TSしてる主人公からの目線が怖いです…… 作:加賀美 未来
諸君は「異能」というものに憧れたことはないだろうか。相手の心を読んだり、電気を操ったりと普通の人間では扱うことの出来ない特別な力というものを。
パワーのある異能で無双を、弱い異能に知恵を使い解釈を広げるなどなど。様々な想像をしていたと思う。
俺も前世で中学、高校の頃はよく暇つぶしで考えたことだ。小説やゲームで現代異能モノを好んで読んでいたのもあるだろうけど。
だからこそ、俺が今いる世界「アビリティ・ロボティ」に転生したと分かった時はテンションが上がった。
「アビリティ・ロボティ」とは一言で言えば現代異能学園恋愛ゲームだ。ある日突然異能の力に目覚めた少年少女たちが、異能の力を磨くため、学園に通うというストーリー。
だけども学園では表向きは異能力の育成を謳っているが裏では異能を封じ込めるように教育されているのだ。しかし異能の力で人々を救い、少しずつ学園を変えていく。そのついでにヒロインとイチャイチャもする。
そう「アビリティ・ロボティ」は異能力者が現代の影でこっそりと戦い世界の命運を賭ける、というものではなく目覚めた異能とどう向き合い、社会に活かすかといった異能社会の黎明期を描いた作品なのだ。
しかし大事なところは外さずしっかりと盛り上がる部分もある。異能を自由に使おうとするレジスタンスがいたり、続編では異能が浸透した世界で色々事件を解決したりとあるが今は割愛する。
そして俺は今、そのゲームの舞台である才超学園の前に立っている。その理由は一つ。俺は異能力に目覚めてこの学園に招待されたからだ。
中学の頃、異能力に覚醒し、地道に超能力の力を磨いてきた俺の実力を才超学園に響かせてやるぜ!
「
…………どうやら俺には異能力の才能がなかったようだった。
才超学園は巨大な学園都市である。中高大一貫であり、およそ東京ドーム五十個以上の敷地を持つ。その広大な土地には様々な施設があり、全寮制であるため寮はもちろんコンビニや病院、ゲームセンターなど下手な都市より様々な施設がある。都市のようになっている理由としては異能力者を一箇所に集め、封じ込めることが目的だからである。
政府は中学、高校、大学で学んでいる間に能力について調べ、能力を消し去る手段を見つけようとしているのである。まあ主人公を含めた様々な人たちの働きでその目的は消えるのだが。
異能力覚醒事件からおよそ3年というハイスピードでこの都市を作り上げたことから、政府の本気が伺える。
異能に目覚めたものはこの学園に招待され、半強制的に入学させられる。そのことに対する反発はあったが、色々闇深い事情があり異能力に目覚めた殆どの学生がこの学園に入学した。異能に目覚めるのはおよそ5000人に一人。名目上は将来のための異能力育成機関として、そして多くの学徒を迎え入れるためにこの都市が作られたのだ。
今日は才超学園が始まっての初めての授業。といっても各生徒の異能力を把握するため、グラウンドに集められて自分の持っている異能力を見せるだけだった。
異能力とは特殊な力である。瞬間移動ができたり、火を操ったりすることができる。そして異能力は1人につき1つしか持てない。スタン⚪︎みたいなものである。ビジョンはないからラッシュはできないけど。
そして異能力にはFからSまでのランクがある。政府が定めた異能力の厄介度と考えてくれればいい。すさまじい出力の能力を持っていても対処が簡単なら低いランクとなる。
俺の異能「硬化」はEランクであった。最弱ではないけど弱い部類である。まあ原因ははっきりしている。
この能力の発動条件は体を1秒間動かさないこと。その後、動かない間はこの身体に傷がつくことはない。
自分でも分かっていた。中学1年の時、この異能力に目覚めてこの異能力について調べ上げた。そして絶望した。この能力はどうしようもないと。傷がつかないことを活かして誰かの盾になるとしても1秒間体を止めなければ能力が発動しないため咄嗟に守ることすら不可能。
いくら異能力を使って鍛えても、時間が短くなることはなかった。俺の異能力仲間は俺の能力を地蔵と呼んでいた。まさしくその通りだと思う。
いてもいなくても困らないけど、傷が付かない硬度は興味深いからというEランクである。せっかくなら最低ランクのFがよかった……。ほら最弱からの逆転劇とか燃えるじゃん。まぁ逆転できる能力とかじゃないけど。
またEクラスが嫌な理由はもう1つある。クラスはランクごとに別れる。人数が多いためD,Cクラスは複数あるが、Eでは1クラスしかない。だからこそ確実に出会う。
「アビリティ・ロボティ」の主人公
さっきも言ったがこの世界の日本にはテロリストがいる。昔ならテンションを上げて撃退してやると息巻いたが現実を知った今はそんな気も起きず、好きだった世界の傍観者、できればサボテンになりたいと思うようになっていた。
それを考えるのならば今の能力は最適じゃないかな。傷つかないから邪魔にもならない。
半分自虐的なことを考えつつ、帰路につく。慣れない道にスマホのアプリに頼りながら家に帰り眠る。
さっきはEクラスが嫌だと言ったが本当は少し嬉しかった。好きだった世界を、主人公の活躍を間近で見れるのだから。
憂鬱ながらも高揚した気持ちが抑えきれなかったため、眠れたのは2時を過ぎたころだった。
次の日、眠い瞼を擦りつつ高等部1年のEクラスに入っていく。すでに多くの生徒がおり、思い思いに話している。黒板の前に席順が書かれた紙が貼られており、それを目にする。
「うわ、マジかよ」
思わず声に出てしまった。俺の席は一番後ろの窓際から2番目に遠いところ。割とあたりだろう。隣にある才念丹霞の名前がなければ。
ま、まぁあんまし仲良くしなければ問題はないだろう。俺は地蔵、見るだけで十分なのだ。変に関わって知っているルートから外れると困る。
そんなことを考えているとチャイムがなる。それと同時に教師と思われる大人の女性がドアを開けて教室の中に入っていく。クラスの人間は急いで席に戻っていく。
「あーー、君たちの担任になった
気だるげな教師の言葉に周りの生徒がえ〜とブーイングが起こる。
「仕方ないだろ。自由に使わせるとここはともかく他のクラスは大惨事になりうるんだから。大人の監視のもと使いなさい」
周りの生徒はしぶしぶといった様子で受け入れる。異能力の使用制限はこの学園に入る際説明をされているからだ。
「じゃあ出席ついでに自己紹介でもやるか、まずは〜〜」
前の席の生徒が自己紹介をしていく。名前や趣味のほかに自分の能力を説明していく。Eランクのクラスらしく聞いても驚くような能力は全くなかったが。
「それじゃ次は〜才念って居ないじゃないか。初日から遅刻とか舐めてるな。そんじゃ飛ばして次」
そういえばと才念の座る席には誰もいない。もう15年以上も前なので細かいイベントは覚えていないが、初日で遅刻するようなイベントはなかった気が……。
考えていると突然教室の扉が開く。
「ごめんなさい、遅れてしまいました」
「ん、才念か。ちょうどいい。今お前の自己紹介の時間だ。遅刻したことは見逃してやるから今話せ」
「はい、わかりました」
教師から才念と呼ばれた少女は黒板の前に立ち、つらつらと自己紹介を始める。
比較的小さい身体に青色の長い髪を揺らし、まるで人形のように表情を動かさずに淡々と言葉を連ねる彼女に目を引いた。
彼女に一目惚れをしたとかそんなのではない。確かに彼女の見た目は可憐で今まで見た女性の中で5本の指に入るが、断じて違う。
「アビリティ・ロボティ」の主人公、才念丹霞は男のはずだ。だがしかし、今才念丹霞と名乗る者は制服のスカートを履き、大きいとは言えないけれど確かにある胸と高いハスキーな声が彼、いや彼女を女性だと物語っていた。
「才念丹霞。能力はサイコキネシス。よろしくお願いします」
自己紹介を終えた彼女がこちらに近づき目があう。
表情を変えず無機質に自己紹介を終えた彼女がわずかに笑った気がした。
(前回投稿したのが2年前なので実質)初投稿です。
5話までは完成しているのでそこまでは毎日投稿。それ以降は気ままに投稿していくと思います。
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