TSしてる主人公からの目線が怖いです……   作:加賀美 未来

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包丁持った女の子が玄関前にいるのは怖い

 

 

「要は私のこと憶えてない?」

 

 突然の問いに硬直する。彼女の言葉を分析するならば俺は過去に彼女と会ったことがあるのだという。だが俺にはそんな記憶は全くないのである。

 

 いやあるのか……?正直なことを言うと転生して幼稚園や小学生時代は普通の世界に転生したと思い込んでいたので適当に過ごしており細かい事は覚えてないのだ。

 

 いや、うん仕方ないじゃん。精神年齢当時20超えてる中、小学生のあのハイテンションで過ごすことは不可能だったんだから。

 

 その時に出会っていたら正直思い出せる気はしない。だが丹霞の目をみるととても怖いのだ。なんていうんだろうか、目にハイライトがないというか……。

 

「……ごめん、憶えてない。どこかで会った事あるのかな」

 

 恐怖に打ち勝ち、正直に話すことにした。ここで憶えていると嘘をついても彼女の瞳から欺ける気がしなかったからというのもあるが、一番は嘘がバレて彼女の悲しい姿をみるのが嫌だったからだ。

 

 きっと大切な思い出なのだろう。というか反応的にもし彼女が「アビリティ・ロボティ」の主人公で女性に変わっているだけならば、主人公の虐めを俺が救ったかもしれない。

 

 さすがに確証はないし、虐めを救ったのなら流石の自分でも憶えている気がする……。だが、ここまで彼女に好意を持たれているとこの考察が一番しっくりくる。

 

 あれ、もしかしてもう俺原作ブレイクしてる……?

 

「そう、なんだ……ごめんね。変なこと言って」

「いや、憶えてない俺が悪いからそんな顔しないでくれ。いつか必ず思い出すから」

「なら、明日からも一緒に登下校しよう。一緒にいたら思い出すかもだから」

「……いいぞ!」

 

 今の返答をするのに少しだけ躊躇った。なんというかこれに応じると逃げられなくなるような気がしたから。

 

「ありがとう」

 

 だが、彼女が今見せてくれた笑顔を見られたから後悔はしていない。満面の笑みというわけではないが彼女の微笑んだ顔はとても美しいものだった。

 

 

 

 それからは普通に帰宅をし、それぞれの部屋に戻って行った。スマホを確認し連絡が来ていたので返信を行い、明日の身支度を行い眠った。

 

 次の日、すやすやと眠っているとピンポーンとチャイムの音が鳴り響き、目を覚ます。時間を確認すると時刻は6:00と表示されていた。

 

「誰だ、こんな朝から……」

 

 眠い目を擦りながらモニターにて来訪者の姿を確認する。その姿を見て眠かった脳は一瞬にして目が醒める。

 

 そこにはエプロン姿の才念丹霞が片手に大きなエコバックを、そしてもう片方にはカバーに入れられている包丁が携えられていた。

 

「ど、どうしたの?こんな朝早くに」

「昨日一緒に登下校しようって約束したから。早く会いたくて」

「ならその手に持っているのは……」

「カップラーメンと携帯食しかないでしょ?それじゃあ不摂生だから」

 

 ナンデシッテルノ。

 

「そ、そっかー。気持ちは嬉しいけどそこまでお世話になるのは気が引けるかな。心配してくれてありがとうね。それとどうしてそれを知っているのか聞いていい……?」

「カップラーメンとかはここに来てから買い足してたでしょ?スーパーでそれしか買ってないところを見て」

 

 ……ごまかしたな。嘘ではないが隠したいことがある目だ。秘め事は、能力か?サイコキネシスは実質ソナーの役割も果たせる。それを使えば部屋の状況も細かく分かるだろう。

 

 問題があるとしたら原作だったら効果範囲は2mなことである。部屋の構造を考えるとその範囲ではキッチンや居間は分からないはず。だがそこは原作と違い効果範囲が広くなったかもしれないし、他の方法で知ったのかもしれない。

 

「ドア開けて欲しいな。荷物重くて」

「え、あ、ごめんね。今開けるから」

「うん……ありがとう……」

 

 腕を見てみるとプルプルと震えていた。急いで玄関に赴きドアを開ける。家に招いていいのかだとかはあまり考えないようにした。

 

 部屋に入った丹霞はそのままキッチンへと入って行った。手伝おうかと聞いたら待っててと言われたので大人しく部屋に待っている。

 

 しばらく待っていると料理が運ばれてきた。白米、卵焼き、お味噌汁にオカラの胡麻和えが食卓に並べられた。

 

「「いただきます」」

 

 二人で手を合わせ、朝食を食べる。食べてみると、とても美味しく次から次へと箸が進んでいく。

 

「どうかな、美味しい?」

「すっごく美味しい。毎日食べたいくらい」

「ほ、本当?うん、なら毎日作るよ」

「え、あ、はい」

 

 しまった。思わず本音が出て家にあげる口実を作ってしまった。……まぁいいか。これからのために主人公と仲良くするのは損じゃないし。

 

「ただ流石に任せっきりも良くないよね。そうだ、料理教えて欲しいな。そうしたら自分でも作れるようになるし」

「嫌です」

 

 きっぱりと断られた。ええ、なんで。教えてもらう口実で仲良くなろうと思ってたのに。

 

「そ、そっか。でも施しばかり貰ってるのも気が引けるし、食費とか手間費を出すってことでどうかな」

「別に要らないのに。でも要がそうした方がいいならそうして」

「ありがとう。費用とか細かいところはまた別の機会に話そうか」

「うん」

 

 そうしてなぜか丹霞が毎朝ここに来るということが決まった。

 

 ご飯を食べ終え、お互いに準備をするために部屋に戻ってから再度合流して学校に向かった。

 

 

 

 二人で教室に入るとクラスメイトの男子数人がこちらに寄ってきた。

 

「よぉ、面、貸してもらおうじゃねーかよぉ」

 

 頭上に!?マークを浮かべてそうな形相で詰め寄ってくる。

 

「ど、どうしたのー?顔が怖いよー、ちょっと一旦冷静になろー?」

 

 あまりの形相に一歩後ろに下がろうとするが壁にぶつかり囲まれる。

 

「どうしたもこうしたもねぇよなぁ!分かってんだろー?えーー!?」

「しらばっくれるんじゃねーぞ、あぁ!?」

証拠(ぶつ)はあがってるんだぞ!」

 

 な、何かしたかな……。助けを求めようと丹霞の方を見てみるとすでに居なくなっていた。どこに行ったのか探してみると女子に囲まれてきゃーきゃーと盛り上がっていた。

 

「……あー、才念さんのこと?」

「そうに決まってるだろうがこの野郎!」

「おまえ、初日で才念様と一緒に登下校とかどうやってやったんだこの野郎!」

 

 これはあれか。醜い嫉妬というやつだな。というか才念様って。確かに丹霞はクラスの中で一番可愛いって言ってもいいけど。

 

「才念さんとはそんな関係じゃないよ。たまたま同じ寮だったから一緒に登下校してただけだし」

「まさか、お前……能力を使って洗脳したな!?」

「違うわ!俺の能力説明しただろ、ただの硬化だって」

「偽ってるかもしれないだろうが!」

「そんなことしたら一発で補導行きだろうが!」

 

「大丈夫よ!」

 

 どうでもいいことで言い争っていると一人の女性が声を上げる。あの子は確か、残花 雫(ざんか しずく)。原作にも出ているサブキャラクターで情報屋を名乗っている子だ。攻略はできない。

 

「私が調べた結果、能力を使った痕跡は見つからかった!さぁ、丹霞ちゃん、彼の無実を証明してあげて」

「えっと……私と要の関係は、その、特別なやつです」

 

 何を言ってるのかな才念さん!?顔を赤くして俯きながらそんなこといっても火に油を注ぐだけだよ!?

 

「クソが!幸せになれよ!」

「ふ、あの才念様そんな顔されちゃあ、応援するしかないな。グッドラック!」

 

 ……詰め寄られてきた男子たちに肩ポンされながら応援され去っていく光景に呆然とするしかなかった。

 

 しばらくすると裏目先生が入ってきた。

 

「全員いるなー。今日から通常授業が始まる。居眠りはバレないようにしろよー。あまりに数が多いと他の教師から私に小言がくるからな」

 

 はーいと何人かが応え裏目先生は教室から出ていった。

 

 次の瞬間瞬く間に女子が才念の周りに集まり出す。話題はもちろん俺と才念の関係についてであり隣にいる俺も自然と巻き込まれる。

 

「丹霞ちゃんと石狩くんってどういう関係なのー?もしかして幼馴染?」

「似たようなものですね」

「え〜〜!マジなの〜!え、どんなことがあったのか聞かせて〜〜!」

「それは、えっと」

「話したくないかな、要が思い出してくれるまで」

「は?あんたマジ?」

 

 女子の目が一斉にこちらに向き出した。すごいなぁ、この平和な日本でこんな殺意を向けられることってあるんだなぁ。

 

「……忘れているのは事実だから悪いとは思ってるよ」

「それで許されると思ってんのかこの最低野郎!」

「地獄に行って詫びろ!このデコ助野郎!」

「あぁ!?お前才念様のこと忘れてんのか!?表出ろやごらぁ!?」

 

 世の中は理不尽である。聞き耳を立てていたのか、女子会は男子も混ざった俺の魔女裁判と化した。

 

 判決は一限目の教師の登場により持ち越しとなった。

 




次回、(原作)ヒロイン登場
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