勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m




第十三話

 

 

突撃(ドラ)ァア‼」

 

四条の咆吼を聞いた雷汞は息を呑む。まだ短い付き合いだが、雷汞は四条の事を物静かな男だと思っていた。前髪で視線を隠し、隠れた瞳で相手を観察し、常に思慮深く行動する。

勢いで行動する自分とは正反対の男。

最初、そんな男を彼が“旦那”と呼んだのは、彼を持ち上げて気を良くさせて助けて貰う為だった。

しかし、牢屋から助け出されて街へ出で、これで旦那(四条)は用済みだと逃げだそうとした雷汞は見てしまった。

長い前髪の間に覗く赤い瞳。

 

(只者じゃねぇ雰囲気。それに使い魔。()()()()()()()()()()()、最初から見抜いていやしたが・・・なんてヒデェ眼をしてやがる)

 

常に思慮深く行動する男。

その評価が間違っていたと、その眼を見たときに知った。

 

(そもそも思慮深い野郎が騎士団を敵に回す筈がなかった。騎士団なんて怖くねぇってイキる野郎は多いが、実際に敵に回せる奴は少ねぇ。当たり前の事でさあ。騎士団を敵に回すってこと、国中の騎士から追われるってことでさあ。晴れて犯罪者の仲間入りだ)

 

彼は出会って間もない自分の脱獄に手を貸してくれた。

その上で復讐を望む自分を応援してくれた。

思慮深い?どこがだと、雷汞は歯を見せて笑った。

 

目の前で繰り広げられる具足虫とネクロスライムの戦い。

魔物使い同士(四条と我楽)の戦い。

具足虫の堅い外殻すら溶かす消化液を撒き散らす高性能(スペック)なネクロスライムの戦闘力に任せて暴れさせている我楽とは違い、四条は隠語と身振り手振りを用いて具足虫の大群に指示を出しながら戦っていた。

その動きによって垣間見える赤い瞳。

そして、僅かに覗く白い歯。

紛れもない。

四条()点棒(生命)のやり取りを、麻雀(戦い)を楽しんでいた。

 

(そんな野郎が、真面で有る筈がねぇ。野郎は、オイラが旦那と呼ぶに足る御方だ‼)

 

雷汞の目的は故郷(スラム)を焼いた勇者への復讐。

自分を信じてくれなかった権力への復讐。

その為に必要なのは、焼かれた故郷を思い共に泣いてくれる優しさでも、権力を恐れる賢さでも無い。

 

両面待ち(リャンメン)、いや、待ち変えッ!全軍突撃(ドラドラ)(のち)狙い打て(地獄単騎)‼」

 

人智を超えた暴力と、それを敵に対して躊躇いなく振るうことが出来る勇気だ。

 

「やっちゃってくだせえ‼旦那ァアアア‼」

 

一匹の具足虫を残して放たれた飽和射撃(体当たり)

後に放たれた一撃が、ネクロスライムの核を貫いた。

 

 

 

 

ーーー✠ーーー

 

 

 

 

後ろで観戦していた雷汞がフラグを立てる。

 

「やったか⁉」

 

それを聞いて俺は今の一撃での終局(ハコワレ)は諦めた。

案の定、我楽の前に立ちはだかる魔物、ネクロスライムは “核”を潰されたと言うのに健在。冒涜的な触手は萎える事なく空中の具足虫(彼ら)を捕らえようと蠢いている。

 

「アッハハ!無駄無駄、僕がコイツを作るの何体(いくつ)死体を使ったと思っている!心臓()が一つ潰れた位じゃ、ネクロスライムは止まらないのさ!」

 

ネクロスライムの不定形の粘液(身体)が、いくらダメージを与えた所で意味がなかった。

だから、半透明な身体の中で透けて見えていた核が弱点だと考えた俺の考えは間違っていなかったようだが、なるほど・・・確かに体内にはまだ幾つもの核が残って居るのが見えた。

あれら全てを潰すのに、果たして何匹の具足虫たちを死なせてしまうのか。

地獄単騎(狙い撃ち)で一つの核を潰した具足虫が、ネクロスライムの体内で溶かされていくのが見えた。

具足虫(彼ら)に感情は無い。しかし、情動はある。

悲しければ泣き(鳴き)、楽しければ笑う(鳴く)ことを、俺は知っている。

それでも俺は戦闘中に具足虫(彼ら)が同胞の死を嘆くのを見たことがない。

昆虫は涙を流さない。

代わりに俺の左眼孔から、赤い()が流れた。

それを見て我楽が笑う。

 

「そのチカラ、やはりタダじゃないみたいだね。僕が他人の死体を使ってネクロスライムを動かしているように、お前は自分の生命(イノチ)を消費でもしているのかい?馬鹿だね。核一つ潰すのに、そんなにフラフラになっちゃってさあ。そんな風じゃ何匹使い魔が居たって、僕のネクロスライムは殺せないよ」

「・・・馬鹿は、お前だろう」

「はあ?」

 

 

「具足虫ッ‼連荘(れんちゃん)だ‼」

 

 

何匹死んだ。

具足虫(彼ら)は、何匹も死んだ。

最初の頃は【神器:天害蠱軍】の特性上、そういうものだと思い込もうとしていた

所詮は召喚(よべ)ば無限に湧き出る道具。

虫ケラの命に頓着する必要など無いと、思い込もうとしていた。

しかし、そうした時に思い出す。

 

“誰が召喚(呼ん)だの?(笑)”。

 

()()()()()()姿()

同じだった。俺も同じになるところだった。

同じだった。俺も“彼ら”も、()()()()()()―――俺も“彼ら”と、同じモノを()()為に、左眼を(えぐ)ったんだ。

 

虚空が開闢(ひらく)

彼らは羽音を立ててやってくる。

 

「“俺たち”の前で数を問題にするなんて、馬鹿としか言えないんだよ」

 

無限に湧き出す地神の落し子(尖兵)

必要なのは犠牲を厭う心ではなく、積み上げた死体の山の上に立つ覚悟。

 

「ネクロスライムの核はあと幾つだ?見えている限り、七つか八つ。ソレで足りるとおもっているのか?」

 

“彼ら”もソレを望んでいる。

熱を帯びる左眼孔が、そう感じる。

“彼ら”の鳴き声が、脳に伝える。

 

「俺たちの(点棒)はまだ、ハコワレにはほど遠いぞ」

「わ、わっけわかんねえ!お前ら、気持ち悪いんだよ!」

 

我楽は異界に繋がる虚空から湧き出す具足虫に気圧されていた。

そうなったのなら、彼が俺たちを恐れたなら、()()()と俺はほくそ笑む。

 

「殺せ!ネクロスライム‼」

「テンパイ!具足虫‼」

 

麻雀という遊戯を通じて、俺は様々なことを学んだ。

世の中には学ばなければならないルールがあること。

そのルールの裏をかくことが出来ること。

良い大人がいること。

悪い大人がいること。

リスクとリターン。

感動と絶望。

そして、あらゆる勝負事に通じるだろう心理。

相手の手牌(チカラ)を恐れれば、己の手は縮こまる。

 

そこに()()()()()が生まれる。

 

「アハ、アハハ!ネクロスライム!いいぞ!そのままあいつの使い魔なんて、食い尽くしてしまえ‼」

 

ネクロスライムの触手が飛び回る具足虫たちを捕食していく。

数が増えようと我楽の魔物と俺の牌たちの相性の悪さは簡単には覆らない。

ならば、どうする?

召喚する具足虫の数を増やすか。ある意味、それが正解。

圧倒的な物量を前にすれば、相性に意味はなくなるだろう。

だがしかし、それは“必殺”。

怪物家-我楽とは、俺が“必殺”を切るの敵か?

(いな)()()()()必要などない。

 

 

殺したくなければ、殺さなくていいんだ。

 

 

「・・・当たり前、だよな」

「さっきからブツブツと一人で何言ってんだよ!そういう所が、気持ち悪いんだよ!」

神器(左眼)が熱を帯びると、脳も熱くなって、そんな当たり前の事も忘れそうにな」

「集中しろよ!僕らの戦いはッ、まだ終ってないんだからさあ!」

「いや、()()()()()()

 

そう言って俺は我楽の背後を指さした。

 

「後ろ、見て見ろよ」

「はあ?僕がそんな誘導に引っかかるわけないだろ」

「最初は警戒していた様子だったけど、途中から足下がお留守だったぞ」

 

だから、簡単に捕まえられた。

我楽の背後で異音が鳴る。

それは具足虫の羽音でも鳴き声でもない。

別種の怪虫(ムシ)が数多の足を動かし、地面を這いずる音だった。

 

「あ、ああ!まさかッ!」

 

我楽が顔を青くしながら振り返る。

気づいた時にはもう遅い。

彼が目にしたのは愛する娘たち(ネクロガールズ)巨大な百足(鬼百足)に巻き付かれている光景だった。

 

「廃教会の地下にあった死体安置所。お前は其処で死体の娘たち(ネクロガールズ)と暮らしていたんだろう?最初に、お前が教えてくれたことだ」

 

我楽が死体の娘たち(ネクロガールズ)と暮らす地下室の入り口から、十数匹の鬼百足が這い出してくる。

 

「俺の【神器】の強みは“物量”。そして、俺から離れた場所でも【神器】の“強み”が、失われないことだ」

 

這い出してきた鬼百足たちは、それぞれが死体の娘たち(ネクロガールズ)に巻き付き引きずっている。

驚くべき事に死体の娘たち(ネクロガールズ)たちは我楽の姿を生気のない眼で見た瞬間、次々に口を開いた。

 

「がらくおとーさん。いたい」

 

それまで鬼百足に巻き付かれても悲鳴の一つも上げない“彼女たち”を、俺は人形の様なものだと思っていた。

そんな彼女たちが口を開いた。

 

「がらくおとーさん。たすけて」「がらくおとーさん。くるしい」「がらくおとーさん。どうして」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」「がらくおとーさん」

 

舌足らずな声で我楽に助けを求めていた。

 

「がらくおとーさん。たすけて」

 

鬼百足に襲われる死体の娘たち(ネクロガールズ)を前に、我楽は我を忘れて駆けだしていた。

 

「嗚呼アアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼」

 

ネクロスライムの傍らから離れた我楽に、次々と具足虫たちが襲い掛かる。

 

「この、害虫が!やめろ!僕の家族から離れろ!やめろ!やめろ、やめてくれ!娘達には手を出さないでくれ‼」

 

具足虫に襲われる我楽は転び地面に倒れる。その上に具足虫たちが乗り、動きを封じた。

我楽は鬼百足に襲われている死体の娘たち(ネクロガールズ)に向けて懸命に手を伸ばすが、その手は届かない。

 

「やめろ・・・。やめろよぉ・・・」

 

絶望する我楽の元に俺はゆっくりと歩み寄る。

 

「やめろ!やめさせてくれ!娘達には手を出さないでくれ!」

 

懇願する我楽。

これではどちらが悪者か分からない。

溜息を吐いていると雷汞が駆け寄ってきた。

 

「この野郎を捕らえたのと同時に魔物が動きを止めやした。やっぱり旦那はすげぇや」

「話を聞いて、我楽の弱点は最初からわかっていた。後は隙を見て鬼百足を向かわせるだけだったけど、隙を作るのに随分と犠牲が出てしまった」

 

我楽には聞きたいことと、聞かなければならないことが山ほどあった。

しかし、動きを止めたとはいえネクロスライムの側で悠長に話など聞いてはいられない。

俺たちは場所を移すことにした。

 

 





はじめて感想を頂きました!
とても嬉しかったです!



主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
好物:発酵食品。
趣味:麻雀。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。
使用武器:蟲笛。

女騎士ー亞呂恵。
肩書き:地方騎士隊第二十三分隊副隊長。
使用武器:剣。
好きな人:愛羽明人。

勇者ー愛羽明人。
肩書き:召喚勇者。騎士団本部騎士団長補佐。
好きな人:四条獅子丸。

チンピラー雷汞。
肩書き:脱獄囚。

犯罪者ー我楽。
肩書き:人形家。
使用武器:魔物(ネクロスライム)
好きなもの:娘たち。
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