医務室ではお静かに。   作:一般適合者

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ライブ感大事。
劇場版も大事。



その4

 いつも思うのです。私があの時、ノコノコと風鳴訃堂の呼び出しに応えなければ悲劇は防げたのではないかと。上がってきた報告を受けている時、奴からの連絡が入ってきた。いつも通りのしかめっ面が視界に入った途端、あの日を思い出してしまう。まるで襲撃を見通していたかのような私の招集と、その後の迅速すぎる反応。お前さえいなければ、と何度思ったことか。

 

「けれど到底変えられない過去のお話ですよね、奏ちゃんのことは」

『くどいぞ飛鳥・レヴィ・オウス』

「あの日呼び出したのはアナタですよ風鳴訃堂。本来であれば待機すべきはずだった医療スタッフの不在、それによるLiNKERの使用制限、そして」

『故に貴様に許可を出したと言うておる』

「感謝していますよ風鳴訃堂。こんな情勢です、大手を振って海外と連絡が取れるというのは私にとってやりやすい。ま、残念ながら有力な情報は手に入ってませんがね」

 

 真っ暗な部屋の中、モニターの光が煌々と私の顔を照らしている。膝を立てながら椅子を回して、カメラに背を向け立ち上がる。この私が裸体を晒しているのに何も言葉を寄越さないなんて、あのジジイ枯れすぎじゃない?勝手にやってるだけ?そう……

 やや寒いから白衣を羽織って、書棚から取り出したファイルを開く。はらりと垂れた髪をかき上げながら読み上げるのは奏ちゃんの行方についての報告書。第五次調査報告書まではナンバリングを振っていたんだけど、いつの間にかただの報告書になってしまった。

 

「えー、今回の調査報告ですが」

『既に目を通しておる』

「では報告せず勝手に進めていきますね」

 

 ファイルを閉じて後ろ手に放り投げた。本来ならナンバリングなんて不要で、印刷して置いておく必要も無い。それはあくまで『記号』に過ぎないからだ。数字や紙という『記号』による優位付けこそが真価であり、私はそれに価値を見出していない。やれと言われているからやっているだけだ。数字はもういらないだろうけれど。

 

『一刻も早くだ。これ以上夷狄の台頭を許す訳にはいかぬ。貴様の言う協力者も同じことよ、ゆめ忘れるな』

「へいへい、分かりましたよ」

 

 言い捨てて通信を終えたクソジジイに中指を立てて、椅子に体重を預ける。確かに奴は私の目的に必要な存在だ。やりたい放題出来ているのもあの老いぼれの力があってこそ、便利な奴はとことんまで利用してやるに限る。別に誰に好かれている訳でもないくせにでかい顔しやがって。愛刀を竹光にすり替えてやろうかな。

 鬱屈とした気持ちを切り替えようと立ち上がった。大きく伸びをした時、背中からバキバキと変な音が鳴る。膝立てながら座るなんて良くないって理解しているけれども、あいつと話す時に敬意なんて必要ないと思うのだ。敬意なんて記号は関係ない、あの防人狂いにとって重要なのは国防の礎になるかならないか。実利だけを追求する姿勢だけは評価してやってもいい。それ以外でマイナスだけどね。

 

「さて、と。やるべきことは多いんだけどなー」

 

 とりあえず、あの子見に行くか。そう思い立ち上がり、パチリと電気をつけた。ほら見てくれ、整頓された医務室だ。放り投げたファイルを拾いながら誰に聞かせる訳でもない独り言。保護された子は間違いなく融合症例として扱われるはずだ。

 人と聖遺物が融合するだなんて荒唐無稽、この目で見るまで信じられなかったけれどまさか本当に起きるだなんて。書きかけのまま放置していた研究報告書を空間に投影しながら、私は渋々服を着ることにした。だってそうしないと司令に怒られるからね!

 

「見た目よし、声よし、スタイルよし、完璧です。それでは行きましょう私、初対面の子には優しくしないとですね」

「こんにちは!」

「はいこんにちは。初めましての人?」

「あ、はい!今日からここで働くことになった立花響です!医務室の人に挨拶しに行ってこいって言われて来たんですけど、あなたが?」

 

 ランダムエンカウントタイプだったかー。

 

「あの、どうしたんですか?」

「この歳になるとね、君みたいな真っ直ぐさを持った子を見て自分にダメージを受けてしまうんだよ。いつの間にか大人になって大切なものを忘れてしまったんじゃないかってね」

「大丈夫です!凄く美人ですし!」

「うーん、いい子だね飴ちゃんあげる」

 

 やったー、小躍りするこの少女が立花響だという。奏ちゃんのガングニールを受け継いだ非正規装者、融合症例第一号。およそ戦いには似つかわしくない活発な女の子と言った感じ。

 

「どうしたんですか?」

 

 そして彼女の胸の中にある破片は、意図しないまでも奏ちゃんが残したヒントだ。あの破片が消滅せず残っているとするならそれは──新たなるシンフォギアを作り出すことにも繋がるかもしれない。

 

「ううん、なんでもありませんよ。自己紹介がまだですし、中で色々話そうかな。コーヒーは得意?それともココア?残念なお話ですが、それ以外だと南極産の氷しかありませんね」

「選択肢が実質二つですね!ココアが欲しいです!」

「はいはい、じゃあ座っててくださいね」

 

 用意ついでに自己紹介。ええ、そんなに若く見える?お世辞がお上手なんですね、秘蔵の焼き菓子も付けちゃいましょう。ん、ハーフじゃないですよ純日本人です。見た目?そんなものいくらでも変えられますからね、便利な世の中ですよ。はい熱々のココアとマドレーヌ。甘いものは人を幸せにしますとも。

 

「ありがとうございます、飛鳥さん!」

「レヴィでもいいですよ?呼びやすい方法で構いません。本人が分かればそれで十分ですからね」

「はい!レヴィさん!」

 

 ……この子、詐欺とかに引っかかるタイプじゃないかな。たった今会ったばかりだけど心配になってくる。ので、ダメ元で聞いてみた。

 

「胸の破片、ちょっと取り出してみましょうか?」

「出来るんですか!?了子さんは無理って言ってたのに!?」

「レントゲンを見た感じ、少なくともいくつかは摘出できると思いますよ。ま、私の腕前だとそれが限界とも言いますが……どうします?」

「痛かったりとか……しません?」

「五分で終わらせましょうか。摘出できるかどうかの確認も含めて五分。無理そうならすんなり終わりますよ」

「五分なら、まぁ?」

 

 よしきた。

 

 

「響さん、聞こえます?」

「はぅ!?未来が手を振って!」

「冗談でもそんな事言わないでください。傷跡も無し、痛みも無しで万々歳でしょう?はい、一つだけ摘出できましたけど見ます?」

「えっと……もしかして、汚れてたりとか?」

「ああ、洗浄は済んでいますよ。これです」

 

 ガラス皿に載せた白い破片を見せる。響さんの体内に残るガングニールの中でも、恐らくはアームドギアの破片と思しきものだ。摘出手術自体は私の与り知らないタイミングで行われていたらしい。カルテも残っていたけれど、随分と雑な処置だったみたいです。胸に残る傷跡はその名残りなのかもしれません。

 

「ほえー、っていつの間に手術が終わって!?」

「これでも医療スタッフですからね私……ああ、申し訳ないのですがこの処置は内密にお願いしますね。この破片は然るべきタイミングで司令にお渡しする必要があります、それまではこの二人だけの秘密ということで」

「はい!ありがとうございました!」

「また何か怪我とかしたら来てくださいね。あー、でも仕事増えるのでやっぱり怪我しないでください。遊びに来るのもNGで」

「どっちなんですかぁ!?」

「ただ、翼さんと会うのならまずは自己紹介からお願いしますね。彼女にも辛い過去があります。不用意な発言なんかしないでください」

「そっか、奏さんの……はい、分かりました」

「あの人すぐ医務室に来て愚痴を言うので私の仕事が増えますし」

「本音ってこれですよねぇ!?」

 

 本当に元気な子だ。彼女を見送る時、あまりの眩しさに目を細めてしまった。あれくらいの真っ直ぐな芯があれば翼さんとも仲良くなれるだろう。むしろ翼さんが歩み寄るぐらいの姿勢でいて欲しい。あなた先輩なんですよ。SAKIMORIとか言ってないで同世代と交流してください。特技居合切りとか書けないでしょ。

 

「じゃ、私も仕事しますかね」

 

 机の上に置かれたガングニールの破片は仄かに光っているように見える。データ検証の結果は紛れもなく本物、100%奏ちゃんのガングニールだという確証が取れた。であるならこれは奏ちゃんに近づく為の道標、コンパスになり得るだろう。

 しかしながら小目標である奏ちゃんの捜索に、二課や政府といった面倒な存在を噛ませてしまっては私の目的が達成できなくなる。露呈した場合、私は拘束され自由な生活は望めなくなる。そうなるともっと面倒だ。だから響ちゃんには……おや。

 

「ガングニール、まさか君はまだ生きているというの?既に砕かれ穂先も失った欠片であっても……その存在は紛れもなく聖遺物だと、そう言うのですか?」

 

 触れた時に感じた熱は、奏ちゃんの激情にも似ていた。もし本当にこの破片であっても聖遺物となり得るのならそれは──ええ、そういうことなのかもしれないですね。

 

「もう私は、自分が何をしているのかが分からない──私とは誰なのか、何なのか、そもそもこの星の生命なのか。他者からの認識でなく自己の認識で自らが人類であると証明出来る人類は存在しないでしょうね」

『仮に己が人でなしでないと証明できるのなら、その人間こそが人でなし。であるなら、誰もが人でなしであるとも言える。己を人でなしと定義するのならば今すぐに始めるべきだ』

「私の、私による聖遺物の利用を」

 

 理論の破綻は承知の上ですとも。

 

「残念ながら私の技量ではシンフォギアを制作するなんてことは出来ない。まさしくそれは天才による所業、私のような凡人に出来るのはリバースエンジニアリングか代替技術による類似品の製造だけ」

 

 だからこそ必要なのが海外の異端技術であり、その為に手に入れたのが風鳴訃堂というバックアップ。毒を以て毒を制す、何れその毒をも浄化して自らの糧とする──そう言ってやれば彼の動く方向なんて読みやすくなる。私だからこそ許されているのかもしれないけれどね。

 カーテンを開いて冷蔵庫の前に立ってから、ガングニールを中に入れて思い出す。そういえば2年分ぐらい有給が残っていたな、と。そこまで大きな問題も発生しないでしょうし、私が居なくなっても別の医療スタッフは在籍しているし……問題ないか。

 

「あ、もしもし司令?私です」

『む?どうした飛鳥くん』

「有給2年分使っていいですか?」

『今……だと……?』

 

 いや、了子さんいるし別にいいじゃないですか。

 

「そういうことですので」

『ま、ちょっと待ってくれ飛鳥く』

「よーし、それじゃあ行きますよ私」

 

 向かうは欧州、異端技術の本場です。




アホ!アホ!物語を進めるのが早いんだよアホ!
プロット崩壊のお知らせです。

感想欲しい!(ド直球乞食)
それはそれとして細々やっていくので、のんびりお待ちください。
私の推しは無印一話で死にましたけれど頑張りたいと思います。

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