勇者過軍~魔王の死後、80年後に召喚された俺たちは時季”ハズレ”の勇者と呼ばれていた。   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれれば幸いです。
m(_ _)m




第八話

 

取り調べ室での仕事を終えた亞呂恵は、急ぎ足で副隊長室に戻る。

副隊長室(この部屋)は亞呂恵の仕事部屋なのだが、部屋には化粧品や衣類が散乱し、果ては天幕付きのベッドまであった。

全て、騎士団の経費で購入した彼女の私物である。

亞呂恵はベッドの上に身を投げると、うつ伏せのまま足をジタバタとさせる。

 

「~~~~~~っ!信じられない事が起こったの。これは運命かもしれないの!」

 

その顔は歓喜で赤く染まっていた。

“ハズレ勇者”が起こしたと思われる宿屋の爆破事件。

宿屋の家族を含め宿泊客や周辺住民にも犠牲が出た痛ましい事件だが、犯人を早々に逮捕できたのは自分の日頃の行いが良いお掛けだと亞呂恵は思っていた。

そんな彼女に更なる幸運が訪れた。

 

「まさか、容疑者さんから()()()の名前が出てくるとは思わなかったの!」

 

四条が一番始めに弁護を頼もうとした人物。

 

愛羽(あいばね)明人(あきひと)

 

彼こそが“ハズレ勇者”でありながら高い実力を見せつけることで騎士団入りを果たし、その功績と甘い容姿(ルックス)によって数多くの女性を虜にしている亞呂恵の憧れの人だった。

亞呂恵は仕事で王都に行った際に遠目で愛羽を見たことがあるだけだったが、その容姿(ルックス)に一目惚れしていた。

 

「裁判が三日後なのが残念すぎるの。生の愛羽様を近くで見るチャンスだったのに~」

 

仕事部屋の惨状が示すとおり、普段の彼女の勤務態度は褒められたものではない。

規律を重んじる騎士団という組織において、彼女が地方騎士団とはいえ街を預かる部隊の副隊長を任されていることがありえないと陰口を叩かれる位には、彼女は仕事をしない。

だが、しかし、今回ばかりは別だった。

亞呂恵は普段なら部下に押しつける仕事を喜んで行う。

 

「このチャンス!ものにするしかないの!」

 

亞呂恵はベッドから跳ね起きて、部屋に設置されている電話機を手に取った。

そして、深呼吸をした後に王都にある騎士団本部へと電話をかける。

数秒の後、電話が繋がった。

 

《こちら、騎士団本部。所属と名前を願います》

「地方騎士団、第二十三分隊所属。副隊長の亞呂恵なの」

《少々お待ちを。・・・・・・・・・確認が取れました。亞呂恵副隊長。お疲れさまです。何の要件ですか》

「あ、あの、勇者さんの、えっと、あ、愛羽さ、愛羽さんにお話があるの。どうにか取り次いで欲しいの」

《・・・・・・・・・失礼ですが、要件の内容をお伺いしても?》

「私の街で起きた事件についてなの。捜査中なので全容は話せないの。あ、でも、四条獅子丸という勇者さんについてと伝えてくれれば、きっと伝わるはずなの!」

《わかりました。お待ちください》

 

暫くして、電話機の向こうから聞こえてきた声は清流のように爽やかなモノだった。

 

《もしもし》

「も、もしもしなの!あ、愛羽さま、いえ、愛羽さんなの!」

《はい。愛羽です。僕の親友である四条に何かあったと聞いたのですが?》

「は、はいなの。実は四条さんがある事件ヘの関与が疑われているの。それで、弁護人として貴方の名前を彼が出したの」

《わかりました。直ぐに向かいます》

「い、いえ!裁判は三日後だから、愛羽さんが弁護人として出廷することはできないの」

《・・・残念です。僕が四条の為にできる事は、なにかないのでしょうか?》

「ざ、残念ながら、ないの・・・。あ、あの!で、でも!四条さんが本当に愛羽さんのお友達なら、捜査はしっかりとするから、あ、安心して欲しいの!」

《それは、ありがとうございます。えっと、貴女の名前を聞いてもいいですか?》

「地方騎士団、第二十三分隊所属のあ、亞呂恵なの」

《亞呂恵さん。四条のことを伝えてくれてありがとう。優しい人なのですね。出来たら、四条のチカラになってやってください》

「・・・ざ、残念だけど、贔屓は出来ないの。状況からして、四条さんが一番犯人さんに近いの」

《真面目なのですね。僕、そういう人、好きです》

「す、好きぃ⁉」

 

突然の殺し文句で素っ頓狂な声を上げてしまった亞呂恵は、電話の向こうで愛羽がクスクスと笑っている声を聞いて、顔を真っ赤にする。

 

「か、からかわないで欲しいの」

《いえ、本当の事ですよ。優しくて真面目な亞呂恵さん。どうか四条のことを色眼鏡で見ないで公平な捜査をお願いします。そうだ。もし四条への疑いが晴れたら、直接お会いしてお礼をさせてください。一緒に食事でも、どうでしょう?そんな事がお礼になるかは分かりませんが・・・》

「い、一緒に食事⁉ぜ、是非!お願いしますなの!」

《ふふ、はい。では、四条の事を()()()()()()()()()()

「こちらこそお願いしますなの!」

 

そうして電話が切れた。

憧れの人との食事という夢みたいな話を聞いて、夢心地で電話機を置いた亞呂恵は、しばらくの間は多幸感に包まれていたが、直ぐにある事に気がつく。

 

「・・・四条さんが犯人さんだったら、愛羽様に会えないの?」

 

そのことに気がついた亞呂恵は慌てて副長室を飛び出して、現場へ向かうことにした。

四条を捕まえたことで軽く調べるだけで終えていた現場検証を、やり直す必要が出来たからだ。

取調室での四条の証言。

自分は犯人じゃないという言葉。

それを証明する為に、なんとしても真犯人がいるという証拠を見つけなければならない。

 

「あれが嘘だったら、絶対にゆるさないの!」

 

愛羽に直接会いたい。

憧れの人と食事をして、あわよくば親密な関係になりたい。

王都で活躍する勇者と地方で暮らす女騎士との目眩(めくるめ)くラブロマンス。

まるで恋愛小説の主人公になったかのような気持ちで浮かれながら、亞呂恵は部屋から飛び出していくのだった。

 

 

 

 

ーーー✠ーーー

 

 

 

 

夢見る女騎士-亞呂恵が再捜査を開始する中、四条への疑いを晴らす為、()()()()()()()が動き出していた。

 

王都の仕事部屋にて、電話が切れたことを確認した愛羽明人は、よそ行きの顔を止めて、盛大な溜息を吐いた。

 

「まったく。しぃ君は本当にまったく、少し目を離すと直ぐにトラブルに巻き込まれるんだから、可愛いなあ」

 

愛羽は激怒した。

必ず、あの竹馬の友である親友を助けなければならないと決意した。

愛羽は王都で活動する勇者であると同時に、この国に剣を捧げると誓った騎士でもある。

彼は地方騎士団を管轄する騎士団本部で働き、今の彼には騎士団長補佐の地位と名誉がある。

けれども彼は親友の危機に対しては人一倍敏感であった。

 

「待っていてね!しぃ君!僕が絶対に助けて上げるから!」

 

愛羽明人とは、そういう男だった。

 

 

 

 

 




登場人物。

主人公ー四条獅子丸。
肩書き:召喚勇者序列第十三位。
使用武器:【神器:天害蠱軍】。
好物:発酵食品。
趣味:麻雀。

女冒険者ー火風。

魔族少女ーアーエー・シューハマー。

女騎士ー亞呂恵。
肩書き:地方騎士隊第二十三分隊副隊長。
好きな人:愛羽明人。

勇者ー愛羽明人。
肩書き:召喚勇者。騎士団本部騎士団長補佐。
好きな人:四条獅子丸。

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