転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第33話 妖怪因習村破壊RTA(2/4)

『あ、あの……本当にやるんスか?』

「やるしかないさ、この作戦を思いつくのに結構な時間を使った。もう向こうが対策を打ってきてもおかしくない。時間がないんだ」

『いいのかなぁ……』

 

 困惑するシオンちゃんを引き連れて、俺達は村の外へと繰り出していた。

 ミクモちゃんとロウクは置いてきた、これからの戦いについてこれそうにない。

 

「んじゃ早速――」

 

 そうして俺は、まず俺達のことを案内してくれた狐妖鬼に声を掛ける。

 何やら忙しなく動き回っているが、何をしているんだろうな彼……彼女? は。

 妖鬼の性別は見た目が当てにならないので、どっちの可能性もある。

 

「失礼、少しいいですか?」

『はい? なんでしょう』

「この村の歴史について教えてほしいのですが」

『本当ですか? 興味を持ってくれてうれしいなぁ。じゃあ少し長くなるけどお話しますね』

 

 長くなるどころか、この村は昨夜できたばかりのできたてホヤホヤ妖怪因習村なのだけど。

 果たしてどんな歴史があるのだろう。

 少し興味がある、がしかし。

 それを聞いている時間はない。

 というわけで――

 

『い、今だ!』

 

 後ろから飛び出したシオンちゃんが――俺との話に気を取られている狐妖鬼に、()()()()を吹きかけた。

 

『ふにゃ!』

 

 途端、狐妖鬼がなんだか気持ちよさそうな声を出して、その場に倒れ込む。

 俺は急いで、狐妖鬼の状態を確認。

 気持ちよさそうに眠っていた。

 

「よし、次に行くぞ」

『ほ、本当にいいのかなぁ……』

「っとその前に、見つからないように物陰へ移動させて……」

『絶対に悪いことしてるよ、これぇ!』

 

 まぁ、うん。

 やっていることは、俺が気を引いているうちにシオンちゃんが背後に回り込んで不意打ちなので。

 よくないことをしているのは事実だ。

 でも、そうしないとどうしようもないのもまた事実。

 

「あの、すいません――」

 

 それから俺達は、見かけた妖鬼に声をかけていく。

 俺達が何をしているのかは、概ねここまでの流れで察しが付くだろう。

 シオンちゃんを妖怪因習村に囚われている妖鬼達が、認識できないと気づいた時。

 俺はすぐにこの作戦を思いついた。

 

『お、おりゃあ!』

 

 俺が気を引いて、その隙にシオンちゃんが不意打ち。

 利用しているのはリツの神力入りスプレーだ。

 以前使っていたものとは違い、手を加えて殺傷性は無くしている。

 代わりにリツの強力な神力を利用して、”魔”を昏倒させることができるようになった。

 ようするに、非殺傷のリツ神力スプレーと思ってもらえればいい。

 

 それを利用して、妖鬼達を制圧していくのだ。

 理由は、これから行う行為を妨害されないため。

 神の思考誘導を強く受けている彼らは、おそらくこちらが直接的な手段に出れば妨害してくるだろう。

 それをさけるためには、向こうが認識できないシオンちゃんにリツスプレーで相手を制圧してもらうほかない。

 俺がやってもいいのだが、シオンちゃんがやるとこちらを監視している神がそれを認識できない可能性がある。

 そうなれば、向こうはさらに混乱するはずだ。

 

『ええと、アタシ達これまでに何匹妖鬼を制圧したっけ!?』

「ロウクとミクモちゃんを除くと十匹だな。そして、見たところ、他に妖鬼はいないみたいだ」

 

 妖怪因習村は、人が住めそうな建物は俺達が案内された古い家しかない。

 当たりを歩き回れば、すんなりと妖鬼を見つけることができた。

 しかし、十匹を制圧したところで他に妖鬼を見つけられないことに気がつく。

 

「ちょっとまっててくれ、確認するから」

『うス』

 

 そうして俺は、懐からリツの鈴を取り出す。

 鈴を鳴らすと、周囲の霊魂がよってくるシロモノだ。

 他にも振動を利用して、周囲の霊魂と共鳴する能力もある。

 これに共鳴を返さないのが妖鬼であり、探知機としても利用できるわけだ。

 そして――

 

「……やっぱり、近くに他の妖鬼はいない」

『確か妖鬼って、二十はいたはずだよね。他の妖鬼はどこに……』

「あまりいい想像はできないな」

 

 と、話をしていると。

 不意に俺達の周囲を取り囲むように、それは出現した。

 それは一言で言えば――ヘビの形をした影だ。

 

『うわ、なにこれ……ヘビ!?』

「影のヘビ……さしずめこの妖怪因習村を支配する神の分霊か? ってことは神はヘビ型か……いや、それよりも」

 

 こいつらは、俺達を排除するために神が呼び出した配下みたいなものだろう。

 ここまで一切出現しなかったのに、このタイミングで出現するとなると――

 

「……妖鬼たちを制圧したからか」

 

 果たして、妖鬼がいる間にこいつらを呼び出せない理由はなにか。

 一番ありそうな理由は、「こいつらの姿を見られると妖鬼の洗脳が解ける」とかだが。

 まぁ、考察していても意味はない。

 今はこの状況を何とかするのが先決だ。

 

「まずは……シオンちゃん、はいこれ」

『これは……またスプレー?』

「今度は、()()()のスプレーだ。くれぐれも、寝てる妖鬼に当てないようにな」

『そんな危険なもの、アタシに任されてもー!』

 

 あくまでシオンちゃんの身を守るためだ。

 基本的には、俺がこいつらを何とかする。

 そして、俺がどうやってこの影のヘビを排除するか。

 

「……宗谷さんのところから、これを持ってきて正解だったな」

『ひ……け、()()!?』

 

 さて、ここからは銃撃戦だ。

 悪いが押し通らせてもらうぞ。

 

 

 ◯

 

 

 それから俺とシオンちゃんはその場から一時撤退し、大きめの岩の裏に隠れて影の蛇を迎撃していた。

 迫りくる蛇を、冷静に一匹ずつ弾丸で仕留めていく。

 拳銃そのものも霊的な処理を施しているので、近付いてきたら鈍器として応戦する。

 以前のタツメとの戦いでは、練習時間が足りず付け焼き刃な射撃の腕だったが。

 現在はそこそこの時間を練習に当て、精度はかなり上がっている。

 素質があったという俺自身の自己評価は正しかったようだ。

 そんな素質いらないとリツは嘆いていたが。

 

『た、倒しても倒してもきりが無いよー!』

「そりゃ、ここは向こうのホームだからな」

 

 迫りくる影蛇にスプレーを吹きかけつつ、シオンちゃんが嘆く。

 はっきり言って湧いてくる蛇の数はほとんど無限だ。

 シオンちゃんの言う通り、切りが無い。

 とはいえ、やらないとこっちがやられてしまうわけだけど。

 後、途中で一匹、拳銃で殴る影蛇の一匹を、敢えて弱らせる程度で生かしておく。

 影蛇が動かなくなったのを見てから、シオンちゃんに返す。

 

「もう少し耐えてくれ!」

『もう少しってどれくらいー!』

「多分……後数分!」

 

 景気よく弾丸をばらまいて、八割くらいは命中させる。

 弾が切れたらリロードして、その間に近付いてきた影の蛇は銃で叩いて消し飛ばした。

 今のところ、まだまだ弾数には余裕がある。

 とはいえ、一発が結構な値段のする代物だ、できるだけ早く状況を変化させたい。

 

『っていうか、霊媒師さん怖すぎ! なんでそんな涼しい顔で銃ぶっぱなせるわけ!?』

「俺は畏れを感じないんだよ。銃で人を殺すかも知れないって畏れを感じないんだ。ま、クソ度胸ってことだな」

『余計怖くなった!? シリアルキラーじゃん、クソ度胸で片付けちゃダメなヤツー!』

 

 そう言われても、畏れを感じないものは感じないのだから、仕方ない。

 まぁでも一度自分が死んでるから、他人にとって死がどれほど恐ろしいかは理解している。

 シリアルキラーにはならないよ。

 

 と、そうしていると。

 不意に身に着けていた鈴が揺れる。

 リツ印の鈴は、現在ある存在が近付いてくるとアラームを鳴らすように設定していた。

 

「……よし、もう耐久戦は必要ない。一度こいつらを一掃するぞ!」

『で、できるなら早く!』

「解ってる。……()()()()()()()()()!」

『――へ?』

 

 直後、俺は荷物の中からあるものを取り出し。

 ()()()()()()から放った。

 そして――

 

 

 岩の向こうで、凄まじい閃光が炸裂する。

 

 

『う、うわー、何!?』

「閃光手榴弾だ。霊的な処理を施してあるから、ああいう影属性の魔にはてきめんに効く」

『せ、せんこうしゅりゅうだん』

 

 拳銃を手に入れてから、こういった兵器を”魔”との戦闘に使えないか考えていたのだ。

 あまり殺傷能力が高すぎると、事故の元だしリツが嫌がる。

 そこで考案したのが、この閃光手榴弾。

 

「光っていうのは、元々”魔”に対する効果が強い。そこに加えて霊的処理を施せば、人に対する殺傷力は最低限にしつつ、”魔”に対して効果の強い兵器になるんだよ」

『理屈はわかるけどっ! 理屈はわかるけどっ!』

 

 とにかくこれで、周囲の影蛇は一掃できた。

 この閃光手榴弾、三発しか持ち込めなかったので貴重品なのだ。

 もしもの時や、状況を変えたいときに使わないといけない。

 

 

「な、なにしてるんだワン!?」

 

 

 今回みたいに。

 

『あ、え、……ミクモちゃん!?』

 

 ふと、声がしたかと思えば。

 ミクモちゃんとロウクが、やってきていた。

 この二人は特にリツスプレーで制圧していないのだから、当然と言えば当然だけど。

 加えて言えば、あんだけバカスカ銃声ならしてればな。

 

「これは一体どういうことだワン! なんで村の人たちは倒れてるんだワン!?」

『ばうっ! ばうっ!』

『あれ……これ不味くない? 今ミクモちゃんたちって、洗脳されてるんだよね?』

 

 その通り、これは結構まずい。

 ミクモちゃんたちは洗脳されてるから、村人をいい人だと思っている。

 そんな村人を一方的に制圧したとか、どう考えてもこっちが悪者だろう。

 下手すると、俺達がミクモちゃん達に敵だと思われかねない。

 そして、この妖怪因習村の神はそれを狙っているわけだ。

 なので――

 

「大変だ、ミクモちゃん。こいつを見てくれ」

 

 俺は、敢えて倒さずに残しておいた影の蛇を指差す。

 そして――

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『んな――――』

 

 絶句するシオンちゃんを他所に、信じられないという様子でミクモちゃんが目を見開く。

 ――ミクモちゃんたちは洗脳されている。

 だが、自意識はあくまでミクモちゃんたちのものだ。

 だから、嘘をつかずに状況を説明すれば、それを信じてくれる。

 嘘をつかないってのがポイントだ、詳しくは後で話そう。

 

「そんな、なんて酷いことを! ワン!」

「ああ、だからこいつらを排除したい。応戦してみた感じ、どうもこの村のあちこちに霊的な要所――祠みたいな物があるはずなんだ」

「それを破壊すれば、こいつらも消えるってことワンね!?」

「ああ、()()()()()()()()。だから二人で、手分けしてそれを破壊してくれないか?」

「解ったワン!」

 

 語尾にワンをつけるミクモちゃんが、元気よく返事をするとロウクといっしょに飛び出していった。

 わなわなと、それを見ているシオンちゃんが一言。

 

『さ、詐欺師ー! 胡散臭い霊媒師ー!』

 

 まあ、今回ばかりは一切否定はできないな。

 でも一つだけ、言い訳はさせてほしい。

 

「嘘は言ってないから、嘘は」

『詐欺師の常套句!』

 

 はい。

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