勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。 作:白白明け
前に書いていたオリジナル小説のリメイク作品です。
駄文ではありますが、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
m(_ _)m
村に戻れば予想通り、俺が勇者として召喚された異世界人であることが村の人々に知れ渡ってしまっていた。娯楽が少ないこの村では、俺は彼らにとって実に興味を引かれる見世物となる。
正直、迷惑でしかない。
そんな中、俺の元につめかける村人たちを見かねた火風とアーエーが壁となってくれた。
「ハア、四条。おまえは早く村長に薬草を届けて来い」
「此所は私たちに任せて先に行けですー」
二人が村人たちの相手をしてくれている間に村長の家に急ぐ。
幸い、村長である男性は大人な対応で俺を迎えてくれた。
「皆がすみません。彼らにも悪気はないのです。どうか許してあげてください。勇者様」
「止めて下さい。俺は名ばかりの勇者でしかない。勇者と呼ばれるにたる実績を、俺は何も成してはいません。
「ハハハ、そのハリボテに憧れる者がいるのです。森であった子が居たでしょう。あの子はこの村のガキ大将でしてね。昔から物語に出てくる勇者に憧れてやんちゃを繰り返す元気な子です。あの子が本物の勇者と握手が出来たと、とても喜んでいましたよ」
村長は朗らかに笑いながら言う。
「あの子の憧れを壊さないでくれて、ありがとうございました」
年齢的に言えば当然なのだろうが、とても大人だなと思った。
魔王がいない時代に召喚された
『
罵倒の言葉はハズレ勇者。
時季ハズレの勇者たち。
嘲笑されることに馴れるなんてことはない。
受け流せる程に強くはなれない。泣き寝入りする程に弱くもなりたくない。
俺はそこまで人間ができてはいない。
だから、村長が俺をハズレ勇者だと知っても受け入れてくれていることが嬉しかった。
ただそれを口にするのは流石に気恥ずかしいので、俺は薬草の詰まった籠を村長に渡して話を終らせることにした。
「これ、約束の薬草です。他の薬草も集めておきました。受け取って下さい」
「どうもありがとうございます。確かにこれは薬草トキシラズですね。珍しいモノですから、手に入れるのは諦めて居たのですが、助かりました」
「いえ、これで一宿一飯の恩を返せたのなら幸いです。あ、そうだ。あと、コレなのですが・・・これもトキシラズなのでしょうか?」
俺は具足虫たちが集めて来たトキシラズの中に紛れていた妙なモノを村長に見せる。
それは形こそトキシラズと同じなのだが、新緑色の茎と葉に白い
それを見た村長は目を丸くして驚いていた。
「これは、凄いモノを見つけましたね」
「トキシラズより珍しいモノなのですか?」
「いえ、これもトキシラズです。しかし、白いトキシラズは越冬をしたトキシラズなのですよ。トキシラズという薬草は珍しいだけではなく、食べると美味なんです。ですから、生えて直ぐに動物たちに食べられてしまう事が多く、越冬をするトキシラズはとても貴重でして、“冬のトキシラズ”と呼ばれています。十分に栄養を貯えて居る為、薬草としての効力も高いと聞きます」
「そうなのですね。なら、これも受け取ってください」
「え、いえいえ、流石にこんなに貴重なモノを頂く訳にはいきません。とても高く売れるモノですし、一宿一飯のお返しとして、釣り合っていません」
「でも、俺たちが持っていても仕方が無いものです」
冬のトキシラズが高く売れると聞くと惜しくもあるが、俺たちは一宿一飯の恩返しとして薬草狩りに山に入ったのだ。採れた薬草は出来ることなら全て村長に受け取って欲しい。
「しかし・・・」
「しかしも
尚も受け取ろうとしない村長に業を煮やし、無理矢理に置いて帰ってやろうかと考えた所で村長の方が折れた。
「わかりました。ありがたく受け取らせていただきます。ただ、でしたらもう一つ、私の我が儘を聞いて貰いたい」
「・・・なんですか?」
もう一つ、冬のトキシラズを採って来いとか言われたら、流石に断ろうと思う。
「実はトキシラズを必要としているのは私では無く、私の父なのです。父は村長の役目を降りた後、隠居をしているのですが、冬のトキシラズを頂いたとあれば、きっと父は直接にお礼を言いたいと言うでしょう。ですので、冬のトキシラズを父に直接、渡して頂けないでしょうか」
「なるほど。それくらいなら、いいですけど。お父上は、この家に?」
「はい。どうぞ会ってあげてください。父も喜びます」
村長に促されるまま家に上がる。
そして、村長の後に続いて廊下を歩く。
廊下を進んで突き当たりの右にある部屋の前で村長が止まった。
此所が彼の父の部屋なのだろう。
「父さん。お客様です」
「どなたかな?」
扉を開いて現れたのは豊かな白い髭を貯えた老人だった。
「こちらは四条さん。なんと冬のトキシラズを採って来てくれたんですよ」
「なんと、冬のトキシラズをかい?それは凄いなあ。お礼をしなくてはいけないね」
「いえ、お礼なんて別にいりません。息子さんにはお世話になりましたし」
「そう言わずに、若者が遠慮するものではないよ。さあさあ、部屋に入っておくれ。
「わかりました」
「いや、本当におかまいなく」
あまり長居をする気が無い俺はなんとか先代村長の誘いを断ろうとしたが、丁度その時、外が騒がしくなった。
村長は困った様に頬を掻く。
「あらら、どうやら勇者様を追って皆が此所に集まってしまった様子ですね。仕方がありません。父さん。どうやらゆっくりとおもてなしをする時間は無いようです。私が皆の相手をしますから、その間にお礼を済ませてください」
「そうか、そうだな。この人に迷惑を掛ける訳にもいかんか。丈司、頼んだぞ」
村長が家から出て行き、先代村長と二人きりで残される。
「流石に廊下で立ったままというのもなあ、とりあえず部屋に入って座っておくれ」
「あ、はい」
外に出られる状況に無い以上、言われるままにするしかない。
部屋に入ると独特の匂いがした。なんの匂いかと記憶を探り、田舎のおばあちゃんの家と同じ匂いだと気が付く。
先代村長は椅子に俺を座らせると、自分は木箱の上に座る。
俺は慌てて椅子を譲ろうとしたが、断られてしまった。
「大丈夫だよ。それよりも、どうもありがとう。冬のトキシラズなんて貴重なモノを貰ってしまって」
「いえ、俺たちには必要の無いモノですし、本当に気にしないで下さい」
「必要ないか。確かに若者には必要ないかもしれんなあ」
「・・・因みに、トキシラズという薬草の効果って、なんなんですか?」
「なんと、知らないのかい?トキシラズはね、物忘れに良く効く薬草でね、一房を煎じて飲めば忘れた事を一つ思い出すとも言われているのだよ」
物忘れに良く効く薬草か。
確かにそれは
流石にこの年でそんな薬草の世話になりたくはなかった。
それが顔に出たのだろう、先代村長は笑いながらに言った。
「フォフォフォ、この年になると物忘れが多くて困ってしまうよ」
「あ、いや、そうですよね。加齢による脳の老化とそれに伴う記憶障害は当たり前の事ですから、仕方ありませんよ」
「そう、仕方がない。仕方のないことなのだが、長い年月を生きても、獣と違い人間は弱い生き物だから、こんな
先代村長は寂しげに言った。
俺はなんと言えばいいのかが、わからなかった。
全ての人間が
まだその始まりにも立っていない俺に、彼を励ます気の利いた言葉は思い浮かばない。
「ああ、すまない。お礼を言わなければならないのに、四条さんを困らせてしまった」
「あ、いえ、そんな、大丈夫です」
こういう時、自分の語彙力の無さが嫌になる。
これ以上、俺を困らせない様にする為だろう。
先代村長は話題を変えてきた。
「そうだ。丈司が言っていたが、四条さんは勇者なのかい?」
「あ・・・と・・・はい、一応は」
誤魔化そうとも思ったが、朗らかに笑う老人を前に嘘を吐く気にはなれなかった。
「儂はね、遠い昔に一度だけ、勇者に会ったことがあるよ」
「・・・え?」
「あれはまだ儂が四条さんと同じくらいの年の頃、魔王が斃されて暫くたった頃だったかな」
「あの、その話を詳しく聞かせて下さい!」
思わず身を乗り出した俺に先代村長は頷きながら、語ってくれた。
「その頃はまだ魔物が人里に降りてくる事も偶にあって、その勇者さんはそんな魔物を狩る旅をしていると言っていたよ。格好良かったよお。それはもう、憧れと呼ぶには眩し過ぎる程に彼の姿が瞼に焼き付いたものさ」
それはつまり
「曰く、"天より降る雨粒の全て斬れる剣士"。"降る星を断つ英雄"。"アイツの振る剣見えねぇんだけど
そうすれば、
そんな思いが湧き出て、胸が苦しくなる。
心臓の動悸が痛かった。
「その勇者の名前を、教えて貰えませんか」
「名前。名前・・・、名前は・・・」
先代村長の表情が、徐々に悲しげに歪んでいった。
「本当に、年寄りは・・・嫌だね。大切な思い出も・・・忘れてしまうのだから。憧れが・・・色褪せて、もう思い出せなくなってしまったよ」
「そう・・・ですか」
部屋の扉がノックされた。扉の向こうから聞こえて来たのは村長の声。
「父さん。四条さん。そろそろ限界です。裏口にお連れのお二人が待っていますから、四条さんはお連れさんと一緒に村を出て下さい。こんなにバタバタとしてしまって、本当にすみません」
俺は椅子から立ち上がり、先代村長に頭を下げた。
悲しげな表情をしていた彼は、再び朗らかなに笑いながら、俺を見送ろうとしてくれた。
「本当にありがとう。この薬草で勇者さんの名前を思い出したら、必ず四条さんに伝えるよ。だから、またこの村に来ておくれよ」
それに頷きを返して、俺はその場を後にするのだった。
登場人物。
主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
女冒険者ー火風。
魔族少女ーアーエー・シューハマー。