「壊理ちゃん事件簿アカデミア」   作:あならなあ

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第五話「壊理誘拐」

 

 

 

 

 それは、夜明け前から始まった。

 世界各国に向けて、数多くのヴィラン組織から、日本へのテロ行為が宣言された。領空侵犯及び領海侵犯のアラートがけたたましく鳴り響き、警戒担当のヒーロー等からの連絡が、回線をパンクさせる勢いで届く。

 直ぐ様政府は、緊急臨時対策本部を設立し、警察·自衛隊·ヒーローの共同による防衛及び鎮圧作戦を開始。各国も、素早い動きで援軍を派遣し、なおかつ、テロ行為を宣言した自国のヴィラン組織壊滅に動いた。

 民間人や非戦闘員は、指定された避難場所に避難。避難場所の中には、高い防衛機能を有するヒーロー科高校も含まれ、雄英高校も例に漏れず、ヴィラン鎮圧に向かったヒーロー教員の代わりに、ヒーロー科に在籍する生徒を主戦力とする防衛体制の下、避難民を受け入れていた。

 そんな中、一人の生徒が行方をくらませた。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

『化物!!返しなさい!!あの人を返せ化物!!!アンタなんか!!産むんじゃなかった!!!!』

 

 怒りと怯えの混じった鬼の形相で、髪を振り乱し叫ぶ、自分に似た女性。ああ、この夢を見るのは久しぶり。私が、パパとママの子になってから、滅多に見なくなってたのに。

 私の本当のお母さん。私、お母さんの顔、あの顔しか知らないんだよね。

 

 

「んん······」

「目が覚めたかな?筒美壊理殿」

 

 後方係に配属されたクラスの人達と一緒に、避難してきた人達の誘導や物資の運搬をしていた筈なのに、気が付けば、周囲をコンクリートの壁に囲まれた、窓一つ無い無機質な部屋で、椅子に縛り付けられていた。

 目の前には、じいじと同年代位の老人が、ザ·悪役って感じの不敵な笑みを浮かべて、何とも立派な椅子に座っている。

 

「手荒な招待になってしまって申し訳ない。ただ、こうでもしないと、君はここには来て貰えなかっただろうから、我慢してもらおう」

「そう。出来れば、ベッドの上に寝かせて欲しかった。お陰で、夢見が悪かったよ」

「そっちは、まだ準備が整ってなくてな、もう少し待っていて貰おう」

「で、私に何の用?」

「君の力で、治して貰いたい人が居るのだよ」

「お断り。良い病院をオススメしてあげる」

「残念ながら、病院ではどうにもならんのだよ」

 

 老人が、何かのリモコンのスイッチを押した。すると、右側の壁がズズズッと真ん中から左右に開いた。真っ暗な空間にライトが灯り、でっかい酸素カプセルみたいな機械が安置されていた。

 

「あの中には、私の娘が入っているのだよ」

 

 老人は立ち上がり、カプセルの方へ歩きながら語り始めた。

 

「遅くに出来た末の娘でね。優しく、気立ての良い可愛い娘だ。いずれ、良き所に嫁ぎ、子を育み、幸せに生きていく筈だった。しかし、そんな娘に、ある時理不尽が舞い降りた。病だ。それも、かのリカバリガールでさえ匙を投げ出した不治の病」

「···それは、残念でしたね」

「だが、一つの光明もまた舞い降りてきた。あらゆる手を尽くして、娘を救う方法を探していた私に、ある男が言ったのだよ。"僕なら、君の娘さんを助けられる"、とね」

「詐欺師っぽいね」

「私も最初は疑った。だが、あのお方はその方法を示し、それが可能である力を明かして下さった。故に、私は、私達は協力を惜しまなかった。娘を治す為に必要と言われた事は全てやった。そして、遂にその準備が整った。だが、あのお方は現れなかった。あの男に破れ、かのお方に協力していた他の者達も次々と狩られていった」

「···何で、貴方は無事だったの?」

「幸いな事に、我々は不正な行為を一つもやっていなかったのでね。あのお方に利用されていた、という扱いで許されたのだよ。そして、娘を救う方法を探しに探した。そして、君の存在を見つけた」

「···」

「頼む!どうか娘を救ってくれ!!」

 

 そう言って、恥も外聞もなく土下座をする老人。何ともお涙頂戴な話だけど、私の心は凪いだまま。だって、

 

「それ、嘘だよね」

「···」

「どんなに大仰に語った所で、貴方の目は、家族を助けたいなんて一つも想ってないんだもの」

「···全く、素直に絆されていればいいものを」

「どうやら、失敗の様ですね」

「ま、上手く行けばラッキー程度だったんだから、別に良いじゃん」

「キヒヒ、こちらとしては、失敗してくれて良かったまでありますなぁ」

 

 本性を現し、醜悪な面を隠す事もせずに立ち上がると同時に、奥にある扉からゾロゾロ、同じ様な醜悪な面をした男性達が入ってきた。

 

「さぁて、壊理ちゃん。今の話が嘘なら、この中にはいったい、誰が入っているでしょうか?」

「···さぁ?」

「ンッフッフッフッ、君は個性婚って知ってるかな?良い個性と良い個性の持ち主同士を番わせて、より良い個性を持った子を作る。まるで家畜の様な所業だ、政府が禁止するのも当然たよねぇ。ああ、なんてつまらない事をするんだろうか」

 

 役作りにしても過剰過ぎないかと思う位のハイテンションで、白衣を纏った研究者っぽい人が大袈裟にのたまう。

 

「本来のモノは産んでくれなかったけど、彼女のお陰で、狙った個性を狙った配分で継がせるという方法が九割方確立出来た。君を拐えたのも、狙った強度のワープ個性持ちを産んでくれたからなんだ」

 

 私に、中にいる人物が見えるようにカプセルが動く。

 

「流石は、君という特異点を産んだだけはあったよ」

「······おかあ、さん」

 

 そこに居たのは、チューブに繋がれ、生命維持装置で無理矢理生かされている、実の母親だった。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

『こちらベンタブラック。こっちの座標はマーク出来ているか?』

《ええ、出来ているわ。場所も確定済み。今、透視組で入り口を探っているから、もう暫く待機でお願い》

『了解。ただし、護衛対象に危機があれば、直ぐ様解除を頼む』

《ええ、任せて》

『ケヒヒッ、奴らに本当の闇を教えてやる時が楽しみだ』

 

 

「···まだかな」

「合図が無い、大人しく待ってろ」

「でもさ!!」

「ちょっと!!狭いんだから動かないでよ!!」

「あ、ごめん···」

「ここ来れば、少しは広く空間使えるぜ?」

「ハァ!?バ、バカじゃないの?!?誰がアンタの足の間に座るって言うのよ!!!」

「おいおい、あれだけ肌を重ねたってのに、はずかしがるのか?」

「えっ?!?」

「誤解を招く言い方してんじゃないわよ!!!」

「貴様ら、もう少し気を張れ」

 

 

 

 




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