「標的が、巣から出たか」
「と言っても、出た先も厄介な事には変わりありませんがね」
「巣の中よりは、やりようがあるだけマシよ」
「余所者が動いているという情報も入っている。余り手を子招いている時間はない」
「あっちの方はどうなの?」
「失敗失敗。後何回か実行したら、廃品かなぁ」
「まぁ、当たれば儲け物でしかありませんでしたから、どうでも良いですね」
「元奥さんに対して酷いねぇ」
「君が提案してきた事じゃないか」
「おや、そうでしたか?」
「やはり、目標は変更無しだ。恐らく、この三年が最後となるだろう」
「取り敢えず、直近のチャンスは職場体験だろうね」
「体育祭で、当該戦力の見極めをしつつ、各自慎重に準備を進めよ」
「「「はっ!!」」」
▼▼▼
「シッ!!」
「クゥッ!!」
壊理の鋭い蹴りを、腕でガードし受け止める女子、島乃真幌。別に喧嘩をしてる訳じゃなく、ヒーロー基礎学の戦闘訓練で二人が戦ってるだけだ。互いをヴィランと置いて、相手を戦闘不能にするか、捕獲テープを巻けば勝ちというルールで。
「凄いね、あの子」
「ああ、そうだね」
洸汰の素直な感想に、俺も頷く。
自惚れじゃないが、同年代と比べて俺達は頭一つ抜けてるとは思ってる。実際、訓練では俺達でトップを独占している。まぁこれは、もし何かあった時に壊理を守れる様にと、廻さんを中心に、マグ姐達が扱きに扱きまくってくれたお陰なんだがな。
そんな中、島乃真幌だけが、一歩及ばずとも食らいついてきている。特に、被身子さんには及ばないまでも、気配隠しの技術は目を見張る物がある。幻影を出しての撹乱も上手い。
大抵は、島乃真幌を見失ってやられてしまうだろう。俺達だって、被身子さんとの訓練経験が無ければ、大分危うかった筈だ。
「そこっ!!」
「っ!!」
「そこまで」
幻影に隠れて、壊理に背後から飛び掛かった島乃真幌を、壊理は冷静にいなして取り押さえ、確保テープを巻いた所で、心操先生から終了の合図が出た。
島乃真幌の上から退いて、荒い息を吐きながら衣服を整える壊理。額に浮く汗や火照った頬に、「ウッ!!」となってる男子数名。内一人は、確か洸汰の相手だな。
「イデッ!!」
「洸汰、その顔は壊理に告白してOK貰ってからにしろ馬鹿」
その男子を、アレな目で睨んでる親友の脇腹を、闇を伸ばして軽くつねってやる。
「それよりも、アイツ、どう思う?」
「どう思うって?」
「引き込む女子の候補に、だよ」
「···悪くはないんじゃない?まぁ、もう少し様子見が必要だとは思うけど」
「それは当然だろ」
「···何か、楽しそうだね、光輝」
「そうか?」
「うん、獲物見つけたミルコみたい」
「···んな事ないだろ」
「ただいま···どうしたの?二人とも凄い顔してるよ?」
「あ、お疲れ様、壊理ちゃん」
戻ってきた壊理に、タオルを渡す洸汰。壊理も普通に受け取って、肩と肩が触れ合う位の近さで、洸汰の隣に腰を下ろした。
「それで、何のお話してたの?」
「ん、別に。島乃って奴、お前といい勝負してたから、見所あるなって話してただけだ」
「···本当?」
「う、うん、本当だよ、壊理ちゃん」
「直接やりあってみて、お前はどう思った?」
「我流の癖があって動きにまだ無駄が多いかな。咄嗟の判断とか、作戦が防がれた時の対応に遅れが見られるし、負けん気が強そうなのもあって、余裕がなくなると攻め方がワンパターンになるって欠点もあるね」
「総評は?」
「伸び代しかない超有望株。うかうかしてると、あっという間に追い抜かれちゃうと思う。私も鍛え直さないと、協力してね、洸汰君」
「うん、任せてよ」
「俺は仲間外れか?」
「え?だって光輝君、島乃さんの所行くんでしょ?個性で相手の目を遮って、気配隠して奇襲なんて、光輝君の十八番だから、鍛えてあげるんだとばっか思ってたけど。性格も、光輝君の好きなタイプだし」
「···あっちが拒否んなかったら、だけどな」
やろうと思ってた事を言い当てられて、何となくバツが悪く、頭掻きながら顔を反らす。
「次、照元と玉城」
「あ、はい」
「頑張ってね、光輝君」
「やり過ぎないように、光輝」
「分かってるよ」
▼▼▼
「ただいま」
「おかえり!姉ちゃん!!」
「きゃっ。もう巡、危ないからしないでって言ってるよね」
「そうだっけ?それより、今日学校でどんな事やったの?!」
「はいはい、後でね。お姉ちゃん、先にシャワー浴びてくるから」
帰宅した私を出迎えてくれたのは、満面の笑みで、弾丸の如く飛び付いてきた弟、筒美巡だった。昔から、お姉ちゃんと慕ってくれる可愛い弟なのだけど、流石に、小学生の弾丸タックルはしんどくなってきた。
「そういえば、じいじは?」
「まだ帰ってきてないよ。寄る所があるから、母さんと一緒に帰ってくるってさ」
「そっか、今日の晩御飯何がいい?」
「肉!!」
「何肉がある?」
「牛豚ミンチ!!」
「じゃあ、ハンバーグ一択ね」
付け合わせはポテサラかなぁと考えながら、軽くシャワーを浴びて汗を流す。
「あ、下忘れちゃってる。まぁいっか」
下着を着けて、上着を着た所でズボンを持ってき忘れている事に気付いたけど、家には弟しか居ないし来客の予定も無いから、別に着てなくても問題ないよね。
「巡、付け合わせはポテサラでいいかな?」
お風呂場から出て、リビングでソファに座ってテレビを見ている巡に、後ろから抱きつく様にもたれ掛かり問い掛ける。
「うん、ポテサラで良いよ」
「···えっ?」
巡の声は、意図しない方向から聞こえた。その方向に顔を向けると、ちゃんと弟の姿があった。顔を戻し、自身がもたれ掛かっている人物を確認する。
「お、お邪魔してます」
「こっ!!!なっ!!!!きゃあっ!!!!」ズテンッ
「ブッ!!!!」
普通に洸汰君だった。余りの驚愕からか、スリッパがズルッと滑って前に倒れる。そのまま、ソファとテーブルの間に頭から落ちた。
「いたた···」
「······」
顔を真っ赤にして、手で鼻を抑えている洸汰君と目があった。洸汰君の目がツーッと動く。目で追う。肌色と桃色が目に入る。···ママと一緒に、最近美容脱毛行ってて良かった。
「そんなじっくり見られると、恥ずかしい」
「っ!!!!!すみませんでしたーーー!!!!!」
あ、出ていっちゃった。どんな用で家に来てたんだろう。
自分、どうやって小説書いてたか忘れてるわ。
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