勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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前に書いていたオリジナル小説のリメイク作品です。
駄文ではありますが、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
m(_ _)m





第一話

 

 

 

働かねばならぬ。有り体に言えば金が要る。

勇者とはいえ、霞を食って生きられる仙人ではない。

腹が減る以上、日銭を稼ぐ必要があった。

しかし、この異世界には俺が元いた世界では当たり前のモノがなにもない。

スマホがない。ネットがない。ないない尽くしの異世界生活。

高校の授業で習ったテスト以外で何時使うのかわからない公式は、やはり飯の種にはならなかった。すると、出来ることは肉体労働くらいだ。

それも身分が保障されない異世界人である俺であっても、雇って貰える仕事。

俺は必然的に日雇い労働者(冒険者)に成っていた。

 

仕事を得るため、冒険者組合への道を歩いていると後ろから声を掛けられた。

 

「おう!四条《しじょう》!おはよう!今日もおまえは前髪が鬱陶しいな!」

 

振り返れば其処に居たのは見知った顔。

軽装の鎧に身を包んだ女冒険者の火風(かふう)が居た。

銀髪ショートヘアに薄紫色の瞳は、異世界に来た当初は物珍しく思えたが、今となっては日常風景に溶け込んでいる。

異世界人のナチュラルカラーは奇抜だ。

 

「そういう火風は今日もデカいな。また背が伸びたんじゃないか?」

「ぐっ、おまえはまたそうやって人のコンプレックスを・・・。この年になってまだ背が伸びてたまるか!・・そっちの背が縮んだんじゃないのか?」

「お、おまっ、言ってはならない事を言ったな!このデカ女!」

「デカ女⁉な、ならおまえはチビ男じゃないか!」

「俺はチビじゃない!平均身長(170センチ)くらいはある!」

 

「あの二人、またやってるよ」

「相変わらず仲が良いのねえ」

 

通りがかりの人にクスクスと笑われた。

俺と火風は黙り込む。

 

「・・・目立つ真似はよそう」

「・・・そうだな。悪かった」

 

恥ずかしい思いをしながらも目的地は同じなので仕方なく並んで歩き、俺たちは冒険者組合の建物に到着した。

“冒険者”。

実に異世界的で魅力溢れる言葉の響きだ。俺も初めて聞いた時は心が躍った。

しかし、現実は、寂れている冒険者組合の建物を見ればわかるとおりだ。

今の“冒険者”に夢はない。魔物を活性化させていた魔王亡き後、魔物が人前に現れることはめっきり減った。すると魔物を狩ることを生業としていた冒険者の需要も減り、そんな時代が80年も続けば“冒険者”という職業自体が寂れ廃れるのも当然と言えた。

 

今の時代、冒険者=日雇い労働者(定職に就かない者たち)というのが社会の認識。

進んで冒険者になる若者は殆どいない。居るのは火風のような変わり者か、俺のように他の選択肢が無い者くらいだ。

 

建物の扉を開けて中に入るが、やはり人はまばら。建物自体は大きく立派だというのに、中に居たのは5人だけ。しかも、その内の4人は朝から酒を飲んで酔い潰れてテーブルに突っ伏していた。

俺と火風は心地よく眠る先輩方(おじいちゃんたち)を起こさない様に受付へと向かう。

受付には俺と同じ目隠れ族の受付嬢がいた。こんな状況でも冒険者組合に受付嬢(職員)がいて、古いが立派な建物があり、曲がりなりにも冒険者という職業が機能しているのは魔物が活発であった時代の名残を組んでいるからだ。

元々、冒険者組合は国中に蔓延る魔物という脅威に対抗するため国が支援して設立された組織。魔物の脅威が減った現在も税金により、運営がされている。議会では、無駄金を垂れ流すなと批判されることもあるという。

その話を聞いた時、俺は故郷を思い出してなんとも言えない気持ちになった。

そして、俺がそんな事をしている間に、火風が抜け駆けして受付嬢に話しかけていた

 

「おはよう。今日は実入りの良い仕事があるか?出来れば下水道掃除以外のものが良い。あれは確かに給金が良いが、やると次の日まで匂いが残って困る」

 

なんて奴だと内心で火風を詰りながらも、冒険者組合に来る依頼は基本、早い者勝ち。ルールに則り、俺は大人しく火風の後ろに並んだ。

しかし、何故か火風が直ぐに振り返って俺を見てきた。

 

「な、なんだよ」

()()。朗報だぞ。実入りの良い仕事があるらしい」

「そりゃ、良かったな。おめでとさん」

 

ニコニコと笑いかけてくる火風の真意が読めないでいると、バシバシと肩を叩かれる。身体(身長)デカい(180センチ以上)だけあって、火風の力は強く叩かれると普通に痛い。

 

「旅の護衛の仕事だ。依頼主は二人以上の護衛を希望しているらしい」

「なるほど・・・。そりゃ、良かったじゃないか。ほら、火風。尊敬出来る先輩方の中から、誰でも好きな奴を選んでこいよ」

 

俺は後ろでテーブルに突っ伏して寝ている先輩方(おじいちゃんたち)を振り返って見た後、火風に向けてにこやかに笑いかける。

火風は露骨に嫌そうな表情をした後、むっとした顔をする。

 

「いじわるを言うなよ」

「頼み方があるだろ」

「この街に私とおまえ以外に真面に活動している冒険者はいない。勿論、給金は山分けだ。おまえにも悪い話じゃないだろう」

「確かに悪い話じゃないな。だが、俺は火風が頭を下げるのをみるのが、たまらなく好きなんだ」

「このヘンタイめ」

「なんとでも言うが良いさ」

 

火風は呆れた様子で溜息を吐いた後、頭を下げてきた。

 

「お願いします」

「こちらこそ」

 

此方も頭を下げ返し、契約は成立。

俺は火風と共に護衛の依頼を受ける事になった。

 

 

 

 

 

ーーー✠ーーー

 

 

 

 

 

魔人族の少女がペコリと小さな頭を下げた。

 

「アーの名前はアーエー・シューハマーと言いますー。よろしくですー」

 

小柄な身体によく似合う黒髪のおかっぱ頭。

アーエーと名乗った彼女は、一見すれば可愛らしい少女だった。

しかし、額に生えた深紅の角は彼女が魔人族である証。

“魔人族”。人間と良く似た姿を持ちながら、人間よりずっと高い魔力と強靱な身体。長い寿命を持つ種族。一見すれば少女である彼女も、もしかしたら実年齢は俺よりも高いのかも知れない。

 

「よろしく。アーエーさん。俺は四条。で、こっちは火風」

 

そんな事を考えながら差し出した手を、アーエーは握ることなくジッと見つめていた。

この世界にも握手の文化はある。が、しかし、それは人間の国であるこの国独自の文化だったのかも知れない。なにしろ、俺が魔人族を見るのはコレが初めてだ。

もしかしたら、魔人族には握手の文化がないのかもしれない。

そう考え、手を引っ込めようかと考えた所でアーエーの手が触れた。

 

「・・・よろしくするのですよー」

 

なんてことはない。血の通った人間と同じ温かさの小さな手だ。

しかし、あの()は何だったのかと思った所で火風が肩をぶつけてきた。

さっさと退けと言わんばかりの態度に思わず睨み付けるが、俺の視線など気にする筈もない彼女は、普段通りの尊大な態度でアーエーに話しかけていた。

 

「さっさと仕事の話をしようじゃないか。契約が成立する前に深める親睦ほど、無駄なものはないからね!」

「はいですー。と、言っても此方の条件は冒険者組合を通じて出したとおりなのですー。アーは王都を目指して旅をしているのでー、お前たちにはその護衛をお願いしたいのですよー」

「護衛は王都に着くまでではなく、行けるところまでで良いとのことだったが、相違はないか?」

「はいですー。王都は遠いですからねー。お前たちとの契約が切れた後は、また別の護衛を探すつもりですよー」

「よろしい。じゃあ、最後の確認なのだが・・・何故、()()()であるあんたに護衛が必要なんだ?」

 

俺はその疑問の意味がわからなかった。

しかし、続く火風の言葉で彼女の言わんとしている事を理解した。

 

「魔人族は人間よりずっと強い種族だ。あんたも見た目通りの年齢じゃないんだろう?魔物の脅威が去って久しい現代、旅の脅威は賊だ。そんな奴ら、あんたなら蹴散らせると私は思うんだ」

「買いかぶりですー。アーはか弱い女の子なのですよー」

「アハハ!面白い冗談だな!」

 

火風は笑うが、目が笑っていない。彼女はアーエーを警戒している様子だった。

火風は強い。そんな彼女がアーエーのことを(つわもの)だというのなら、そうなのだろう。

俺には感じ取れないナニカを感じ取っているのだと思う。

アーエーの身のこなしとか、雰囲気とか、気配とかが、(つわもの)なのだろう。

たぶん。おそらく。エトセトラ。

 

しかし、そんな事は関係がないんじゃないかと俺が言えば、火風は驚いた様な表情を浮かべた。

 

「なあ、火風。強いとか弱いとか、関係なくないか?女の子の、いや、アーエーさんは俺より年上かも知れないけど、兎も角、女性の一人旅だ。護衛くらい、つけても何も変じゃないだろ」

「・・・そうか?いや、でもなあ」

 

火風は腕を組んで難しい顔をしている。彼女の中で何がそんなに引っかかっているのか、俺にはわからない。いや、疑問を持っている部分はわかる。

強者が金を出してまで誰かの助けを得ようとする感覚が、彼女にはわからないのだ。

同じく強者である故に、理解が出来ないのかも知れない。

 

「例えばだ。火風、お前が旅に出るとして、一人で行くか?」

「一人で行くな」

「そうだな。お前はそういう奴だ。だが、旅に出る為に街を出ようとした時に、俺が街の出口で昼寝をしていたら、お前はどうする?」

「引きずって連れていくな」

「そうだな。お前はそういう奴だ」

「・・・」

「・・・」

「おまえは何が言いたいんだ?」

「さあな、俺にもわからん」

 

説得は失敗した。全ては俺の語彙力の無さが悪かった。

仕方がないので多少強引にでも話を進める方向に切り替えることにした。

 

「俺の故郷には【旅は道連れ世は情け】と言う言葉がある。意味はあれだ。旅は一人より連れが居た方が楽しいって意味だ。たぶん。だから、旅に誰かを連れて行くのに、なんか楽しそう以外の理由なんて要らないんだよ」

「なるほどなあ、それは何となく理解できるな!」

「つまりはそういうこと。わかったな」

(おう)!」

 

勢いで乗り切れた。俺は火風のこういう所が大好きだ。

 

「そういう訳で、アーエーさん。この依頼、俺たちが責任を持ってお受けします。護衛は任せてください」

「おまえたちに護衛を任せることにー、そこはかとない不安を感じるのですー。でもまあー、それはそれで面白そうですねー」

 

こうして俺たちは魔人族の少女?アーエーと王都を目指して旅をする事と相成った。

火風は()()がいい。決まってしまえば先ほどまでアーエーに向けていた疑念の目は消えて、生来の人当たりの良さで彼女と談笑をはじめていた。

 

「火風と四条は付き合っているのですかー?」

「私と四条(あいつ)が?まさか、違うさ。ただの腐れ縁だ。第一、あいつの好みのタイプから私は程遠いからな。あいつの好みのタイプは自分より背の小さな女だぞ。まったく、本当に小さな事を気にする男だとは思わないか?」

「そうなのですかー、お似合いに見えたのにー。アーの勘も鈍りましたねー」

「私とあいつがお似合い?アハハ!面白い冗談だな!」

 

なんとも入り込みにくい話題で盛り上がっている二人を見ながら、溜息を吐く。

そして、俺の視線は自然とアーエーの方へと向かう。

正確には彼女の額に生える魔人族である証の角。

魔人族。彼らの王はかつて“魔王”と呼ばれていた。

勇者(俺たち)(たお)す筈だった魔王(もの)

 

魔王はもういない。80年も前に斃されている。

それでも俺たちは異世界召喚され(呼ばれ)てしまった。

その理由(意味)を知りたくて、俺は初めて出会った魔人族であるアーエーとの繋がりを絶やさない為に強引にでも火風を説得した。

 

理由(意味)なんてない。そんな事がないことを、願うばかりだった。

 

 

 

 




登場人物。

主人公ー四条獅子丸。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。

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