勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m




第十話

 

 

 

留置所からの脱獄は、不思議なほどに上手くいった。それを幸運だと雷汞は笑っていたが、偶然(それ)が幸運どころの話では無い事には気が付いていた。

何しろ俺たちは、誰一人ともすれ違うこともなく、騎士団の敷地内から出ることができたのだから。

 

「・・・人の気配はするのに、誰にも出会わないで済んだ。これを幸運だと笑えるお前の単純さが羨ましいよ」

 

路地裏でたむろして、俺たちは話をしていた。

 

「どうしたんですかい?いきなりオイラを褒めたって、何も出やしませんぜ」

「褒めてはないんだけどな」

「旦那。あんまり難しい事を言わねぇでくだせえ。それより、これからどうしやす?」

「・・・そうだな。切り替えて行こう」

 

不安はあるが、気にしすぎていても仕方がない。

時には流れに沿うことも重要だ。往々にして、そうしていた方が好牌(ツキ)が回って来たりする。

俺は雷汞に向き直り、彼を見上げる。

 

「短い間だったが、世話になったか?まあ、兎も角、此所でお別れだ。俺は俺でやるべきことがある。お前の、復讐。・・・応援しているよ。頑張ってくれ」

 

同級生(クラスメイト)を殺そうとする雷汞を応援するのは、正直に言って後味が悪いのだが、俺に正当な復讐を止める権利は無い。

だから、無難な別れの挨拶をして終わりにしようとした俺の肩を雷汞が掴んだ。

 

「旦那、待ってくだせえ。へへへ、水臭えじゃねぇですかい。旦那には借りが有りまさあ。やることがあるってんなら、力になりやすぜ」

「はあ、だが、お前にも復讐(やること)があるだろう?」

「へい。けど、オイラが捕まっている間に、連中はもうこの街から出てってちまってる筈でさあ。行った先の手がかりもねぇ。だから、旦那について行こうと思うんでさあ」

「・・・何でそうなる」

「オイラの勘がいってんだ。そうした方が良いって。へへへ、ここはひとつ、旦那の世話になりやすぜ。なあに、必ず役には立って見せさあ。オイラはこう見えて器用なんですぜ」

「・・・勘、か。わかった。好きにすると良い」

 

確かに、それは雷汞の復讐への近道になるだろう。

何しろ、彼の復讐相手は三年A組(クラスメイト)の誰かなのだから。

 

「なら、その前に格好をどうにかしてくれ。今のお前は・・・あれだ。目立って仕方がない」

 

長身長髪の無精髭を生やした男。

今の雷汞の風体は浮浪者そのものだ。

流石にそんな彼を連れて、街を歩き回る訳にもいかない。

 

「おっと、そうでした。牢屋に入れられてから、碌に髭も剃ってねぇんだ。確かに之じゃあ、旦那にも失礼ってもんだ。直ぐに見れる格好にしまさあ。・・・って、言いたいところですが、髭剃りは勿論、ナイフだってオイラは持ってねぇんでさあ。旦那、刃物なら何でもいいんですが、ありやすかい?」

 

雷汞は騎士団に拘束される際、身体検査で刃物の類いは全て没収されたという。

容疑者に対する当然の行為は勿論、俺も受けている。

だから、ない。・・・と、言いたい所だが、有った。

 

「・・・鬼百足。一本刃(いっぽんば)

 

俺の呼び出しに応じて、地面が盛り上がり、鬼百足が姿を現す。

そして、顎肢(がくし)の間にある口から刀を吐き出した。

それは刀身に反りのない真っ直ぐな直刀。

雷汞は目を丸くして驚いていた。

 

「さ、流石は旦那だ。使い魔に武器を喰わせて、隠し持っていたなんて」

「いや、この刀は鬼百足の体内で作られたモノだ。彼らは鉱物を喰らう。そして、消化した後の残渣物で作ったモノが、この刀だ」

「なるほどつまりは、うんこですかい」

「うんこじゃない。うんこは口から出ないだろう」

「・・・吐き出したうんこじゃねぇですかい?」

「ぶん殴るぞ。文句があるなら、貸さないからな」

「いえいえ、借りやす借りやす。へへへ、いやあ、ありがてぇなあ」

 

雷汞は受け取った直刀で器用に髭を剃った後、髪まで切って整えた。

 

「・・・本当に器用なんだな」

「へへへ、まあねえ。よかったら、旦那の髪も切りやすぜ?」

「なんでだよ」

 

軽口をたたき合っている間に雷汞の身なりが整った。

髭を剃り、髪型を整えて、長い髪を道に落ちていた紐で結っただけだったが、正直に言って見違えた。

 

「どうですかい?これなら横を歩かれても恥ずかしくねぇでしょう」

「・・・ああ、イケメンだな」

「へへへ、ありがとうございやす」

「・・・高身長イケメンとか、火風の好みじゃんか」

「へい?なんか言いましたか?」

「チッ、死ねばいいのに」

「い、いきなりおっかねぇこと言わねぇでくだせえよ」

「冗談だよ。それより、これからどうするかなんだが、正直に言って俺にも当てがある訳じゃないんだ」

 

紆余曲折を経て、脱獄をしてしまった以上、俺は自らの無罪を証明する為に真犯人を捕まえる他にない。しかし、宿屋爆破の実行犯である佐助は既に死んでしまっている。

残る手がかりは俺を襲った襲撃者の中で、唯一生き残っている男。

宿屋から逃げ出したアニキと呼ばれていた男だ。

しかし、その男も恐らくは捨て駒。

俺の知る宿屋爆破の真犯人、あの同級生(クラスメイト)と繋がっている可能性は低い。

 

しかし、無いよりはマシか。

そう思い直して、雷汞に訪ねる。

 

「ある男を捜したい。どこか怪しい奴が身を隠しそうな場所に心当たりは無いか?」

「へへへ、そういうことなら任せてくだせえ。オイラがクソ勇者共(連中)を探している時に目を付けたクセえ場所がいくつか有りまさあ。其処を回ってみましょうぜ」

 

 

 

 

ーーー✠ーーー

 

 

 

 

犯罪者たちの間で“人形家”と呼ばれる男がいた。

彼は6歳~12歳までの少女の死体を墓場から盗みだし、それを材料に人形を作る事を生きがいとしていた。

ずっと娘が欲しいと思っていたその男は、娘を作るために仕方なく好きでも無い女と結婚した。しかし、そうして産ませた子供は男児だった。男はその妻子を捨て、二人目の妻を娶った。しかし、次の子供も男児。それが四度も続き、男は人形作りに傾倒し始めた。

男の作る死体人形は美しかった。特殊な技術を用いる事でほぼ生前の姿を保っている。

血の気のない青白い肌。丹念に手入れをした艶のある髪。生気なく瞳孔が開いた眼。

そんな美しい娘達を男が性的に消費することはない。

男は娘達を美しく着飾り、身体の中に耳鳴琴(じめいきん)(オルゴール)を埋め込んで触れれば歌い出す様に改造して、一緒に合唱を楽しむのだ。

 

好きでも無い妻と子供達を捨てて、物言わぬ娘達との生活を楽しんでいた男に転機が訪れたのは半年ほど前のことだった。

 

“人形家”としての男を訪ねて、ある勇者がやってきた。

 

『へえ、面白い事してんじゃん。イイねえ、やっぱ人生、楽しまなきゃ生きてる意味ねぇもんなあ。オレがもっとオマエの人生を楽しくしてやるよ。その人形、動くようにしてやろうか?』

 

七つの枝刃を持つ七支刀(しちしとう)の神器を持つ勇者と出会い、人形家が作った娘達(にんぎょう)は変わった。

ぎこちなく笑うようになり、手足を動かせるようになった。

そんな娘達と抱き合い、男は産まれて初めてこの世界に産まれて来て良かったと涙した。

血の繋がり等という些細なもので分け隔てられていた。

あの世とこの世の再開。

娘達を変えた勇者。

それは男にとって神の偉業に等しい。

 

“人形家”-我楽(がらく)はその日、彼にとっての救世主(勇者)に出会ったのだ。

 

 

 




登場人物。

主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
好物:発酵食品。
趣味:麻雀。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。

女騎士ー亞呂恵。
肩書き:地方騎士隊第二十三分隊副隊長。
好きな人:愛羽明人。

勇者ー愛羽明人。
肩書き:召喚勇者。騎士団本部騎士団長補佐。
好きな人:四条獅子丸。

チンピラー雷汞。
肩書き:脱獄囚。

犯罪者ー我楽。
肩書き:人形家






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