「さて、ISと絶対天敵はこの世界の状況を常にチェックして、片や隙を突く、片やその攻撃を奇貨として成長を促すことが必要です。具体的に言えば、今のネットを超える新たなプラットフォームとして世界に受け入れられ、活用される必要がありますね。」
「ISにそこまでさせるの?」
「束、技術があってもそれを裏付ける経済力がないと駄目ですよ。私達3人だけで、資源の調達からやっていたら、時間がいくらあっても足りません。大体、敵対的な状況で、思い通りに開発が進むわけがないですよ。」
「それ言われると受け入れざるを得ないね。束さん、これまでずっと世界の追手を躱していたから。束さんの罠に嵌る事は多かったけど、偶に突破してくる手練れがいて、そんな時は場所を変えた結果、折角築いた研究環境を全部破棄せざるを得なかったから。」
束が肩を竦めます。
「宇宙に逃げることはしなかったのですか?」
「それやると箒ちゃんがどうなっても知らないといわれてね、流石の束さんもゲームに付き合わざるを得なかったよ。」
【じゃあ手元に置いとけば良かったのでは?】
「最初はそのつもりだったんだけどね。箒ちゃんが拒否感示したから、それは断念するしかなかったよ。」
「束が凄いだけで、箒さんは普通ですからね。話がズレたので元に戻しますが、ISはその性能の高さから、既存の工業の行き詰まりの打破や、高度技術の再現性の向上、人手不足解消などにも有効です。現在は束がコアの数を絞っているのでそこまでですが、そういった普遍性も磨く必要があります。」
「ちゃんと使ってくれればだけどね。」
「だからその教育の為に私がIS学園に行くわけです。高度な知識は高校レベルでは無理にしても、基礎的な発想を植え付けるだけでもかなり違いますから。」
「成程。」
「それと、IS関連の特許を手当たり次第に押さえて、論文も出せるだけ出して、私と束の発想を広く広めて、思考水準を引き上げることですね。」
「書類作業が増えるの?束さん嫌だなー。」
「なのでクロエを秘書として育成して、私達の判断や許可のいる書類以外は捌けるようになってからにします。本当はIS学園に通わせたいんですけどね。」
『だったら、それ用のISを作って、作業すればいいだけの話です。』
「あ。それなら、クロエは今年は受験勉強に徹して、来年入学すればいいですね。」
『愛美様、変なところで鈍いですね。自分の事に鈍い訳じゃないので、そう深刻ではないですが。』
「独り占めすると碌なことにならないという意識が働くんですよ。」
『バックグラウンドを公表しなければいいだけの話です。この秋津洲を束様の機体と公表しておけば、そう五月蠅く突っ込まれることもないでしょう。仮に追及されたら、次世代型ISの研究の為に、IS同士を戦わせてデータを取っている、とでも言っておけばいいです。』
「そうですね。で、名前、何にします?」
名は体を表すといいますし、名前は大事ですよ。
「束さん、そういうの思いつかないから、まーちゃんに全部任せちゃうよ。」
「じゃあ、第一段階として書類作業、株式投資、情報の三件で、『
「なんで日本神話の怪物?」
「地球人からすれば私達は理不尽の塊ですし、そういう名前の方が、『名は体を表す』になっていいかなって。後でその在り方を認められた場合にも、日本神話だから面倒も少ないでしょうし。」
『厨二病という奴ですね。』
「そうそう、それですよ。分かっていますね。」
【成程厨二病か。どうやって学習すべきか。】
「同人誌を読めば、割とどうにかなりますよ。」
『絶対天敵をオタク道に引きずり込むつもりですか。』
「事細かい描写を追うには、それが一番いいと思いますね。後、間口広める上でも。」
「共感する凡人が出てきたらどうする?」
「作業させてみて、これまで積み上げてきたことを無に帰さないのであれば、採用しても良いと思いますよ。敵愾心があっても、物事に全力で取り組むなら信用出来ますし。」
「じゃあ、ギフテッド・ラビット・カンパニーの始動だね。」
◇
そこから私達は世界中の情勢を把握しました。経済については取り敢えず有望そうな株式を片っ端から購入しました。元手は束の持つ特許のうち、いくつかの権利を売って得たものです。
「問題は織斑一夏というイレギュラーをどうするかですね。ラブコメさせる義理はないですけど、彼がいないと専用機が分散して、教育がやり辛いです。」
「じゃあちーちゃんに適性の事を説明した上で、本人に選ばせるのが一番だね。束さんのISを汚す存在になられても困るし。」
「そうですね。ラブコメ展開になるフラグは全部私が折ればいいですし、そもそも束が介入しなければ発生しないイベントも多いですから。」
「じゃあ決まりだね。もすもすひねもす~、ちーちゃん、束さんだよー、話したいことがあるから、今から言う場所に来てねー。」
◇
「久し振りに会いたいといってこんなところに呼び出して何の用だ、たば…ね…。」
「どうしたのちーちゃん?」
「お前、本当に束か?雰囲気が違い過ぎるぞ。」
「雰囲気って、具体的には?」
「前のお前は、何というか、自分と身内以外は全く気にしていなかったのに、今は柔らかくなった感じがする。」
「フッフーン、ISの使い方で束さんと対等の視点で話せる人が現れて、気に入っちゃった!」
「な、何!?一体誰だ?」
「今から紹介するよ。あ、先に言っておくけど、ISを使わせたらちーちゃんより強いからね。」
「な、何だと!?」
「ISの使い方を束さんよりも柔軟かつ高い視野で提案、実践出来るからね。束さんが乗っても、敵わないかなあ。あ、生身ならもちろん束さんの方が強いけどね。」
「お前が自分より凄い奴の存在を認めるなんて…。」
「彼女と関わると、成長を促してくれるんだよ。ちーちゃんも今のままだと置いてきぼりにされそうだね。」
「!?」
大分織斑千冬さんを煽っていますね。腐れ縁なのだから当然といえば当然ですが。
「まーちゃん、出てきていいよ。」
「初めまして、一番星愛美です。束からは、まーちゃんって呼ばれています。専用機は、第5世代機『
「第5世代機!?第3世代機ですらまだ発展途上だぞ!?」
「だから言ったよね、ISを使わせたらちーちゃんより強いって。まーちゃんの理論を実践するためには、第4世代機でも力不足だったんだよ。」
「全くお前は、いつもいつも世界を振り回すな。」
「振り回されるこの世界が、軽過ぎるんですよ。きちんとそれ相応の対応をしていれば、ここまで酷いことになっていません。」
「お前は束の味方か。」
「束に不足していたのは対等の視野を持ち、理解する存在です。それさえあれば、ISを開発した当初の夢である、宇宙開発の為に心血を注ぐのは、当然の事ですね。」
「…。で、要件はそれだけか?」
「ううん、まず一つ目は、まーちゃんがIS学園に教師として赴任することだよ。それも、ちーちゃんの上司としてね。」
「な、何だと!?私より立場が上!?」
「いや当然でしょ。まーちゃんはIS運用の理論を組み立て、それを実践出来るんだよ。そんな人が誰かの指示の下で動くわけないよね。これについては、学園長も承認済み。」
「…。」
「で、二つ目が、いっくんをIS学園に入れるか否かだよ。」
「束、男性にIS適性はないはずではなかったのか!?」
「それがあるみたいなんだよねー。まー、無理にとは言わないけど、ちーちゃんそれ隠し通せる?いっくんはそういうところ鋭いから、勘繰って変に行動しちゃうかもよ。」
「…、分かった、受けさせる。しかし束、いつからそんなに相手の事を考えるようになった。」
「まーちゃんに会ってからだよー、ブイブイ。あ、でも、ここでのやり取りは言わずに、いっくんの意志で受けさせてね。でないと受け身になって、ISが巻き添えになるから。」
「分かった。」
「あ、そうそう、ちーちゃん不満がありそうだし、束さんが用意したISで、今から試合してもいーよ。」
「そうしたいのはやまやまだが、私も忙しくてな。学園で見せてもらうことにする。」
そう言って千冬さんは学園へ戻っていきました。
「本当に分かっているのでしょうか。私が本気を出したら、攻撃するどころか一歩も動けないレベルなのに。」
「分かってないから言っているんじゃない。まーちゃんの凄さを分かっていたら、何をおいても対戦したがるはずだよ。」