビリしてる!」

レマ

「“サンダーオーラ”と“ハイボルテージ”の同時発動…相変わらず器用ねぇ。」

二つの強化スキルを同時に発動させると、ラギアスは孤絶の獄狼竜に突っ込んで行く。

 

孤絶の獄狼竜

『グルルルル…ガアッ!』

まだ目が眩んで目の前が良く見えないが、足音でラギアスの接近を察知した孤絶の獄狼竜は、すかさずのしかかり攻撃で迎撃しようとする。

 

ラギアス

『甘い!』

 

ーバシンッ!ー

 

孤絶の獄狼竜

『ガゥウッ!?』

しかし、ラギアスは突撃の途中で急ブレーキを掛けてのしかかり攻撃を回避すると、尻尾を大きく振ってカウンターを叩き込んだ。

 

孤絶の獄狼竜

『グゥウ…グォオッ!』

ここで、孤絶の獄狼竜はようやく目の前がハッキリと見えるようになった。

ブンブンと頭を振って立ち直ると、次に狙いを定めたのはフーミン。

唸り声をあげながらフーミンに向かって再び走り出す。

 

ユリ

「フーミン、ダブルアクションで迎え撃とう!」

フーミン

『クワッ!』

ユリ

「合わせるよ。

いっせーのー…でっ!」

フーミン

『ククゥ…クワーッ!』

 

ーズガアンッ!ー

 

孤絶の獄狼竜

『グォオンッ!?』

フーミンとユリのダブルアクションが炸裂する。

それと同時に、ユリの絆石が温かな橙色の光を放ち始めた。

 

ユリ

「…!

絆石が光ってる…!」

レマ

「ライドオンができるようになったサインよ!

ユリ、フーミンにライドして!」

ユリ

「うん!」

笑顔で頷くと、ユリはフーミンの背に跨る。

 

ユリ

「…!」

(ゴマに乗って移動する時とは違う、フーミンと繋がってるのがハッキリわかる…!)

レマ

「ユリ!

“絆技”の事は知ってるかしら?」

ユリ

「この前フーミンを仲間にした時にケイナから聞いたよ!

ライドオンしてる時に使えるすごい技だよね?」

レマ

「基礎は教わったみたいね。

でも、ここから少し応用よ。

“ライドしてる状態で”真っ向勝負に勝つと、絆の力が強くなって、絆技の威力が更に高くなるわ!

相手の行動をよく見て、フーミンに攻撃の指示をして!」

ユリ

「やってみる!」

フーミンの背中の上で頷くと、ユリは孤絶の獄狼竜を見つめる。

 

ユリ

(まだ怒ってる匂いが強い…。

という事は、スピード攻撃をして来るはず…。

だったら…!)

「フーミン、テクニック攻撃!」

フーミン

『クワーッ!』

ユリの声に反応し、フーミンは孤絶の獄狼竜に走り出す。

それと同時に孤絶の獄狼竜も走り出し、フーミンにのしかかり攻撃を仕掛けるが、フーミンはヒラリと空中に飛び上がって攻撃を回避し、着地と同時に細長い尻尾を振り回して攻撃する。

 

孤絶の獄狼竜

『グルルル…グルッ…!?』

なんとか立ち上がり、反撃しようとする孤絶の獄狼竜。

しかし、その意思に反して体が動かせなくなっていた。

 

ラギアス

『どうやら、上手く痺れさせる事が出来た様だな。』

その様子を見たラギアスが呟く。

先程ラギアスが発動していた強化技“サンダーオーラ”は、自身の通常攻撃にマヒを付与する効果がある。

最初の真っ向勝負時に、孤絶の獄狼竜にマヒを付与する事に成功しており、それが今になって現れたというわけだ。

そんな中で、ユリの絆石が放つ橙色の光が、先程よりも更に強くなっていた。

 

ユリ

「絆石がすごく光ってる!」

レマ

「なっ!?

一発で絆の力が最大になったって言うの!?

もしかして、フーミンは“会心撃・絆”持ち…?

…いや、考えるのは後ね。

孤絶の獄狼竜が動けない今がチャンスよ、ユリ!

最大パワーの絆技を叩き込みなさい!」

ユリ

「うんっ!

初めての絆技、行くよ!」

そう言いながら、ユリは輝きを放つ絆石を天に掲げた。

 

フーミン

『クワーッ!!』

絆石の輝きに呼応して、孤絶の獄狼竜へと走り出すフーミン。

そのまま突撃する…のかと思った時、突然急ブレーキをかけて立ち止まってしまう。

 

ユリ

「…?フーミン?」

急に止まったフーミンの顔を見ると、足元に視線を向けているのでそちらを確認するユリ。

見ると、足元には数匹のクンチュウが…。

 

フーミン

『クク…クワックワックワッ!』

ユリ

「わわっ!?」

フーミン

『…。(モグモグ)』

ユリ

「…おーい?」

フーミン

『…〜♡(モグモグ)』

大好物であるクンチュウを口一杯に頬張り、ご満悦の様子のフーミン。

側から見ればホノボノとした光景だが、今は戦闘の真っ最中だ。

 

フーミン

『〜♡(モグモグ)

ッ!クワワッ!』

ユリ

「…。」

そんな時に声をかけてもクンチュウを食べるのに夢中になっていて全く反応しないどころか、おかわりのクンチュウを頬張るフーミンを見て、遂に堪忍袋の尾が切れたユリは…。

 

ユリ

「…フーミンっ!!!!(怒)」

フーミン

『クワァッ!!?』

 

ーボボォンッ!ー

 

フーミンの耳元で思い切り怒鳴った。

耳元で大声を上げられて驚いたフーミンは、その拍子に食べかけのクンチュウを炎に包まれた状態で吐き出した。

吐き出されたクンチュウは、文字通りの火炎弾となって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、孤絶の獄狼竜に着弾した。

 

孤絶の獄狼竜

『グォオオンッ!?』

苦悶の声を上げる孤絶の獄狼竜。

着弾で巻き上がった土煙で、その姿は見えなくなる。

 

ユリ

「…なんか、思ってたのと違った…。」

フーミン

『クワッ!?Σ(°◇°lll)ガーン』

もっとかっこいい絆技を想像してたのか、少し不服そうな様子のユリの言葉に、ショックを受けるフーミン。

 

レマ

(…んん?

私の知ってるイャンクックの絆技と違った様な…。)

「ま、まあ…イャンクックの絆技ってこんな感じだから…っ!!?」

その絆技を見て内心で首を傾げながらユリを宥めようとしたレマだが、背後から凄まじい威圧感を感じ、バッと後ろを振り返る。

 

孤絶の獄狼竜

『グルルルル…ウォオオオオオオンッ!!』

響く咆哮と共に吹き飛ぶ土煙の中から現れた孤絶の獄狼竜は、全身に赤い稲妻の様なエネルギーを纏った姿になっていた。

 

レマ

「“龍光纏(りゅうこうまと)状態(じょうたい)”…!

いよいよ本気になったみたいね…。」

ユリ

「私の方を見てる…真っ向勝負で迎え撃つ!」

ジンオウガ亜種は、龍光を纏った状態だと“パワー攻撃”を繰り出して来ると教わっていたユリは、孤絶の獄狼竜に突撃していく。

 

孤絶の獄狼竜

『ガルルルル…!!』

しかし、孤絶の獄狼竜は威圧的な唸り声を上げながら力を溜め始め、同時にその体に赤い稲妻が迸り始めた。

 

レマ

「っ!?あれは…まさかっ!?

待ちなさいユリ!

今近づいたらダメ!!」

ユリ

「…え?」

何をしようとしているのかを察知したレマが警告を飛ばしたが…時既に遅しだった。

 

孤絶の獄狼竜

『グゥオオオオオオーーンッ!!!!!』

天を仰ぎ雄叫びを上げた瞬間、孤絶の獄狼竜の体から赤黒い稲妻が放たれた。

体に溜め込んだ龍属性エネルギーの稲妻を解き放ち、立ち塞がる敵を殲滅する技、“落龍(らくりゅう)”だった。

至近距離にいたユリは赤黒い稲妻をモロに喰らい、衝撃で弾き飛ばされる。

 

ユリ

「うわあーっ!!?」

レマ

「ユリーっ!?」

ユリ

「ぐっ…うう…。」

幸い、致命傷は避けられたが、全身に響く強い痛みでユリは思う様に動けない。

 

孤絶の獄狼竜

『グォオオオオォッ!』

その隙を孤絶の獄狼竜は見逃さず、前脚に龍属性エネルギーを集めて叩きつける技、“龍神掌(りゅうじんしょう)”を打ち込もうと、ユリに飛び掛かる。

 

ユリ

「っ!」

思わずギュッと目をきつく閉じるユリに、赤い稲妻を纏った前脚が振り下ろされるー

 

ゴマ

『ジャァアアッ!!』

孤絶の獄狼竜

『グォオッ!?』

正にその瞬間、咆哮と共に割り込んで来た黒い影…ゴマが孤絶の獄狼竜に体当たりを仕掛けた。

体当たりをまともに喰らった孤絶の獄狼竜は、バランスを崩して転倒する。

 

ゴマ

『ギュルルルル…!!』

孤絶の獄狼竜

『グルッ…!?』

低い唸り声を上げながら孤絶の獄狼竜の前に立ち塞がるゴマ。

孤絶の獄狼竜に対する怒りが頂点に達していたゴマの迫力に、孤絶の獄狼竜は体をビクッと震わせて距離を取る。

 

ゴマ

『ジュァアッ!!』

鋭く鳴きながら、翼を大きく広げて鱗粉を大量に振り撒く。

周辺を把握する時に振り撒く量とは比較にならない程の量の鱗粉によって、辺りが不気味な黒紫色に染まり始める。

 

ユリ

「…ゴマ!?

だいじょ…う…ぶ…?」

(ゴマ…すごく怒ってる…。

周りも何だか暗くなってるし…なにかへん。)

ゴマに気付いたユリは、思わず駆け寄ろうとするも、周囲とゴマの様子が何かおかしい事に気付き、思わず動きを止める。

 

レマ

「…これって…まさか…!?」

周囲とゴマの様子の変化から、レマは何かを察知した様に呟いた時。

 

ーバサァッ!ー

 

ゴマは今まで折り畳んでいた翼を大きく広げて地面に下ろし、6本足の様な状態になる。

バサバサという翼が風にはためく音が響く中、ゴマは天を仰ぎー

 

ゴマ

『ギシャァアアアアアアアッ!!!!』

ユリ

「ーーっ!?」

ユリも聞いた事がない凄まじい咆哮を放つ。

それと同時にゴマの頭部から、不気味な赤紫色に光る2本の触角が展開された。

その姿は、正に“異形”。

第三の脚と化した翼からは、まるで禍々しい霧にも見える鱗粉がばら撒かれ続ける。

変貌を遂げたゴマの姿を見て、レマは微かに震える口調で呟いた。

 

レマ

「…“狂竜化”…!

まさか、このタイミングで発動するなんて…!」

ゴマ

『ジャァアアアアッ!!』

狂竜化したゴマは、雄叫びを上げながら孤絶の獄狼竜に襲い掛かった。




ナビルー
「次回は、ゴマが暴走!?」
レマ
(さて…どうしたものかしらね。)
ユリ
「お願い、止まってよ!
ゴマーーーーっ!!」

~キャラクター紹介~
孤絶(こぜつ)獄狼竜(ごくろうりゅう)
・南カムナ岬の古代巣に住み着いた、“獄狼竜”ジンオウガ亜種の“異名持ち”個体。
まだ若い個体らしく、通常個体よりも小柄な体格だが、通常種とは一線を画す高い戦闘力を持つ。
その威風に恐れ慄いて他のモンスター達が姿を隠して誰もいなくなった地を、一人静かに歩み進んで行く様を見たライダーから、この様な異名で呼ばれる様になった。
 夜になると北カムナの岬に赴き、護りレウスの森の奥に鎮座する岩山に向かって遠吠えをする姿が確認されている。
 一部のライダーからは、その様がまるで行く当てのない思いを吐き出すかの様だったり、嘆き悲しんでいる様にも見えたと言う。
 ユリはこのモンスターから、強い怒りと深い悲しみ、そして何かを恐れている匂いを感じたと言うが…。

~おまけ解説~
呼笛(よびぶえ)について:
・この物語のオリジナル要素。
 ユリの様に指笛を上手く吹く事が出来ないライダーが、オトモンを呼び出したりする時に使用するホイッスルタイプの小さな笛。
 三つの穴が空いた5cm程の長さの小さな円柱形をしており、穴を指で押さえてリコーダーの様に音程を変える事で、オトモンの呼び分けもできる。
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