勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。 作:白白明け
皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m
我楽と
「そういや旦那。オイラ、ずっと聞きたかったことがあったんでさあ」
「なんだ?」
「その
俺は驚きのあまり雷公の顔を凝視してしまった。
雷汞はいつの間にかスコップを肩に担いでいた。
「コレですかい?教会の側の畑に捨てられて居たのを拾ったんでさあ。丸腰じゃあ、ちょっとあれですからね。・・・それより、旦那。その左眼のこと、良かったら教えてくだせえよ」
出会ってからまだ一日も経っていない関係だが、雷汞の笑顔は何度見たかわからない。
その人懐っこい笑顔は、しかし、彼の本心を隠している様にも今は見えた。
鬱蒼とした林の周囲の雰囲気も相まって、不気味だと思ってしまった。
「いや、言いたくねぇなら、良いんですがね。オイラって、一度でも気になっちまうと確かめなきゃ我慢ならねぇんでさあ。だから、答えたくなきゃ答えなくていいですが、オイラの予想を聞いちゃくれやせんか」
疑問形ではない、断定形。
心臓の鼓動が早くなる。
何時から彼が俺の正体に気が付いていたのか、そんな考えが巡る。
別に俺が勇者である事を隠す気は無かった。
隠す気があるなら、彼の前で何度も【
しかし、それでもこの場でソレを問いただされるのは背筋が凍る。
短い間の付き合いだが、俺は雷汞の事が好きになっていた。
そんな彼と戦いたくはない。
彼を
先ほどの我楽との戦闘で
「旦那。アンタ、本当は―――
「やめろ。今は―――
雷汞が答えを口にした。
―――魔人族なんでしょ」
―――は?」
開いた口がふさがらない。
雷汞はなにやら勘違いをしていた。
「魔人族ってのは一見すると人間と変わらねぇ見た目だけど、一部分が違うって話でさあ。魔人族の特徴っていえば“角”が有名ですがね、中には“爪”や“牙”の奴らが居るってのも、オイラくらいの情報通になると知ってるんですぜ。旦那の“左眼”もソレなんでしょう?」
「・・・はあ?」
「あ、いやいや、言わなくていいですぜ。とっくの昔に終った戦争をネタに魔人族を差別する人間もいやすからね。正体を隠す気持ちもわかりまさあ。でもね、旦那。コレだけは知っておいてくだせえ!」
雷汞は
「オイラは旦那が何者であっても、味方ですぜ」
「・・・なんで、そこまで」
意味がわからなかった。
まだ一日も行動を共にしていない間柄だ。
それなのに俺にこんな笑顔を向けてくる彼の事が、俺には心底わからない。
「俺が隠し事をしていることに、気が付いているんだろう。それなのに、どうしてそんな事が言えるんだ?俺を信じられるんだ?」
「旦那だって、オイラの話を疑わずに信じてくれたじゃねぇですかい。勇者が
「だから旦那、これからもよろしくお願いしやすぜ」
恐怖とは、受け入れられないことだ。
差しだした手を握り返されないことを、俺は何よりも恐れている。
だから、雷汞の言葉には目頭が熱くなった。
たとえ勘違いであったとしても、信じると言ってくれたことが、たまらなく嬉しかった。
「ああ」
滲む涙を悟られぬ様に、そう返した。
ーーー✠ーーー
廃教会から少し離れた林の中に縛り上げて気絶させた我楽と
彼らを縛り上げるのは縄ではない。
2メートルほどの体長と人の腕ほどの太さほどの胴体を持つ巨大な百足、
鬼百足たちには人間一人を簡単に絞め殺せる力がある。
その
「いたい」「くるしい」「こわい」「やめて」「ゆるして」「ごめんなさい」「こわいの」「いたいのはいやよ」「おうちにかえして」「ゆるしてください」「どうしてこんなことをするの」
「たすけて」
口々に許しを請う
雷汞にとって子供とは守るべき
死体で作られた人形とはいえ、生前の美しさを保つ
「いじめないで」
「ッ・・・、だ、旦那ぁ。ちょっと、強く縛りすぎなんじゃねぇですかい?」
そう伝えようとして雷汞の肩を叩こうとしだが、身長差でそれが出来ない。
俺は舌打ちをして、雷汞の背中を思いっきり平手打ちした。
「馬鹿。見た目に騙されるな」
「それらしく見えているだけで、彼女たちは死体だ」
「わかってまさぁ。けどよ、旦那。こうも生き生きとした姿を見せられちゃ、ただの死体だとは思えやせんぜ。真逆とは思うが、我楽の野郎は死体に心を与えているんじゃねぇですかい?」
「心があったとしても、俺たちのやるべき事は何も変わらない。それに彼女たちを見逃せば、遺体を盗まれた遺族は、明日も空っぽの墓に手を合せることになるんだぞ?」
それがどれ程に空しいことなのかは、考えるまでもない。
「その悲劇が増え続ける。考えろ。身体を弄ばれた年頃の子が、生き返ったとして、自分の身体を弄んだ相手を心の底から父親だなんて言うと思うか?
「・・・考えて見りゃ、その通りでした。流石は旦那だ。ぐぅの音も出ねぇや」
雷汞は冷静さを取り戻しながら、
ネクロスライムとは違い
「それはつまり、我楽は
業が深い。
しかし、それならこれからの交渉が優位に進められると確信する。
「おい、我楽。そろそろ起きたらどうだ」
「ん?んん・・・ッ⁉おいッ、お前ら僕の娘たちになんてことを‼」
目を覚ました我楽は縛り上げられた
「俺の質問に答えてくれ。答えない場合、あまり見せたくないものを見せる事になる」
「む、娘たちに何をする気だっ!」
「彼女たちの身体が
後頭部に突然、衝撃が走る。
振り返れば雷汞が俺の頭を引っ叩いた後、固まっていた。
「あ、す、すまねぇ。旦那があまりにも悪人顔で最低なことを言うから手が出ちまった」
「我楽への脅しに決まっているだろ!女の子の遺体にそんな真似ができるか‼」
「そうだよなあ!流石は旦那!俺の目に狂いはねぇぜ!」
「殴った事をうやむやにするな‼」
脅迫は台無しにされたが、それでも我楽の顔から不安の色は消えていない。
娘に酷いことをされる可能性があると言うだけで、父親は怒りと恐怖を抱える。
我楽の当たり前な反応は、だからこそ彼の業の根深さを浮き彫りにしていた。
「お前は本気で・・・いや、なんでもない。我楽、俺も酷いことは出来る限りしたくない。だけど、せざるを得ない状況になればしなきゃならない」
「・・・お前は、僕に何が聞きたいのさ」
「誰が君にチカラを与えた。それを知りたい。さっきの戦いで口走っていた救世主とは、誰だ?」
「・・・・・・・・・言えない。僕はあの御方を裏切れない」
「大切な娘に何をされても?」
「その時はお前らを必ず殺してやるッ‼」
我楽は犬歯を剥き出しにして叫ぶ。
「・・・じゃあ、別の質問だ。一昨日、宿屋を爆破したのはお前か?」
「いや、何の話だ。ここ最近、僕はずっと娘たちと家にいた。外出はしていないぞ」
「本当にお前じゃないのか?何人も死んだんだぞ」
「言いがかりは止してくれ。僕は無闇矢鱈に人を傷つけない。いきなり家を破壊してくる連中は別だけどね」
「・・・旦那。少なくとも、“人形家”として活動していた頃のこいつは、殺しまでははやってねぇ筈ですぜ。旦那が冤罪をふっかけられた事件で死人が出てんなら、こいつの言っていることも嘘じゃねぇかも知れやせん」
「・・・そうか」
我楽と佐助たち宿屋襲撃犯との間に繋がりがないとすると、あの日に宿屋から逃げ出した男の足取りを追うことはもう不可能に近いのかも知れない。
真犯人の身柄を抑えることで冤罪を晴らそうと考えていた俺の目論見は、頓挫した。
「聞きたいことはそれだけか!なら、早く僕と娘たちを解放しろ!」
「ふざけんじゃねぇ。誰が素直に答えたら助けると言った。テメエはブタ箱イキでさあ!」
雷汞と我楽が言い争う中、俺は次の手を考えていた。
しかし、その時―――
「ッ⁉⁉⁉」
叫虫が鳴いたということは、火風に危機が迫っているということだ。
俺は反射的に走りだしていた。
「え?ま、待ってくれ旦那!いきなりどこに行くんでさあッ⁉」
「俺の仲間がピンチだ!悪いが、そいつは任せた!」
「ええ⁉だ、旦那の仲間の危機?お、オイラも行きますぜ!」
「そいつを野放しにはできないだろう!」
我楽の処遇は雷汞に任せて、俺は叫虫が導く場所へと走り出した。
主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
好物:発酵食品。
趣味:麻雀。
女冒険者ー火風。
魔族少女ーアーエー・シューハマー。
使用武器:蟲笛。
女騎士ー亞呂恵。
肩書き:地方騎士隊第二十三分隊副隊長。
使用武器:剣。
好きな人:愛羽明人。
勇者ー愛羽明人。
肩書き:召喚勇者。騎士団本部騎士団長補佐。
好きな人:四条獅子丸。
チンピラー雷汞。
肩書き:脱獄囚。
犯罪者ー我楽。
肩書き:人形家。
使用武器:魔物(ネクロスライム)
好きなもの:娘たち。