TSしてる主人公からの目線が怖いです…… 作:加賀美 未来
二日間の休日で、それぞれ別の女の子と遊び体に疲労が溜まっているのを感じた。特に桔花とのアスレをしたせいで体を動かすことすら億劫になっていた。されども体は休眠を求めておらず、全く眠くない。
逆に体は闘争を求めていた。そのため俺はモニターの前に座りゲームを起動させる。起動したゲームは今流行しているバトロワ形式のFPS。休日はこのゲームのランク上げをしようと思っていたが、遊びに誘われていたため断念していた。
溜まりに溜まったこの欲求をぶつけるため、戦闘狂と漁夫が入り乱れるランクマッチに入ろうとすると、パーティー申請の招待が来た。誰からか確認すると『ハックランド』、昔馴染みのユーザーネームが記されていた。
承認ボタンを押し、ハックランドのルームに入る。
「要〜、どうしてこの休日ずっとオフラインだったんすか〜。おかげさまで一人寂しくランク上げをする羽目になったんすけど!」
入るなり突然大きな声がヘッドフォン越しから聞こえてくる。
「同級生と遊んでたんだよ。入学して初めての休日だから誘われるくらいあるだろ」
「はー!?こっちそんなイベント出来なかったんすけど!?は〜〜!要はずっる!」
「それはまぁ、ドンマイ」
こいつの境遇を思い出し、同情をする。
「それで、女子っすか」
「違うぞ」
即答で返す。こいつの性格上絶対にする質問だと思っていたため答えは用意していた。
「あ、嘘っすね!?その応答速度絶対答え用意してたっすよね!?それするってことは嘘っすよね!?」
バレた。いつもと変わらないように答えていたはずなのだが。これ以上違うと嘘を重ねても面倒なので正直に白状することにした。
「まあ、遊んだ中には女子もいたな」
嘘ではないが真実でもない範囲で答える。二人グループで遊び、一人が女子だっただけだ。女の子二人っきりで遊んだ、しかも二日間でそれぞれ別の人と、なんてバレたら絶対面倒だしうるさいのでそこは隠しておく。
「こっちが一人でこもってゲームしていてそっちは女子となんてズルっすよね!?」
「うるせえ、お前彼女いるだろ。妬む権利なんてねえ」
「こっちに来てから会えなくて寂しいんすよ!」
うわ、こいつ地味に最低なセリフ言ったぞ。つまるところこいつが言っていることは
「なるほど。だから彼女の代わりが欲しいと」
「そうっすね」
「これ録音してるから、後で送っとくわ」
「わー!ごめんっす!冗談っすよ!ね?ね?分かるっすよね?俺が彼女一筋ってことは」
「あいつが信じるかどうかは別の話だしな〜」
実際は録音なんてしていないが、こいつの反応が面白いのでついからかってしまう。
「ま、まあ、送っても大丈夫っすよ!
「冗談だから安心しろ。ほら、もう夜遅いんだしランク上げやるぞ。
「よ、良かった……セーフ」
安堵した声色が聞こえてくる。確かに恭花は浮気を疑うと面倒くさいのは理解している。それにこいつは今、人との関わりを持ちたくて仕方ないのだろう。
いつもよりも口数が多い明音の声を聞きながらこちらも適当に相槌を返していく。
だが原作に登場していると言ってもキャラデザや声もなく設定だけ存在しているキャラである。ある意味では重要な役回りをしているが、物語的にはそこまで重要ではない。そのため本名を知ってた後も大丈夫と考え、そのまま仲良く今でもこのように軽口を叩きながら一緒にゲームをしていた。
「やば、あ、ちょ、角待ちーー!」
「あははは!どうだ見たっすか!角待ちなんてやるんだからキャラコン身につかないんすよ!」
「ぎゃーー!漁夫ーー!」
「はぁはぁ、なんとか逃げ切れたっすね。サンキューっす!」
いちいち反応がオーバーリアクション気味で見ていてとても面白い。そして犬のように懐いてくれている後輩を離すことができるだろうか。いや出来ないだろう。俺も当時は原作崩壊ワンチャンするんじゃね?と心配したが彼と一緒に遊ぶうちにそんなものは消えていた。
前線に出ている明音を尻目に俺は鼻歌混じりでスナイパーライフルを担いで撤退の援護を行なっていたり、周囲の警戒を行っていた。
明音は敵を見つけると愚直に突っ込み、4割で敵チームを壊滅させ、1割でそのまま返り討ちにあい、残り5割は漁夫されてそのまま死ぬ。そんなプレイングをしているので対面での勝負ではそこそこ信頼しているのだが、バトロワゲームという形式では相性が悪く、ランクポイントを下げる。
前一緒にやった時はランクⅣだったはずだが、今はランクⅢに降格をしていたのでこの二日間で溶かしに溶かしまくったのだろう。
だが、周りを俯瞰できる味方がいればかなり化ける。指示に従ってくれるので、危なそうな場面を教えたり、撤退判断を行えば良き斥候となる。
そのため明音と一緒にこのゲームをやる時は、バレずらい位置から迷彩柄の服を纏いスナイパーに徹している。それが色々試して一番上手くいく形あった。
だがそれでも常に全勝するというわけでもない。相手が上手ければ射線を切ることは当然意識してやってくるため援護が十分に出来ずにそのまま返り討ちされることや、スナイパーの位置がバレて突っ込まれて死ぬということも多々ある。
一戦目、二戦目はそれで負けてしまったがキルポイントは稼げてプラス収支なので問題なし。そして時間的に最後かなと決めた試合にて
「いえーい!ちゃんぽーん!」
「ふう、GG」
最後の部隊を倒し、your championの文字が画面にでかでかと表示された。
「ふう〜〜、ようやくちゃんぽん取れたっす〜。大満足〜」
「おめおめ、最後の動きナイス」
「要もあの判断ナイスっす〜」
お互いに讃え合い、この勝利の味を噛み締める。やはり勝利の美酒というのは何度味わっても格別なものだ。
「んじゃそろそろ落ちるか」
「あ、待って欲しいっす。ちょっとまだ話したいことがあるっす」
「えー、疲れて眠いんだけど」
「すぐ終わるっすよ」
「ならすぐ話せー」
今にもシャットダウンしそうな頭を頑張って働かせ、明音の話を聞く。
「いつこっちに遊びにこれそうっすか?学校生活楽しそうだしそっち優先にしてという前提で」
「んー、一応申請はしたけどいつになるかは微妙。近くて今月末になるかな」
「りょーっす。んじゃ楽しみに待ってるっすね!あ、女子には優しくしないとダメっすよー!」
「余計なお世話乙です」
そのままゲームを落としてボイスも切る。
切ったことを確認してからメモフォルダを開く。
画面にずらっと予定表が映し出される。予定表には原作で起こるイベントを大雑把に書かれていた。ゲームで詳しい日程は描写されていなかったため日付単位で書くことは出来なかった。
だが、それでもいくつかのイベントは描写などから確定と言える日付まで特定は出来る。
そして4月末には大きく太文字で強調するように1つのイベントが書かれていた。
4月末、原作通りに動くのならばアビリティ・ロボティの物語が大きく動き出す時である。原作には関わらないと入学当初は決めていたのだが、そうと言っていられなくなった。
今必要なのはどのようなイレギュラーが起きようとも対処できる仲間である。原作通りのハッピーエンドに進むためにまずは最初の一歩を進めなければならない。
Sランク能力者、彩音明音をテロリストの襲撃から守る。これが最初に行うべき大きなタスクだ。
そのためにできうるべき準備をしなければならない。
そう考えつつも、昼に体を動かし、夜に頭を動かし続けた疲れでうとうとと頭を揺らしていた。
……時間はまだ2週間あるか、と右下にあるカレンダーで確認し今の頭では準備や作戦を考えることは出来ないと判断し、そのままベッドに眠った。
ようやく物語が動きそう