意識が戻り、視界には心配するスバル君の顔が映っている
事もなく
ただ寂しく瓦礫がお出迎えしてくれた
水に飲み込まれたのだろうが、不思議なことに引きずられ、誰かに引き上げられたような痕跡が残っていた
水に飲み込まれ流れ着いたのであれば瓦礫の山などで倒れているはずなのに何故か背面なところに倒れていた、これだけならまだあるかもしれない事だろうが、近くに綺麗に剣が置かれ、流された時できた傷らしきものの手当てを軽くされていた
誰の仕業か分からないが取り敢えず、丁寧に置かれている剣を持ち都市庁舎に向かう
ー
夕日が道を照らす
息を切らしながら勢いよく開けた扉、音に反応し敵襲だと思ったのかリカードが飛び出してきた
「なんや、兄ちゃんじゃなくって嬢ちゃんか、無事やたんやなえらいずぶ濡れやけど」
「スバル、いる!?」
「お、おう兄ちゃんやったら2階で話し込んだらと思うけど」
「ありがとう!」
まだ何か言いたげなリカードを無視して走り階段を駆け上る
「間に合った…のかな?」
扉を開ければ、どうやらすでにガーフィールやアルデバランも到着した後だったらしい
「ユメ!」
驚き見つめる面々を眺めながら息を整える
「気にせず話を続けて?聞きながら状況を理解するから」
顔を見合わせ困惑する面々に「続けて?」と言えば気を取り直したかのように話し出した
白い上着を取り敢えず脱ぎ火の魔法を器用に使い乾かす
「レイア君のことも気になるけど今はさっきの続きをするよ、ユリウスは近衛騎士隊の優秀な騎士や。王国最高峰の騎士、ウチの自慢でもある。でも、ユリウス自身の知名度がどこまで都市で役立ついうん? 事の成功率はウチとどっこい。口の上手さならウチのが上」
「…じゃレイアは?暴食を撃退したんだろ?」
「数年前の話だしそれに、ユリウスとおんなじで王都では有名だけど…って感じだよ多分」
不安そうな目
今、迷っていた
レイアはナツキ・スバルが曇り頑張る姿を見たいと願っていたなのに気づいた時にはナツキ・スバルという人間に絆され、その人間性がさらに好きになって、今のレイアはメス落ち寸前と言ったところだ
それに当の本人はうまく気づけていない
何故自分が迷っているのかが不思議で不思議で仕方が無かった
「その放送する奴って、大将じゃいけねぇのかよ?」
その言葉に場が静まり返る
「ガーフィール…それは…やだよ」
納得しかけている周りの空気の中弱々しく呟いたのはレイアだった
「なんでだよレイア姉ぇ!大将は魔女教のやつを1人倒しているんだぞ!」
「英雄なんて!英雄なんて重っ苦しいもスバルにさせたくない!あんなのただ期待という名の無理難題を押しつけられて、それが出来なきゃ責められる!そんな残酷でクソみたいな物なんだよ!?それを…それを…あれ…ぼく何言ってるんだ…違う…だって、これは…あれ?」
頭が混乱していく
複数の考えが頭の中でぶつかり合う
スバルの頑張りを見たい自分と、友人として助けたい自分
そしてあるはずのない英雄に対する嫌悪感が謎の邪魔をする
「…おかしいな…」
口元に手を抑え足元を見つめる
そんな中誰かに肩に手を置かれた
「兄弟、もしやるなら兄弟がこれから背負うのは、英雄幻想だ」
手に置かれた肩をたどりその人物の顔を見る、顔と言っても兜で覆われ見えないが
「負けちゃいけねぇ。勝たなきゃならねぇ。希望を担い、期待を背負い、未来を示して戦うんだ。ここで決断したら、そうならなきゃいけねぇ」
「……負けちゃいけねぇのは、いつだってそうだろ」
「重みが違ぇ。兄弟の負けは、兄弟の負けだけじゃ済まなくなる」
アルの方を見ればこちらを向いていたらしく、兜越しで目があった、目つきの悪い目と
「なんだ、じゃあ、いつもと変わらねぇな」
ため息混じりの言葉に、視線をすぐにスバルの方に向ける
「何で」
「ここには俺が好きな人がいる俺の事を好きでいてくれる奴がいる」
「何言って」
こんなセリフ無かったはずだ
「ユメ俺な、あの時ユメが好きだっていてくれてすげぇ救われたんだよ、折れかけて諦めたくって仕方ない時にそう言ってくれて救われたんだ…だから俺を好きだって言ってくれたユメに、ベアトリスにエミリアにもかっこ悪いところは見せたくない」
微笑み優しく見つめてくる姿に普段ならば興奮して言葉にならない言葉をあげていただろう、だがレイアはただ呆然とその様子を眺めていた
そしてさらっと言われた事実にスバルに視線が集まる
「そんなこと言ったけ?」
本当に覚えてなかった
レイアという人間は自分が嫌いである、それゆえに自分の発言はあまり覚えていない
何となくそんなこと言った気がするかも程度には覚えている
レイアの言葉にスバルは先の優しい表情を崩し、目を見開き誰がどう見たって驚いていると分かる顔になっていく
「うっそだろ!お前!あんなに小っ恥ずかしいこと言ってたのに!?」
指を刺し叫ぶスバルの声は嫌に頭に響いた
「僕は小っ恥ずかしいことなんて言わない。」
「いや!言ってた!人間嫌いな事を言いつつ言ってた!」
「…」
考える素振りをするが思い出せない
「僕は小っ恥ずかしいことなんて言わない」
「なんで覚えてないんだよ!逆に!あんなこと言っておいて!」
過去の自分が何を言ったのだろうと少し興味が湧いたがどうせ自分のことだくだらないと結論づける
「はいはい痴話喧嘩は今はやめようか」
ため息をつきつつ、言い合う2人の視線を集めるためか手を叩きそう言い放ったアナスタシアに2人は現実に戻る
「俺は放送をする」
「すればいいじゃん」
「止めないのかよ、さっきまで反対してたのに」
「僕気づいたんだ、君の行動にあれこれ言う権利ないやって」
レイアも本人もスバルとユリウスとの決闘の際に言ったのは覚えていた、レイアはこの世界の本当の人間ではない、未来を変えてしまうかもしれないそれは避けたかった、だが異物が紛れ込んでしまった以上何かしらの影響が出ることは想定していた、せめて自分の手が最低限しか入っていない世界が見たかったそれだけだった
「そうかよ」
ーーーー
原作通り進む放送を眺める
弱々しくも芯が通った言葉を放つ彼の姿はまさしく英雄だった
「…」
これでいい、止めた方が良かった、そんな感情が内側で混ざり合う
混ざって混ざって気持ち悪くなって嫌で吐きそうで気持ち悪かって混ざってグルグル混ざって
「ゆめ」
スバルの放送も終わりかけ、名前を名乗った直後に微かに聞こえた気がする声に振り返る、不貞腐れてか瓦礫の上に座るアルの姿が見えた
「今」
謎の安心感が湧き立つ、湧き立ちすぎで逆に恐怖が頭の中を支配する
「お前はなんのために戦うんだよ」
「…何?」
突然の言葉に混乱する、周りの皆が放送を終えたスバルに駆け寄って行く
「なんのため?」
「なんでまたお前が痛い目にあう?なんで苦しい目にあう?なんでまた死に走る」
「言っている意味が分からない、人違いだきっと僕は君とはあんまり…し、親しい関係じゃないと思うしまたって何?分からない」
声は震えていたと思う言葉が何故固まる何故か言葉を発するたびに不安が駆け巡る
「…そうかよ。悪いな俺の勘違いだった」
寂しそうに呟いた声は嫌なくらいに耳に残った
「なんで…君は僕を見る時悲しそうに見るの?」
ずっと疑問に思っていたこと、そしてこの耳に残るこの声を少しでも和らげるためにと言葉を喉から捻り出した
「…そうだな、俺の友達に似てたからだな」
「友達…」
レイアはアルの事をあまり知らない、知識が無いのもあるが、知ろうとしなかったなんとなくでレイアは避けていた
だがら友人という言葉を聞きその言葉を繰り返した方
「優しくってほっといたら死にそうで、自己犠牲に塗れていて…馬鹿な奴だった」
その言葉からその友人が死んでいることがわかるそれと同時にとても大切な人だったことがわかる
悲しそうに肩を落とし座ったいる姿を見下ろし、不思議と口が勝手に動いた
「レイア?」
言葉を発する前にスバルが名を呼ぶ声が聞こえ、言葉は消えた
「ん?」
本来であれば真っ先に来てわいわいするはずのレイアが来ないがために呼びかけたのだろう、呼びかければすぐに返事をしたため、不安そうな顔がすぐに安堵に変わる
「ごめん何言おうとしたか分かんなくなった」
「変なこと言い出すんじゃ無いかとヒヤヒヤしたぜ」
「君に変なことは言ったことないと思う」
それだけいいスバルの元に駆け寄る
「スバルの中で僕が大切でかけがいがなくってどうしようもない存在になっていることがわかって僕は嬉しいよ」
「そんなことはない」
どう思う?とでも言いたげにスバルを指差しガーフィールを見つめるがスバルの放送のせいか興奮していてこちらに気づいていない
目を細め、やれやれとでも言いたげに微笑んだ
ーーー
オットーとラインハルトが加わり、会議室に向かう最中
「聞きたいこと話したいことは色々あるだが…先に少しだけ聞きたい事がある」
申し訳なさそうに言い放ったユリウスに視線を向ければ目があってからすぐにスバルの方を向いた
「なんだよ」
「スバルとレイアの関係について少し聞きたい、今この場で聞くべきことではないことは分かっているのだが」
「いいんやない?うちも気になってたし」
きっとスバルの発言のせいだろう
「そのままの意味だよ、前にレイアが俺のこと好きって言った」
「言ったね多分」
「はぁ!?」
その発言で先の場にいなかったオットーが声を上げた
「もしかしたとは思ってましたけど…まさか本当に…エミリア様やベアトリスちゃんレムさんだけじゃ飽き足らず」
ろくでなし!とでも言いたげに見つめてくるオットー
「その言い方やめろ俺が浮気男みたいじゃねぇか」
「これだけ聞くとみたいじゃないきがするんやけど」
アナスタシアの言葉に助けを求めるこのように見つめてくるスバルと目があった
「スバルは純愛だからセーフだよ」
「レイア地味に違う」
クズ男からの脱却のためか頭を捻り考えているスバルの横顔を眺める
「僕はスバルも好きだしエミリア様達も好きだよ」
「それって、恋愛的に?」
「知らない分からない恋愛したことない」
その言葉にオットー、ユリウスは安堵のため息をつき、アナスタシアは面白くないと言いたげに肩をくすめ、ガーフィールはずっと首を傾げ、ラインハルトはずっと微笑ましそうに見ていた