勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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前に書いていたオリジナル小説のリメイク作品です。
駄文ではありますが、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
m(_ _)m




第三話

 

 

村に泊まった翌日。俺たちは村の側にある森の中に居た。日が葉に当たり新緑色に煌めいている。木洩れ日の中を地面に生えている薬草(もの)を見逃さないように下を見ながら歩く。

 

「火風、見てくださいー。毒キノコがありましたー」

「どうしてそんなモノを取ってくる。捨ててこい」

「でもー、綺麗な色ですー。美味しそうですしー」

「・・・毒キノコなのだろう?」

「毒キノコですー」

「捨ててこい」

 

火風とアーエーがじゃれ合いながら歩いて居る。そこに昨晩の険悪な雰囲気はない。

あれはなんだったのだろうかと思いつつ、俺は安堵していた。

俺たちがこうして森を歩いて居るのには理由が有った。

俺と火風が冒険者だと知った村長から、森に生えている薬草の採取を頼まれたのだ。

 

旅の巡礼者であったなら一宿一飯の恩を着せて頼み事をするのは気が引けるが、冒険者であるなら見返りを求めても構わないだろう。

朝方、頼み事をしにやって来た村長の言動からはそんな気持ちが滲み出ていたが、恩があるので少しくらいの労働なら断る理由はない。気がかりは旅の出発が遅れることだったが、アーエーは気にしなくて良いと言ってくれた。

 

「急ぐ旅ではありませんしー、こういう道草も旅の醍醐味なのですー」

 

そう言ってのける彼女は達観していて、やはり見た目通りの年齢ではないのだろうという確信が俺の中で強まっていた。

 

「うーん、いくつか薬草は見つけたのだが、頼まれていた種類のモノは見つからないな」

 

拾った木の棒を振り回しながら、火風が言う。彼女の言うとおり、村長から頼まれている薬草は中々に見つからない。

俺が手に持つ籠には、頼まれて居ないが一応は採取している薬草たちが貯まっていくばかりだ。

 

「ですねー。結構、探しましたがー、見つからないのですー。村長は珍しいものだと言っていましたしー、もう見つからないのではー」

 

森に入ってから既に二時間以上が過ぎている。このまま正午を過ぎるような事になれば、今晩もこの村に泊まることになるだろう。それは流石にアーエーに迷惑がかかるので、どうかと思う俺は火風に声を掛ける。

 

「なあ、()()を使おうと思うけど、どう思う?」

「村長は見つからなければ良いと言っていた。無理はしなくていいと思うぞ」

「無理はしない。それに・・・」

 

俺はアーエーに視線を向ける。

それに気が付いた彼女は可愛らしく首を傾げていた。

 

「護衛を引き受けた以上、遅いか早いかの違いだろ」

「確かに。ああ、それもそうだな。土壇場で驚かれるより、他の人目がない今が良いかもしれないな」

 

火風の賛同も得られたので、俺はアーエーに声を掛ける。

 

「アーエーさん。ちょっと来て下さい」

「改まって、なんなのですかー?」

「実は俺、ちゃんと自己紹介をしていませんでした。なので、突然ですけど、改めて自己紹介をします」

 

俺はそう言いながら前髪を掻き上げて、隠れていた左眼を晒す。

アーエーは左眼(それ)を見て、目を丸くして驚いていた。

驚くのも無理は無い。俺の左眼は普通の形をしていない。

そもそも左眼(これ)は、人の瞳でもなければ他の生物の瞳でもない。

球体に近い多面形状造形の宝玉。

赤い宝玉(それ)眼孔(がんこう)に収まることで昆虫の複眼の様にも見える。

見る人によっては生理的嫌悪感を呼び覚ます。

だからこそ、俺は普段から前髪でそれを隠していた。

 

「驚かせてすみません。でも、何時かはバレることなので今、バラします。俺の本名は四条“獅子丸(ししまる)”。それでわかると思いますが、この国の人間ではありません。いや、この世界の人間でも、ありません」

 

異世界から召喚された者。

誰が呼んだか、召喚勇者。

罵倒の言葉は時季ハズレ。

 

「召喚勇者序列第十三位、四条獅子丸。それが俺の正体で、左眼(これ)が俺の【神器】です」

「勇者ですかー。それは驚きですー。それでー、その眼で何が出来るのですかー?」

 

アーエーは驚いたと言いながらも、その舌足らずな口調は変わらずに淀みない。

左眼の見た目にこそ最初は驚いていたが、今はもう落ち着きを取り戻している様子だった。

俺は良かったと安堵する。生理的嫌悪感を抱かれて、距離を取られてしまえばそれまでだった。コレまでのような付き合い方は出来ず、護衛の依頼は火風に任せる事になっていただろう。

そうならなくて、良かった。俺はまだアーエーとの関係が途切れることを望んでいない。

 

「【神器】の銘は【天害蠱軍(てんがいこぐん)】。能力は蟲を召喚する事です」

 

俺は右手を左眼に翳す。左眼の奥に僅かな熱を感じる。瞬間、静かだった森がざわめいた。

森と異界が僅かに繋がったのだ。そして、森のざわめきと共に姿を現したのは異界の蟲。

昆虫特有のキチン質を含む銀色の外殻を持つ丸みを帯びたフォルム。木洩れ日を受けて輝きながら、(はね)で飛ぶ体長が人の頭部ほどもある怪虫。

()()()が、()()()

木陰から現れ、俺の周りに集まってくる。生理的嫌悪感を抱かせるというのなら、この光景も中々のものだろうという自覚はある。俺はアーエーの反応を伺いながら、冷や汗をかいていた。

成り行きを見守っている火風は「この私が虫を怖がるものか」と笑い飛ばしてくれたが、彼女のような反応は珍しい。普通の女性は、虫が嫌いだ。男性であったとしても、苦手とする者は多い。

それでも俺の【神器】が【天害蠱軍】である以上、戦闘時はコイツらに頼る事となる。

護衛の依頼を引き受けた以上、何れは彼らの存在はアーエーにバレる。

ならば、早めに。彼女から拒否されて傷を負うとしても、浅い内に。

そんな俺の不安を見透かしたかのようにアーエーは小さく(クスリと)笑った。

 

「四条、こいつらに触ってもいいですかー?」

「え、あ、はい」

 

俺は集まった内の一匹を自分の肩に止まらせる。

アーエーはその一匹の外殻を優しく撫でた。

 

「冷たいですー。でも、生命(イノチ)を感じるのですよー。こいつらに名前はあるのでしょうかー」

具足虫(ぐそくむし)と、俺が名付けた」

「具足虫ですかー。お前たち、いい名前を貰いましたねー。これからよろしくお願いするのですよー」

 

アーエーは具足虫を撫で回しながら、微笑んでいた。

俺は顔が熱くなるのを自覚する。

受け入れられることに俺は弱いのだ。

俺の【神器:天害蠱軍】の能力が判明したとき、クラスメイトの大半からは忌避された。

当然だと思った。明らかな人外を、それも蟲という異形を操る俺の能力は遠ざけられて然るべきものだ。きもちわるいと陰口を叩かれても言い返せる言葉なんてなかった。

人間なんてそんなモノだ。

だから、残った友人(クラスメイト)を大切にしようと思えるのだ。

 

「きもちわるく、ないのか?」

 

思わず出た言葉にアーエーは俺の肩に乗っていた具足虫を両手で掴んで自分の方に引き寄せながら、応えた。

 

「そうですねー。アーもゴキブリは嫌いですー。でも、カナブンは大丈夫ですー。総じて普通ですかねー。少なくともこいつらは、可愛げがあると思うのですよー。おおー、裏側は中々グロテスクですねー。ダンゴムシと同じですー」

 

アーエーにひっくり返されて弄ばれる具足虫はジタバタと暴れていたが、それだけだ。

噛みつくことも無く逃げ出す様子もない。

 

「大人しいものですー。こいつらは四条の命令で動くのですかー?」

「はい。一応、彼らにも意志がある様子だけど、俺の言う事は聞いてくれる。だから、危険はない・・・と思う。たぶん」

「そうなのですねー。尚更、可愛いものですねー」

 

アーエーが具足虫を手放した。解放された具足虫は慌てた様子で俺の方へ飛んで来て、俺の頭上に止まった。それなりに重い彼らに頭の上に乗られると疲れるのだが、弄ばれても大人しくしていた彼を降ろす気にはならないのでそのままにしておく。

 

「フフフ、可愛いのですよー」

「・・・どうも」

 

俺に言われた訳ではないとわかっていたが、顔が熱くなった。

俺がなんとかして胸の動機を鎮めていると、火風が大きな咳払いをしながら俺とアーエーの間に割って入って来た。

 

「んん、さてと!自己紹介はもういいだろう。そういう訳だ。四条共々、これから改めてよろしく頼むぞ。アーエー」

「はいですー。火風」

 

割って入った火風とアーエーが握手を交わしていた。

妙に長い握手だった。しかし、仲が良いことは良いことだ。

俺は気にせずに胸の動機を鎮めると、集まった具足虫たちにお願いをする。

 

「薬草を集めて来てくれ。新緑の葉に白い毛茸(もうじ)が生えている三つ葉の薬草だ。頼んだ」

 

俺の言葉を聞いて具足虫たちが散っていく。探しているのが珍しい薬草とはいえ、数十匹の具足虫たちによる人海戦術であれば見つけることは出来るだろう。

そんな予想通り、十五分ほどで村長から頼まれて探していた珍しい薬草"トキシラズ"を口に咥えて具足虫たちが戻って来た。

 

「便利ですねー」

「そうだろう。四条は意外と凄いのだぞ」

「俺じゃ無くて具足虫(彼ら)が凄いんだ」

 

感心するアーエーと何故が得意げな火風に事実を伝えつつ、集まった薬草を籠に詰める。

その最中、俺は集めたトキシラズの中に混じった妙なモノを見つけた。

 

「ん?なんだ、これ」

 

その瞬間、近くの茂みが揺れた。

 

「誰だ?」

「誰ですー?」

 

火風とアーエーが直ぐに反応した。

次いで具足虫たちも警戒した様子で俺の周囲で羽ばたきながら空中停止(ホバリング)する。

 

「出てくるのですよー。素直に従うなら、危害は加えないのですー」

 

その言葉に促されて、茂みの中から現れたのは子供たちだった。

おそらく兄と思われる子とその身体にしがみ付く妹の二人は、対照的な表情で俺たちを見ていた。

目を輝かせる男の子は俺を見ながらに言う。

 

「なあ、兄ちゃんは本物の勇者なのか!」

「お、お兄ちゃん・・・。やめようよぉ・・・」

 

・・・話を聞かれていた。俺は思わず顔を逸らす。

しかし、男の子は不安げな表情の妹の事など気にせずに俺に近づいてきて手を差し出してきた。

 

「握手して下さい!俺、本物の勇者に会うの初めてなんです!」

「え、あ、はあ、うん」

 

差しだした手を力強く握られて、ブンブンと振られる。

そして、握手を終えた男の子は感動した様子で小さく震えた。

 

「スゲー、俺、勇者と握手しちゃったよ!お父ちゃんとお母ちゃんに自慢しなきゃ!未玖(みく)、帰るぞ!」

「ま、待ってよ~。お兄ちゃん~」

 

兄弟は元気よく走り去っていった。

残された俺の頬を冷や汗が伝う。

火風が呆れた様子で笑いながら、俺の肩を抱いてきた。

 

「あらら、こりゃ村の全員におまえの正体がバレてしまうぞ」

「・・・薬草を届けたら、早めに村を出よう」

「そうだな。それがいい」

 

俺の背中を強く叩いて、火風が歩きだした。

同じ場所をアーエーにも叩かれた。

男の子に勇者かどうかを尋ねられたとき、幾らでも言い訳が出来たのに上手く言葉が出てこなかった。

俺が勇者である事は絶対に隠さなければ成らないことでは無いが、勇者に付随する【神器】が値段の付けられない価値を持つ以上、吹聴することじゃない。

吹聴して面倒事に巻き込まれたとしても、それは俺の自業自得だろう。

だが、俺と共にいる二人に迷惑が掛ける訳にはいかない。

 

「・・・驚きで反応が遅れるのは、俺の悪い癖だな。それに警戒心も薄い」

 

子供が隠れていた茂みが揺れた時、反応できなかったのは俺だけだ。

その不甲斐なさを噛み締めつつ、二人の後を追うのだった。

 

 




登場人物。

主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。

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