100年に一人の天才と史上最強の弟子   作:やぶゆー

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対戦カードどっちにしようか最後まで迷いました


14話 大将戦-1 天賦対決

 阿含(オレ)白浜(モブ)、オーディーン、バーサーカー。

 校庭の中央に揃い踏みしたところで、周囲のざわめきと視線が、全身の皮膚をくすぐるように撫でる。

 

 完全にこの場はオレ達が食っちまった。観客と配信は呑まれてやがる。一々聞き耳立てるまでもねえ。

 ククク……わかってんじゃねえかパンピー共。これまでの戦いは前座だ。

 身銭払ってんだ、こっからは瞬き厳禁で見逃すなよ。

 

「兼一、貴様と金剛以外の駒はほぼ機能不全となった。お前達が敗れれば、連合全員が私の手に落ちる。

 といってもザコばかりで、使えそうな手駒はほとんど無さそうだが……」

 

 確かにな。まだ他にも残っちゃいるが、全員ほぼ死に体か。

 帽子はトー横(リミ)の服脱がせる間にボコられ続けて、デカブツ共々虫の息だ。

 王子サマもアマゾネさんと連戦しちゃ余力は残らねえだろうし、先週までのオレでも全員余裕で纏めて――

 

「仲間を何だと思っている! 戦いを見世物にしたのは、正々堂々決着をつけるためとしてまだ理解を示すが……。

 ()だと!? ザコだと!?」

 

 うわモブがなんかキレてる。空気読めっつーの。いや、この状況だと逆に読めてるか。

 

「クク……アタランテーとクロノスも。連合を弱らせる捨て駒として私の役に立ってくれた。

 もっともこの一戦でティターンの権威も落ちてしまったようだし、この機にラグナレクが取り込むのもありだな」

 

「龍斗……どこまで堕ちるつもりだ。君の濁った眼はボクが晴らしてやる! かかってこい!」

 

「おいおい、一度完膚無きまでに敗れた者が、私を指名などおこがましいぞ」

 

 そりゃオーディーンに同感。つーか遅刻した分際で仕切るとかギャグかよ。

 肯定の意味でオレが失笑すると、モブがぐぬぬ……と悔しそうに言葉に詰まる。

 口喧嘩くれーはオレ達に勝とうぜケンイチ君よ。

 

「君がバーサーカーに轢き殺されたのを見届けた後に、金剛阿含を狩るとしよう」

 

 まぁ妥当だろうな。モブが()()に成り上がったか見物した後に、オーディーンをすり潰してやるかね。

 

 

 

「待てよ、俺も金剛阿含とやりてえ。白浜はアンタがやるといいさ」

 

 何だ? それまで黙ってたバーサーカーが割って入ってきた。

 オーディーンの様子からしてブック(台本)じゃなさそうだが。

 ……あ"ーそういう流れ?

 

「聞き間違いでなければ、指示を蹴った上であまつさえこの私に指図をしたのか、バーサーカー?

 No2の地位に敬意を示して前者は譲歩してもいいが、後者は捨て置けないな」

 

「態度が気に障ったなら、オレ達で戦えばいいさ。お互い白浜と金剛を片付けた後にな」

 

 

 トップチャット ×

 

 @デブナレク : バーサーカー様、マジかよ!クーデター!?

 @user-329821 : え?え?もしかして三竦み?

 @朝倉みっくるんるん: 裏切るのはロキ様の方だと思ってたのに……

 

 

 観客共々、周囲の兵隊共が明らかにうろたえてやがる。決まりだな。こいつ本気で下剋上を狙ってやがる。

 だがロキみてえな打算や謀略って雰囲気はねえんだよな……。

 

「いつから()()()()()んだ? 私への敵対心や背信の予兆は君から全く感じていなかったが……」

 

「敵対心じゃねえ。強者へ挑む純粋な向上心、野心さ。

 オレは退屈が恐いと常日頃周りに吹聴しておきながら、その実、本心では無敗の経歴とプライドが傷つくことの方を恐れていた。

 アンタというとびきりの強者の側にいながら、出会った時からドス黒い敗北感を刻まれてもなお挑もうとしなかったのが、その証拠だ」

 

 奴はそこで言葉を区切り、オレの方へ視線を向ける。

 

「その自己矛盾を教えてくれたのが、そこの金剛阿含だよ。

 単身でラグナレクの本拠地に臆さず殴り込み、あまつさえ場を支配しようとしてた奴の覚悟と立ち回りに、オレも焼かれちまったのさ」

 

 へー……確かにあの時無言でオレの事を食い入るように見てたとは思ってたが……。

 やっぱりオレみたいな天才の影響はでけーんだな。

 

「……なるほどそういうことか。君の挑戦する気概は買おう。

 しかし、たかだか一週間程度、拳聖様からトレーニングを受けた程度で、私との差を埋められると判断したということか?

 その間、私も同じく修行を受けていたことは失念したわけではないだろう」

 

 確かにそこんとこどうなんだ?

 ビビって逃げ回る程の圧倒的な実力差が、簡単に埋まるほどオーディーンも生易しくねえ。バーサーカーもそりゃ十分わかってんだろ。

 

「ここ一週間じゃねえ。オレが拳聖様にコンタクトを取ったのは、オレ達が金剛阿含と接敵したあの日からだ。

 機密情報である拳聖様の連絡先は、毎月ペースで変わる上に幾重にもプロテクトされていた。

 それを突き止めたオレの能力と執念を買って、指導を快諾してくれたのさ。

 オーディーン、たまにアンタ急ぎでスマホから管理アカウントに遠隔ログインするだろ。

 その時の操作音に若干のクセがある。ここまで言えばわかるだろ」

 

 ははぁ、そういうこと。新島やオーディーンも事態は把握したようだな。

 多分、拳豪用のPCかなんかで拳聖とかいう奴の連絡先を定期受信してんだな。

 オーディーン専用の管理アカウント画面を、画面録画ソフトか何か仕込んで盗み見たのか。

 アカウントのパスワードは、オーディーンがスマホを叩く時の音で推測したってわけね。

 クク……思った以上に面白えじゃんこいつ。

 

「つっても、この機を伺ってたのはオレだけじゃねえだろ。なあ金剛阿含」

 

「いやー連合が勝つんなら、別にそれでもいいぜ。オレ様は仲間想いだからな」

 

 ワンターンのやり取りで、意図を見抜いたオレとバーサーカーが嗤い合う。

 モブは無理して理解しようとしなくていいって。んな顔キョロキョロしてもわかんねえだろ。

 

「えーと……一体何が起きてるんだ? バーサーカーさんがラグナレクに反乱しようとしてて……それに金剛君も何か企んでたのか!?」

 

「バーサーカーは今や完全な第三勢力になった。阿含はこの勢力を総取りできりゃ何でもいいんだろう。現状は俺ら、ラグナレク(オーディーン)、バーサーカー、阿含の変則四つ巴だ」

 

 そーいうこと。まあ新島にとっちゃそこまで状況悪化してねえだろ。

 バーサーカーと違ってオレは敵になるこたぁねえからな。

 精々モブが敗れた時に、連合の取り分を余計にオレへ渡すくらいだ。オレが持ちかける()()に、新島も応じるしかねえ。

 まあ奴もオレを起用する際に、これくらいリスクの範疇として想定してただろうよ。

 

「ゴチャゴチャ眠てえこと言ってもしゃあねえから、好きな相手と好きに闘りあえばいいんだよ。

 オレは何でもいいぜ。バトルロイヤルだろうが、1対3だろうがな」

 

 虚勢じゃねえ。こいつはオレの力と才能への自負から出た本気の啖呵だ。

 組織の乗っ取りだろうが、クーデターだろうが、挑戦だろうが何でもいい、全て潰してやるよ。

 連中の顔つきが変わる。やっと火ぃ付いてきたみてえだな。

 

「ちげえねえ。金剛阿含、やはりオレはお前とヤッてみたい」

 

「龍斗、この戦場はそういうことらしい。ならばボクも素直な気持ちで君に挑む!」

 

「ふん、確かに潰す順番が変わっただけか。もう一度貴様には己の無力さを味わわせてやる」

 

 場所を変えるため、オーディーンと共に横に捌けていくモブの背中に

 

「おい、あんだけ大口叩いて負けたら、死体蹴りした後に服引っぺがしてネットに晒してやるからな。嫌なら死ぬ気で勝てよ」

 

 ()()()()してやったら、モブがあからさまにビクッとしながら振り返り、オレに拳を突き出す。ちゃんと気ぃ引き締まったか?

 オレの激励は本来なら有料級だ。ありがたく受け取れよ。

 

 周囲から誰もいなくなったところで、オレはバーサーカーを初めて本格的に()た。

 集中――呼吸律動の最適化――奴の姿以外、全ての背景が白に染まる。

 筋肉の付き方、気の発動レベル、全部丸裸にして――

 

 

 

“コイツを認めるな”

 

 

 

 あ"ー!? なんだ今の声?

 頭に直接聞こえたような……まだアルミホイル頭に巻くのデビューしたくねえんだけど。

 あいつも怪訝な顔して虚空を見上げてやがるが、まさかな。

 ――まあいい、理解ったことがひとつある。

 眼の前の男にだけは絶対に敗北()けちゃならねえ。

 油断や手抜きは愚策だ。確実にすり潰す。

 

「"気の発動"」

 

「"バーサクモード"発動!」

 

 オレと奴の全身に点在する無数の細孔から、同調する様に気が放出された。

 

 

 

 ***

 

 

 

「とうとう始まりますわね。ケンイチさんと阿含さんの戦いが……」

 

 廃校の奥にそびえ立つ裏山。連合とラグナレクの戦いを見守る梁山泊の面々がその中腹にいる。

 達人衆は常人離れした視力で、そして美羽は2台の望遠鏡をタブレットに分割アングルで映し出し、二局の戦いを同時に観戦していた。

 

「金剛少年の方の戦いは早速、両者気を発動させたようだ。2人ともやる気満々だねえ」

 

「確か阿含君は静と動、両方の素養があったはずね。果たして彼はどちらのタイプを選んだのか……」

 

「ツンツン頭のガキの方は典型的な動のタイプだな。金剛の坊主の方は動の気にゃ到底みえねえが……ありゃ静の気なのか?」

 

 阿含が練り上げた気は、暴れ馬のように迸るバーサーカーの気とはまるで似つかない。

 消去法で静のタイプに目覚めたのか、と逆鬼が首を傾げるが、隼人がキッパリ首を横に振る。

 

「あれは動でも静でもない、純粋な無の気じゃのう」

 

「無の気……動や静と比べて際立ったものはないはずですわ……」

 

 動の気は爆発的な火力や高揚感、静の気は冷静さや分析力、安定性といった長所がある。

 しかし無の気にはそういった付与ボーナスが無い。静や動の進化過程であり、完全下位互換というのが武術界の一般的な見解である。

 

「それにしては妙だな。彼の資質ならもうどちらかに目覚めてもおかしくないが……。長老はどう見立てますかな?」

 

「ワシにもまだわからぬ……しかしあの少年の様子からして、付け焼き刃や奇策ではなく明確な意図をもって決闘に望んでいるようじゃ」

 

「アパパ、それにしても2人とも戦う前に睨み合った時にお互いビックリしてたけど、どうしたよ?」

 

「……あの者達には神魔の類が憑いているのか……も」

 

 しぐれの意味深な呟きを、逆鬼達が酒を煽りながら話半分に「ガハハ」と笑い飛ばす。

 隼人だけがただ一人、神妙な表情で阿含達を伺っていた。

 

 世界は広い。

 武術だけに留まらず、スポーツや学問に広げても、バーサーカーや阿含より、現時点で実力が勝る者は探せば必ずいるだろう。

 だがそれは年輪や経験値、努力量といったアドバンテージがある者達だ。

 ヒトとしての汎用的な才能という一点においては、己の素質に比類しうるなど現れたことはない。

 それがたった今、覆されようとしている。

 

 吉川将吾に類稀なる天賦の肉体を与えた神が

 金剛阿含の人生に栄光を約束した創造主が

 もしもいたのなら、己の最高傑作を脅かす存在に、拒絶を示したのかもしれない。




色々見直したい部分があるため15話投稿は数日あけます
原作のバーサーカー、オーディーン二連戦の神展開に近付けるよう仕上げてきます
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