勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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前に書いていたオリジナル小説のリメイク作品です。
駄文ではありますが、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
m(_ _)m



第二話

 

 

馬車が通った轍の残る草原の道。

荷物を背負って歩く俺の前には、俺が背負う物より大きな荷物を背負いながら悠々と歩く火風がいた。

 

「風が気持ちいいな」

 

晴天の中、吹き抜ける風が頬を撫でる感覚を楽しんでいる様子の火風とは違い、俺は未だに見えぬ目的地への道のりに少しだけ疲れてしまっていた。徒歩での旅は原動機(エンジン)付きの移動手段が豊富にある世界で十余年を過ごしてきた俺にとって辛いものがある。

異世界に来て一年以上が経ち、以前よりも身体が鍛えられて体力が付いているとは言えだ。

本来なら、この旅は馬車を使ってする筈だった。

 

街から街を繋いでいる乗り合いの馬車。それを使って王都を目指し、徒歩での移動はあくまで乗り合い馬車がない短い区間のみを予定していた。

しかし、俺たちの街から王都の方角にある街への乗り合い馬車に乗ろうとしたところで、乗り合い馬車の御者から乗車を拒否された。

 

「悪いけど・・・魔人族は乗せられないよ」

「なんだ。おまえは角の有る無しで、人を差別するのか?」

 

アーエーの乗車を拒否してきた御者に火風は食ってかかったが、御者は困り顔を浮かべながらも譲ることはなかった。

 

「俺自身に魔人族を嫌う気持ちはないさ。だが、あんただって知っているだろう?世の中には魔人族と仲良くしているだけで、因縁を付けてくる輩がいる。乗り合いの馬車に魔人族を乗せたら、道中で面倒な輩に目を付けられるかも知れない。そうなったら、他の乗客に面倒がかかっちまうよ」

 

乗り合い馬車の荷台には、数人の乗客がいた。父親と思われる大人に連れられた子供の姿もあった。それを見てしまっては火風も引き下がる他になかった。

 

街を出る前のそんな出来事を思い出していた俺の視界に、突然アーエーの顔が入ってくる。

横を歩いて居た彼女が俺の顔を覗き込んできた。

 

「四条―、疲れていますかー。大丈夫ですかー」

 

俺を心配する彼女は汗の一つもかいていない。背負う荷が俺よりも小さいとは言え、結構な距離を歩いて居ながら疲れを全く感じさせない彼女に驚く。小さな身体のどこにそんな体力があるのかと考えてから、それが魔人族なのかと納得した。

 

「大丈夫ですよ」

 

年齢不詳のアーエーに対して、俺は敬語を使うことにしていた。

 

「そうですかー。なら、いいのですー」

 

アーエーは前をむき直して、小さな歩幅で再び歩き出した。俺にその姿は人間の少女と何も変わらなく見えて、魔人族を差別しているという人々の存在について実感が沸かずにいた。

 

その日の夜は昼間の内に街に辿り着くことが出来ずに野営する事となった。

俺はアーエーが眠ったのを確認してから、火の番をしている火風に昼間の話をした。

彼女は腕を組んで少しだけ悩んだ様子を見せた後、普段通りのハッキリとした物言いで語った。

 

「まずおまえに勘違いをして欲しくないから言っておくが、差別なんて最低さ。その認識がこの国にはある。その認識が大勢に根付いている。だが、()()()()()()()()()()

 

80年前に魔人族の王であった魔王が斃されるまで、この国と魔人族の国は戦争をしていた。その当時の恨みを未だに持っているものもいると言う。

 

「長い年月が経ち、流石に戦争の当事者が今も生きて居ることはないだろうが、親から子へ、子から孫へ。恨みが受け継がれていることもある。そういう連中の厄介な所は、自分から出た恨みではないから、恨みの矛先を間違える事とコミュニティを築いて群れることさ」

 

魔人族を差別する人々。彼らも根底では、それがダメなことだと薄々は理解している筈だと火風は言う。なにしろ、この国の大半の人々がそれを認めてはいないのだから。しかし、自らの間違いを中々に認められないのが人間だ。それが自身の根底にあるものならば、尚更に。

だからこそ、彼らは同じ価値観を持つ者との繋がりを求める。そして、繋がってしまえば数が少ないからこそ、その繋がりは強固なものになり・・・暴走することもある。

 

「あの御者の対応は、正直どうかと私は思う。あれが続けば魔人族への差別が助長されかねない。だが、馬鹿を恐れる気持ちもわかる。他の乗客に危害が及ぶかもと言われれば、私だって引くしかないさ」

 

火風は横目で眠るアーエーを見た。

 

「アーエーは悪い奴じゃないさ。なにか隠している気もするが、私たちへの悪意はないと思う。まだ短い付き合いだが、私は人を見る目には自信がある」

「火風がそう言うなら、そうなんだろうな。それにしても、戦争の恨みか。それは異世界人の俺には、わからないものだな」

「私にもわからないさ。物心ついた頃には、この国は平和で、魔人族の隣人も何人か居た。だが、戦争が終わり、魔物が減っても、魔王とは関係のない魔人族を恨む輩は居る。結局、人の敵は人と言うことなのだろう。悲しいことさ」

「そうかも知れないな。火風、色々とありがとう。火の番は俺がするから、少し休んでくれ」

「ん?そうか、なら、頼む。三時間ほどしたら起こしてくれ。火の番を代わる」

「了解。おやすみ」

「ああ、おやすみなさい」

 

火風は荷物を枕に眠りについた。

俺は焚き木の火を眺めながら、この旅の今後について思案するのだった。

 

 

 

 

ーーー✠ーーー

 

 

 

 

野営をした翌日の夕方。俺たちは街と街の間に点在する小さな村の一つに到着することが出来た。人よりも家畜の数の方が多いその村に宿屋はなかったが、村長のご厚意で、空き家の一つを間借りして一夜を過ごすことが出来ることとなった。

 

「火の番をしなくて良いのはありがたい。今日はたっぷりと眠ることが出来るな」

 

軽装の鎧を脱ぎタンクトップ姿となった火風がそんな事を言いながらに笑っている。少し動くだけで素肌の見える無防備な格好。彼女は人目のないところでは、ラフな格好を好む。

彼女と付き合いたての頃こそ、ちらつく脇やお腹にどぎまぎしていたが、今は違う。勿論、鍛えられた身体でありながら女性的な丸みを残す火風の身体は扇情的(エロい)が、俺を信用しているからこそ見せてくれている姿に(よこしま)な目を向けるほどに落ちているつもりはない。

 

「ですねー。久しぶりにお湯で身体も洗えてー、最高ですー」

 

だから、火風よりも(まず)いのはアーエーの存在だった。

俺が家から出ている間に沐浴を済ませた二人。

火風が俺の目を気にせずにラフな(エロい)格好でいるのには耐性が付いているから別に良い。だが、なぜアーエーまでもが薄着で俺の前をうろちょろとするのだろうか。

俺は米神を抑えながら苦しんでいると、アーエーが心配しながら近づいてくる。

 

「おやー、四条は頭が痛いのですかー。大丈夫ですかー」

 

目の前に来られてしまえば、否応なくその姿が見えてしまう。アーエーが上に着ているのは黒のキャミソール。下は同じ色のドロワーズ。俺の知識が正しければ、どちらも下着だ。

親しくない異性の前で見せて良い姿ではない。俺は自身の顔が熱くなっているのを自覚しながら、それを彼女に指摘した。

 

「なあ、アーエーさん。火風の男勝りに引っ張られ過ぎです。もう少し恥じらいを持ってください。正直、その姿で居られると目のやり場に困る」

「そうでしょうかー。アーは小さな女の子ですしー、こんな身体ですしー、何も問題はないのではー?」

「確かにアーエーさんが見た目通りの年齢なら、何の問題もないのかもしれない。・・・いや、問題はあるだろ」

 

アーエーさんの見た目年齢は十代前半。子供とはいえ、親しくない異性の前に下着姿を見せて良い筈がない。彼女が無い胸を張り、あまりに堂々と言うので流され掛けてしまった。

俺は気を取り直し、苦言を呈そうとしたが―――

 

「それとも四条はヘンタイさんですかー?」

 

―――その意志は砕かれてしまった。

最早、言葉はない。何を言っても敗北は必至。

そんな絶体絶命の状況で助け船を出してくれたのは火風だった。

 

「こら、あまりこいつを揶揄(からか)うな。それと何時までもそんな格好をしていると風邪を引くぞ」

 

火風がアーエーの頭を小突く。彼女はいつの間にか服を着ていた。

窘められたアーエーは意外にも素直に火風の言う事を聞いて服を着始める。

 

「悪い、助かった」

「揶揄われているのだから、怒ったって良いのだぞ」

「アーエーさんは雇い主だから、気は遣うだろう。それに見た目がなあ。強くものを言う気にはなれないよ」

「おまえは意外と人を見た目で判断するよな」

「・・・なあ、なんか怒ってる?」

「怒ってない。呆れているのさ。それより、ほら、おまえも早く身体を拭いてしまえ。湯が冷めてしまうぞ」

 

火風から手ぬぐいを投げ渡される。俺はそれを受け取って、部屋の隅で沐浴をするのだった。

 

「四条、背中を流しましょうかー。ついでに前も洗いますよー」

「アーエー!もう揶揄うなと言っただろう!」

「冗談ですー」

「その冗談は面白く無いな」

 

何故か険悪な雰囲気になっている二人。何故、俺はそんな状況の中、半裸で居なければならないのだろうか。情けない気持ちになりながら、俺は急いで沐浴を終えるのだった。

 

 

 

 




登場人物。

主人公ー四条獅子丸。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。

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