「結局さ、アレからどうなったの?」
あの事件から大体一ヶ月。
一週間ずらして行われた雄英体育祭で、何とか決勝トーナメントまでは行けたけど、一回戦でコイツと当たって普通に一回戦負けの成績を残した、私こと島乃真幌は今、その一回戦でボコボコにしてきて、「俺、優勝したら告白するんだ」と盛大にフラグを立てた出水に勝って優勝をかっさらったコイツ、照元光輝と一緒に、I·アイランドで開催されているエキスポに来ていた。優勝賞品で照元が手にした、エキスポ招待ペアチケットを使って。
あ、デ、デートじゃないからね。コイツとつるんでたのは、ヴィランの目を欺く為で、今回のは協力したお礼ってだけだから。
「首謀者及び関係者は全員逮捕、トップの奴らはタルタロス行きが濃厚らしい。まぁ、娑婆に出れた所で、世界各国のヴィラン組織を唆して壊滅の憂き目に合わせた恨みがドッサリだからな」
「自業自得よね。壊理のお母さんは?」
「亡くなったよ」
「はっ!?!うそっ!!?だって···」
「···壊理の母親は、もうこの世には存在しない。いや、元々存在しなかった」
「···何よそれ」
「超法規的措置って奴だ。経歴を抹消し、そういう個性で記憶を改竄。全くの別人として、どこかで普通に暮らしてる。もう、壊理の存在に振り回されない人生を歩んでるって事さ」
「······そう」
「お前が気に病む事じゃない、皆納得の上だ。しょうがない事なんだよ」
「うっさい!!分かってるわよ!!」
「怒鳴るな怒鳴るな。ほら、折角連れてきてやったんだ、済んだ事に感傷的になってないで、ちゃんと楽しもうぜ、ま·ほ·ろ」
「っ~///フリはもう終わったんでしょうが!!気安く呼び捨てにすんな馬鹿!!!」
「あ、おい待てよ。迷子になっても知らねぇぞ」
「ならないわよ!!!」
▼▼▼
「·········」ゴゴゴゴゴ
「Orz」
俺こと出水洸汰は、冷や汗ダラダラ全身ガクブル状態になりながら、多大なプレッシャーを放つ筒美廻さんを前に、全力土下座をしています。
因みに、壊理ちゃんと火伊那さんは、廻さんが武力行使をしないよう、苦笑しながら手を繋いだり腕を組んだりして抑えてくれている。おい巡君、壊理ちゃん達を連れていこうとするんじゃない。
「貴様、自分が何をやったのか理解しているか?」
「え、えと、その···」
「ハッキリ喋れや、あぁん」
「ヒィッ!!す、すみませんすみませんすみません!!!」
地面に頭を打ち付ける勢いで、必死に謝り倒す俺。
事の起こりは数分前。壊理ちゃん自身の検査や、壊理ちゃんの実母に関するアレやコレや、残党の襲撃警戒等もあり、一家で身を隠していた壊理ちゃん。
諸々全て終わって、今日久しぶりに会う事が出来た。で、まぁテンションが上がって、壊理ちゃん駆け寄ろうとしたんだけど、後ちょっとという所で、物の見事に躓いちゃって、壊理ちゃんを巻き込んで倒れてしまったのです。
想像ついた?うん、そうなんだ。壊理ちゃんを押し倒しちゃった上に、俺の掌サイズジャストフィットな柔らかい壊理ちゃんの胸に、ガッツリと掴むというラッキースケベを、壊理ちゃんのご家族の前で披露してしまったのである。
「パパ、私は気にしてないから。洸汰君も、事故だったんだから、仕方ないよ」
「ほら、あなた。壊理もこう言っているんだし、落ち着いて」
「姉ちゃんも母ちゃんも甘すぎる!!あんなタイミング良く躓くなんてあり得ない!!絶対狙ってやったんだって!!なぁ、父ちゃん!!!」
「ああ、確かになぁ、巡。俺の目にもそう見えたぞ」
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみません」
「もう···ほら、社長がサインしないといけない書類が溜まっているんだ、さっさと行くぞ。巡、お前ももうすぐ迎えが来る、準備をしに行きなさい。壊理、洸汰君、お痛は許さない、いいわね」
「サ、サーイエッサー!!」
火伊那さんの視線に股間をヒュッとさせながら、火伊那さんに引き摺られていく廻さんと巡君を、苦笑する壊理ちゃんと見送る。玄関の扉が閉まる音を聞いて、痺れ始めた足を崩しながら擦る。そうしていると、壊理ちゃんが俺の側にしゃがんだ。
「改めて、久しぶりだね、洸汰君」
「うん、久しぶり、壊理ちゃん。その···全部終わった?」
「うん、終わった。取り敢えず、事を起こす様な人はほぼほぼ捕まえられたって。海外の方も、自分達を利用して覇権を握ろうとした者達のデマとか、自分達を潰す為にヒーロー側が仕掛けた罠って噂で上書き出来たから、もう一安心だって」
「そっか···それで、お母さんの方は?」
「···そっちも、終わった。お母さんを、私を産んでくれた年齢まで戻して、記憶を消して、公安が用意した両親役の人達と、私とは何も関わりの無い人生をやり直してるって。もう、私の事で、お母さんが不幸な目に合う事はないよ」
「···壊理ちゃん」
俺はそっと、壊理ちゃんを胸に抱き締める。
「···これで、良かったんだよね」
「···分からない。でも、もうその道を歩んで行くしかない。その先で、もしかしたら、分かるんじゃない?」
「そう、だね。前を向いて、行かないとね」
「そうだよ」
「隣、居てくれる?」
「居る、ずっと。置いてかれたら走って追い付くし、遅れたら待っててあげる」
「手は引いてくれないんだ」
「うん、手は引かない。道は、自分で歩くべきだと思うから」
「···ありがと、洸汰君」
「うん、壊理ちゃん」
俺の胸から顔を上げた、壊理ちゃんの潤んだ瞳と目が合う。見つめ合ったのは数秒だったのか、もしくは数分だったかもしれない。どちらが合図したとかではなく、自然と、俺と壊理ちゃんの距離は縮まっていく。
吐息が、俺の唇を湿らす位まで近付き、目を閉じた。そして、
「フンッ!!」
「ウゴッ!!」
額に衝撃が走り、痛みと共に星が舞った。
「ッ~~~!!な、なにを??!」
「体育祭で優勝出来なかった罰。私、待ち望んでたんだよ?パパに邪魔される事なく、洸汰君と思う存分イチャイチャ出来るって、楽しみだったんだよ?なのに洸汰君、光輝君に負けちゃうんだもん。だから、おあずけ」
「そんな~~」
「来年は、頑張ってね」
CHU♥️っと、痛む額にリップ音が響き、俺は次こそ、完膚なきまでの勝利を掴むと、心に誓うのであった。
取り敢えず、心残りだった壊理ちゃんの因縁は、一応の決着がつきました。
やろうと思えば、幾らでも暗く曇らせる事が出来る壊理ちゃん周り。でもこれラブコメなんでね。明るくて何が悪い。
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