どっちが勝つか四代目!   作:113(いちいちさん)

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ガニマール四世颯爽登場

 

とある小国

 

 黒いライダースーツを着た女が街の中央にある宮殿を壁伝いに走っていた。

ガシャッ! ガシャッ! ガシャッ!

 突如サーチライトが女を照らす。宮殿を囲む塀の上には大勢の兵士がAK47を構えていた。女はすぐさま走り出し逃れようとする。

 

「撃てぇ!!」

ダダダダダダダダッッ!!!!

 号令とともに銃撃が開始される。女は銃弾の雨の中を掻い潜りショルダーホルスターからワルサーP99を抜くとライトを次々と撃ち抜き暗闇へと紛れた。

 

「探し出せ!!」

「「「「ハッ!」」」

 

 

 

 

 塀の上を一人の兵士が走っていた。彼は見張り台の前に辿り着くとにやりと笑う。

 

「フフッ・・・!?」

 

 すると突然背後から手錠が飛んできて彼の腕と柱を繋ぐ。

 

「そこまでだリュパン四世!」

 

 彼が振り向くと一人の男が立っていた。

 

「流石ねガニマール警部

 

 すると兵士の体が空気が抜ける様に萎んでいき手錠も外れる。

 

 月明かりが二人を照らす。

 やや小柄だがグラマラスな身体、毛先がカールしたブロンドロングヘアーに薔薇色の瞳、メイクをバツンと決めた絶世の美女が男の前に立っていた。

 

「お前が盗んだこの国の国宝、”トレジャーフレイム”を返してもらおう」

「それってコレの事?」

 

 女は胸元から燃えるように輝く紅い宝石を取り出す。

 

「ホラ、返してあげるわ!」

 

 女が男の方へと宝石を投げると男は思わずキャッチしそうになるが、咄嗟に腕で顔を塞ぐ。

 直後宝石は強い光を放つ。光が収まると女が消えていた。

 

「しまった!」

 

 男は急いで見張り台を駆け上がるとそこにはグライダーに跨る女がいた。

 

「またね警部さん♪」

 

 女がウインクをするとグライダーがカタパルトにより射出される。

 男は見張り台の端まで走るが、勢い良く射出されたグライダーは既に遥か遠くへと飛び立っていた。

 

「リュパン四世、次は必ず逮捕して見せる」

 

 彼は懐から拳銃を取り出すと女が飛び去った虚空へ向けて発砲した。

 

 

 

 

 

 

 

日本

 

 ここ羽田空港に一人の男が降り立った。青色のスーツにパイプを咥えた茶髪オールバックの男。

 

「(此処に居るんだろリュパン四世、ガニマール四代目の血が騒ぐぜ・・・)」

 

 これぞ「正義(マサヨシ)・ガニマール四世」ジュスタン・ガニマールの曾孫、論理と科学・刑事テクニックの全てを賭けてリュパン四世に挑戦する男。史上最年少でパリ警視庁の警部に上り詰め、そのパワースケールは世のゴキブリ野郎どもをダメージする。

 

 彼が空港から出ると入口前に白のセダンが停めてあり、スーツ姿の男性が立っていた。

 

「お待ちしておりました、ガニマール様」

「いつも有難う」

 

 ガニマールは男に礼を言うと車に乗り込み発進する。

 

 この車、フランスの名車プジョー406にフェラーリV型12気筒エンジンを搭載。そのマキシマムスピードは300を超える。更には専属メカニックによる改造でスイッチ一つで車体が変形しインターセプトモードに移行する。

 彼は国外に出向する度、自費で愛車を輸送させているのである。

 

「(母の故郷であり父がリュパン三世に敗北した地。もっとも、そのお陰で私が産まれた訳だが)」

 

 彼の父ガニマール三世はここ日本でアルセーヌ・リュパンの遺品を巡りリュパン三世と対決するも結果は惨敗。自棄酒中に出会った居酒屋の女将に一目惚れし、その結果彼が誕生した為ある意味リュパン三世も彼の生みの親と言えるのである。

 

 物思いに耽りながら赤信号で停車中、突如警察無線に通信が入る。

 

『現在〇〇にて自転車に乗った学生が機関銃を乗せたセグウェイに追跡されているとの通報がありました。付近のパトロールは速やかに出動して下さい。繰り返します・・・』

 

「まさかいきなり現れるとはな!」

 

 通信を聴いたガニマールはセンタークラスターにあるスイッチを押した。すると車体下部からジャッキが展開し、車体が持ち上がるとタイヤがフェンダー端までせり出し、ルーフからエアインテークと回転警告灯が展開。更にエアロパーツが車体下部から展開し同時にリアウイングがトランクからせり出した。

 これこそが数々の犯人を追い詰めたインターセプトモードである。

 ジャッキが折りたたまれて車体が接地し、信号が青に変わった瞬間サイレンを鳴らしながら猛スピードで走り出した。

 

 

 

 

 

東京武偵高校

 

 ガニマールが現場に到着すると、ヒステリアモードの遠山(とおやま)キンジが七台のセグウェイからの銃撃を躱しUZIの銃口を正確に撃ち抜き破壊した瞬間だった。

 

「お見事!」

 

 車内からその光景を見ていたガニマールは感嘆の声を上げる。すると暫くしたら何故かキンジともう一人の少女神崎(かんざき)・H・アリアが痴話喧嘩を始めだした。

 何発か発砲があり流石に不味いと思ったガニマールは車から降りると、日本刀を振り上げたアリアの腕に手錠を投げつけた。手錠はそのままアリアの腕に嵌り近くにあったパイプと繋がった。

 

「「!?」」

「どうだい?メロン叔母さん直伝の投げ手錠は」

「ッ!!アンタは!」

「ICPOのガニマール警部だ。見た所君達は東京武偵高校の生徒の様だし事情聴取のついでに私の車で送って行こう」

 

 

 

 

 

 アリアとキンジは警告灯以外のパーツを格納したプジョーの後部座席で事情聴取を受けていた。

 

「なるほど、やはり武偵殺しか」

「でも犯人は捕まったんですよね?ただの模倣犯じゃ?」

「いや、模倣犯にしては手が込み過ぎている。それにまだ真犯人は捕まっていない」

「捕まってない?」

「さすがはガニマール警部、よく理解ってるじゃない」

 

 ガニマールの言葉に困惑するヒステリアモードから戻ったキンジに対してアリアが話す。

 

「正義・ガニマール四世20歳、アルセーヌ・リュパンの宿敵ジュスタン・ガニマールの曾孫で現警視総監ガニマール三世の息子。史上最年少でパリ警視庁の警部に上り詰め現在はリュパン四世専任捜査官としてICPOに出向中。リュパン逮捕のついでに壊滅させた犯罪組織は数知れず。ただ、肝心のリュパンには親子四代に渡って逃げられっぱなしのお間抜けさん」

 

 アリアの言葉を聞き苦笑いを浮かべるガニマール。

 

「酷い言われ様だが私の事らしい。そういう君は神崎・H(ホームズ)・アリアだね」

 

 ホームズという名前を聞いたキンジは驚いた顔をし、逆にアリアは得意げな表情をする。

 

「へぇ、アタシの事知ってるのね」

双剣双銃(カドラ)のアリア。ヨーロッパで知らない者はいないさ。かの有名な英国の名探偵シャーロック・ホームズの曾孫、ロンドン武偵局所属のSランク、14歳からヨーロッパ各地で活躍し、犯人を99回連続逮捕、狙った獲物は逃さない検挙率100%の女の子」

「良く調べてるじゃない」

「お前って小さいのに凄い奴だったんだな」

小さいは余計でしょ!小さいは!

「ところでガニマール警部は何故日本へ?」

 

 キンジは騒ぐアリアを無視してガニマールに話しかける。

 

「私はリュパン四世を追って日本へ来た」

「リュパン四世って三年前に突然現れた大泥棒の?」

「ああそうだ、かつて世界中を騒がせ私の父とも対決したリュパン三世、奴が人々の前から姿を消して16年後に突如現れた謎の女怪盗。彼女の天才的な盗みのテクニックからいつしかリュパン四世と呼ばれ始め今もなお逃走中の大怪盗だ」

「でも、一年前からポツリといなくなったんですよね?」

「そうだ、私はアイツを探してこの一年間世界中を回ってきた。だが見つかるのはリュパンを名乗る偽物ばかり、そして最後にたどり着いたのが・・・」

「日本って訳?」

「そうだ、奴は必ずここにいる・・・そして武偵殺しに関わっている」

 

 その言葉に驚く二人。

 

「あのリュパン四世が武偵殺し?まさかそんな」

「私は奴が関わっている可能性があると睨んだ世界中の事件に関わってきた。その中で最も奴と関係があると睨んだのが武偵殺しだ」

「何で武偵殺しなの?」

「リュパン四世と入れ替わるように現れ、爆弾や銃器の入手経路など一切が不明。それどころか何時爆弾が仕掛けられたのかすら理解らない。こんな芸当ができるのは奴くらいだ。あんな奴が何人もいてたまるか。」

「でもおかしくないですか?世紀の大泥棒リュパン四世がいきなりいなくなったと思ったら連続爆殺犯になっているとか」

「リュパン三世は殺しの世界チャンピオンとも呼ばれた男よ、四世も似たようなことをしたくなったんじゃないの?」

「かもな、だから私はもう一度彼女に会って理由を聞きたい。そして必ず逮捕する」

「・・・まっ、武偵殺しが誰にせよ犯人は私が必ず捕まえるんだから」

「神埼?」

 

 三人で話している内に武偵高に到着した。

 校門前に車を停め降り立つ二人。登校時間だったため当然多くの生徒が居りパトカーから降りてきた二人は注目の的となった。

 人集りの中から一人の女子生徒(みね)理子(りこ)がキンジに話し掛ける。

 

「あっキー君オハヨー!パトカーで登校とか新学期早々どうしたのー?」

「げっ、理子・・・」

「ん?その子は?」

「あ、そうだった。キンジ、これ返すわ」

 

 タイミング悪くアリアはキンジから借りたベルトを大勢の生徒達の前で返してしまう。その光景を見た理子は勢い良く腕を掲げる。

 

「理子理解っちゃった!つまりキー君は不純異性交遊で補導されたってことでしょ!」

「き、キンジがこんな可愛い子と!?」

「影の薄い奴だと思ってたのに!?」

「女に興味が無いんじゃなかったの!?」

「・・・不潔」

 

 理子の言葉に騒ぎ出すクラスメイト達。焦ったキンジは必死に弁明しようとする。

 

「あ、あのなぁ・・・」

ダァンッ!!ダァンッ!!ダァンッ!!

「「「「ッ!?」」」」

 

 アリアの突然の発砲に皆が固まる。

 

な、ななな何言ってんのこの女!?アタシはそんな尻軽じゃ無いわよ!!

 

 アリア達が騒ぐ中、ガニマールは一人の女子生徒の顔を凝視したまま呟いた。

 

「まさかこんなに早く見つかるとはな・・・リュパン四世

 

 

 

 

 

東京都新宿警察署

 

 ガニマールは二人を送り届けて事件の報告を終えた後、本来の目的であった武偵殺しの現容疑者である神崎かなえとの面会に来ていた。

 面会室のアクリル板越しに二人の刑務官に連れられたかなえが入室する。

 

「初めまして神崎かなえさん、ICPOのガニマールです」

「ICPOの方が私に何か?」

「いえ、少しお話をと思ったのですが・・・成る程、やはり貴女は武偵殺しでは無いですね」

「えっ?」

「いきなりすみません。私、人を見る目には自信がありまして。懲役8()6()4()年の刑に科せられている人がこんなに清廉潔白そうな方だとは思わなくてね」

「あら、そう言ってくれた人は初めてです」

 

 かなえはそういって微笑む。

 

「まぁ、暫くすれば武偵殺しの件は解決するでしょうし、残りも娘さんが解決してくれるでしょう」

「ッ・・・」

 

 その話を聞いたかなえの顔が僅かに曇る。それに気付いたガニマールは話を続ける。

 

「ただ、数々の冤罪を掛けられているにしては貴女は落ち着き過ぎている・・・いや、諦めていると言った方がいいか・・・?」

「・・・・・・」

「まあ、何にせよ貴女の娘さんは今必死になって貴女の冤罪を晴らそうとしています。私も同じ四代目として彼女の事は応援していますから母親の貴女も少しは信じてあげたらどうですか?」

「・・・あの子はまだ・・・」

「神埼、時間だ」

 

 かなえが何かを呟きかけた時、刑務官から面会時間の終わりが告げられる。

 

「今日は有難うございます、短い時間でしたが色々と知ることができました。武偵殺しの犯人は必ず私達が逮捕しますので待っていて下さい」

「有難うございます。そのお気持ちだけで十分です」

 

 連行されるかなえに向かってガニマールは立ち上がり声を掛けた。しかし、帰ってきたのは拒絶の言葉だった。

 

「(彼女の事も気になるが、私の目的はリュパン四世の逮捕だ・・・)」

 

 彼女の秘密も気になるガニマールだったが、自身の獲物はリュパン四世であるという事を改めて思い返すのであった。

 

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