どっちが勝つか四代目!   作:113(いちいちさん)

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さらば愛しきリュパンよ

 

 雨の中、車内で二人の男女が対話していた。

 運転席に座るガニマールともう一人、助手席に座っているのは以前アリア達に逮捕された”イ・ウー”のメンバージャンヌ・ダルクであった。

 

「いきなり呼び出して済まなかったな、ガニマール」

「態々呼び出して何の用だ、ジャンヌ・ダルク」

 

 ガニマールは腕を組むふりをしてホルスターのMAS50に手をかけていた。

 

「そう身構えるな、お前も知っての通り司法取引によって今の私は東京武偵高の生徒だ」

「リュパン然り、あの学校は犯罪者の溜り場にでもなってるのか?」

 

 ガニマールはそう言うと銃のセーフティを掛けホルスターから手を離した。

 

「呼び出したのはリュパン四世についてだ」

「奴の居場所を知っているのか?」

「私どころかアリアと遠山も知っている。知らないのはお前だけだ」

「最近二人でコソコソしてると思っていたが、奴と会っていたのか」

「あまり二人を責めるな、お前と違って奴の話術に耐性が無い」

 

 アリアとキンジは理子の巧みな話術に嵌められガニマールへの口止めをされていたのである。

 

「お前にも教えてやろうと思ってな、リュパン四世の望みを」

「望み?」

「リュパン四世いや、理子の望みは一つ・・・自由だ」

「自由?私の知る限りリュパン以上に自由な存在は知らないぞ」

 

 困惑するガニマールに向けてジャンヌは語る。

 

「理子は幼い頃に両親を亡くした。その後、親戚を名乗る者に引き取られ・・・長い間監禁されて育ったのだ」

「監禁?」

「何年間にも渡って禄な食べ物も与えられず牢獄の中でボロ布を纏って暮らしたという話だ」

「拉致監禁にネグレクト・・・それで?」

「その理子を監禁した者こそイ・ウーのNo.2、無原罪のブラドなのだ」

 

 ガニマールは予想外の大物の名前に目を見張る。

 

「理子は一度そこから逃げ出した。それが三年前だ」

「三年前・・・まさか?」

「そうだ、最初は生きる為の盗みだった。だがやはり血は争えないのか段々と盗みのスリルに魅了されいつしか生きる為の盗みから、盗む為に生きるようになっていた」

「それで気付けば世紀の大泥棒とは・・・伊達にリュパンをやってる訳じゃないな」

「だが、それだけ事が大きくなれば当然ブラドに存在を知られ、二年間に渡る逃亡生活の末再び捕らえられた」

「成る程、世界中を飛び回ってたのはブラドの追跡を逃れる為でもあったのか」

 

 ガニマールは理子のこれまでの行動理由を知り納得する。ジャンヌは一呼吸置いた後話を再開する。

 

「その後、ある条件付きで釈放されたらしい」

「それが初代リュパンを超える、か?」

「そうだ」

 

 ガニマールは理子が何故この一年間盗みを止め、初代を超える事にこだわっているのかを知る。

 そこで彼の最初の疑問をジャンヌに問う。

 

「そもそも、何故私にその事を話した」

「お前にもブラド討伐を手伝って貰いたくてな、正直キンジ達だけでは心許ない」

 

 すると突如車内の温度が下がり窓ガラスが凍りつく。

 

「我が一族にとってブラドは仇なのだ。約120年前、三代前の双子のジャンヌ・ダルクが初代アルセーヌ・リュパンと組んでブラドと戦い引き分けている」

「そんなビッグイベントにも相変わらずハブられているのか?ガニマール家は」

 

 ガニマールはまたも我が家が蚊帳の外なのに不満を抱く。

 

「それで?そのブラド何世ってのはどういう奴なんだ?」

「子孫ではない。ブラド本(・)人(・)だ」

「本人?」

「ああ。奴は人間ではないからな・・・強いて言うなら、鬼だ」

「鬼?」

「あの化け物の事は口で話してもわからぬ」

 

 そう言うと彼女は徐ろに眼鏡を掛けるとカバンからスケッチブックを取り出し何かを描き始める。

 その間も彼女は話を続ける。

 

「奴は昔バチカンから送り込まれたパラディンに一生落ちない文様を付けられたのだ。全身に四(・)箇(・)所(・)あるというその文様こそ奴の弱点。奴を倒すにはその四箇所を同(・)時(・)に破壊しなければならない」

「成る程、確かにそれなら四人居た方が都合が良いな」

「そういう事だ。その内一箇所は不明だが他はわかっている。ここと、ここと、ここだ!」

 

 彼女は描き終えるとページを切り離しガニマールへと渡す。

 そこにはまるで小学生が描いた様なデフォルメされた謎の生き物が描かれていた。そしてその身体の両上腕、右脇腹に印が描かれていた。

 

「例はいらんぞ」

「・・・お前にモンタージュの才能はないな」

 

 用は済んだとドヤ顔のまま車を降りるジャンヌに対して若干引きつった顔のガニマールは呟いた。

 

 

 

 

 

 東京某所の高層ビル最上階。

 アリアとキンジを使いブラドの別荘から母の形見であるロザリオを盗ませた理子は、ロザリオの隠された力により自身の超能力を増幅させアリア達に再戦を申し込むも、東京武偵高救護科の非常勤講師を務める小夜鳴徹(さよなきとおる)に背後から不意打ちを食らい地面に倒れ伏していた。

 

「それにしても、リュパン四世は相変わらずですね」

 

「そうだ、君達にも教えてあげましょう。調べた結果、リュパン家の血を引きながらこの娘には・・・」

「い、言うな!」

「優秀な能力が遺伝していなかったのです。つまり遺伝学的にはこの娘は全くの無能」

 

 自身のコンプレックスを小夜鳴に見下された状態でアリア達に暴露された事で絶望する理子。

 更に追い打ちをかけるように彼女に暴行を加える小夜鳴。

 

「またしてもそれを証明してしまいましたね?四世さん?」

「クッ・・・」

「人間は遺伝子で決まる。優秀な遺伝子を持たない者は努力しても限界を迎えるんです」

 

 

 

 

 

「それはどうかな?」

 

「「「「!?」」」」

 

 突如屋上に響いた声に反応する四人。小夜鳴が振り向くとそこには銃を構えたガニマールが立っていた。

 

「ガニマール警部!?どうして此処に!?」

「まあ色々とね」

 

 突然の登場に驚くキンジ。ガニマールは以前使った発信機をもう一度使い後を追ってきたのだがバレると後々面倒なのではぐらかした。

 

「小夜鳴徹、傷害の現行犯で逮捕する」

「これはこれはガニマール警部。貴方の登場は予想外でしたね」

「リュパンある所にガニマールありってね」

 

 ガニマールの飛び入りに流石に驚く小夜鳴であったが、直に冷静になると彼を煽りだす。

 

「まあ良いでしょう。その様子だと私達の会話も聞いていたようですしね?どうですか?貴方が必死に追いかけていた相手が実は無能な落ちこぼれだった感想は」

「ッ・・・!?」

 

 小夜鳴の言葉にビクリと反応する理子。彼女は震えながらガニマールを見る。

 

「さっきも言おうとしたが、つまり理子は努力の天才って事だな」

「えっ・・・」

「・・・はい?」

 

 彼の言葉に驚く理子と停止する小夜鳴。

 

「自分で言うのもなんだが、私は自他共に認める天才だと思っている」

「それが?」

「つまりそんな私を何度も出し抜いてる理子は無能でも落ちこぼれでも無いってことさ」

「ッ・・・」

 

 ガニマールの言葉に反応する理子。

 

「それが何だというのですか?遺伝子の情報は絶対です。現に彼女は初代も三世も超えられていない」

「ある有名漫画にこんな台詞がある」

「?」

「『落ちこぼれだって必死で努力すりゃエリートを超えることがあるかもよ』つまり理子は成長途中って事だ。それを遺伝子だなんだと勝手に決めつけているのはお前達だ」

「ッ・・・」

 

 まさかのガニマールによる自身の肯定により理子の絶望の眼に僅かに光が戻る。

 

「フフフ・・・面白い冗談です」

 

 徐々に絶望の淵から上がってくる理子を横目に小夜鳴は笑うが、彼の眼は一切の感情を失っていた。

 

「本当はもっと絶望が欲しかったのですが、ブラドを呼べる程には集まったので良しとしましょう」

「ブラドですって!?」

 

 彼の言葉を聞き驚愕するアリア。すると突如小夜鳴の身体が膨れ上がり瞳が紅く染まる。

 

「まさか・・・アンタがブラド!?」

「フフフ・・・少し違いますね。私はブラドが得た遺伝子を使って作られた外側の身体、人間に擬態する為の人格」

 

「「「!?」」」

 

「さあ・・・彼が来たぞ」

 

 膨張した肉体が更に膨れ上がり、肌の色も漆黒に染まり爪が刃物の様に鋭く伸び、顔は牙が生え狼のように変形しその姿は人間から程遠い異形へと変化した。

 

「ッ!?させるか!!」

 

 ガニマールは咄嗟にワイヤー付き手錠を投げ理子の体に巻き付けると思い切り引き寄せた。

 

「小賢しい」

 

 するとブラドの下僕である二匹の狼が理子をキャッチし無防備となったガニマールへと飛びかかる。

 

ダンッ!!ダンッ!!

 

 しかし寸前でキンジの神業により狼を殺さずに無力化する。更にアリアがブラドの四肢に正確に弾丸を命中させる。

 だが、撃ち込まれた弾丸は身体から抜け落ち更に傷も再生する。

 

「ブラド!!ママに着せられた冤罪の99年分はアンタの罪よ!!逮捕して証言台に引きずり出してやる!!」

「俺を逮捕するか・・・面白い事を言うなホームズ家の娘」

 

 アリアの言葉によりブラドの注意が二人に向く。

 

「(さっさとアイツを連れて逃げなさいよ馬鹿!)」

「(此処は俺達に任せてくれガニマールさん!)」

「(二人共、済まない)」

 

 二人の無言の訴えを聞きガニマールは理子を抱きヘリポートへと走る。

 

「フン・・・彼奴等は後回しだ。先ずはお前達だ」

「「ッ・・・」」

 

 

 

 

 ガニマールはヘリポートに辿り着くと理子を優しく寝かせる。

 

「理子、君はここにいなさい」

 

 そう言う彼の袖を理子が掴む。

 

「ガニマール、今直ぐ二人を引かせて・・・ブラドは、ドラキュラ伯爵は強い・・・みんな殺されるわ・・・」

「ホシを前にして逃げる警官が何処に居るんだ?」

 

 そう言うとガニマールは理子の手にロザリオを握らせる。

 

「ッ・・・!」

「ついでに拾っておいたんだ。母の形見なんだろ?」

「どうして・・・私は貴方の敵なのに・・・」

 

 理子は本来敵同士であるガニマールが何故ここまでしてくれるのか理解らず彼に問う。

 

「今のお前はリュパン四世でも何でも無い、誰かに助けを求めている唯の傷付いた女の子だ」

「ッ!?」

「泣いてる子供を助けるのもお巡りさんの役目だからね?」

 

 ガニマールは唖然とする理子を置いて再び二人の元へ戻ろうとするが、理子が呼び止める。

 

「ガニマール!」

「?」

「アタシ知ってるの、ブラドの四つ目の弱点。それは、胸の真ん中」

「そうか、情報提供感謝する!」

 

 そう言うと彼は今度こそ走り出した。

 

 

 

 

 ガニマールはブラドと交戦するアリア達と合流する。

 

「二人共!」

「駄目だわ。何度もあの目玉模様を狙ったけど直ぐ塞がっちゃう」

「早く奴の最後の弱点を探さないと・・・」

「その事だが・・・」

 

 ガニマールは二人に弱点の場所が胸の中央だと説明する。

 

「アイツの事信用できるの?」

「ああ、今の彼女は信用できる」

「ならやってみましょうよ!」

 

 ガニマールとキンジがそれぞれ一箇所、アリアが二箇所を同時攻撃する事のに決まり、動き出す。

 

「一人増えた所で無駄だ!」

「どうかな?・・・カウント五秒前!」

 

 ガニマールがブラドの攻撃を躱しながら合図を送る。

 

「ゼロ!!」

「「ッ!」」

ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!

 

「グゥッ!?」

 

 それぞれの弾丸は弱点を正確に撃ち抜き、これまで攻撃をものともしなかったブラドが初めて唸り声を上げ膝を着いた。

 

「やったか!?」

「グゥッ・・・フフ・・・フハハハハ!」

「何!?」

 

 しかし、弱点を撃ち抜いた筈の傷は瞬く間に再生しブラドは立ち上がる。

 

「残念だったな!」

「そんな・・・」

 

 戦闘の一部始終を見ていた理子は唖然とする。

 

「ガアアアアアァァァ!!!!」

「「「ッ!?」」」

 

 ブラドの雄叫びにより吹き飛ばされる三人だったが何とか体勢を立て直す。

 

「どうすんのよ!」

「とにかく隙を突いてもう一度やるしか無い」

「それで駄目だったら!?」

「その時は・・・どうするか!」

 

 三人はそれぞれ三方向に分かれてブラドを攻撃する。

 

「今度は何をするつもりだ?」

 

 三人からの攻撃をものともしないブラド。

 

「ハッ!?」

 

 その時、理子はある事に気づいた。

 

「フンッ!」

「グッ!?」

「「ガニマール(警部)!?」」

 

 ブラドの砕いたコンクリートが体に当たりガニマールはビル外へと弾き飛ばされる。

 そのまま落下すると思われたが特技の投げ手錠で手すりに引っかかり事なきを得る。

 

「しつこい野郎だ」

 

 だが手錠の掛かった手すりをブラドが破壊した事で今度こそガニマールは落下する。

 

「ガニマール警部!!」

「ッ!・・・理子!?」

 

 しかし、飛び出してきた理子が彼の手を掴むと仕込みパラシュートを開きビル街を滑空する。

 

「助かったよ理子」

「さっきは御免ガニマール・・・でも解ったわ、本当の弱点」

「本当か!」

 

 何と理子は先程の戦闘でブラドの本当の弱点を見抜いたらしい。

 

「成る程・・・よし、協力してくれ理子!」

「でも・・・アタシを信用できるの?」

 

 先ほどの失敗から自信を無くした理子はガニマールに聞く。

 

「ああ、ブラドに一泡吹かせようぜ、理子?」

「・・・ええ、私は理子!峰理子よ!!」

 

 そう言うと彼女は風の流れを掴み屋上へと上昇する。二人は交戦中のアリア達を見つけると二人の側に着地する。

 

「理子!」

「ガニマール警部!」

「二人共、もう一度弱点を狙うぞ」

「でも、それは効かないんじゃ?」

「私に考えがある」

 

 二人はガニマールの話を聴くと再び銃を構える。

 

「また悪あがきか?」

 

「行くぞ、五・・・」

 

 ガニマールのカウントが始まるとともにブラドが迫る。

 

「無駄だと言っているだろ!」

「ゼロ!!」

「「「ッ!!」」」

ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!ダンッ!!

 ガニマールの掛け声と共に再度弱点を狙う。

 

「また無駄玉か!」

「そこ!!」

ダンッ!!

 その瞬間、ブラドが油断した隙を突き三人の背後から理子がFNブローニングM1910で彼の口を狙い撃つ。ブラドはかつて無いほどの動揺を見せるが防御は間に合わず弾丸はブラドの口内に命中した。

 

「グアアアァアアァァァ!!!!」

 

 ブラドはこれまでとは比べ物にならない程苦しみ藻掻くと地面に倒れそのまま動かなくなった。

 

「やったの?」

「ああ」

「でも良く弱点が舌だと解ったな?」

「キー君達が戦ってた時、何故か顔だけは攻撃が当たらないよう動いているのに気付いたからまさかと思ったの。貴方達は必死で戦ってたから気づいてなかったみたいだけど」

「なるほどな」

 

 理子の説明に納得するキンジ。そこにガニマールが話しかける。

 

「どうだ?曾祖父さんにも倒せなかったブラドを倒した感想は?」

「ふぅん?じゃあアンタ、今初代リュパンを超えたって訳ね?」

「!」

 

 二人の言葉に笑みが溢れる理子、しかし直に覚悟を決めた表情をする。

 

「そうね・・・もう思い残す事は無いわ」

 

 すると彼女は両手をガニマールに差し出す。

 

「良いのか?」

「ええ」

「・・・分かった。峰理子リュパン四世・・・逮捕する」

 

 ガニマールが彼女の腕に手錠を掛ける。アリアとキンジはそれを黙って見つめる。

 

 

 

 

 

「・・・・・・なぁんて、ウ・ソ♪」

 

 手錠を嵌めた手首が外れると、断面から勢い良く煙が噴き出した。

 

「なッ!?」

 

 ガニマールは直ぐに風下へ腕を投げ捨てるも既に理子の姿は無い。

 

「ごめんね?まだ当分捕まりたくないの♪」

 

 三人が声のした方向へ振り向くとビルの手すりの側に立つ理子を見つける。

 

「アンタ!」

「アタシ、イ・ウーを抜けるわ。これからはリュパン四世として本格始動するわ!」

「その呼び方嫌いじゃなかったのか?」

 

 キンジの言葉にちらりとガニマールを見て理子は答える。

 

「もう大丈夫、アタシを唯の理子として見てくれる人は一人で十分だもん♪ね?正(・)義(・)?」

 

 そう言うと彼女はビルから飛び降りるとパラシュートを開き東京の夜景へと消えていった。

 

「フッ・・・リュパン四世、次は必ず逮捕して見せる」

 

 ガニマールは理子の飛び去った方向を見ながら笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、再び活動を始めたリュパンを追ってICPOに銭形歳子が出向しガニマールとコンビを組むことになったり、理子が父の相棒の娘を名乗るマグナム使いと古の大泥棒の十四代目を名乗る剣豪娘に出会いなんやかんやでチームを組むことになるがそれはまた別のお話。

 

 




 三話から間が空いて申し訳ありませんでした。これにて完結です。最後まで読んで頂きありがとうございました。
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