気を失っている間に戻っていたらしい何ともない街並み、楽しそうに歩く家族
「お母さんー!」
そう言い嬉しそうに楽しそうに飛びつく子供それを受け入れ微笑む母親その光景を見つめながら横切り塔に向かって走る
「あんなのあったけ?」
あったはずだが思い出せない、まあ興味なんてすぐ無くなるそう思い走る
「…お母さんか」
前世は殺され、今世は殺した存在
まともな親には結局恵まれなかった
スバルとベアトリスが一緒に歩いているのを見つけ、先の悶々とした考えは無くなった
「スバル」
声をかければ安心したような顔で振り返る
「ユメ」
「レイア?何でここにいるのよ」
ある程度説明されたのだろう少しだけ焦った顔のベアトリスにそう聞かれた
「僕が僕だからですよ、ベアトリス様」
「質問の答えになってないかしら!」
むきぃー!とでも言いたげにそう言い放ったベアトリスの可愛らしさに和む
そんな状況ではないのだが
「ユメ状況の説明なんだが、シャマクで共感を防いでその先にレイアにやってもらいたい」
「と言っても僕じゃ力不足だよ、それと」
そういい後ろを見る
「3人でこそこそしてると思ったら、どうして私に話してくれないの」
「え、エミリアたん? どうしてここに……」
分かっていたのかと言いたげに見つめて来るスバルに笑みを浮かべ誤魔化す
「様子がおかしいから追いかけてきたら、やっぱり大変なこと抱え込んでるんだから。そうやって私を蚊帳の外にしようとすると、スバルの悪いところだと思うの」
腰に手を置き、悪さをした子供を叱るような言い方
「公園で待っているよう、言っておいたはずなのよ。どうしてついてきたのかしら」
「……ホントは私も待ってようと思ったわ。スバル、私についてきてほしくなさそうだったから。でも、プリシラが」
「あの赤い娘が?」
「今、スバルを追いかけないと後悔することになるかもって言うから。何事もなかったなら、黙って戻ろうって思ってたんだけど、深刻そうにずっと話してるんだもの。引き返すなんてできない」
口をぱくぱくとさせているスバルを見つめる
「どーする?」
揶揄うように言う
その言葉にハッとしたのか真剣な顔に戻り
「エミリアたん、気持ちは嬉しい。嬉しいけど、その、ここは今から」
「魔女教が現れるんでしょう? ちゃんと聞こえてたんだから。……スバルが戻れって言っても戻らない。私にとっても他人事じゃないんだもの」
「エミリア!」
声を上げ、エミリアを追い払おうとする姿に何とも言えない幸福感が募る
「俺たちがどうにかする。エミリアは関わらなくていい。関わらないでくれ」
「そうやってまた、私を守ろうとしてスバルたちが傷付くのに目をつむるの? 絶対に嫌よ。スバルが戦うとき、私も戦う。スバルが誰かを守ろうとするとき、私もそれを手伝いたい。スバルが私を守ってくれるみたいに……」
「私も、スバルを守ってあげたいの。だってスバル、今にも泣きそうじゃない」
考え込むスバルの背を軽く叩く
「……スバル。もう諦めた方がいいのよ」
「それ僕も思う」
「ベアトリス、ユメ」
「エミリアは頑固かしら。知られた以上、きっともうどうにもならないのよ。それにベティーもエミリアの気持ちがわかるかしら。スバルを守りたい気持ちはベティーも同じだし……それを否定するのは、ベティーには無理なのよ」
「そーだよ。それにエミリア様は強いし今は戦力が欲しい、なら協力してもらうべきだよ」
3人の視線が集まり、折れたのか口を開き始めた
「……魔女教の奴らはきっと君を狙ってくる。何かあったらまず、自分の身を第一に考えて行動してくれよ」
「ん、わかった。捕まってもスバルとレイアが助けにきてくれるもんね。それを信じて、頑張ってみる」
「囚われのお姫様には…ならないでほしいよ…」
「縁起でもないこと言わないでくれ……それで、話はどこまで聞いて?」
「大体は聞いてたはずよ。魔女教の悪い人がきて、その人がネクトみたいな魔法を使う。ベアトリスがシャマクでその効果を相殺するから、その間に頑張って悪い人をやっつけなきゃいけないって」
「低学年の子にもわかる噛み砕き方だけど、それで合ってる。エミリアたん、頼りにしてもいい?」
「任せて。私、ちゃんとレイアのおかげで強くなってるんだから」
この1年間、ガーフィールとの稽古だけではなくエミリアに剣術も教えていた、それも合ってか自信満々にエミリアはレイアを見つめていた、その眩しい視線に耐えられなかったのか目を逸らした
「エミリアたんとベア子そんでユメもいて、失敗するわけにいかねぇ……!」
「僕君の好感度そんなに稼いでたっけ?」
エミリアやベアトリスにならぶ信頼を向けられ1人困惑する
「それにもう、そろそろ時間だ」
「エミリアたんユメ、もうすぐ、塔の上に見るからに怪しい奴が現れる。そしたら先制攻撃で一発、でかいのをお見舞いしてくれ。塔から落とせれば最高だ。そのあとはベア子がうまいことやって、合図してから戦闘開始で」
「ん、わかった。うまくできるかわからないけど、やってみる」
「うん」
「――きた!」
塔の上、包帯まみれの明らかに怪しい女
「ウル・ヒューマ」
「ウル・ゴーア」
塔の上、爆発が起きたと思えば、大きな氷の塊が突き刺さっていた
「え、エミリアたん?ユメ?」
「スバルが先制攻撃って言うから、先制攻撃してみたけど……ダメだった?」
「そうだよ、やられる前にやる!」
「いや、GJ。だけどまさか、名乗る前にぶち込むと思わなかったから驚いて、てかユメお前はそれ騎士服着て言っちゃダメだろ」
堂々と騎士としていいのか?と疑いたくなるようなことを言い出すレイアにジト目で見つめるが微笑まれた
「ベア子、どう思う?」
「まず、周りの連中の誤解を解くところから始めた方がいいと思うのよ」
「僕やろうか?騎士服きてるし」
確かに、よくわからない服を着ている奴より、騎士服を着ている人間が話した方が信憑性はあるそう思い任せようとした
「確かに、ここはユメに任せるか」
「…あ、無理かな」
突然の発言に驚き顔を見ようとしたが、それよりも早くレイアはスバルの前に出た
「スバルは下がった方がいいわ」
「エミリアたん? さすがにそこまで悪役ロールする必要は……」
「違うわ。よく見て、スバル。みんなの目、正気じゃない」
「――え」
血走ったような目で見つめて来る民衆
「ベア子! シャマクは!?」
「……しくったかしら」
「なに?」
「これ、ネクトとは根本から形態が異なった魔法……ううん、邪法なのよ。これは魔法でもなんでもないかしら。呪い……呪術なのよ!」
「やばやば」
軽く言い放つが、状況はかなり大変なことになっている
「――臭い。臭い。臭い。臭い。臭い。臭い。臭い。臭い。臭い。臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭い」
この世の全てを呪う怨嗟の響きだった
剣を抜く
音を立てて、氷の塊にヒビが入る、そして大きな音を立てた崩れ落ちた
「臭う、感じる……女の臭い。薄汚くて忌々しい、私からあの人を奪う半魔の臭い。殺しても殺しても、蛆虫みたいに際限なく湧いてくる臭い汚物。冗談じゃない。憎たらしい。あれだけ焼いても、まだ足りないのか」
「……何を、言ってやがる?」
「他にも感じる、女の臭い。あの人じゃないくせに、あの人に似た臭い。汚らわしくて卑しくて浅ましい、腐って色が変わって虫が湧いたような女の臭い。ああ、ああああ! あああああ! 腹立たしい! 忌々しい! 憎たらしい!」
「凄いな、いろんな匂い嗅いでな…」
違う方向に感心し始めたレイアを置いて事は進む
「私の! 夫への愛を試すか、精霊! 私から! 夫を奪っただけではまだ飽き足らないのか、半魔の売女!!」
地に四肢をつき
「私は! 魔女教大罪司教! 『憤怒』担当ぉッ!!」
「――シリウス・ロマネコンティ!! クソ半魔にクソ精霊、お前らを両者揃って焼き焦がして、夫の墓前にばら撒いてやる!!」
もしかしたら僕の性別気づかれてない?
とくだらない考えをする馬鹿が一人いた