転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第34話 妖怪因習村破壊RTA(3/4)

 祠の破壊を二人に頼んだのは、幾つか理由がある。

 一つは言うまでもなく、リツを呼び出すためのものだ。

 今回、すでにこちらの動向は神に筒抜けであるため、どれだけ派手に祠を壊して回っても問題ない。

 神の支配力が強そうなので、一つ破壊してもリツが基地局を乗っ取れない可能性があるが、そこはミクモちゃんたちに複数破壊させることでカバーだ。

 破壊すれば破壊するほど、リツの影響力も上がるため一石二鳥である。

 

 そしてもう一つが――

 

「これで、ミクモちゃんたちが影の蛇を引き付けてくれて、俺達が自由に動けるようになったな」

『いいのかなぁ……それでえっと、次はどうするの? ミクモちゃんが言うには、次は神の資料探しらしいけど』

「今回はやらない、神は一夜にしてこの村を妖怪因習村に改造したんだ。ろくな資料があるとは思えない」

 

 あくまで資料を用意するのは、村人だからな。

 多分、ペラ紙一枚あればいいほうだ。

 だったらそうするよりも――

 

「準備を整えて、ゴリ押しで正面突破する」

『わあー、大胆ー』

 

 なんだか死んだ目でシオンちゃんが褒めてくれた。

 少し照れるな。

 ……冗談だって。

 

 ともかく俺達は、準備のために一度家屋に戻った。

 そこには俺達の荷物がまとめて置いてあるからな。

 加えてここが、これからの作業にちょうどいい場所でもあるというのもある。

 

『……そういえば、神はどうしてさっきの詐欺に干渉してこなかったんだろう』

「詐欺じゃないけど。……そうだな、普通に考えたら洗脳してる人間が騙されそうなら介入するよな」

 

 たとえば、より強い洗脳を施したりとか。

 騙されないように行動を起こしてもよかったのだ。

 それをしなかったのは――

 

 

「――その神に、そうするだけの実力がなかったから」

 

 

 不意に、鈴の音が鳴った。

 リツがいつの間にか、俺とシオンちゃんの前に立っている。

 

『うわあ!』

「よく来てくれたな、リツ。状況の説明は必要か?」

「いらないわ。れーばいしさんがやらかしたってことだけわかれば、後はなんとなく想像がつくもの」

 

 驚くシオンちゃんを横目に、リツはあるものを俺に手渡す。

 ここには持ってこなかったが、状況的に必要になる代物だ。

 気を利かせて転移の際に、一緒に持ってきてくれたらしい。

 

「それと、神って嘘が()()なのよ。嫌いと言ってもいいけど、今回はれーばいしさんがそれをいいように弄んでるから、苦手って表現するわね」

『に、苦手……っすか』

 

 受け取った俺が、礼を言ってから作業に取り掛かる。

 その間、代わりにリツが説明をしてくれるようだ。

 

「そう、苦手。もし先程サトルがミクモたちを騙す時に嘘をついていたら、神罰という形でそれに介入できたわ。でも、サトルは嘘をつかなかった」

『み、見てたんスか?』

「推測よ。サトルの考えてることなんて、私にはお見通しなんだから。……で、嘘をついてない相手に神罰を下そうとすると、それは神が嘘をついてることになる」

 

 実際洗脳という形で、神は嘘をついているのだ。

 それを事実だと認めるようなことをすると――神自身にダメージが行く。

 

「神は契約を重んじる存在だから。嘘を付くことは契約を蔑ろにするということ」

『それで、さっきの詐欺に介入できなかったんだ』

「詐欺じゃないけどな」

「詐欺よ」

『詐欺っすよ』

 

 酷い。

 なんて、ふざけていると。

 

「れ、れれれ、霊媒師さーん! これは一体どういうことですかあ!」

『我等は一体なにをしていたのだ!?』

 

 家屋にミクモちゃんとロウクが飛び込んできた。

 どうやら二人共、正気に戻ったようだ。

 ミクモちゃんの犬耳以外、全て元通りである。

 逆に言うとその犬耳は一体どうやれば元に戻るんだ?

 

「二人共、洗脳は解けたみたいだな」

「解けたというか、解いた、が正しいのだけど」

「ありがとう、リツ」

 

 二人が正気に戻ったのは、祠を破壊しまくってリツの支配力が上がったからだ。

 ミクモちゃんもロウクも、混乱している様子だが段々と落ち着いてくる。

 そうすれば、二人共専門家なので状況把握はすぐに終わった。

 

「ま、まさかロウクだけでなく、私まで洗脳されてしまうとは……」

『ふん、無様だなミクモ。洗脳に対する対策が足りていないのだ』

「一緒に洗脳されたロウクには言われたくありません!」

 

 なんて、いつも通りのやり取りをしている二人。

 どうやら洗脳の影響は犬耳以外なさそうだ。

 いやだからなんだよその犬耳。

 

『それで、こっからどうするんスか? 強行突破してゴリ押しーってのは解ったんだけど』

「それなんだけど――ここからは、ロウクとシオンちゃんの力を借りたい」

 

 というわけで、リツがやってきて。

 こちらも戦力は整った。

 ここから反撃を開始する……わけなのだが。

 キーパーソンは、ロウクとシオンちゃんになりそうだ。

 さぁ、反撃開始といこう。

 

 

 ◯

 

 

 と、そこで一人手持ち無沙汰なミクモちゃんが声をかけてきた。

 

「私は何をすればいいですか?」

「そうだな。ミクモちゃん、この御札を小屋に貼り付けてもらえるか?」

「あ、昔霊媒師さんに売って、霊媒師さんが腐らせてた御札! シオンちゃんのために事務所を御札まみれにする以外にも使い道があったんですか?!」

 

 リツがもってきてくれたのは、千枚ある御札だ。

 これを俺はさっきからペタペタくっつけて、紐みたいにしていたのである。

 

「こう、こんな感じで……」

「御札を段ボールや新聞紙を纏める感じで小屋に巻くんですか? ええ、何のために……」

「やってみればわかるから」

 

 というわけで、後のことはミクモちゃんに任せつつ。

 その間、小屋をロウクが防衛する。

 洗脳で鬱憤が溜まっていたらしく、楽しそうに影の蛇をころころしていた。

 外に出て、ロウクに声をかける。

 

「ロウク、少し確認したいんだが」

『フハハハハ! なんだ! 今なら恥ずかしい質問以外は答えてやろう!』

「ロウクのサイズ変更で、この小屋を抱えられるくらい大きくなれるか?」

『サイズ変更言うな、伸縮と呼べ! ……小屋を抱える?』

 

 ふと、ロウクが手を止める。

 その横をすり抜けた影の蛇が、俺の元までやってくる。 

 とりあえずこういう時のために持っていたリツ印の金槌でそれを叩きつつ。

 

『おい待て、抱える……抱えるのか!? これを!?』

「そうそう。……で、できるのかできないのか」

『で、できるが……いやまて……何だ……何をするつもりだ!?』

「なにって――」

 

 俺は、ミクモちゃんが御札を張り終えた小屋を見て、告げる。

 

 

「これを持ち上げて、ロウクに乗せる。そしてロウクは俺達が乗った小屋を神のところまで運ぶんだ」

 

 

 言うなれば、ロウク戦車とでもいったところか。

 この小屋は現在リツの支配下にある。

 それとロウクが合体すれば、ロウクはリツから支援を得ることができるのだ。

 普段のロウク以上の力を引き出せることだろう。

 加えて俺達も小屋から支援ができる。

 並大抵の相手には負けないはずだ。

 

『待て待て待て、まずどうやってそれを我に乗せる!?』

「――そこでシオンちゃんの出番だ」

 

 言いながら、俺は小屋の上を見る。

 そこにはリツがシオンちゃんを抱えて浮遊していた。

 シオンちゃんが、なんだか顔を真っ青にしながらこっちを見ている。

 

『ほ、ほんとーにやるんスかぁ? っていうかできるんスかぁ……?』

「はいはい、落ち着きなさいって。私が貴方を離すことはないし、たとえ落ちても痛くないから」

『それはそれとして怖いっすよぉリツ様ぁ!』

 

 そうして、ミクモちゃんが取り付けてくれた御札に、シオンちゃんの手が触れる。

 ロウクとミクモちゃんが、影の蛇をボコボコにしながら心配そうにその様子を見守る中。

 シオンちゃんをリツが上昇させていくと――

 

 ごごごごご、と小屋が持ち上がっていく。 

 地面から雑草が引っこ抜かれるみたいな感じで、小屋が宙を浮いた。

 

「うわ、本当に持ち上がりました!」

『かっる! 小屋かっる! なにこれ、すごーい!』

 

 驚くミクモちゃんを他所に、シオンちゃんは速攻でテンションを上げていた。

 リツの調子のいい子ね、みたいなため息に苦笑しつつ。

 

「ロウク!」

『ええい、どうなっても知らんからな!』

 

 ロウクが巨大化し、小屋を乗せれるくらいになる。

 俺とミクモちゃんはそんな巨大化に合わせて背に乗って、降りてきた小屋へと移るのだ。

 途中、小屋の底に幾つか御札を貼り付ける。

 これでロウクと小屋を接着するというわけ。

 

 で――

 

「合体だ!」

『なんだかんだ、霊媒師さんもこういうノリ好きなんだね』

 

 一応オタクだからな。

 というわけで、ロウクと小屋が合体した。

 見た目は多分シュールだが、ロウク以外は全員小屋の中にいるので、それを確認できるものはいない。

 

『お、おお……ウォオオオオオオオオン!』

 

 そして、ロウクが吠えた。

 何やらご満悦の様子。

 

『これはすごい……すごいぞ……力がみなぎってくる!』

「仮にも零号神魔の力よ、ありがたく受け取りなさい」

 

 リツの支援が、ロウクをパワーアップさせたのだろう。

 

『これならば、更に大きくなることもできる!』

「あんまり大きくなりすぎるなよ!」

 

 多少ならば、問題ない。

 というか大きくなれば、影の蛇を踏み潰して進めるようになるので、ある程度は大きくなっておくと便利だ。

 ロウクもそこら辺は解っているのか、ある程度のところで止まってくれた。

 さて、このまま神のいる場所を目指すとしよう。

 

「それで、神はどのあたりにいるんですか?」

「ロウクから聞いたが、里の奥に霊的な要所になりうる場所があるらしい。十中八九、そこだろう」

『レッツゴーロウクっちー!』

 

 ずんずんと、群がる影蛇を蹴散らしながらロウクが進む。

 向かうところ敵なしと言った様子で、ロウクもご満悦だ。

 

「ところで――」

「どうした、リツ」

「このまま進むと、ちょっとかわいそうなことになるかも知れないわね」

 

 え?

 と、俺達がリツの言葉に疑問符を抱いた瞬間。

 

 

 ぷち。

 

 

 ロウクが何かを踏みつけた。

 

『ぬお、何だ?』

 

 本人もたった今、気づいたようだ。

 え、何を踏んだの!?

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