モンスターハンターストーリーズ~The Re-bloomed Lily~ 作:暇を持て余す火の玉
“孤絶の獄狼竜”の撃退クエストをガラから受けたレマ。
それを聞いたユリも、孤絶の獄狼竜から感じた匂いの理由を知る為、撃退クエストに同行する事に。
導蟲を頼りにしながら捜索を行い、遂に孤絶の獄狼竜を発見する。
レマのアドバイスや絆技を駆使しながら激闘を繰り広げるユリ達だったが、龍光纏い状態となった孤絶の獄狼竜の“落龍”を喰らったユリが絶体絶命の危機に陥る。
しかし、それを阻止したゴマが凄まじい咆哮と共に異形の姿へと変貌し…!?
ユリ
「…ゴ…ゴマ…?」
辺りを黒い霧で包み込み、変貌を遂げたゴマ。
その姿を見て、ユリが最初に抱いたのは“驚き”、次に“ほんの少しの恐れ”だった。
黒いマントの様な翼が第三の脚となって地面に降ろされた姿は、いつもよりもかなり大きく見える。
唯一ゴマの輪郭を把握させるのは、翼膜の裏側や目元、展開された触角が放つ赤紫色の光のみ。
もはや、ゴマではない全く別の生き物かと錯覚させる程だった。
ゴマ
『ギャァアァアッ!!』
孤絶の獄狼竜
『グルルルル…グォオオッ!!』
そんなユリを他所に、ゴマは雄叫びを上げながら孤絶の獄狼竜へと猛進する。
翼脚で地面を抉りながら迫るゴマの姿を見てようやく我に帰った孤絶の獄狼竜も、“龍神掌”で迎撃しようとする。
ゴマ
『ギュルァアッ!!』
ードゴォッ!ー
孤絶の獄狼竜
『ギャインッ!?』
しかし、その攻撃はゴマに届かなかった。
伸ばされたゴマの翼脚に前脚を掴まれ、そのまま地面に叩き付けられたからだ。
叩き付けられると同時に赤黒いエネルギー球が暴発し、バランスを崩した孤絶の獄狼竜は甲高い悲鳴を上げながら転倒する。
なんとか立ちあがろうともがくが、なかなか立ち上がれない。
ゴマ
『ギュルァアアアッ!!』
ードッゴォオンッ!ー
孤絶の獄狼竜
『グォオオンッ!?』
更に追い打ちと言わんばかりに、ゴマは後ろ脚で立ち上がりながら翼脚を振り上げ、思い切り叩き下ろす。
その力は凄まじく、地面を大きく隆起させ、更に衝撃の余波がレマ達の所までしっかりと届く程だった。
レマ
「ぐっ、ぅうっ!?
ある程度離れてるここまで衝撃が届くって…なんて馬鹿力よ…!?」
ナビルー
「でも、孤絶の獄狼竜を圧倒しているぞ!
このまま押し切れるんじゃないか?」
レマ
「それだけで済めば良いんだけどね…!」
ナビルーの言った通り、狂竜化したゴマの力は孤絶の獄狼竜を大きく上回っている様に見える。
このまま押していけば勝てるかもしれないが、レマの表情は険しかった。
孤絶の獄狼竜
『ウォオオンッ!』
ゴマ
『ギュルラアッ!!』
なんとか起き上がった孤絶の獄狼竜は、襲いかかって来るゴマと取っ組み合いになる。
叩き、噛み付き、引っ掻き…激しい攻防が繰り広げられる内に、次第にゴマの攻撃が苛烈になっていく。
ユリ
(…?
なんだろう、この感じ…。
胸の奥がザワザワして…なんだか、嫌だ…。)
「ご、ゴマ…?」
胸騒ぎを感じたユリは、恐る恐るゴマに声をかける。
ゴマ
『ギャァアアアアッ!!』
ユリ
「…ゴマっ!どうしちゃったの!?」
しかし、ゴマはユリの声に反応する事なく、孤絶の獄狼竜への攻撃を続ける。
もう一度、少し声を大きくして声をかけるも、やはり反応しない。
ユリの声が全く聞こえていない様だ。
レマ
「くっ、やっぱり暴走してしまっているみたいね…!
全く、何で嫌な予感ってのは良く当たるのよ!?」
ユリ
「暴走…!?
ねぇレマ、それってどういう事!?」
レマ
「言葉通りの意味!
今のゴマは、敵とみなしたモノを手当たり次第に攻撃して暴れ続ける危険な状態よ!
恐らく、ユリでも容赦なく攻撃すると思うわ!」
ユリ
「そんな…!?」
レマ
(さて…どうしたものかしらね。)
愕然とするユリをよそ目に、レマは必死に頭を回転させる。
ゴマが暴走した原因は“狂竜化”と見て間違いない。
なら、“狂竜状態”を解除すれば暴走は止まる筈。
問題はどうやって狂竜化を止めるかだ。
結論から言うと、レマは既に狂竜化を止める手立てを考えていた。
ゴマをユリと共に育てると決めたあの時から、レマは修行の合間にゴア・マガラに関する様々な事を勉強していた。
その中で、“狂竜化”と呼ばれるゴア・マガラの形態変化と、それを解除する方法も見つけていた。
その方法とは即ち、“触角に強い衝撃を与える、もしくは破壊する事”。
そうすれば、ゴマの暴走を止める事は出来るだろう。
レマ
「…くっ…!」
しかし、レマはその方法を使う事に躊躇いを感じていた。
視覚を持たないゴア・マガラにとって、触角は周囲の状況を把握する唯一の手段であり、生命線でもある。
それを傷つけるという事は、ゴマの目を潰す事と同じ事だ。
そしてなにより、“オトモンであるゴマを攻撃する”という事実が、レマの中で迷いを生む最大の要因となっていた。
以前、レマは今のゴマと同じく暴走したレウスに武器を向けた事がある。
仕方なかったとはいえ、レウスを傷付けるのはとても苦しい思いだったのを、レマは今でも鮮明に覚えている。
あの時の苦しい思いを、今のユリにはまだ感じてほしくないし、何よりゴマはユリにとって初めてのオトモン。
ゴマを傷付けると、ユリの心も傷付くだろう。
かと言ってこのまま何もしなければ、孤絶の獄狼竜を仕留めた後、ゴマは間違いなく自分達へ襲いかかって来る。
下手をすれば、ゴマがユリを殺してしまうかもしれない。
それだけは絶対に避けなければならなかった。
ユリ
「ゴマ…。」
一方で、ユリは暴れ狂うゴマの姿を見て棒立ち状態になっていた。
孤絶の獄狼竜との応酬を続けるゴマは、体の至る所に傷が付き、ボロボロの状態になっていた。
それでも、ゴマは攻撃の手を緩める事なく暴れ続ける。
自分の声も届かず、傷付いていくゴマの姿に、ユリは胸の奥が締め付けられる様に苦しくなるのを感じた。
ユリ
(…どうすれば、ゴマを止められるんだろう?)
ユリは、目を閉じてこれまでの記憶を思い出す。
これまでの修行で教わった事の中に、ゴマの暴走を止める事に繋がる事は無いだろうか?
武器の使い方…攻撃傾向…部位破壊…。
ユリ
(あと教えてもらったのは…絆技…ライドアクション…ライドオン…。
…ライドオン?)
一番最後に思い出した事柄が、ユリの脳裏に引っ掛かった。
思い出すのは、初めてランマルにライドした時の事と、イャンクックと戦った時にケイナから教わった事。
ユリ
(なんだか、不思議な感じがする。
ランマルと一つになってる様な感じ。)
レマ
(私も、初めてライドした時に同じ事を思ったわ。)
ケイナ
(心得その五、“ライドオンでオトモンと力を合わせるべし”!
オトモンとの絆の力が強くなって、絆石が光り始めたら“ライドオン”のチャンス!
“ライド中はオトモンとライダーの力が一つになって、より強くなれるわ!”)
ユリ
「…オトモンとライダーの力が一つになる…?
…そうだ!」
何かを思いついた様に言いながら目を開くと、ユリは暴れ続けるゴマへと走り出した。
レマ
「っ!?
ユリ、何をするつもり!?」
ユリ
「ゴマにライドして、暴れるのを止める!」
レマ
「はあっ!?」
とんでもない事を言い出したユリに、レマは思わず荒い口調で驚きの声を上げる。
ケイナから教わった事の一つ、“ライド中はオトモンとライダーの力が一つになる”。
ユリは、オトモンとライダーの力が一つに出来るのなら、“オトモンとライダーの心を一つにする”事も出来るのではないかと思ったのだ。
しかし、それをする為には孤絶の獄狼竜の猛攻を潜り抜けて、暴走するゴマの背中に乗る必要がある。
戦闘中のオトモンは興奮状態になっている為、絆の力が高まっていない状態だとライドする事は出来ない。
普通なら、無理矢理ライドしようとしても振り落とされてしまうだけで済むが、今回はオトモンが暴走状態。
振り落とされれば、ユリは間違いなくゴマに襲われる。
彼女がやろうとしている事は、ハッキリ言って“自殺行為”でしかなかった。
レマ
「無茶よ、ユリ!
さっき私が言った事を忘れたの!?
今のゴマはあなたにも攻撃を仕掛けて来るわ!
危険だから、戻って来なさい!!」
ユリ
「やだっ!!」
必死に止めようとするレマの言葉を一蹴し、ユリは一人突撃して行ってしまう。
レマ
「っ!
あーもう、仕方ないわね!
後でお説教だから、覚悟しておきなさいよ!
ユリがゴマを抑えるなら、孤絶の獄狼竜の注意を引いておく必要があるわね…。
手を貸してちょうだい、ランマル!」
ランマル
『了解!』
頭を掻きむしりながらランマルを呼び出すと、レマもユリの後に続いてゴマと孤絶の獄狼竜へと突っ込んで行く。
正直に言えば、これはとんでもなくハイリスクな大博打だ。
失敗する確率はかなり高い。
しかし、ユリが思いついた方法の他に、ゴマを傷つけずに止める方法がないのもまた事実。
レマはユリに賭けるしかなかった。
レマ
「…ユリ。
あなたがゴマを止めるのに失敗したら、私が無理矢理でも止めてやるわ。」
いざという時は、自分が汚れ役を引き受ける覚悟を呟きながら、レマはハンマーの持ち手を握る力を強くする。
一方、先に突っ込んで行ったユリは、暴走を続けるゴマの近くまで来ていた。
しかし、ライドする事は出来ていない。
理由は単純明快、孤絶の獄狼竜の攻撃が邪魔になっていたからだ。
暴走するゴマの攻撃は、一発一発が必殺級の威力。
そんな攻撃を喰らわない様にするだけでも至難の業なのだが、そこに孤絶の獄狼竜の攻撃が加わると話は別だ。
何度か近付こうとしても、その度に孤絶の獄狼竜の攻撃による邪魔が入り、一進一退を繰り返していた。
ユリ
「うう〜〜…あと少しなのに…!」
中々ゴマの背中によじ登るチャンスが訪れず、ユリがもどかしさを露わにした時。
ランマル
『ギャアオッ!』
レマ
「でぇえりゃああっ!!」
ーズガバキィッ!ー
孤絶の獄狼竜
『グォオッ!?』
レマとランマルが、雄叫びと共に孤絶の獄狼竜に飛び掛かった。
ランマル
『少しの間、僕たちが相手になってやる!
かかって来い!』
レマ
「ユリ!
孤絶の獄狼竜は私達が引き付けるわ!
その間にゴマを頼むわよ!」
ユリ
「ありがとう、レマ!」
レマ
「後で言いたい事があるんだから、絶対成功させなさいよ!」
ユリ
「うん!
…うん?」
最後にレマが言った言葉が気になったユリだが、今はゴマの方が先だ。
孤絶の獄狼竜は、レマ達に気を取られてゴマから注意がそれている為、妨害を気にする必要はない。
ゴマもその後を追いかけようと孤絶の獄狼竜に意識を向け切っている。
背中によじ登るなら、今がチャンスだ。
そう思ったユリは、全速力で走ってゴマに接近するとー
ユリ
「えぇえええーいっ!!」
叫びながら思い切りジャンプし、ゴマの背中に載せられた鞍の持ち手をしっかりと掴み、その背に跨った。
ユリ
「やった!」
何とかライドする事に成功し、喜びを露わにするユリ。
しかしー
ゴマ
『ギュアアアアッ!!』
ユリ
「っ!?」
背中に乗って来たナニカを振り落とそうと、ゴマは雄叫びを上げながら暴れ始める。
ユリ
「うわぁあああっ!?」
ユリは悲鳴を上げるが、死に物狂いで鞍の持ち手を掴んで振り落とされない様にする。
ゴマ
『ギュルアアアアッ!!』
ユリ
「くぅううっ…ゴマ!
私の声、聞こえる!?」
暴れる度に全身が振り回され、腕が引きちぎれそうになりながらも、必死で声をかけ続けるユリの脳裏には、ゴマとの思い出がよぎっていた。
禍々しい漆黒の姿とは裏腹に、とても甘えん坊だと知った思い出。
初めて空を飛んで墜落したのが怖くて、プルプルと震えたり、その姿が面白くて一緒に無邪気に笑いあった思い出。
ケイナと一緒にイャンクックと戦って、初めてダブルアクションが決まって喜んでいた思い出。
甘えん坊で少しドジだけど、とても優しくて温かい、ユリにとって初めてのオトモン。
そんなゴマが、怒りで我を忘れて大暴れしている。
細かい事はわからないが、ユリにはそれが堪らなく嫌だった。
暴走するゴマの背中に張り付いた時、ユリがゴマから感じ取ったのは、“怒り”。
恐らく、孤絶の獄狼竜がユリを攻撃したのを許せなかったのだろう。
だからゴマは激怒し、暴走してしまったのかも知れないと、ユリは思った。
ユリ
「…ゴマは、とっても優しいね。
でも、そんな風に色んな物を傷付けながら暴れるのはダメだよ!
ゴマも傷付くし、私もゴマが傷付いていくのは嫌なの!」
ゴマ
『ギュァアアアアッ!!』
ユリ
「だからお願い…止まってよ!
ゴマーっ!!!」
心の底から思った言葉を、ゴマにぶつける様に叫ぶユリ。
その瞬間、ユリの絆石に文字の様な模様が浮かび上がり、橙色の光を放った。
まるで太陽の様に力強く優しい輝きと共に、ユリとゴマの絆が、固く結ばれる。
ゴマ
『ギャァッ、ギュルアァ…グルゥ…。』
絆石の輝きが収まると同時に、ゴマは動きを止めた。
未だに狂竜化したままだが、先程の様にユリを振り落とそうとせず、逆に翼脚でユリに優しく触れようとしている。
ユリ
「…ゴマ。
私の声、聞こえる?」
ゴマ
『…グル…。』
先程の問いかけを再度するユリに、ゴマは首を後ろに向けて小さく唸って返事をする。
その体は僅かに震えており、伸ばそうとした翼脚もユリに触れる直前で止まっている。
ユリ
(…ゴマから、怖がってる匂いがする。)
ゴマから感じ取った匂いから、ユリを傷つけようとした自分自身と、嫌われる事を恐れているのかも知れないと、ユリは悟る。
ユリ
「…私は大丈夫だよ、ゴマ。
怒ってないから、元気出して?」
ゴマ
『…ギュル…!』
優しく答えながら、伸ばされていた翼脚の爪をゆっくりと撫でるユリ。
目は見えていなくても、声色と撫で方で怒ってないと理解したゴマは、安心した様に唸り声を上げた。
ナビルー
「す…スゲーっ!
ゴマがおとなしくなったぞ!」
レマ
「まさか、本当に暴走を止めるなんて…!
あの子、やるわね…!」
一部始終を見ていたレマ達は、その光景に驚きを露わにする。
孤絶の獄狼竜
『ガルルルル!』
ランマル
『し、しまった!?』
だが、それが良くなかった。
ユリ達に気を取られた隙を突いて、孤絶の獄狼竜がゴマとユリの所へ向かってしまったのだ。
レマ
「っ!?
いけない、ユリ!
避けて!!」
孤絶の獄狼竜
『グォオオオオオンッ!!』
それに気付いたレマが注意を飛ばすも、時既に遅し。
前脚を振り上げた孤絶の獄狼竜が、ユリ達の背後から跳び掛かってくる。
ユリ
「…ゴマ!
そのまま前に大きくジャンプ!」
ゴマ
『ジャアッ!』
孤絶の獄狼竜
『…グルッ!?』
その時、ユリの声に反応したゴマが前方へ大きく跳んだ事で、跳びかかり攻撃を回避した。
死角の筈の位置からの攻撃を躱され、孤絶の獄狼竜は驚いた様に唸る。
ユリ
「後ろを向いて、そのまま翼でパンチ!」
ゴマ
『ギュラアッ!』
その瞬間に出来た僅かな隙をユリは見逃さず、ユリは再びゴマに声をかける。
ゴマは一声吠えながら翼脚を握り締め、振り返った勢いを乗せたパンチを孤絶の獄狼竜に叩き込んだ。
孤絶の獄狼竜
『ガルッ!?
…グォンッ!』
ユリ
「後ろにジャンプ!」
ゴマ
『ジャアッ!』
孤絶の獄狼竜
『ガルルッ!?』
ユリ
「そのままのしかかり!」
ゴマ
『ギュルアアアアッ!!』
ードゴォオオンッー
孤絶の獄狼竜
『ウォオオンッ!?』
それならばと、尻尾を叩き付ける攻撃を仕掛けるも、これも躱されて逆に両翼脚を叩き付ける攻撃でカウンターを喰らう。
孤絶の獄狼竜
『グルルッ!』
接近戦は危険だと判断したのか、孤絶の獄狼竜はユリ達から距離を取り、蝕龍蟲弾を放つ。
ユリ
「ゴマ、飛んで!」
ゴマ
『ジャァアアッ!』
再びユリがゴマに叫ぶと、今まで地面に降ろしていた翼脚で地を蹴り、空中へと舞い上がる。
蝕龍蟲弾は、先程までゴマがいた場所に着弾するが、一発も当たる事はなかった。
ユリ
「よーし…このまま、飛びかかり!」
ゴマ
『ギュラッ!
ギャァアオオッ!!』
ーブワサドゴオンッー
孤絶の獄狼竜
『ウォオオンッ!?』
空中に舞い上がったゴマは、急降下しながら突撃する。
着弾の衝撃で舞い上がった土埃でゴマ達を見失っていた孤絶の獄狼竜は、その中から飛び出して来たゴマの飛び掛かり攻撃をまともに喰らう。
レマ
「…凄い…まるで、ゴマと一体化しているみたい…。」
その様子を見ていたレマは、無意識の内にポツリと呟いた。
狂竜化したゴマを鎮めた事にも驚きだったが、今はそれ以上にユリがゴマと完璧な連携が取れている事に驚いていた。
ユリ
(…わかる…。
孤絶の獄狼竜の動き…レマ達や、周りの様子が…。
目を閉じていても、ハッキリとわかる!)
一体化している様に見えると言うレマの言葉は間違っていない。
実は、今のユリとゴマは、絆石を通じて感覚が共有されている状態になっている。
ゴア・マガラは、鱗粉を通して周囲の状況を把握する生態を持つモンスター。
見方を変えれば、
そして、その感知能力は鱗粉がばら撒かれる程高くなり、最大まで高まった状態になったのが“狂竜状態”だ。
つまり、ゴマと感覚を共有しているユリは、ゴマが感知しているモノを全て把握できると言う事。
今のユリとゴマは、文字通り“一心同体”となっていた。
そうこうしている内に、右手首に付けていた絆石が、フーミンとの絆技を発動した時と同じ、強い輝きを放ち始める。
ユリ
「…!
絆石の光が!」
レマ
「っ!
絆の力が最大まで高まったサインよ!
ユリ!
最大火力の絆技をぶちかましなさい!」
ユリ
「わかった!
…ゴマ。
初めての絆技、行くよ!」
ゴマ
『ギュラッ!』
頷きながら、輝きを放つ絆石を構えると、ユリはゴマに声をかけると、ゴマも一声吠えて答える。
それを確認したユリは、光り輝く絆石を天に掲げた。
ゴマ
『ゴルォオアアアッ!!!』
絆石の輝きに呼応して、ゴマは恐ろしさ感じる様な低い声音の咆哮と共に、更に大量の鱗粉を放つ。
光を蝕み飲み込む黒い鱗粉によって、辺りは月明かりすら閉ざされた真なる暗闇に満たされる。
暗闇を唯一照らすのは、ゴマの触角が放つ赤紫色の光のみ。
ユリ
「行くよ、ゴマっ!!」
ゴマ
『ギュルアアアアッ!!』
ユリの声に応えて、雄叫びを放ちながらゴマは疾駆すると、翼脚を使って跳躍し、孤絶の獄狼竜の頭上へと舞い上がる。
赤紫色の光に気付き、頭上を見上げた孤絶の獄狼竜が目にしたのは、禍々しい黒紫色のエネルギーを纏った翼脚を振り上げるゴマの姿だった。
ユリ
「いっけぇえええーっ!!」
ゴマ
『ギュァアアアアーッ!!』
ユリの声とゴマの咆哮が重なり合うと同時に、一気に急降下しながら翼脚を孤絶の獄狼竜に振り下ろす。
狂竜の力を纏わせた翼脚を叩き付け、敵を葬り去るゴマの絆技。
その名もー
ユリ
「“
ゴマ
『ギュルアアアアアアーッ!!!!』
咆哮と共に、ゴマは翼脚を孤絶の獄狼竜に叩き付けようとする。
孤絶の獄狼竜
『グォオオオオンッ!』
ユリ
(…あ…。)
その刹那、ユリは自分に向けられた必殺の一撃に対する悪あがきか、雄叫びを上げながら“龍神掌”で迎撃しようとする孤絶の獄狼竜と目が合った。
ーグギィイヤアアアアアアオオオォォッ!!!!!ー
ユリ
「っ!?」
その瞬間、ノイズまみれの映像がユリの脳裏をよぎった。
背後から響くあの甲高い咆哮。
先も見えない暗闇に包まれた森の中を必死に走る自分。
そんな自分から感じる、強い恐怖心、怒りと悲しみが入り混じった匂い。
突然流れ込んで来た知らない記憶に、ユリが驚きで目を見開いた瞬間ー
ーズァアドォオオオンッ!ー
黒紫の大爆発が起こった。
孤絶の獄狼竜
『…ガォンッ…!』
爆発で吹っ飛ばされた孤絶の獄狼竜は、地面に墜落して苦悶の声を上げる。
ユリ
「…ぐふっ!?」
ゴマ
『ジャアッ!?』
ユリ
「だ…大丈夫だよ、ゴマ…。」
レマ
「全っ然!
大丈夫じゃないわよ!」
それから少し遅れて、衝撃で吹っ飛ばされていたユリとゴマも地面に落ちてくる。
未だに狂竜化したままのゴマは、翼を広げて一瞬だけ浮遊してから着地したが、ユリは地面に顔面ダイブする形で落ちて来た。
自分を心配する様な鳴き声を上げるゴマを心配かけない様に答えるユリだが、怒ったレマがランマルと共に駆け寄って来る。
ユリ
「レマ!」
レマ
「全く、無茶な事するわねあなたは!
無理はしないって約束したのに!
さっきも言ったけど、後でお説教だから覚悟しておきなさいよ!」
ランマル
『さっきの絆技であいつも弱ってる!
あと一押しだよ、レマ!』
レマ
「わかってるわよ!
ユリ、後は私とランマルに任せて、あなたはここで休んでいなさい!」
そう言って、レマはランマルと共に孤絶の獄狼竜の所へと向かった。
ユリ
(…さっきの…朝見た夢と同じ…?)
孤絶の獄狼竜と目が合った時にユリの脳裏をよぎった、あの映像。
映像の中で聞こえてきた、今朝見た夢と同じ耳障りな咆哮。
しかし、先程のアレはどちらかと言えば、“別の所から頭の中に流れ込んできた感覚”だった。
そう、まるで孤絶の獄狼竜の記憶が流れ込んだ様な…。
ユリ
「…もしかして…?」
森の中、傷つけられた仲間、鎧の翼を持つバケモノ、何かを恐れると共に深く悲しむ匂い、そして、怒りのままに暴れていたゴマ…。
それらが繋がり、何かを悟ったユリが孤絶の獄狼竜の方を見ると、レマがランマルの絆技を発動しようとしていた所だった。
レマ
「行くわよ、ランマル!」
ランマル
『これでとどめだ!
グォオーーッ!!』
ケイナの時と同じく、雄叫びを上げて孤絶の獄狼竜の頭上へと全力で跳躍し、鋭い爪が生えた後ろ足を構えて連続キックを放つ。
ユリ
「待って、レマーーっ!!」
ーまさにその瞬間、必死な表情をしたユリが、孤絶の獄狼竜を庇う様にレマ達の前で両手を大きく広げて立ち塞がった。
ナビルー
「次回、孤絶の獄狼竜の過去が明らかに…?」
ユリ
「もう、一人で泣かなくても良いよ。
これからは、私たちが一緒にいてあげるから…。」
孤絶の獄狼竜
『…グル…!』
…更新がものすごく遅くなって申し訳ありませんでした…。
就職してから物語を書いたり編集する時間が中々取れず…。
今後も超不定期更新になるのは確実と思われますが、できる限り物語は進めていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします…。