勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m




第十五話

 

 

それは叫虫が鳴く、少し前の事―――

火風とアーエーは亞呂恵に連れられて騎士団隊舎を訪れて居た。

二人の目的は宿屋爆破の容疑者として逮捕されている四条との面会。

そして、二人を連れて来た亞呂恵の目的は四条に変わる事件の真犯人を(誰でもいいので)逮捕することである。

 

(何とかして騎士団と揉めずに四条の容疑を晴らさねばな)

(アーとしてはー、殴り合いでの決着も望むところなのですよー)

(愛羽さまとのデートのために、四条さん以外の真犯人さんが必要なの!)

 

三人とも見ている方向が違ったが、四条を助けるという目的は同じだった。

だからこそ、すんなりと済む筈だった面会は、しかし、招かれざる客によって頓挫した。

騎士団の隊舎に到着した三人の元に、一人の騎士が慌てた様子でやって来た。

その騎士は亞呂恵の前で立ち止まると、敬礼することもも忘れて来客があったことを彼女に伝える。

 

「ほ、報告!あ、亞呂恵副長!小紫耀(こしょう)連隊長がお見えです!」

「え、えええええ⁉あ、あの中年太りさんが何の用事なの⁉」

「わ、わかりません!直ぐに亞呂恵副長と()()()を連れて来いとの事です!」

「ど、どうして、火風さんとアーエーさんの事を知っているの‼」

「わ、わかりません‼とにかく直ぐに連れて来いと怒鳴り散らし、隊長室に居座っています。ど、どうしましょう?」

 

報告を受けた亞呂恵は考える。

連隊長とは、複数の街の騎士団を束ねる立場にある役職だ。

地方騎士団の役職は騎士団員→副隊長→隊長→連隊長→大隊長の順番で偉くなる。

つまり連隊長は亞呂恵よりもずっと偉く、彼女が敬愛する隊長の上司に当たる人物だ。

だが、しかし、亞呂恵は小紫耀という人物のことを、欠片も尊敬などしていなかった。

 

小紫耀連隊長(中年太りさん)は、親の七光りで連隊長(その立場)に就いた人物なの。私は尊敬する現場たたき上げの隊長さんとは真逆のくっさいおじさんなの)

 

そんな人物が何故、突然此所を訪ねてきたのか。

そして、何故火風とアーエーのことをしっているのか。

亞呂恵には考えてもわからない事が多すぎて、どうしようかと視線()彷徨わせて(グルグルで)考え込んでしまった彼女に助け舟を出したのは、火風だった。

 

「我々の心配はせずともいい。此所にいる事がバレているなら、同行しなければ貴女の立場が危うくなるのだろう」

「で、でも・・・」

「大丈夫ですー。アーたちには後ろ暗い事は何もありませんからー」

 

二人にそう言われては亞呂恵も頷くしかなく、二人を連れて連隊長の元へ向かう事になった。

 

 

 

 

地方騎士団連隊長、小紫耀(こしょう)はその綺麗な名前に似合わない醜く太った身体をソファーに沈めながら三人を待っていた。

彼の周りには彼が連れてきた騎士たちが控えている。

 

「れ、連隊長さん。お待たせしました、なの」

 

小紫耀は亞呂恵が来ると直ぐさまに声を荒げて罵倒した。

 

「遅いぞ!」

「ご、ごめんなさいなの」

 

顎に付いた余分な肉を揺らしながら飛んでくる大きな声に亞呂恵が萎縮する。

それを見て満足げな顔をした小紫耀は亞呂恵の後ろにいる火風とアーエーの二人を見て、鼻を鳴らす。

 

「ふん、だが仕事はこなせるようだな。お前はもういい。後ろの犯罪者を置いて出て行け。おい、貴様らは速やかにこいつらを牢屋に連行しろ」

 

小紫耀の命令に亞呂恵は慌てた様子で言う。

 

「ま、待って欲しいの。この二人は容疑者さんじゃないの。事件捜査の協力者さんなの。いくら連隊長さんの命令でも引き渡しになんて応じられないの」

「ふん、貴様は自分が外で捜査ごっこをして居る間に、何があったのか何も知らぬのだな」

「ど、どういうことなの?」

「どうもこうもあるか‼」

 

小紫耀は机を強く叩きながら立ち上がり、火風とアーエーを指さしながらに言った。

 

「その二人の仲間である四条獅子丸とか言う勇者が、他の犯罪者を連れて脱獄したのだ!警備に当たっていた騎士を惨殺してな‼」

「え、ええ⁉そ、そんな筈、な、ないの!四条さんは容疑を否認していたの。それに、(愛羽様の親友は)そんなことをする人じゃないとおもうの!」

「だが、事実だ‼私が()()()()に、此所を訪れていたお陰で事態を収束に導くことができた‼未だに外部には漏れていないが、これは騎士団の重大な失態だ‼責任問題だぞ‼どう責任をとるつもりだ‼」

 

唾をまき散らす小紫耀は、亞呂恵をあえて萎縮させる態度を取っていた。

アーエーはゴミを見る目で小紫耀を見ながら、亞呂恵を庇うように口を挟む。

 

「責任を取るのは責任者の仕事ですー。この場で一番の責任者はお前ではー?」

「お、お前だと⁉貴様、調べは付いているのだぞ!“魔族”の分際で騎士団の問題に口を挟むなあ‼」

 

小紫耀はアーエーにグラスを投げた。

アーエーはそれをはたき落とし、小紫耀を睨む。

 

「おおー、アーに喧嘩を売るとは良い度胸ですー」

 

その眼光に思わずたじろいだ小紫耀は、直ぐに顔を真っ赤にさせて叫んだ。

 

「おい!こいつらを捕らえろ‼放火と大量殺人‼そして騎士団の看板に泥を塗った極悪犯だ‼」

 

小紫耀が連れてきた兵士たちが火風とアーエーを取り囲む。

亞呂恵はそれを止めようとしたが連隊長である小紫耀に逆らうことが出来ず、二人は捕らえられてしまった。

 

「連隊長さん!二人を離して欲しいの!この人たちは犯人さんじゃないの!真犯人さんは別にいるの!」

「私が間違っているというのか?ふん、所詮は顔と身体だけで副隊長になった女だ。空っぽの頭だな。おい!こいつは犯罪者と繋がっていた騎士団の裏切り者だ!同じ牢屋に入れておけ!」

「そ、そんなの、酷いの!」

「ほう?捕まるのは嫌か?なら、その顔と身体で俺に媚びてみたらどうだ?馴れているのだろう?」

 

小紫耀は贅肉まみれの顔を醜く歪ませる。

彼への嫌悪感で顔を青くしながら、亞呂恵は希望に縋るように自分が信頼する隊長の名前を口にした。

 

「た、隊長さん。万秋隊長を呼んで欲しいの!隊長なら、この人たちは無実だってきっと分かってくれるはずなの!」

 

それを聞いた小紫耀はヒキガエルの鳴き声のような笑い声を上げる。

 

「ゲッゲッゲ、貴様の頼みの綱の隊長なら、俺の命令で脱獄した奴らを捕らえに行ったさ!いくら奴でも連隊長である俺の命令には逆らえないのだ!」

「そんな・・・嘘なの!隊長は、こんな横暴は絶対に許さないの!」

「嘘じゃないさ。現に可愛がっている貴様にこんなことをしても助けに来ないじゃないか!」

 

そう言って小紫耀は亞呂恵の髪を掴んで引っ張る。

痛みで涙目になる亞呂恵に興奮しながら、小紫耀は下卑た声で耳打ちをする。

 

「なんなら・・・俺が直々に貴様の取り調べを担当してやろう。この空っぽの頭でも、誰に媚びを売ればいいのか、それで分かるようになるだろう。副隊長室には、無駄に豪華な寝具があると聞いているぞ?そこでいつも奴にどういう風に媚びを売っているのか・・・見せてもらおうか」

 

亞呂恵の顔が最悪な事態を想像して蒼白になる。

小紫耀の言葉を聞いたアーエーの体内に黒い魔力が渦巻いた時、()()()()()()()()()が声を上げた。

 

「小紫耀連隊長!容疑者を連行する準備が整いました!命令に従い、速やかに連行いたします!」

 

明らかに亞呂恵を助ける為の行動だったが、命令したのは自分だったので小紫耀は舌打ちをしながら亞呂恵の髪から手を離す。

 

「だったら、さっさとこの犯罪者たちを連れていけ!」

「はい。・・・亞呂恵副長、お二人も、申し訳ありません」

 

騎士たちに連行され、三人は牢屋へと向かう事になった。

 

亞呂恵たちを無事に捕らえた小紫耀は葉巻を吸いながら嗤う。

 

「ふん。どいつもこいつも、仕えぬ屑ばかり。たかだかハズレ勇者一人の始末に俺が出向かねばならぬとは、屈辱の極みだ。だが・・・ゲッゲッゲッ、()()()()()()()

 

小紫耀は先ほどまで自分の剣幕に押されて顔を青くして身体を震わせていた女冒険者の姿を思い浮かべる。

嗜虐趣味のある小紫耀にとって、それは魅力的な女の反応だった。

そして、部下に命じた。

 

「おい、やはり俺自らが取り調べをしてやることにしよう。ハズレ勇者の仲間である女を、此所に連れて来い!」

 

その数十分後、火風の叫虫が鳴いた。

 

 

 





主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
好物:発酵食品。
趣味:麻雀。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。
使用武器:蟲笛。

女騎士ー亞呂恵。
肩書き:地方騎士隊第二十三分隊副隊長。
使用武器:剣。
好きな人:愛羽明人。

勇者ー愛羽明人。
肩書き:召喚勇者。騎士団本部騎士団長補佐。
好きな人:四条獅子丸。

チンピラー雷汞。
肩書き:脱獄囚。

犯罪者ー我楽。
肩書き:人形家。
使用武器:魔物(ネクロスライム)
好きなもの:娘たち。

騎士ー小紫耀。
肩書き:地方騎士団連隊長。
好きなもの:若い女。


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