転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第26話 因習村破壊RTA(3/4)

「あーあ、ミクモったら酷いのね。私の顔を忘れちゃうなんて」

「い、いえそれはその……リツ様がこちらを誤認させて……」

「なにか言ったかしらぁ?」

「な、なんでもございません……ごめんなさい」

 

 くすくすと、リツがミクモちゃんをからかうように見上げている。

 ミクモちゃんは怯えた様子で、しどろもどろになっていた。

 

「こらリツ、あまりミクモちゃんを虐めるなよ」

「はーい。もう、やっと私の出番なのね。待ちくたびれちゃったわ」

「出番……って、リツ様。どうしてここにいらっしゃるんですか!?」

 

 ミクモちゃんの驚きは最もだ。

 ここは因習村、他の神のテリトリー。

 リツみたいな神が入り込めば、即座に向こうも気づくだろう。

 

「れーばいしさんは、ミクモに祠の説明はした?」

「基地局がどうとか言ってました」

「じゃあ、そのまま説明するわね。今私がやってるのは、霊媒師さんの言葉を借りるなら電波ジャックよ」

 

 おお、電子機器に疎かったリツが、電波ジャックなんて言葉を使っている。

 成長だ……とか思っていたら睨まれた。

 

「俺とリツは契約関係にある。それを利用して、俺がリツの神力がこもった金槌で祠を破壊して――祠の機能を奪ったんだ」

「この村の神は、私と比べて圧倒的に格下。バレずに機能を奪うくらい簡単よ」

 

 さっきも話したけど、力の強い神相手なら祠の破壊は不要。

 正面から資料を読み漁ればいい。

 対して力の弱い神は、俺が祠を破壊してリツに機能を奪わせることで村の中でもリツの力を借りることができるようになるのだ。

 無論、向こうに気付かれず。

 

「といっても、今の私はいわゆる分霊。本体じゃないわ」

「それでトイレの花子さんみたいな格好なんですか?」

「これは祠破壊初体験のミクモを、脅かすためのものよ」

「普通に性格が悪いな……」

「なんですって?」

 

 おっと。

 

「だからまぁ、私が直接神をどうこうすることはできない。あくまでサトルに力を貸して、サトルがどうにかする形になるわ」

「でもこれで、俺達も因習村の中で向こうに気付かれず”魔”の力を使えるようになる」

「あ、あー……それで資料のある場所に忍び込むんですね」

 

 そういうことだ。

 これのいいところは、家屋を破壊しなくて済むというところ。

 因習村にこの国の法律は適用されないが、だからといって無闇矢鱈に破壊していいわけじゃない。

 俺達が村を解放したら、その後にも村人たちの生活は続いていくのだから。

 本人たちは、因習村が破壊される以前と何も変わらず、変化に気づくこともなく。

 だったら、無理に変化を起こす必要はないだろう。

 

「さて、それじゃあ早めに行動しよう。いくら向こうの認識を誤魔化してるとはいえ、俺達が人気のない祠に近づいたところまではバレてるわけだからな。訝しまれるとまずい」

「逆に言えば、金槌以降はバレないんですね」

「リツの神力で向こうへ認識できないようになってるんだ。強い神相手でもバレないスグレものだぞ」

 

 俺達が話をしている間、リツは資料のありそうな場所を探っている。

 そこへリツの転移で直接乗り込む形になるのだ。

 

「……あった、今回は村長宅の倉庫みたいね」

「ありがとうリツ、早速出発しよう」

「はいはい。これが終わったら、私がいいって言うまで私のことを甘やかすのよ?」

「ど、努力するよ」

 

 こういうリツの気まぐれは、本当にきまぐれなので。

 そもそも本人が言っていることを忘れる時もあれば、一ヶ月くらい甘やかさないといけないときもある。

 ちなみに、言ったことを忘れていても俺が放置するとそのうち思い出してメチャクチャに怒るぞ。

 神様だからな。

 

 ――とか、思っていると。

 

 俺達の周囲の景色が一瞬にして変化した。

 古ぼけた、誇り臭い土蔵の中だ。

 

「うわ、本当に転移しました。私、こうして神の転移を体験するの初めてです」

「最初のうちはなれないよな」

「神にとって、これは転移ではないわ。私達はいつだって”そこ”にいるんだもの」

 

 言いながら、俺とリツは手分けして資料を探していく。

 もう既に何度も因習村を破壊しているから、俺もリツもこの手の作業は慣れたものだ。

 逆に初めての因習村破壊なミクモちゃんは困惑しきりの様子だ。

 

「んー、ぜんっぜん掃除できてないわね……」

「村長がマメなタイプじゃないんだろうな。……一番厄介だぞ、これ」

「う、うーん……」

 

 普段、こういう場所に潜り込むのは俺とリツとそれからロウクだ。

 ロウクはこういう時全く役に立たないので、俺もリツもそれを前提に動いてしまっていた。

 なので、ミクモちゃんは手持ち無沙汰なようだ。

 近くにあったくまのぬいぐるみを手にとって、しげしげと眺めている。

 

「あまり変なものに触ると、呪われるわよ」

「これは大丈夫……だと思います。神力も妖力もまとってません。ただ……」

「ただ?」

「……いえ、なんでもありません。気のせいかも知れませんけど、一応持っていってもいいですか?」

 

 リツが、俺に判断を投げてくる。

 んで、俺の判断だが――こういう”気になるもの”は積極的に持っていくべきだ。

 ”魔”に関わる直感というのは、時に生死に関わる。

 なんというかアレだな、CoCやってる時に目星に成功して見つけた、何の役にたつかわからないものみたいな感じ。

 

「じゃあ、失礼して」

「ええ、失礼しなさい。サトル、こっちは終わったわよ」

「ちょっとまっててくれ、このあたりになんかありそうなんだ――」

 

 と、そこで。

 ミクモちゃんが話している俺達を見て――

 

 

「……なんか、リツ様も霊媒師さん並に手慣れてますね」

 

 

 なんてことを言った。

 それにリツが――

 

「な、な、な、なんてこと言い出すのよ!?」

「えあ!? あ、ご、ごめんなさい! 霊媒師さんみたいって言いたかったわけじゃなくって!」

 

 いや俺みたいになるのが不名誉みたいな言い方はやめよう?

 それと声が大きいって!

 騒ぎすぎて村長に見つかってバレるとか、前代未聞だから!

 

 

 ◯

 

 

 この因習村に巣食う悪神。

 名を海士蜘蛛(あまぐも)様というらしい。

 数百年ほど前、この村を含む一帯を襲った台風。

 それを収めるために信仰され、成立した神だという。

 元々この地には土蜘蛛にまつわる伝承があり、それと結びついたとか何とか。

 

「土蜘蛛、元はこの国の朝廷に恭順しなかった地方の豪族等を指す言葉ですが、この時代になると普通に蜘蛛として認識されてるはずですよね」

「だから海士蜘蛛も普通の蜘蛛の神魔、と判断するのが妥当だな。成立した年代的に二号神魔か」

 

 雨を操りながら、蜘蛛の特徴を有する神魔。

 まぁ、神魔としては比較的オーソドックスな存在だ。

 俺達は現在、資料を集め終わって元いた祠の前に戻ってきている。

 雨脚は先程から変化していない、向こうがこちらに気付いていない証拠だ。

 

「これ、元は本当に土蜘蛛だった妖鬼が信仰を得て神になってたら、厄介ですよね」

「その可能性はないんじゃないか? 今回、俺達に因習村破壊を依頼したのはロウクの親父さんなんだが、何も言ってなかったぞ」

 

 もし仮に、妖鬼が今回の件に関わっていたらどこかしらでロウクの親父さんの耳に入ってるはずだ。

 つまり、完全にゼロから発生した神魔。

 とすると、妖鬼から発生した神魔を相手にするよりは簡単だ。

 なにせその場合、その神魔は神力も妖力も同時に使用してくる厄介な相手ということになる。

 それがないだけで、一気にこっちとしてもやりやすくなるだろう。

 

「よし、倉庫からこの村一帯の地図も確認できた。社の位置がわかれば、後は神を鎮めるだけだ」

「いやぁ、本当にぱぱっと終わらせちゃいますねぇ。ここに来るまで私、何もしてないんですけど」

「ロウクにしてもそうだけど、何もないのが一番なのよ」

 

 リツが、砕け散った祠の石をなにやら組み上げている。

 なんとなく、龍っぽい形をしているそれにリツが神力を込めると、祠が龍の石像になった。

 この場所を完全に支配したという証――に見えるが。

 実際は暇だったので遊んでいるだけだ。

 ミクモちゃんには黙っておこう。

 

「あなた達の役割は、因習村にはいった時に一度終わるわ」

「人間探知機ですか……」

「あら、言っちゃったのね。つまんないわ、サトル。私がミクモをからかいたかったのに」

「からかうために言ったわけじゃないんだよ、こっちは」

 

 とにかく。

 ミクモちゃんに同席してもらったのは、最初に洗脳されるかどうかを確認するためというのもあるが。

 他にももう一つ、理由があるのだ。

 

「何にしても、事前の準備は全部終わった。後は本丸に乗り込むだけだ」

「うう、あまりに展開が早すぎて気持ちがついていけてません」

「いいのよ、適当で。それじゃあれーばいしさん、私はここまでだから。くすくすくすくす、がんばってねぇ♪」

 

 というわけで、俺達はこちらをからかう様子のリツに見送られて。

 神魔の元へと向かうこととなった。

 

 

 ◯

 

 

「――あ、霊媒師さん。そこ、結界があります」

「おっと、早速助かったな。ありがとう」

 

 単純な話、俺は基本的に霊的な術とかが探知できない。

 探知用のアイテムを作成することはできるが、それをするよりは圧倒的に霊的な術に対処する人材を伴ったほうが楽だ。

 ここまでは俺一人でもなんとかできるが、敵の本拠地に乗り込むとなると流石に退魔師か妖鬼の力は借りるべきだろう。

 圧倒的に、その方が楽だ。

 

「よし、結界をすり抜ける術式を使います。近くにいてください」

「ありがとう、こういうところはやっぱりロウクのやつ、苦手だからな」

「ふふん、そうでしょうそうでしょう。ロウクなんかより私のほうがよっぽど霊媒師さんの御役に立てるんです」

 

 なんて話をしながら、神魔の仕掛けたトラップを避けつつ進んでいると――

 不意に周囲の雰囲気が変わった。

 

「……霊魂の気配ですか?」

「誰かいるのか」

 

 ただ、意外なことにその気配は決して悪意あるものではなかった。

 むしろこの当たり一帯を覆う、神魔のおどろおどろしい気配の中に、。

 一滴の清涼な水がこぼれ落ちたかのような。

 そんな印象を覚える。

 そして――

 

 

『――帰って』

 

 

 どこか冷たい、けれどもその奥に優しさが垣間見える。

 そんな少女の声が、周囲に響き渡った。

 

「だ、誰ですか!?」

 

 ミクモちゃんが、驚いた様子で周囲を見渡す。

 術付を取り出して、何時でも迎撃できる態勢を整えている。

 そんなミクモちゃんと俺の前に――

 

『ここに来たってことは……()()()()を読んだんでしょ。だったら、解ってるはず。ここは危険だから、帰って――』

 

 一人の少女が現れる。

 栗色の長い髪を短く結び、女の子らしいガーリーな装いの少女。

 年の頃はミクモちゃんと恐らく同じくらい。

 そんな少女の一番の特徴は――()()()()()()()

 

 霊魂だ。

 しかし、そうするとおかしい。

 いや、そんなことよりも――

 

 

「あの、ごめん。……あの日記って、なんだ?」

 

 

『……えっ?』

 

 俺の間抜けな質問に、少女の間の抜けた声が帰ってきた。




イベントスキップの弊害がここに。
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