TSしてる主人公からの目線が怖いです…… 作:加賀美 未来
今回は幸蔌会長編です。TCG要素を含みます。
昨日は丹霞の部屋から逃げ出し、自分の部屋に戻って行った。あの後、丹霞からの連絡も特になく、朝に来るかもと思っていたがそういったこともなかった。
お腹が減ったので事前に買っていた携帯食を口にして栄養をチャージする。
今日は土曜日、休日だ。引っ越しの準備やらなにやらで最近ゲームもあまり出来てなかったし、友人でも誘ってランク上げでもやろうかなと考えスマホを手に取る。
スマホを確認するとSNSに通知が来ていたので確認をする。
『生徒会室』
そして来てーという可愛い猫のスタンプが添えられていた。差出人はもちろん幸蔌会長であった。
「よく来てくれたわね。さあ、あなたの魂は持ってきたかしら」
「魂って。とりあえず言われたので持ってきましたよ」
カバンの中からプレイマットとデッキケースを取り出す。あの後、何やるんですかと聞いてみたらデッキなどあるなら持ってきてと言われたからだ。
「……これだけ?コマソードとかキャップマンとかは持ってきてないの?」
「続いているのは知っていますけど、流石に今は買ってないです」
「……そう、仕方ないわね。なら後で貸し出してあげる」
「ありがとうございます」
「初心者には優しくしないと、だものね」
机の上に多くのコマとキャップマンが多く並べらた。ひーふーみー、合計10個以上のホビーが並べられていた。
そう、この会長の趣味はホビー玩具とTCGであった。
「さあ最初はこれで勝負よ!魂燃える激しいバトルをしましょう!」
彼女は一つのデッキを突き出し、決闘の申し出を行った。
「ループをします。呪文、完璧なる大地を使用。マナからコスト5以下のモンスター2枚を場に出せます。出すのはスイムニンジャとドッカンボンバー」
「ループ?よくわからないけどその2枚を出してこの布陣を突破できるのかしら!」
幸蔌会長の盤面には天国の門という大型の守護を複数出せるカードによって並べられた大型の守護モンスターが複数並べられている。流石にこれを突破するのは面倒であるが、関係ない。
「スイムニンジャの効果でモンスターが場に出た時カードを一枚引き、手札から一枚墓地に捨てます。ドッカンボンバーの効果で手札からモンスターが捨てられた時それがコスト2以下なら場に出せます。モンスターが場に出たのでスイムニンジャでドローして一枚捨てる。それもコスト2以下なので場に出ます」
「なるほど、それで大量展開を狙って私を倒そうというのね。だけども私はさっきこのカードの効果で一枚カードを仕込んでいる。あなたが勝つためにはこれを突破しないといけないわよ」
「あ、ようやく引いた。カーメンを場に出して効果で相手に一枚カードをドローさせます」
「ふふ、デメリットがあるかわりにパワーが高いようね。でもそれじゃあ私のモンスターを突破できない!」
「ここで一旦このループを止めて、自身のカードを4枚破壊して屍の王をコストを支払わずに召喚します。そうして破壊された永遠なる図書の効果で自身の墓地のカードを全てデッキに戻します。モンスターが場に出たのでのでまた一枚ドローして一枚捨て。場に出たスナイプニンジャの効果で自分の場のカードを一枚バウンスします。俺は屍の王を手札に」
「待って、待って、待って!何をしているの?」
「何って、勝つ準備ですが」
そうしてしばらくデッキを回していく。そうこのデッキはループデッキ。そのままずっとデッキを回していき、相手にカードを強制的に引かせる。それをずっと繰り返していく事で
「わ、私のデッキが…… 」
「ライブラリアウトですね。対戦ありがとうございました」
こうして勝つことができるわけである。このゲーム基本的に殴ったら勝ちには近づくが不利になってしまうのだ。だからループで殴らずに勝つのが立派な戦法として設立している。
「ひ、卑怯よ!こんなの!もっと熱くなれる試合をやりたいと思わないの!」
涙目で机をパンパンと叩いて悔しがっている人の姿を見るのは楽しいな〜〜。それとこれに関しては会長も悪い。
「これも立派な戦術のひとつですから。というか会長のデッキも天国の門使えるようになってたので勝てるじゃないですか。入ってないんですか?ラブスターとか」
「……入ってない」
ええ、そういえば戦っている時に思ったのだが彼女のデッキなにか違和感があった。普通の天国の門デッキなら入っている手札補充カードやマナを伸ばすカードが見当たらなかった。事故った?と思っていたがもしかして。
「ちょっとデッキ見てもいいですか?」
「いいわよ」
「失礼」
許可をもらったのでデッキの中身を確認してみる。……なぁにこれぇ?入っていたのは何枚かの受け札に主要カードの天国の門、そして残りは大型モンスターのみであった。……えぇこれ小学生デッキじゃん。
「あの、幸蔌会長?これって」
「私が考えた、私だけのデッキよ!」
「……なるほど」
思っていた以上にカジュアル勢であった。原作ではキャラクター紹介に趣味:ホビー、カードゲームとあるだけでどれほどの実力かは描写されていなかった。なので適当にガチデッキと趣味デッキを持ち寄ったのだが……困った。これでは全てのデッキで圧勝してしまう。公式から発売している構築済みデッキ以下なのは予想外であった。
「あの、会長って誰かと戦ったことあるんですか?」
「いいえ、今までカードだけ集めて一人回ししかしていなかったわ!」
「なるほど……」
なんという悲しい事実。こんなピュアな初心者相手にループデッキを持ち込んだ自分が恥じてくる。
「それにしてもすごいわねこのデッキ!殴らずに勝つなんて特殊勝利以外考えたこともなかったわ!」
見ると俺のデッキを広げてみていた。勝手にみられているがまぁ別に問題はない。
「流石に大人気なかったですね、初めての人にこのデッキは」
「こほん、確かに期待していたものではなかったけど見ていて楽しかったわよ。やっぱり二人で遊ぶと楽しいわね!」
彼女はカードで口を隠しつつ眩しい笑顔を向けた。その笑顔を見ると、こちらも元気が湧いてくる。
「それは良かったです。ですが、ちょっとデッキを改良しましょう。流石にこれじゃあ今の構築済みデッキ以下で見てられません」
「ええ、実践を得てあなたとの実力の差があることが分かったわ。デッキもスキルも。デッキだけじゃなくてプレイングも教えてくれないかしら」
「それはいいんですが、どこまで覚えたいんですか?」
「もちろん、全てよ!」
「その道はとても大変なものになりますけど、それでもいいんですか」
「ええ、大丈夫よ先生!強くなるための努力を怠ったことはないの!だから私に決闘の真髄を叩き込んで!」
「そこまで言われたら仕方ありませんね。では」
そうして俺と幸蔌会長の特訓が始まった。
「はぁ、はぁ」
「免許、皆伝ですか。先生!」
「はぁ、いえ、全くですけども」
幸蔌会長の飲み込みはとても早かった。カードゲームにおける大事な理論を教え込めば1回で理解してくれ、実践でも使えるようになった。だが、しかし、それでも、基礎の基礎から全て教え込むとなると大変なのだ……!リソースやアドバンテージの概念から説明する羽目になるとは思わなかった……。
だが大部分を教えることができた。あとは環境におけるメタの概念や対策方法の考え方など半日あれば教えることができるだろう。
「それでも流石としか言えませんね。飲み込みが早い」
「ふふ、ありがとう。とても嬉しいわ。でも……」
幸蔌会長は机の上に広がっている他のホビーに目を配る。空はすでに暗くなっており帰るにはちょうどいい時間だろう。
「そういえば他のことで遊べていませんね。何個かは短時間で出来ますし、やりますか?」
「ごめんなさい、私もう帰らないといけない時間だから、残念だけどもう片付けないとね」
残念そうな顔でホビーをケースの中に仕舞い込んでいく。カードゲームで遊んでいた時間はとても楽しかった。それは俺も幸蔌会長もお互いにだ。だからこそ、この時間が終わってしまい、他のものでも遊べないことに残念がっている。
「それは、残念です。だったらまた遊びましょうか。来週とかどうですか?」
そういうと幸蔌会長は何故か驚いたような顔をした。ん?何かおかしなこといっただろうか。
「……また、遊んでくれるの?」
「え、まあ楽しかったですし。もう友達みたいな感覚ですし。あ、失礼ですかね?」
「友達……いえ、大丈夫よ!ふふ、そっかもう私達友達だものね」
「それなら良かったです。それで来週空いてますか?」
「ええ、勿論!ふふ、それじゃあ来週楽しみにしてるわ」
その後は上機嫌になった幸蔌会長と一緒に片付けを行い、解散した。
そして来週になり。
「くあぁぁ……」
「ご、ごめんなさい!」
意気揚々と投げ出されたヨーヨーが俺の体に当たり、悶えていた。
……次は安全管理かぁ。
次回は桔花編です