100年に一人の天才と史上最強の弟子   作:やぶゆー

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第四部 DオブD
27話 楽園


 部外者に視覚だけで圧と拒絶を刻むほどの堅牢な外壁。

 楽園と見紛う程の優雅なリゾート地の内部。

 両極端な二面性を持つその島の名はデスパー島。

 緒方が所持するプライベートジェットで、前乗りした阿含は着いて早々に、()()()を始めていた。

 

(使用人やゲストの顔面偏差値が一々ハンパねえな。Mr.フォルトナ、アンタとは少しばかり仲良くやれそうだ)

 

 悪童に上から目線で評価されてしまった当のフォルトナ、この島の主はというと――

 

 

 

『これはこれは……現役の一影九拳が2人も揃うとは、絶景かな』

 

 厳かな内装の来賓室、その中央で希代の客人達をもてなしていた。

 

「フハハ! リアル,ネット問わぬエンタメの申し子ディエゴ推参!

 お招きいただき感謝いたす、フォルトナ殿。ところでそれはどういった趣向で?」

 

 屈強な体躯の覆面レスラーが見つめる先。

 フォルトナの声を出力するディスプレイには、目にスコープを付けた中年男性の、デフォルメアバターが映し出されている。

 

『いやなに、今までは護身用に影武者人形君を使っておったのじゃが。

 最近はVtuberというのが流行っておるとかで、この度試運用しておるのだよ。目障りならアバターは切っておくが』

 

「いえいえお構いなく。この度は私もお邪魔させていただきます。本当は今イギリスに潜伏していることになってるんですけどね」

 

 笑う鋼拳 ディエゴ・カーロ

 拳聖 緒方一神斎

 

 フォルトナの意識は並び立つ闇の達人から、その横に移る。

 

『それに次代の闇人を担うYOMIの幹部が()()もわしのDオブDに参加するとは……ワクワクが止まらぬよ』

 

 DオブD。

 正義も闇も関係なく強者だけが勝ち上がり、優勝者は栄光と知名度、1000万ドルの賞金が手に入る最大規模の武術大会。

 既に梁山泊にも、白浜兼一の出場推薦を伝えお膳立ては整えた。

 

 派手な衣装の金髪少女と、その後ろに控える大柄な少年。カストルとボルックス姉弟が無言でお辞儀する。

 そして――

 

「しかし翔君、あのお硬い人越拳神がよく大会への参加を認めてくれたね」

 

 スパルナ 叶翔が緒方に対し、両腕を頭の後ろで組みながら口を尖らせる。

 

「聞いてくださいよ緒方先生ー、最初は本郷先生ずっと反対してたんですよ?

 それが急に、"同年代の奴に生まれて初めて一泡吹かされて悔しい"って話をしたら態度が一変して。

 "そいつが大会に出るなら戦ってみろ"って……。弟子が恥かいたのに、何が面白いんだろ」

 

 あまり本郷と翔を気に入っていないディエゴが、横のやり取りにやれやれと肩をすくめる。

 

(人越拳も人のイベントを、下世話な見せ物扱いしといて、都合良いよな。まあ空気の読めない乱入をされるより、最初から出てくれた方がマシか。ガイダル殿の弟子も付いてるし)

 

 翔の横で背筋を伸ばし不動で待機する、グローラー ボリス・イワノフ。

 本郷とディエゴも他の九拳の弟子にさして興味はないが、ボリスの生真面目さと規律への従順さは一目置き、評価している。

 身勝手な行動をしがちな翔のお目付け役として、相応しい人員と言えるだろう。

 

「ボリス、あんたこの前梁山泊の一番弟子と戦って圧倒したんでしょ。意外と活人拳も大した事ないのね」

 

「ナガラジャのアクシデントで撤退してなきゃ、あんな虫けらボーナスゲームで倒せたろうに、もったいねー」

 

 軽口を叩くカストル……レイチェル・スタンレイと翔に対し、ボリスは普段通りの仏頂面で応える。

 

「いや……雪のフィールドという有利な地で無かったら、存外拮抗していたかもしれぬ。

 叶翔、あんたなら勝つだろうがそれでも奴を侮らぬことだ」

 

「はいはい、小言おつかれさん。どうしてこんな奴とオレが組まされるんだか……。

 あ、そういえば緒方先生、金剛阿含はちゃんと出るんですよね?」

 

「ああ、公平性を期すため詳細は言えないが、ディエゴ殿が招待した梁山泊とは別枠で間違いなく出場するよ。ただし人越拳殿の厳命で、試合以外で他選手への接触は禁止だからね」

 

『拳聖殿一押しの、"100年に一人の天才"か……楽しみじゃのぉ』

 

 緒方の回答に満足し一人闘志を燃やす翔と、胸を躍らせるフォルトナアバターの横で、全出場チームが映し出されたタブレットを見下ろすディエゴが独り言ちる。

 

「ふーむ……梁山泊にはYOMIをぶつけたいが、あまり奴らのブロックに強豪を固めて潰してもそれは面白くない。

 盛り上がるトーナメントの組み合わせを決めるのも、なかなか一苦労だ」

 

 フォルトナの依頼により、大会の取り仕切りを任されたディエゴが思わず腐心する対戦カードの作成。

 この後の前夜祭で起こるハプニングで、それは更に加速することになる。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ありがとお姉サン、それじゃあね」

「うん。試合頑張ってねー阿含君」

 

 ナンパした遊び相手とそっけない挨拶を交わし、()()()()()()を後にして解散する。

 デスパー島のゲストは基本お忍びで、連絡先なんざ交換するのは野暮だ。おそらく二度と会うことはねえだろう。

 だが一期一会の割り切りってのも悪くねえ。

 まだ前夜祭も始まったばっかだし、遊んだ後はメシでも食いに行ってこの()()を堪能すっか。

 

 

 

「新白金連合参上! 我々は、DオブDへの参加を要求する!」

 

 綺羅びやかなパーティ会場に着いて早々、新島がディエゴとかいう覆面レスラーの演説をぶち壊して乱入して来た。

 あれだけやめとけっつたのに、マジで来たのかよこいつら……。

 

「この悪ガキ共が!」

 

 至緒ニキがゲンコツ制裁しながら、奴らの愚かさを説教する。

 マジでこの人、見た目に合わず梁山泊の常識人だよな。

 レスラーのオッサンが乱入にツボったらしく、連合の乱入を快諾したことで場はひとまず収束した。

 もっとも、後出しで死人がホイホイ出ると聞かされ、大半のメンバーは真っ青になってやがったが――

 

「このバカ星人! なんて無茶な真似を!」

 

 新島と取っ組み合うケンイチに珍しく同感。

 戦力としてボーダーレベルがデカブツ(トール)アマゾネさん(フレイヤ)ピトー(キサラ)、達人級に師事した武田。

 覚悟(ハラ)だけは決まってるのがメガネ君(水沼)くれえか。大分きちぃだろ。

 つっても今はガン無視一択。

 旨そうなフィンガーフードを片っ端から皿に摘んでく。

 

「あっ、阿含君! 久しぶ……」

 

 わざわざ避けてんのに話しかけんなバカ。舌打ちで露骨に拒絶してケンイチ達に背を向け、料理を回収したらそのまま客室にとんぼ返り。

 しばらくしたら、申し訳無さそうにケンイチが入って来やがった。

 

「ゴメン阿含君。さっき新島から、人前で見境無く交流するなって叱られちゃった……」

 

 はぁ。別チーム同士で絡んだら、敵チームや運営から警戒されるに決まってんだろうが。アドバンテージ潰そうとしやがって。

 

「新島とジャレてたのも悪手だかんな。それ見てた主催がアホで、お前達を一回戦でぶつけたらどうすんだよ。ラグナレクとの抗争で同じチームだったのが割れてるたぁいっても、トロール(利敵)にも程があんだろ」

 

「ケケケ、そうだ猛省しやがれ」

 

「オメーもだよ。本当にあの持ち駒でやんのか?」

 

 後から部屋に入ってきて、オレからケツに蹴り入れられた新島から、自信たっぷりに「おうよ、あいつらならできる」と返ってきた。

 連合の売名目的半分、仲間達のポテンシャルを信じて活かせる舞台に殴り込んだのが半分ってとこか。

 顕示欲と虚栄心で完全に目が濁ってたら、ここで見限ってたがそうじゃなさそうだな。

 まあ一回戦だけ突破して適当なとこで棄権すんだろ。

 それで運営が見逃してくれるかは知らんけど。

 

「お久しぶりですわ、阿含さん。改めて先日はありがとうございます」

 

 美羽が律儀に頭を下げると、ケンイチがそれに続く。

 

「林間学校でボク達が襲われた時、谷本君と新島を助けに呼んでくれたんだよね? それにYOMIの一人も退けてくれたって……本当にありがとう!」

 

「……礼はいいって。それよりそっちは2人だけでいいのかよ? 確かルール上は1チーム5人まで参加できるはずだろ」

 

 ケンイチ達とはあれ以来顔を合わせて無かった。

 修行でゴタついてたのもあるが、邪神にビビってから意図的にオレが避けてたのが事実だ。

 あれだけイキりちらかしてたのに、どのツラ下げて会えって話だよな。

 露骨に話をすり替えたら、横から新島が割って入る。

 

「何っ? そんなルールこっちは聞かされてねえし、メンバーのエントリーも迫られてないな。……そういうことなら、ケンイチ達は組み合わせに賭けるしかねえ。

 このDオブDはガチンコ勝負でもあり、興行と見世物の面も併せ持つ。トーナメントは抽選じゃなくて、運営側が必ず介入して対戦カードを設定するはずだ」

 

 あ"ー、人数差のハンデが出にくい組み合わせで戦わせて、観客に臨場感与えるってわけね。

 つっても2人しかエントリーしてねえのは完全に自己責任だし、梁山泊を招待した闇側もそこはお構いなしのオーダー組みそうなもんだが。

 

「お前らがルールを聞かされてねえってのは逆に利用できるな。運営がナメてかかってんなら直前でオーダーを決められるし、色んな言い訳も立てられんだろ」

 

「ああ、他も裏で結託してるかはわからんが、3チームで連動し合える俺達は、阿含の言う通り一歩先のアドバンテージを手にしていると言って良い」

 

「ちょ、ちょっと。話が見えないんだけど? トーナメントで最後に勝つのは1チームだけだろ? だったら協力し合っても意味ないんじゃないか?」

 

 オレと新島の会話についていけずに、顔をキョロキョロさせるだけのケンイチ。

 やっぱお前には小骨抜いて話してやんなきゃダメか。新島も溜め息を吐いて、タブレットに絵図面を描きながら説明する。

 

「さっき阿含も言った通り、極端な例だと1~2回戦でこの3チームが潰し合う展開もあるわけだろ。

 こっちがメンバー固定じゃないとこを突いて、エントリーしなかった奴は阿含やケンイチのチームに鞍替えできるかもしれねえってことだ」

 

「オレや他の連中は優勝するつもりだが、お前らは五体満足で帰れりゃ御の字だわな。

 優勝賞金は3等分でも4億円を余裕で超える。それ考えりゃこの大会は組み得だし、確実に有利取れんだよ。後は組み合わせ次第だな」

 

 パーティ会場にいた連中の力量は大体把握済み。新島のタブレットに手製のTier表を書き込んでく。

 

「お前とちょっと会話してたパンクラチオンが最警戒だ。YOMIも会場にいなかったが同レベな。後は馬っさんにウザ絡みしてた、チャイナトリオくれえかな」

 

「そう言えば阿含さんの方のチームは、どなたが参戦なさいますの?」

 

「んー……まあ明日以降のお楽しみって事で」

 

 美羽の質問はサラッとはぐらかす。

 オガッさん絡みの人選もあるから、まだ口外はできねえ。

 後は明日の組み合わせ次第だな。これ以上はあれこれ頭捻んのは労力の無駄だ。

 新島も省エネモードに入ってるしな。……あ"ーDM送んの忘れてた。

 

 自分:プレイルームの設備、お姉サン方のノリ共に良し

  動くなら日付変わってからがオススメ

(既読)

 

 剣星:かたじけない、我朋友

 

 桓騎将軍のドヤ顔スタンプだけ送ってタスクキル、と。もう寝よ。




かなり多くのケンイチ原作長編二次がDオブD完結まで行けてないので
執筆者にとってもこのDオブD編は鬼門かもしれません
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