医務室ではお静かに。 作:一般適合者
長ぇんだよ戦闘描写が!って人はツッコミ入れてくれると参考になります。トレンドは始まりの歌。まだ登場してないやん。
「『諦めない強さにミライは宿る』」
「切歌、やめなさい!調も!」
怒りのままに切歌は飛び上がり鎌を分裂させ投擲。調はバックステップの後、ギアから小型の鋸を射出。切・呪りeッTぉ、α式・百輪廻。長い時を過ごした二人だからこそできる連携攻撃、これにはセレナも敵うものか。にやりと笑った切歌だったが、
「絶望の闇でも 絆の陽は煌めく」
「なんデスとぉ!もはや職人業デスよ!?」
「此の『今』を生き尽くしたい」
「切ちゃん、危ない!」
「なんッ──」
「刃引きだけは、してあげます」
セレナが剣を真上に投擲した、そう認識した瞬間に切歌の体は崩れ落ちる。言葉通り鈍になった白銀のナイフが切歌の身体に突き刺さった訳だ。暫くは痛みに悶絶しそうな威力を出しておきながら、彼女は回転して落下する剣をキャッチ。両手にて14発。歳下相手に容赦なし、調は薄ら寒くなってきた。こんな化け物を相手に戦えるだろうか──
否、やらねばやられる。切歌を助け起こしながらセレナを睨む。牽制代わりの丸鋸はもう当たらない、当てるつもりがないと見抜かれているか、飛来するほとんど全てがハイキック一撃で吹き飛ばされていく。マリアへの視線を変えることなく、直撃コースの数個は浮遊する短剣が粉砕。
「見向きもされない……」
「ふッ!」
なんとか立ち上がったマリアの攻撃は左手だけで逸らされ受け止められた。固く握られ肩後ろまで引き絞られた銀の衝撃がガングニールにヒビを入れる。アームドギアに広がる傷は、ほとんど全てが無手によるもの。凄まじいまでの膂力と持久力だ。これだけ見ると文字通りの化け物であるが、観客の避難はまだ続いている。ノイズさえ復活してしまえばこちらのもの、あちらにノイズを送り込むだけで動きは制限できるだろう。
「儚き一瞬だから」
「くっ、ノイズの増援が来ない……」
「このままじゃ、押し負ける」
「本気のセレナ、こんなに強いんデスか!」
γ式・卍火車──巨大な丸鋸で挟み込み両断しようにもアームは微動だにしない。むしろ力負けして弾き返される始末。正規適合者との差はこれほどまでに広いと現実を見せつけられる。が、こちらとて負けられない理由があるのだ。強く口を結んだ調の気持ちは負けていない。
突貫するマリアのマントに隠すように丸鋸を放ち、切歌が拘束目的の鎖を放つ。二課所属の装者であれば圧倒できただろうコンビネーションも、セレナの前には及ばない。距離を取ることはせず、彼女は逆に踏み込んでマリアを盾にした。セレナが予測進路上から外れたことで遠距離攻撃は封じられ、間合いの内に入り込まれたマリアは苦し紛れの薙ぎ払い。
「命は可憐に燃えて」
「この、無力化と言いながら本気で殺しに来てるのね。まだ対応できないわけじゃないってのは……人質が効いているのかしら」
「その前に倒せば良いだけですよ!」
「ぐっ!」
例え柄でもアームドギア、直撃で体勢が崩れることは避けたいセレナは身を翻してステージの端へ降り立った。相変わらず背後には避難中の客が残っているのだ。無理は出来ないのがもどかしい。会場を壊してもいけないのだから、戦いにくいことこの上ない。右手の剣を満足に使えないことがこんなに面倒とは想像もできなかった。
だがそれを言い訳には出来ないから、セレナは拳を握って鎌を打ち払う。大きな刃はそれだけで丸鋸への盾となり、吹き飛ぶ装者はマリアの視線を誘導するには十分なのだ。変わらない様子で仲が良い調と切歌に薄く笑みを浮かべながらもステージを砕きながら踏み込み、砲身のように展開したガングニールを空へかち上げる。
「聖なる力番う歌へと」
「くっ……行動を読んでいるとでも言うの!?」
「後の先、です。動き出しが分かったなら対応はいくらでも出来ますよ。──例えば姉さんが何かを待っているとか、ね」
「例えばこんな、予想外ッ!」
「行って切ちゃん!」
マリアを援護するような遠距離攻撃に徹していた二人のうち、切歌が鎌を大きく振るう。それ自体視えているのだから攻撃を受けることはない。カァン、と高い音を立てて拳一つで鎌をへし折るも、飛来した鋸は観客の方へ。マトモに使わなかった蛇腹剣を伸ばして叩き落としながら、調を見る。一般人にギアの攻撃を向けることの危険さを真に理解しているのだろうか。
セレナは三人と向かい合う。息を切らし見上げるマリア達とは異なり、彼女の呼吸は微塵も乱れていない。ほとんど体力を使っていないことの現れだが、それによって変わらぬ表情はプレッシャーを与えるに十分だった。現に調と切歌の集中力は切れかかっている。これ以上長引けば不利になるのはマリアだ。
「まだやるつもり?」
「最初に言いましたよ、逃がさないと。時間稼ぎの問答ですか?ふむ……想定されるものとしては、二課装者の到着とそれに伴う私との交戦。寸断されたネットワーク映像の再接続。私の集中力の限界、来るかも分からないソロモンの杖によるノイズの援軍。さて、この中に答えはありましたか?」
「しばらく会わないうちに随分と生意気になったものね、人生経験も豊富になったと見えるわ。私の知るセレナとは似ても似つかない」
「姉さんと離れてから、色々ありましたから。自分ばかりが辛い思いをしていると思い込んで泣いたことなんか数え切れません。それでも私を助けてくれた人に恩を返すまでは立ち止まれませんでしたし、何より皆にもう一度会いたかった。その想いだけは忘れていません。こうなるなんて思ってもいませんでしたけれど」
私だって、何も感じていない訳じゃない。そう言いたいけれど伝えられない。それが無性に悔しくて、フィーネの気持ちも少しは理解出来たようにも思えた。状況と言葉が必ずしもプラスの方面に働くとは限らない。ましてやここまで刃を交えてしまったのだ、数分の会話で解決できるほど甘い状況になるだろうか?
「既に言葉は役に立ちません、話は独房でしてもらいましょう。大人しく投降していただけると良いのですが」
「そこまで分かってても」
「対処できないものもあるのデス!」
ニヤリ、切歌の笑みに目を見開き全方位に短剣を放つ。抜刀から投擲までを瞬時にやってのけたセレナの動きは、再出現したノイズを召喚と同時に消し飛ばした。右手の蛇腹剣を伸ばしダガーを操り、孤軍奮闘するが溢れるノイズは止まらない。徹底的にセレナへ集まるこれは人を襲うような動きではない。そう気づいた時には遅かった。
「まさか──くっ、待ちなさい!」
「勝負は預けるわ、セレナを騙る偽物。私達を追うより、その後を考える事ね!既に包囲されている自分のことを!」
不味い。ノイズを片手間に切り刻み串刺しにしながら、やって来たヘリに飛び上がるマリア達へと手を伸ばすが──ノイズは際限なく現れる。悲鳴を上げる一般人を守るように短剣を操り、粗方を殲滅し終えた頃にはマリア達の姿はない。ヘリが飛び去っていく方角を睨みつけながら、ただ一人セレナは会場に立ち尽くしていた。
『や、小夜ちゃん。随分派手に暴れましたね』
「レヴィさん」
『通信手段は元々封じているし、小夜ちゃんを見た記憶はこちらが回収を始めているところ。餞別代わりの証拠隠滅って感じです。最後のお役目ですね。……それでは、お元気で。しゃしゃり出てくるだろう二課の相手を含めて──』
「小夜、いや。セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。任意同行を求めたいが、よろしいな。こちらとしては従わない場合、実力行使も厭わないということも付け加えておこう」
『あなたの幸運を祈ります、
「もし拒否した場合、私を狙うスナイパーさんを含めて三人がかりということでしょうか。それとも、控えている弦十郎さんたちも含めて戦いますか?私としては今すぐ姉さんを追いたいのですが」
「それは……」
「身内の恥は自分の恥、と言いたいのか」
この場にやって来たのは翼たちシンフォギア装者だけではない。弦十郎をはじめとした後詰のメンバーも総出だ。それだけ危険視されているとなれば、セレナとしては複雑な心境にもなる。確かにマリアを上回る強さを持っているかもしれないが、話に応じないと言った訳ではないのに。
身内の恥、という言葉に頷いておく。正確には身から出た錆と言うべきなのだろうか。セレナは日本語も達者であった。過去の自分の未熟さ故に引き起こされる惨劇を予測できるからこそ、セレナは優秀な調査員として活動していた。経験則が、今は従うべきと言っている。
「お話します。武装組織『フィーネ』と、その目的──フロンティア計画の全貌について。私の知っている限りでよければ、ですが」
「分かった」
「ライブ会場でノイズ、嫌な記憶しか過ぎらないな」
「危険すぎますよね、あんな場所で」
「いや、シンフォギアに生身で戦うセレナも大概だけどな?」
「あれが成人の基本だと聞きましたが、違います?」
「そんな訳……あれ、そういや弦十郎のおっさんも緒川さんもそうだったな。もしかして皆そうなのか!?友里さんも藤堯さんも!?」
「日本とは恐ろしい国ですね……」