医務室ではお静かに。 作:一般適合者
ツヴァイウィング、ライブの惨劇、ネフシュタンの鎧、そして
「映像解析でも、この反応は未確認とのこと。即ちこれは我々の知らない新たな異端技術である可能性が非常に高い。ほぼ確定と言っても過言じゃない。だとするならあの光は一体?」
「我々も、目下調査中だ。反応が途絶したところを見ると、MIAになっているのもやむ無しだが……ここで諦めるようなら奏に叱られちまう。国内の記録を洗い出しているところだ」
「あの方陣、少なくとも国内の技術ではないと思います。古くから見られる様式とは異なる……恐らくは、海外の異端技術である可能性も」
「だからって、もう間もなく死に至る奏ちゃんをどうするつもりだったのかしらね。ガングニールだって消え去ろうとしていたのに……まさか、ガングニールの強奪?だとするならシンフォギアそのものを狙った海外の組織という可能性も見られるわ」
司令室に集まった私たちは、あの時奏ちゃんを包んだ光についての調査報告を受けていた。司令を筆頭に知恵を出し合っても、結論は出ないまま。翼さんと緒川さんが出ている今なら、と行われたのだけれど進展なし。シンフォギアシステムが国家機密である以上仕方ないけれど、だからって海外に調査の手を伸ばせないのもむず痒い。あったかいもの、どうも。
差し出されたコーヒーは、ミルクと砂糖をたっぷり仕込まれた私専用のカスタマイズだ。まさか、友里さんって全員分の好みを覚えているとかじゃないわよね?聞いてみてもはぐらかされそう。飲みやすい温度のコーヒーを流し込んで、頭をガリガリ掻き乱す。あ、そこ。ちゃんとシャワー浴びたからね。さっきだけど。
「だからその格好な訳ね」
「手術する必要はないし、それならラフな格好で十分。極端な話、服を着る習慣なんてものは資本主義に塗れた愚か者の思考です」
「これでも改善した方だってのが恐ろしいですよ」
「最初なんか全裸だったもんね。世間知らずにも程があるわよ。お陰で私は、イイモノ見られたけれど」
「減るもんじゃないから今すぐにでも見せようか」
「やめんか」
割と本気で注意されてしまった。私としては私服は全てこれで完結させたいくらいなんだけれど、そんなにダメなんだろうか。競泳水着。スタイルの維持だって下着だって全部これで完結する。合理的にも程があるでしょう。え、どうしたの友里さんに了子さん。そんなに親の仇を見るような視線して……ああ、なるほどね?
「予備ならここにあるわよ」
「「流石にちょっと」」
「そう……」
(白衣に水着って、ねぇ?)
(私でもそんな格好しないわよ?)
「……話を戻そう、奏のことだ」
そうそう、奏ちゃんの話。今日のメインは私。態々医務室の外に出てきたのはこの為なんだから。私の夢、死者蘇生に向けての第一歩。フォニックゲインとシンフォギアの組み合わせは不可能をも可能にする力が秘められている。その力は自然の摂理を超え、いかなる事象も実現出来るはず。私はそう信じている。何せ理論上では、致命傷までなら治癒が可能だという試算が出ているのだ。
「絶唱のバックファイアについて、研究報告が上がっている。了子くんに加えて彼女にも協力してもらっていてな。頼めるか?」
「はいよー、私です。皆のアイドル、飛鳥レヴィです。今回はシンフォギアシステムの切り札こと絶唱についてですねー」
結論から言うと、絶唱と共に発生する膨大なエネルギーを制御し逃がすシステムの構築が完成した。あくまで理論上ではあるものの、実現したならば奏ちゃんの適合係数でも、無手による絶唱のバックファイアを八割方抑え込むことが可能だ。その為にはギアの改修が必要なのだけれど、残念ながら実現には程遠いことが判明した。たった今。
「なんだと!?」
「いや、技術的には天才了子さんが居るから可能なんですよ。はいそこピースしない。今は私のステージですからね」
「技術的には?ってことは他になにか要因があるってことですか。例えば……時間が足りないとか?」
「んー、5点。藤堯くん補習行き。後で医務室に来てくださいね、マンツーマンで指導してあげますよ……なんて、冗談です。怖いので隣の彼女さんを止めてください藤堯くん」
「「彼女!?」」
そういえば、ギアの改修に必要な聖遺物が不足していた。エネルギーの行き場、進むべき道標を示すそれが必要なのだけれど、簡単に見つかるようなものではない。絶唱によって生み出されるフォニックゲインは計り知れず、装者のコンディションと適合係数によって跳ね上がる。私たちが目指すゴールを例えるのならば、荒れた海を小舟一つ無傷で駆け抜けるようなもの。
「そうですね、船に類するものや航海に関係する聖遺物があれば問題ありません。最終的に必要なのは、目的地へ辿り着くための道を作る概念です。その気になれば哲学兵装の欠片でも構わないのですよ」
「難しいことを言うんだな」
「これでも妥協してる方ですよ?本当なら街道という概念の始まり、ペルシア人の作り出した道の欠片だったりローマ街道の欠片だったり。より純度を高めるのなら当時物のローマ水道橋の要石だったり?フォニックゲインを水と見立てて制御するのなら最古の橋の要石でも欠片でも良いんですけどね」
「やだ、この子私より優秀じゃない?あーん、これじゃ私の立つ瀬が無くなっちゃうわ。これからはレヴィちゃんにお任せしちゃおうかしら」
「ハッ倒しますよ」
ともあれ。
「奏ちゃんのギアがない以上、天羽々斬で試すしかない」
「だが唯一の戦力を離脱させる訳にもいかん、か。随分と時間をかけてくれたが、すまない」
「いいんですよ。私にはこれくらいしか出来ませんからねぇ。ああ、終わったなら医務室に戻っていいですか?そろそろこのテンション維持するのも疲れてきたんで」
「そうか……ありがとう」
「それでは。皆々様、くれぐれも怪我などしませんように。私の仕事がバカスカ増えていくだけですからね」
●
「飛鳥・レヴィ・オウス……なるほど、了子くんが太鼓判を捺すわけだ。単なる医療スタッフなどに収められるような才能ではないな」
「あの風鳴訃堂肝いり、って話だったものね。弦十郎クンが警戒するのも納得だけれど……あんな感じじゃ警戒しても意味なさそうじゃない?」
「医務室の中より外にいる方が接しやすいとはこれいかに……ま、オフモードだって考えりゃ理解もできますけどね」
「来歴不明なんでしたっけ?」
一息。各々が手にしたカップから立ち上る湯気はその勢いを随分と弱くしていた。レヴィが去った司令室に映し出されたのは彼女の来歴と、そして顔写真。某有名大学医学部卒、海外でのボランティア経験の後二課に加入。長い銀の髪と金の瞳が特徴的な彼女は、ハーフの日本人だと自称している。流石に無理があると思うのだが、だれも突っ込まなかった。
言ってしまえばこれは履歴書なのだが、これは二課によって作成されたものではない。レヴィ自身がこれ片手に乗り込んできたのだ。風鳴訃堂から教えてもらったと宣いながら。
すわ襲撃かと身構えていた職員の前に現れたのが彼女であり、エレベーターで乗り物酔いしてフラフラな状態で言い放ったのが上記の言葉だった。実際にはもっと途切れ途切れで吐き気を我慢しているような詰まり具合だったのだが、本人の名誉の為に忘れることにした大人たちの判断は流石の一言に尽きる。
「ああ。確かに
「雪音夫妻も巻き込まれたあの事故に?」
「そ。結局、雪音夫妻は行方不明。彼女一人だけは致命傷を負いながら生還。娘の雪音クリスちゃんも帰国後消息不明と、誰も幸せにならなかった悲しき事件ね」
「事件前と後で随分と容姿に違いが見られますね、レヴィさん。ストレス性のものという話でしたが……」
「医務室でのあの態度は、バルベルデでの裏返しとも取れるな。たった一人だけ生き残ったことによる強迫観念、か」
「サバイバーズ・ギルトでしたっけ。そうだとするなら、彼女は一体何を目指しているんでしょう」
●
『聖遺物が足りないとはな』
「くだらないミスだよ、ホント。だけど今の私ではこの程度、昔のように全てが上手くいくような才能なんてどこにもないんだ」
『努力、か。人間の好きな言葉だ』
「本当にね」
『次はどうする?』
「そうだな、このプランは当面封印して──おや、ノイズの出現だ。また怪我人が増えるのかな、面倒だなぁ」
この時、私はまだ知らなかった。まさか融合症例と呼ばれる少女が、奏ちゃんのガングニールを携えて現れるだなんて。
「お仕事、するかぁ」
『嫌々だな』
「本当に嫌だけど、実現のためにはこうするしかないよ」
運命の日まで、あと──
3000書くにも時間が足らぬ
ジークアクス面白かったです。御新規さんも是非どうぞ、知識ゼロでも楽しめる作品だと思いますよ。
あとシンフォギア最高。
1話あたりの文量
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