勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m


第六話

 

 

宿屋で部屋を取る際のこと。

 

「四条。私と同室でも構わないよな?」

「アーも構わないのですー。三人一緒なら、宿代も安くなるのですー」

「は?おいおい、アーエー。男女で同室など駄目に決まっているだろう」

「火風。言っていることがさっきと違うのですよー」

「三人一緒は駄目だ!私とアーエーが同室!四条は一人だ!」

 

そんなこんなで一人部屋になった。やったぜ。

ようやく二人の寝顔をみて悶々としないで済む夜がやって来た。

緊張からの解放。ご機嫌になった俺は部屋の中で具足虫たちを呼び出して、彼らを相手に遊ぶことにした。

呼び出した五匹の具足虫を、机の上に積み上げていく。具足虫たちは翅を閉じ、脚を引っ込め、石の如く全く動かない。積み上げる度にグラグラと揺れる中、慎重な手つきで進めて行く。

幾度もの失敗を繰り返し、遂に四段目まで到達した。

後一匹、積み上げる事が出来れば、遂に前人未踏の具足虫五重塔が完成する。

この遊びを考えついた時に空想した、具足虫九蓮宝燈(チューレンポートウ)まではまだまだ遠いが、これは空想が現実となる偉大なる一歩だ。

俺の手が緊張で汗ばんでいた。

具足虫たちも心なしか緊張している様子だ。

俺は四匹目の上に五匹目を重ね、崩れ落ちないバランスを探る。

そして、重苦しい緊張感の中、意を決する。

俺は五匹目を手放した。

 

その瞬間、扉が乱暴に蹴破られる。

部屋に押し入って来たのは素顔を隠した黒ずくめの三人組。

 

「殺されたくなければ大人しくしろ!」

 

響く怒声。乱暴な足取りで向かってくる。

机が揺れ、積み重なった具足虫たちが崩れ落ちた。

バラバラと床の上に落ちていく彼らを、呆然と見ているしかなかった。

彼らもまた茫然自失の様子でピクリとも動かず、床に仰向けでひっくり返ったままの者もいた。

 

「へっ、アニキ。コイツ、ビビってますぜ」

「ああ、これなら仕事も簡単に済みそうだ。男がこんなふぬけじゃ、連れの女共でも存分に楽しめるかも知れねえな」

「おい、無駄話はよせ」

「ああ、わかっているさ。おい、オマエ。腕を頭の後ろで組んで、床に伏せな」

 

なんという悲劇だ。前人未踏の偉大なる一歩は、乱入してきたよくわからん奴らの悪行によって儚くも崩れ去ってしまった。

時間の経過と共に、これが現実なのだと身に沁みる。

悲しいことだが、具足虫たちもそれを受け入れ、床の上でキィキィと鳴いていた。

 

「おい!テメエ!聞いてんのか!」

「・・・お前らの汚い声なんか、聞こえる筈がないだろ。牌山崩し(チョンボ)野郎」

 

聞こえているのは彼らの悲しげな鳴き声だけだ。

だが、一緒になって嘆いてばかりはいられない。

目の前の“敵”は既に俺の逆鱗に二度も触れている。

 

昆虫は涙を流さない。

しかし、彼らにも情動(じょうどう)はある。

そんな彼らが、()()()()()

そして、“連れの女共でも存分に楽しめるかも知れねえな”だと?

()()()()()()()()()

 

椅子から立上がり床で仰向けになっている具足虫の一匹を拾う。

彼は未だに悲しげに鳴いていた。

その外殻(からだ)を撫でながら、告げる。

 

「卓が立った。切り替えて行こう」

 

鳴き声がピタリと止んだ。

 

「あ゙あ゙⁉テメエはなにをわけわかんねぇこと言って―――

 

代わりに羽音が部屋に響く。

床に落ちていた四匹の具足虫と手にしていた一匹が俺の周囲に浮かび上がり、大あごを打ち付け鳴らして威嚇をする。

羽音(ブー)威嚇音(カチカチ)

具足虫たちの存在と部屋に響く異音に飲まれて、黒ずくめの三人組は動揺し始める。

その時点で俺は勝利を確信した。

 

―――んだよ、それ」

 

俺を襲っておきながら、俺の【神器】のことを知らなかった。

知っていたのなら、具足虫を前に動揺するはずがない。

彼らは捨て牌。使い捨ての刺客。

しかし、それでも同情する気にはなれない。

部屋への押し入り方にしても場慣れしていた。裏家業の者たちなのだろう。

なら、同情などしてやれない。

 

戦闘姿勢(リーチ)。いくぞ、具足虫」

「く、くそ!テメエ、妙な真似をするんじゃねぇ!」

突撃(ドラ)

 

具足虫の一匹が、一番五月蠅い奴に向かって体当たり(ぶちかます)

具足虫の飛行速度は最大で五飜(500キロ)を越える。

しかし、人一人を吹き飛ばすのに最大速度は必要ない。

鉄より硬い人の頭部ほどの大きさ物体がぶつかるのだから、一翻(100キロ)でも十二分に大の男を吹き飛ばしてあまりある。

具足虫の体当たりを受けた一人が、吹き飛び壁にぶつかった。

 

「お、おい!だ、大丈夫か!」

「・・・」

 

声かけに反応はない。

アニキと呼ばれていた男が引きつった表情(かお)で俺の方を見た。

俺の周囲にはまだ四匹の具足虫が戦闘姿勢で空中停止(ホバリング)している。

そして、次に彼の目は直ぐ側で聞こえたガラスを引っ掻く様な音(キィキィという鳴き声)の方へ向けられる。

体当たりをした具足虫が、気絶した弟分の上でジッと彼を見ていた。

 

「ひ、ひいぃぃ⁉」

 

アニキと呼ばれていた男は弟分を見捨てて部屋から逃げ出して行った。

俺はその男を見逃すことにする。

 

「追ってくれ」

 

俺の声を聞いて、気絶した弟分の上にいた具足虫が逃げ出した男を追って部屋を出て行った。

彼らは捨て牌の使い捨て。あの男を追う事で俺への襲撃を命じた何者かに辿り着けるとは思えないが、可能性があるのなら配牌を惜しむべきではない。

 

そして、俺は部屋に残されたもう一人の男に視線を向けた。

その男は仲間の二人がやられたというのに、動揺することなく俺の様子を伺っていた。

 

「やっぱお前が本筋(ホンスジ)か。最初から雰囲気が違うと思っていた。具足虫に動揺したのも、お前だけは()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺が彼らを召喚(呼ぶ)前に、制圧しろと言われていたか?」

 

男は返事をしないまま顔を隠していた布を取る。

男の顔にこれといった特徴はない。

しかし、目だけが異様に暗かった。

 

「俺は、佐助(さすけ)と言う」

「・・・四条だ」

 

名乗られたからには名乗り返さなければならない。

これは人として当たり前のことだ。

佐助は気絶している男を一瞥した。

 

「何故、この男を殺さなかった?お前の【神器(チカラ)】なら、簡単なことだっただろう。人殺しを疎んでいるのか?」

「襲ってきた相手に優しく出来るほど、俺は勇者をしちゃ居ないよ」

 

召喚勇者としての俺に与えられた序列は、所詮13位。

俺よりずっと勇者らしい勇者は、12人もいる。

 

「お前たちは押し入り強盗じゃない。最初から俺を狙っていた。俺に連れがいる事も知っていた。それなりに俺の事を調べ上げていたって訳だ。なら、無闇には殺さない。生かして情報を引き出すべきだろう?」

 

その考えは正しかった。

他の二人とは違い、俺の【神器】を知っている奴までいた。

 

「だから、生かしてやっている。そいつのことも、逃げ出した奴も、()()のこ()()()

「わかりやすい脅しだな。お前に俺の口を割らせる術があるのか?なにも知らぬ他の二人とは違い、俺の口は固いぞ?」

「そうみたいだ。だが、彼らは強情な奴の口を割らせるのも得意なんだ」

 

佐助はきっと訓練された刺客だ。

拷問に対する訓練も受けているのだろう。

だが、あくまで人間から受ける拷問に対してだけだろう。

 

「尻に蟲の卵を産み付けられたことはあるか?結構、痛いらしいぞ」

 

俺の脅し文句に合わせて具足虫たちが一斉に鳴く。

佐助の顔色が、僅かに青くなった。

 

「・・・それが、勇者の吐く台詞か?」

「俺が進んで名乗った訳じゃない。お前たちがそう呼んで、お前たちが召喚(呼ん)だんだ。さて、お前はどんな悲鳴(こえ)彼ら()に鳴かされるのかな?」

「ッ‼【神器】を与えられただけの分際で!」

 

佐助が動く。

どんな手品か種はわからないが、両手の指の間に合計八本の短剣が握られていた。

目にも留まらぬ早業だが、麻雀で手練のゴト師が使う如何様(イカサマ)に鍛えられた俺の目には留まる。

 

両面待ち(リャンメン)突撃(ドラ)!」

 

二匹の具足虫が佐助に向かって飛んでいく。

佐助はそれを撃ち落とそうと四本の短剣を投げた。

短剣は具足虫に命中したが、キチン質を含む具足虫の外殻は鉄よりも固い。

短剣は弾かれる。

 

「クソ!」

 

佐助は残った四本の短剣も投擲する。

狙いは具足虫ではなく、俺だ。

それは正解だった。

俺は彼らよりも遙かに弱く脆い。

俺は武器を持ち歩かない。

防具も身につけていない。

戦闘に置いて【神器】で召喚する蟲に頼るしかない俺は、剣も盾も捨てることを選んでいた。

付け焼き刃で生き残れるほど、この異世界は甘くない。

だから、唯一与えられた【神器(チカラ)】に頼り切ることを選んだ。

俺は彼らに生かされ、死ぬときは一緒だ。

 

両面待ち(リャンメン)は、“剣”役と“盾”役を別ける隠語(とおし)だ」

 

連携は磨き上げていた。

俺の周囲で空中停止(ホバリング)していた二匹の具足虫が盾となり、投擲された短剣から俺を守る。

それを見て悔しげに顔を歪めた佐助の身体に、具足虫の体当たり(ぶちかまし)が炸裂する。

佐助の身体が吹き飛んだ。

 

「彼らの攻撃は(これ)だけだ。単純な分、使い勝手が良い。俺が召喚できる蟲の中で彼らが最も走攻守に優れている。覚えておくんだな。俺たちの戦闘姿勢(リーチ)を相手に、無闇な突っ張りは自殺行為だと」

「は・・・はは・・・ハハハ、覚えておいてなど・・・やるものか」

 

具足虫の一飜(100キロ)体当たりを受けても佐助は気を失っていなかった。

俺は改めてこの異世界の人間の身体能力の高さに驚かされる。

手斧で巨岩を割れる火風のような存在が別格としても、やはり俺のような奴がこの異世界で生きて行けるのは【神器】のお陰であることを実感した。

 

「強がりもそこまでやれれば、格好良いな」

 

しかし、その驚きを悟られる訳にはいかない。

俺は無表情(ポーカーフェイス)に努めつつ、具足虫たちに追撃の指示を出そうとした。

 

「俺も・・・お前も・・・此所で死ぬのだから!」

 

佐助のその仕掛け(イカサマ)は、俺の目を以てしても見抜けなかった。

佐助が歯を噛み締める。

その瞬間、奥歯がカチリと鳴った。

明らかな()()

そして、佐助の身体から聞こえてくる時計の針が進む(チクタクという)音。

今度は俺が異音(それ)に顔を青くする番だった。

 

「お前!それはッ、その()()()は!」

 

無機物有機物を問わず、全てを爆弾に変える【神器(チカラ)】を俺は知っている。

佐助は自分の身体を時限爆弾に変えられていながら、笑っていた。

 

「そうだ!俺は運命に導かれし勇者の仲間!かの勇者が歩みを止めない限り、俺の肉体が滅びたとしても意志は死なず!永遠にお前たちを追い続けるだろう!」

 

その笑顔は俺が知らない異世界の狂気だ。

 

「全ての“魔族”に!死の鉄槌を‼」

 

佐助の身体が、爆発した。

閉鎖空間で炸裂した【神器】による爆破。

襲ってくる衝撃と爆炎は俺を殺すにあまりある威力。

此所でも、俺は具足虫(彼ら)に救われた。

 

驚きで反応が遅れるのが俺の悪癖。

だから、彼らは俺の指示を待たず、俺の命を守る行動をキノコ体()で考えて行動していた。

二匹が爆弾と化した佐助の身体に体当たりして少しでも俺から遠ざけ、残りの二匹は俺に体当たりしてきた。

その体当たりで俺は窓から外へと放り出された。

彼らの咄嗟の行動のお陰で俺は助かった。

 

「ありがとう…」

 

俺は彼らにお礼を言いながらも、呆然と宿を見上げる。

爆発により宿は燃えていた。

あの炎の中で、佐助に体当たりした二匹の具足虫が死んでいくのがわかった。

左眼腔に埋め込んだ神器が熱を帯びていた。

 

「ごめん…」

 

俺を助ける為に彼らの命が二つも失われてしまった。

そのことに打ちのめされながらも、項垂れている暇はない。

燃えている宿には、火風やアーエーがいる。

他の宿泊客もいるはずだ。

 

「終局だ」

 

切り替えろと、己を鼓舞する。

そうしていると俺の側に残った二匹の具足虫が寄ってくる。

煤けている彼らも無傷ではない。

俺を庇った所為で外殻は焦げて罅が入っていた。

それでも俺は、まだ彼らに頼るしかない。

 

「ごめん。火風とアーエーさんの無事を確認したい。火風が付いているんだから、大丈夫だとは思うけど、確認だけしてきてくれ」

 

その指示に具足虫は直ぐに燃えている宿の方へ飛んでいった。

俺もそれを追う為に立ち上がった所で、信じたくない光景を目にする。

 

燃えている宿へ向かった二匹の具足虫が、矢に射貫かれた。

普段の彼らなら弓矢など問題ではない。

しかし、今は爆発によって弱っている。

俺の目の前で彼らの内の一匹が撃ち落とされて炎に飲まれていった。

 

「なっ⁉なにをするんだ‼」

 

矢が射られた方向を見る。

そこには揃いの鎧を身につけた騎士たちがいた。

矢継ぎ早の事態に俺の戦闘姿勢(リーチ)が崩され、無表情(ポーカーフェイス)が崩れる。

“まずい”という思いが表情に出た。

騎士団はそれを見逃さなかった。

騎士団たちの代表と思われる桃色髪の女騎士が前に出てきて、俺を指さす。

 

「それはこっちの台詞なの!怪しい奴!あの燃えている建物に、なにを投げ込んでいたの!」

「ちが、俺は中の人たちを助けようと」

「言い訳はいいの!おまえを現行犯さんで逮捕するの!皆、ふん縛ってやるの!」

 

“白壁“の街を守護(まも)る騎士団に取り囲まれる。

【神器】を使えばこの状況から逃げ出す事も出来だろう。

だが、それをしてしまえば、本当に俺が宿を爆破した犯人だと思われてしまう。

そうなればアーエーとの旅はここで終わりだ。

この場は、大人しく逮捕されるしかなかった。

容疑は捕まってから、晴らすしかない。

気がかりなのは火風とアーエーのことだが、火風がいれば大丈夫だろう。

宿の火事に巻き込まれず逃げ出せている筈だ。

そう信じて、俺は抵抗を止めた。

 

 

 

 

ーーー✠ーーー

 

 

 

 

 

 

「そうなの。大人しくしていればそれで良いの。さあ、現行犯さんを連行するの!」

 

騎士団に連行されていく四条を火風とアーエーの二人は物陰から見ていた。

二人は四条の予想通り、燃えている宿から無事に脱出していた。

 

「四条が連れて行かれてしまいますー。助けなくていいのですかー?」

 

アーエーの言葉に火風は悔しげに首を横に振った。

 

「今、私たちが出て行っても一緒に捕まるだけだ。この状況で騎士団を相手に反抗するのは拙い。それをわかっているから、四条も大人しく捕まっているはずだ」

「そうですがー」

 

アーエーはそれを聞いて抱えている具足虫を見た。

矢に射貫かれながらも四条の指示通りに彼女たちの元へ飛んできた具足虫を、彼女は優しく抱え込んでいた。

 

「お前はご主人様と離ればなれになってー、可哀想ですねー」

「言うな。私だって不本意なのだぞ」

「ではー、これからどうするのですかー?」

「一旦、身を隠す。どういう経緯で宿が燃えたのかはわからないが、四条が騎士団に捕まったと言う事はあいつが渦中に居たと言う事だ。何があったのか、それがわかるまでは下手に動けないからな」

「その間に四条が縛り首になったらどうするのですかー?」

「あいつが自力で無罪を証明できるのが一番だが、それが出来ない様なら私が助け出す。そうなったら、悪いが旅の護衛は此所までだ。王都へは一人で向かってくれ」

「おー、アーも低く見られたものですー。このアーが、この国の騎士団程度を相手にビビるとでも思っているのですかー。私も四条を助けるのに協力するのですよー」

「・・・おまえ、やはりただの魔人族ではないな?」

「・・・そんなことないのですよー。アーはただの可愛いだけの女の子ですよー」

「まあ、いい。素性を隠している奴を深く探らないのが冒険者の流儀だ。頼りにして良いのだな?」

「任せやがれですー」

 

火風とアーエーはそうしてその場から離れて行った。

 

 

 

四条は騎士団に逮捕され、彼が召喚した具足虫の内の三匹は名誉の戦死を遂げた。

生き残った一匹は美少女魔人族(アーエー・シューハマー)に抱きかかえられて満更でもなかった。

では、()()()()は?

答えは―――最悪だ(ヤバか)った。

 

その一匹は宿が爆発したのに気が付き、逃げた男を追えという四条の指示を()()()()、引き返して来ていた。

そして、騎士団に四条が連れて行かれる様子を見て、慌てて街を飛び出して、ある森へと向かった。

その森は街から人間の足で二日ほどの距離にある村の側にあるが、最高時速500キロを誇る具足虫の翅なら、ひとっ飛びだ。

そこは以前、四条が【神器】のチカラで異界と繋げた森である。

 

そして、此所から先は四条も知らない事だ。

【神器:天害蠱軍】で召喚された異界の蟲たちは、役目が終れば自分で異界に帰って行く。

その際、【神器】のチカラで異界と繋がった場所から帰るのだが、帰ることが出来るのだから、()()()()()()()()

異界と繋がった場所は、時間経過と共に繋がりが薄れるが、()()()()()()

勿論、四条の指示なく彼らが異界から溢れ出すことはない。

()()()()()、彼の窮地(ピンチ)を目撃したのなら、なにもしないで居るほどに彼らは薄情ではない。

昆虫に感情はない。

だが、情動はある。

 

彼の為なら、彼の命令すら無視するほどに、彼らは彼のことが大好きだった。

 

異界に帰った具足虫が、仲間たちに向けて叫ぶ。

 

〈た、たいへんだー⁉ごしゅじんさまが、さらわれたー‼〉

〈な、なんだってー⁉〉×数百匹。

〈たすけにいくぞー‼〉

〈おー‼〉×数百匹。

 

森で暮らす動物たちが森から逃げ出し、近くの村の人間たちが怯える程の羽音が森に響いた。

 

召喚勇者たちに与えられた神器の中には【神】の名を冠するものが三つと、【天】の名を含むものが四つある。

それら七つの【神器】の能力は、他のものとは一線を画す。

この国の王族の一部しか見ることの出来ない文献曰く、【神】の名を冠するモノは世界を制する(すべ)となり、【天】の名を含むものは一国を落す力を持つという。

 

〈ごしゅじんさまをいじめるやつがいたら、けつにたまごをうみつけろー‼〉

〈うみつけろー‼〉×数百匹。

 

【神器:天害蠱軍】。

神話の時代に天神に対抗する為、地神が産み出したと言われる(そら)(ひかり)すら飽食する蟲たちを操る神器。

それを持つ四条は自身のあずかり知らぬ所で一つの街を滅ぼしそうになっていた。

 

 

 

 

 




登場人物。

主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
好物:発酵食品。
趣味:麻雀。

女冒険者ー火風。
使用武器∶手斧×2

魔族少女ーアーエー・シューハマー。

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