魔女教大罪司教『強欲』担当の福音の日々   作:マチガウ生活

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第四話 強欲であり続ける

 場所は変わって、鎮守府の港に聡達の姿があった。加えて、なんだなんだと他の艦娘達の姿もある。

 

 それも、そのはずだ。これから、聡対榛名と長門の模擬戦が行われるのである。そして、その中心人物である聡は、

 

「はあ・・・・・・何か大事になってきたな」

 

 見物客を見て、そう聡はため息をつく。すると、入渠を済ませた金剛が近付いてきて、

「仕方ないのデース。この鎮守府に、提督以外の男性がいるのは珍しい事デスから。それに、こんな事になったのなら尚更デース」

 

「そうは言うけどさあ・・・・・・」

 

 なんだかなー。と、聡は頭を掻く。すると、聡は気づいた。

 

「へえ。さっきまでボロボロだったのに、もう傷が治っているのか」

 

「これデスか? 艦娘は入渠を済ませると、元通りになるのデース。最も、私の場合あれほどの傷を負えば、入渠の時間は長くなるのデスが、高速修復材を使って、短時間で終わらせて来まシタ」

 

「なるほど。傷一つないや」

 

 金剛の姿を見て、そう言った聡。すると、それを見た金剛が、

 

「あまり乙女の体をジロジロ見ないでくだサーイ。目つきが、いやらしいのデース」

 

「はあ・・・・・・お前ごときに欲情なんかするわけないだろ・・・・・・って」

 

 聡は、ふと気づく。

 

「お前、何か態度が柔らかいな」

 

 あまり自分に金剛が良い印象を持っていないと、聡は一人思っていた。だからこそ、正直不思議に思っていた。

 

「一応、お前の仲間達を殺そうとした男だよ」

 

「あー、やはりさっきのはそうでしタカ・・・・・・止められてよかったのデース」

 

「だったら・・・・・・」

 

「フム・・・・・・」

 

 金剛は何か考える素振りを見せる。そして、その何かがまとまると、

 

「あなたを、純粋な悪人だと私は思わないのデース」

 

「・・・・・・別に悪人だと僕は名乗った覚えはないんだけど」

 

 金剛の言っている意味が、正直分からない聡。

 

「最後まで話しを聞くのデース。確かに、殺そうとした事実はありマース。けど、あくまでも正当性があるのデース」

 

「・・・・・・どういう意味だ?」

 

「あなたは、明確な『怒り』を覚えていまシタ。絶対に触れてはいけない場所に、榛名達は踏み入れてしマッタ・・・・・・それは、榛名達が悪いと思っていマース」

 

 だからこそ、と金剛は続けて、

 

「悪人になりきれていない。と私は見ているのデース。私を助けたのと、あなたに謝って許してもらった事。一見、話しが通じないようで通じているのデース」

 

「・・・・・・つまり、何が言いたい」

 

「簡単なことデース」

 

 そう言って、金剛は一拍置くと、

 

 

「あなた・・・・・・演じていますよね?」

 

 

「っ⁉」

 

 分かりやすく聡は動揺する。それを見て、金剛は言葉には出さなかったが、内心で「やはり」と思ってしまった。

 

「あなたの本来は、心の優しい人なのデース。なぜ、そうまでして偽らないといけないのか分かりませんガ・・・・・・自分を殺しているとしか私には見えないデースね」

 

「・・・・・・なぜ、そう思った」

 

 聡は少し、威圧を込めた言い方を金剛にする。すると、金剛はそれに押されない。

 

「簡単な事デース。ぶっちゃけると・・・・・・」

 

 またまた、金剛は言葉をためると、

 

「何か、厨二病っぽいのデース」

 

「・・・・・・はあ⁉」

 

 その想像をしていなかった言葉に、聡は大声を出してしまう。

 

「今、僕が厨二病だって言ったのか⁉ 何を⁉ どこを、どう見て⁉」

 

「あえて言えば・・・・・・言動とか見た目デースかね? ほら、厨二病な姿をしていまスシ」

 

「これは、魔女教の法衣だよ! 魔女教徒の証なんだよ! ああ、まったく!」

 

 ガリガリと頭を掻く聡。それを見て、金剛はクスクスと笑う。

 

「素がでましタネ」

 

「・・・・・・」

 

「ま、これ以上は何もいいまセーン。模擬戦頑張ってくだサーイね」

 

 ヒラヒラと手を振って、金剛は艦娘達が集まっている場所まで歩いていってしまう。それを、何とも言えない表情で見る聡。自然と、大きなため息をついてしまった。

 

 金剛の言ったことは本当だった。『魔女教、大罪司教『強欲』としてこの世界で過ごせ』それが、福音の記述。そして、この記述が『心臓』と化している。それを達成するためにも、自分は『強欲』を演じなければならない。

 

 しかし、金剛は聡を優しいと言ったが、本人はそうじゃないと思っている。聡自身は臆病だ。金剛が言うように、『演じ』なければ、アイデンティティーを保つ事ができない。

 

 それに加え、この抽象的すぎる福音の記述は正直、聡の頭を悩ませた。この力を使えば、暴虐を尽くし、世界を破滅させる事も出来る。逆に、世界に平和をもたらす事も出来る。それほど、強大な力なのだ。

 

 福音の記述を違えば、体に『大きな変化』が起こると本能的に聡は理解していた。そもそも、なぜか抗うという選択肢すら浮上しない。だからこそ、聡は福音の記述通りに行動する。

 

 そして、今の状態は記述通りに動けているというのに他ならない。もしも違えば、ペナルティーが加されてもおかしくはないからだ。

 

 ・・・・・・これから、どうすればいいのか。その聡の問いに誰も答えてはくれない。

 

 いっそ、おかしくなった方が楽なのではないかと聡は考える。しかし、それを考えて内心笑ってしまった。

 

 

 そう。元々、自分は狂っているのだから。

 

 

「けど・・・・・・」

 

 聡は気づいてしまった。金剛が言ったように、先ほど素が出てしまったことを。だが、福音の記述に違いは無かったようで、何も起きなかった。

 

「本来の僕・・・・・・」

 

 いや、やめよう。そんなもの、サテラに力を与えられ、この世界に来た時点で『死んでいる』。自分は、魔女教大罪司教『強欲』担当。人見聡なのだ。厨二病だか、なんだか知らないが、聡はこれを変えるつもりはない。強欲なら、全てを犠牲にしてでも、それを掴み取らなければならない。本当の意味で強欲にならなければならないのだ。

 

 それが、聡の考える福音書の記述通りの行動。今の時点で、それは間違っていないのだ。だからこそ、そうあり続ける。

 

「準備はいいか?」

 

「っ⁉ あ、ああ・・・・・・」

 

 考え事をしていた聡は、思わず驚いてしまった。 気配に気づかなかったが、拓郎が聡のすぐそばまで近付いて来て声をかけたのだ。拓郎のそばには、榛名と長門の姿もある。

「大丈夫か? 緊張でもしているのか?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「はっ! 今更、逃げ出したくなったか?」

 

 そう、長門は聡に挑発をする。

 

「そんなわけないでしょ。さっさと始めよう」

 

「分かった・・・・・・と、その前に」

 

 パン!

 

 拓郎がそう言った瞬間、いきなり聡に拳銃を撃つ。もちろん、強欲の権能によって聡は無傷だった。

 

「・・・・・・何するんですか」

 

「いや、悪いな。一応、確認のためだ。今使ったのはゴム弾だが・・・・・・全く痛くないのか?」

 

「だから、そう言っているじゃないですか。僕にはどんな攻撃も通用しないって」

 

「分かった・・・・・・では、始めよう」

 

 拓郎が言うのであった。

 

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