カードゲーム世界の中心で「遊びで命賭けんな!」と悲哀を叫ぶ   作:平成平

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 オリジナル初投稿です。


本編
俺「おい、(そこまでの身体能力あったらカードファイトじゃなくて)リアルファイトしろよ」 現地人一同「何故?」 俺「こっちの台詞なんだが?」


 カードゲーム原作のアニメを見ていてこう思ったことはないか?『……何か、インドア系の遊びなのに無駄に身体能力高いヤツ多くね?』、と。

 ……実際、俺は今そう思っている真っ只中です。白目むかないようにしているので精一杯です。

 

 現在、俺がいるのはRPGのラストダンジョンで良くある薄気味悪い絢爛な城の中。そして俺の周囲に集まっているのは、この一年で繋がりを持った数多くの子供たち。そして、俺の目の前には豪奢なマントを羽織り、これまた華美な冠を付けた、性格の悪そうな美丈夫がいた。

 

「ほう?どこから入って来た?ここはカードの魔力によって構築された多次元時空間。綻びなぞあるわけがないのだが」

「私が()()()()を斬って来た」

 

 俺の隣で刀を鞘に納める美少女高校生は、何故ことも無さげにこんなこと言えるんだろうか……。一切のデメリット無しに亜空切断しといてデッキ構築の方が難しいとか宣うの、何かのギャグか?某廻る呪いのバトル漫画にいたら特級超えてんだよ、お前。

 

「『弥勒院(みろくいん)白雪(しらゆき)』、か。それに、成る程。これほど短時間で正確な情報精査ができたのは、『(なずみ)黎人(くろと)』がいたからだな?」

「あー……、まぁ。自分にできる事、このくらいッスので」

 

 片目にかかるほど長い黒髪を弄り、オドオドと話す根暗めの男子高校生。……いや、謙遜してるけどさ、キーワードを聞いただけで検索エンジンよろしく即座に情報持ってこれるお前は何なの?ここの位置情報、ほぼ異世界なんだが?

 

「だが、こちらにも用意はある。行け。カードバトルドロイド。足止めをしろ」

『『『『了解』』』』

 

 床から迫り出してくる、銃とカードを持った無機質な表情の人型ロボットたち。

 ……おい目の前のこの野郎、どういう運用目的(コンセプト)でこの機械デザインしたんだ。銃持たせるかカード持たせるか、どっちかにしろよ。つーかそれだったら銃一択だろ。そもそも、人の形してる意味本当にある?AIテクノロジー技術の無駄遣いじゃないか?

 

『っ、ぐぅおォ!?』

『ぎゃぁっ!』

『あべしッ!?』

 

 ……そんな馬鹿なことを考えている間に宙を舞っていくカードバトルドロイド共。うわー脆い。

 

「にゃ、はっ、と。あー、せんせ?雑魚はこっちで処理しとく、ってことでオゥケェ?全く、せんせぇアンタそんなだからさぁ……」

「というか、可愛いボクをご指名したんだ。ねぇ先生、ご褒美くらいあっても良いと思わない?具体的に言えば一緒にお風呂とか。男同士だし良いよね?」

「……あ?何寝言言ってんだよゴルトヴァ」

「先生と寝たから言ってるんだよヘタレ猫ちゃんのランデス」

「ただの看病だろが。ふぅん、そうでもしなきゃ構ってもらえないんだ、にゃはは?」

「………死にたい?」

「………玉潰すぞ」

 

 おい、そこ二人。キャットファイトはやめろよ。機械人形ぶっ壊すのは良いんだが、身体能力高いから周囲巻き込んで大惨事になってるからな。というか酷い妄言垂れ流すの勘弁しろよ……。

 

「イェーイ!おねーさん頑張っちゃーう!あはは!やっぱり戦うのって気持ちいーっ!最近人の形してるもの殴れてなくてご無沙汰ー!人殴ってると心落ち着くーっ!」

 

 と思ってたら戦闘狂の方も大暴走してるし。何でこんな問題児クラスの担任になっちまったんだ……。

 

「ほぉ。『ヴァイオレット・ランデス』、『アンティ・ゴルトヴァ』、『ジャグリーン・マリガン』……カードバトル国家代表候補育成機関『トリックスターハイスクール』でも指折りの生徒が乗り込んで来るとは、私も捨てたものではないな」

 

 ……、本当。頭おかしくなりそうだ。只のカードゲームの専門学校があるんだぞ。しかも世界崩壊の事件が起きたらここの子供に解決を要請する法律があるの、更に頭が痛くなるんだが。畜生、ここの学校教員に就職したの失敗したかな……。

 

「だが。このアナザーワールドシステムを破壊しない限り、私の計画を止めることは不可能だ。私はこのシステムでカードの魔力を増幅し、世界を変える!」

 

 字面だけ見るとトンチキだが、ところがどっこい現実だ。受け入れがたいことだが、これも俺の仕事なので対処しないといけない。

 

「あー……、頼めるか。あのカードに選ばれたからと言って気負うなよ」

「はい、大丈夫です先生……!」

 

 蟀谷を揉み解しながら俺の後ろに立っていた『主人公』に声をかける。そして、決意を秘めた声で、目の前の敵へと一歩を踏み出すオレンジ髪の少女。

 

「やはり、私の前に立ちふさがるのはお前だったか。では、『(ひかり)一縷(いちる)』。世界最後の戦いを始めよう。準備は良いかね?」

「……、ええ!」

 

 二人の間に緊張が走る。懐から取り出したカードの束を手に持ち、掲げて見せる。そして、意を決して二人は戦いを始める言葉を告げようとした。

 ……よし今だおらァ‼

 

「ぉごぉっ!?」

「えッ、えぇぇぇぇ!?」

 

 光に釘付けになっていた男が、俺の足元に這いつくばって倒れていた。

 

「な、何してんですか角谷先生ぃ!?」

「見て分からないか。迅速にこの事件の首謀者を確保しただけだ。囮にして済まない」

 

 ふぃー、不意打ちが効くか分からんかったが、こいつもカード至上主義で助かった。この世界の人間ってカードバトルに対してのめり込み過ぎだろ。

 

「カードバトラーにはカードに内包される魔力が常時展開され、通常の物理攻撃ではダメージを与えられない。故に我々はカードバトルを申し込み、戦いに勝利し、その力を無効としなければならない。これが我々の世界の常識だが、何事にも抜け穴があるということだ」

 

 よっと、こいつのデッキも回収しておくか。ふーん、黒と緑の混色か。……お、良いカード。しかし、持っててよかったなこのカードファイル。

 

「このカードファイルはバーンスタイン財閥(ポンコツ生徒会長お嬢様の実家)が作り出した特別製でな。ファイリングしたカードの魔力を抽出し、表層にコーティングできる。人に向けて殴打でもすれば、如何なカードバトラーであろうと昏倒させることが可能な代物だ」

「「「ええ……」」」

 

 俺の所業にドン引きしているらしき光や泥や弥勒院。まぁ、この世界の人間には受け入れがたいことだったか。

 

「カードゲーム至上主義、大いに結構。だが一刻を争うような事態で、悠長に構えているのは話が別だ。どっちが時間と手間が省略できる?」

 

 と言うかお前らも身体能力が高いんだからカードバトルより先にリアルファイトで解決したらいいじゃないか。そこで俺の話聞きながら鞘ごと刀をブンブン振ってる白雪、特にお前だよ。数トン近いロボット兵を蹂躙できる腕力しといて、カードバトルを申し込まれたら大真面目に時間かけて戦って、くっ殺ポンコツ姫騎士ムーヴかますんだよ。お前絶対リアルファイトしてた方が一騎当千レベルで無双できるから!

 

「あ、悪魔だ……。悪魔だよ、この先生!」

「失礼な。世界の危機の前に、小悪党カードバトラーの矜持を踏み躙って何が悪い。大事の前の小事。俺は犯人の拘束に最も効率的な手段を取っただけだ。その証拠に、ほれ」

 

 あっちはお前の出番だぞ。

 

「光。あの御大層に控えて居られる機械、あー何だったか……、アナザーワールドシステム?を破壊するには物理よりカードバトルの方が効率的だ。行けるか?」

「あー……、もぉぉっ!角谷先生ってほんっと……!分かりましたよ!レディーファイト!トリックスターワールド!」

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 TCG『トリックスターワールド』。

 

 俺、『角谷(かどや)礼司(れいじ)』が元々いた世界で流行していたトレーディングカードゲームの一つ。40枚以上のカードを使いコストを遣り繰りしてプレイする、所謂M●Gの系譜のTCGである。ゲームシステム的には、M●Gとデュ●マやバ●スピ、ビ●ディバ●ドなどが混ざり合った感じだろうか。

 とあるきっかけで妹と一緒に始めたのだが、中々ゲーム性が奥深く、熱中するものが少ない俺でもハマった趣味の一つだった。アニメも視聴したし、DCG版もあったのでパソコンでもプレイしていたなぁ。

 

 

 

 何故こんなことを思い返していたかって?俺がそのTCGの世界に転移したからだ。

 

 ……誰か冗談だと言ってくれ。確かにゲーム自体は好きだったよ。でも、実際このゲームの世界に来たいかっていうと絶対にNO。あーあ、百歩譲ってトリックスターワールドもラスボスを倒せば地球滅亡が回避できる『テンプレ的なTCG』原作のホビーアニメみたいなストーリーだったら良かったのにな……。

 

 

 

 このTCG『トリックスターワールド』を題材にした玩具販促アニメは、まぁとにかく内容が重い。胃もたれするくらい重すぎるのである。

 

 放映されたのが深夜枠だったからか、市場調査でプレイヤーの対象年齢がかなり上だったからか。各所のお偉いさん方は色々取っ払いブレーキ踏まずにアクセルベタ踏み。

 

 子供たちの友情!爽快な勝利!熱い絆!勧善懲悪!といった他のTCGアニメと違って、社会情勢やら貧富の差やら民族紛争やらが平気で出て来る、「原作がカードゲームのストーリーか、コレが?」と首をひねるものだった。

 

 個人的に言えば、話の出来映えは文句無しだったけど。カードバトル・ロワイヤルと銘打たれた作品なだけあって、人の純粋な願いとドロドロした欲の描写は見事と言う他無かった。しかもバックにいるスポンサー企業が太いから四クール分が確保されていたこともあり、じっくり不穏な伏線を貼ってからの最終シーズンでのどんでん返しはアニメファンの間で語り草になっている。

 

 悪はカードと関係ない所で蔓延るし、カードバトルに勝っても重要な事に負けているケースもあるし、友情よりも利益と得を優先するストリートチルドレンだらけ。せめてもの救いは「世界はそういう風に惨酷なのが当たり前」と主人公たちが割り切って受け入れられているところか。

 

 ただし、その物語の結びは幸せとは言い難い。超展開でラスボスを倒してハッピーエンド、ではなく現実問題と同じでどこにも火種が残りまくっているビターエンド。テロや殺人など、何が原因で日常が崩壊するか分からない、良くも悪くもリアルな世界観での話だった。

 

 そんなアニメの総評はというと、カードバトルが代理戦争になっているだけのガ●ダムだとか、コー●ギアスだとか言われてたな。このモブと綺麗事に厳しい世界、実に言い得て妙。

 

 ……それに、完全に余談になるが、お色気要素もかなりあった。恋愛じゃないところがミソで、打算の関係で力持つ人間を体で繋ぎとめようとするヤツとか、拭いきれない絶望を少しでも和らげようとする子とか、エロい通り越してお労しい人たちだらけ。そーゆうエッ…な目で見れなかったのは、良いのか悪いのか。ストーリー的にはダークなこっちの方が合ってんだけどな。

 

 これでクオリティは高いもんだから、カードゲームを知らない客層にもそこそこ刺さり、このアニメからトリックスターワールドを始めたプレイヤーもいたとか。

 

 そんなわけで、カードゲームそっちのけで、銃やテロでネームドキャラが死ぬのがこの世界。何ならカードゲームでの勝敗も国家間の交渉手段の一つでしかなく、核抑止ならぬカード抑止程度でしかないのである。

 まぁ、金=武器=権力=カードと等式で並び立つわけだから、普通のホビーアニメ世界同様、カード上位世界であることは間違いないんだけどさぁ……。

 

 で、コアなファンが付いたトリックスターワールドの販促アニメは次作も製作される運びとなり、シリーズ背景が全て一貫されることになったのだった。なったのだ、が。

 

 記念すべきアニメ第一作目は次々ネームドキャラが死ぬカードバトル・ロワイヤル!アニメ第二作目は神殺しをするため主人公が人間やめてこの世から消えました!ネット配信限定アニメだと主人公はパラレルワールドを救うけど、紆余曲折合ってラスボス化!DCGのソシャゲ版は美少女ゲー風学園ものの皮を被った鬱燃えゲー!

 

 これらが全て内包されるのが、トリックスターワールドの世界観だ!イヤ、見ている分には面白いんだけどさぁ……。

 

 あ、そういえば俺がいる世界線はソシャゲ版がベースらしいな。全年齢対象になっているから死者こそ出てないが、下手をすれば危ういネームドキャラは多々いた覚えがある。とはいっても、ストーリーは流し読みしてた所があるから、記憶が朧気で自身が無い。

 ……かといってなぁ。自分より年下の子供が死ぬのは目覚めが悪いしなぁ……。

 

 だったら必死になるしかないじゃねぇか。あーもう……。ディスティニードローができる程の運命力はねぇってのに!キーカード三枚積みで必死こいてデッキ組んでも、ピン差しのキーモンスターを引きの強さでドローして追い縋ってくる原作キャラとか、もうこぇーよ!?何だよこの理不尽ゲー⁉

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 —————これは、そんなカードゲーム世界の中心で「遊びで命賭けんな!」と悲哀を叫んだ男の話である。

 




■TCG『トリックスターワールド』の大雑把な特色。

赤…攻撃特化。ドラゴン・幻獣系、火属性。専用効果【烈火】。
青…デッキキル、特殊勝利。クトゥルフ系、水属性。専用効果【発狂】。
白…防御特化。機械系、地属性。専用効果【守護】。
緑…コスト回復、ビートダウン。生物系、風属性。専用効果【生吹】。
黒…行動妨害。悪魔系、闇属性。専用効果【呪怨】。
黄…コスト踏み倒し。天使系、光属性。専用効果【聖唱】。


 うん、バ●スピ!
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