転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第37話 やってきました、東京

 その後、ロウクは自分は関係ないからと事務所を去り。

 残った四人で東京行の相談をする。

 あそこに行ってみたいだとか、アレを買いたいだとか。

 リツはあまり興味がなさそうで、俺は意見を出すシオンちゃんとミクモちゃんのまとめ役だ。

 二人は本当に楽しそうに、東京での予定を話し合う。

 巡りたい場所は多々あれど、日程の関係で行ける場所は限られている。

 いや、まぁ。

 やろうと思えば長く滞在することもできるのだけど。

 あまりに長く滞在すると、ミクモちゃんが費用の面を心配してしまう。

 一泊二日か二泊三日くらいが、ちょうどいいバランスだった。

 

『やっぱりアキバは行ってみたいよね』

「最近のアキバは、昔みたいなオタク街感は薄くなってるって聞きますよ?」

『マジ? じゃあ確かめないとだね』

「ですね!」

 

 なんて、二人は本当に楽しげに相談している。

 同年代の友達と、初めての東京旅行。

 やりたいことなんて山程あるはずで、上げだしたら切りが無い。

 だからこそそれを目一杯楽しむのだという二人の気概を、応援したいところだ。

 

「――それで、調査の方は私がすすめておけばいいのよね?」

「あー、悪いなリツ。頼めるか?」

「うふ、あはは。いいのよ? れーばいしさんはすけこましだもの。女子中学生を侍らせて東京の街を歩き回ればいいんだわ」

「言い方はもうちょっと容赦してくれると助かるな!」

 

 実際、絵面はアレなんだからさ!

 ともかく、今回の東京旅行はもともと俺とリツが年に一回行っている定期的な”経過観察”だ。

 そこにミクモちゃんたちが同席する形になる。

 更に加えて、東京であることを調査する必要があるのだが。

 それをリツに任せることになっているのだ。

 で、リツが提案してくれたことなので、ありがたく頼むわけだけど。

 それはそれとして、俺が他の女性といっしょにいるのは気に食わないみたいだ。

 

「それにぃ?」

 

 そして、どこかリツは意味深に呟く。

 

「この旅が――あなた達にとってただ楽しいだけのものになるとは、限らないわよ?」

 

 そんな予言めいたことを言って、リツは姿を消した。

 

 

 ◯

 

 

 その後、改めて三人で色々と予定を詰めて。

 結局行けるところは可能な限り行く予定に落ち着いた。

 二泊三日、東京を満喫する旅の始まりだ。

 

 出発当日、俺の事務所に集まってから駅まで向かい。

 駅を乗り継いで、新幹線を利用して東京へ向かう。

 高速バスという選択肢もあったが、シオンちゃんが新幹線に乗ってみたいようなので新幹線となった。

 

 移動中、シオンちゃんは周囲に「あまり特徴のない普通の女性」として写るよう認識阻害を行っている。

 霊感があるタイプの一般人に視られて問題が起きないように、という意味合いもあるが。

 シオンちゃんを普通の人間として扱うための処置でもある。

 

 新幹線の中で、二人はとても楽しげに会話をしていて。

 それを横目に眺めていると、二人が本当に普通の少女にしか見えない。

 片や退魔師の少女、片や霊魂。

 特別であることを定められた少女が、今だけは日常を謳歌しているようだった。

 そして――

 

 

『やってきました!』

「東京!」

 

 

 二人は、降り立った駅の入口で楽しげに叫ぶ。

 注目を集めないように術式を使っているからって、少しはしゃぎ過ぎな気もするな。

 

『人、多い!』

「色んな人がいます!」

『陽キャも陰キャも大集合だヨ!』

 

 なんて、実に楽しげな二人に、俺は後ろから声を掛ける。

 

「あんまり、最初からはしゃぎすぎないようにな。疲れて動けなくなっても知らないぞ」

「鍛えてますから、心配ありません!」

『生きてないから、心配ないッス!』

「いや、後者は笑えないから」

 

 なんて話をしつつ、早速東京旅行の始まりだ。

 向かう場所は、誰もが知ってる観光名所と、オタク向けのスポットが多い。

 日本で一番高い建造物で、東京を一望したり。

 都会の中にある広い公園で自然を堪能したり、温室を見て楽しんだり。

 オタクスポットとしては、アキバ、中野、新宿当たりを見て回った。

 それはもう、行けるところを可能な限りって感じだ。

 

 そんな二人を後ろから見ていると、やはりシオンちゃんもミクモちゃんも、普通の女の子なのだと思う。

 以前、ミクモちゃんが周囲との些細な軋轢やすれ違いでアンニュイになっていたことがあった。

 一種の気分転換に連れ出した因習村で、シオンちゃんと出会い。

 その後、妖怪因習村などの事件もあって、今のミクモちゃんは安定しているように思える。

 

 何故か生えた犬耳と尻尾も、周囲とのコミュニケーションを円滑に進める要因になっているようだ。

 感情がダイレクトに伝わるからな、特に尻尾。

 少なくとも、そういった不満の類は概ね解消されたと言えるだろう。

 

 

 だけど、ミクモちゃんが事務所にやってくる機会は以前よりも増加していた。

 

 

 それだけ、シオンちゃんとの仲が親密になっているということなのだろう。

 決して悪いことではない、と思う。

 優等生で八方美人なところがあると言っていたミクモちゃんにとって、本音で語り合える友人は、本当に貴重なはずだ。

 だからこそ――

 

 少しだけ、不安を覚えるのだ。

 それは、果たして。

 シオンちゃんが霊魂であるということと――すでに死んでいるということと、無関係と言えるだろうか。

 

 

 ◯

 

 

 さて、俺達は一応、仕事で東京にやってきている。

 仕事と言っても堅苦しいものではなく、一年に一度特定の日に、特定の場所を訪れるだけ。

 それ以外は基本自由なので、東京観光のついでに立ち寄るだけで十分だ。

 二日目、早朝から俺達は用事を果たすためにある場所を訪れていた。

 

『お、オフィスビルだぁ!』

「なんだか社会人って感じですね」

「ここは宗屋さんの持ちビルなんだよ。東京の会社のオフィスが幾つか入ってるんだが……俺達の目的はその屋上だな」

 

 オフィス街の一角にある、何の変哲もないテナントビル。

 その屋上を、俺は宗屋さんから借り受けていた。

 正確には譲り受けている、というのが正しいのだが。

 一応、間借りさせてもらっているという認識は大事だと思う。

 

「すいません、今日来訪予定の鞍掛というものなのですが」

「はい、少々お待ちください――」

 

 受付のお姉さんに、要件を伝える。

 年に一回なのでたまに訝しまれたりするものの、今年は顔見知りが応対してくれたのでスムーズだ。

 

「こういう場で、霊媒師って名乗ったりしないんですか?」

「流石に胡散臭すぎるだろ。下手に向こうに迷惑かけてもいけないし、最悪宗屋さんに迷惑がかかるからな」

 

 なんて話をしつつ、エレベーターに乗る。

 向かうのは、最上階だ。

 

『屋上には何があるの?』

「――社だよ」

 

 そう、社。

 東京のオフィスビルには、たまに神社があったりするが。

 アレだ。

 エレベーターは最上階までは上がらない。

 途中まで登ったら、その後は使われていない階段を上がる。

 受付から借りてきた鍵で屋上への扉を開けると――

 

『雰囲気あるなあ』

 

 ぽつんと、小さな社がそこにはあった。

 シオンちゃんの言う通り、雰囲気がある。

 なんというか、日常と非日常の境界をここに感じるんだよな。

 現代と神秘の間。

 それは、いうなれば因習村に近いものがある。

 人里離れた集落が、外界と隔離された異界なら。

 大都会のど真ん中にある社も、ある意味では異界だ。

 そんなことを思っていると――

 

 

『――何をしに来たの?』

 

 

 不意に、声が響く。

 どこか神秘的な、少女の声。

 ミクモちゃんとシオンちゃんが、畏れからか少し息を呑む。

 どこか、吸い込まれてそうな気配を感じた。

 

 神、というのは基本的に神秘的かつ荘厳なものだ。

 ただそこにいるだけで、人を畏れさせるものがある。

 それは因習村事件を引き起こすような、力に溺れた邪神には出せない代物だ。

 アレは、感情という人間味が顕在化しすぎている。

 対するこの声は、本物の神秘をその身に宿した神の囁き。

 

 まぁ。

 

「……なんで雰囲気作ってるんだ、リツ」

「――――もう、そこは乗るところよっ、れーばいしさん」

 

 リツなんだが。

 

「リ、リツ様……?」

『普段と雰囲気ぜんぜん違う……』

「失礼ね! 神とは無数の側面を持つものなの。普段は貴方達に合わせてあげてるから、わかりやすくしているだけなのよ」

 

 俺と大喧嘩をしてから、リツは以前より更に素直になった。

 俺に対する独占欲は変わらないが、ミクモちゃんへの態度は更にやわらかくなったと言えるだろう。

 結果、リツが神っぽい雰囲気を出すとミクモちゃんがリツを認識できなくなったが。

 

「失礼しちゃうわね。というか、二人共ここが私の分社なのは少し考えればわかるでしょう?」

「いやまぁ、霊媒師さんが他の神様に会いに行ったら、リツ様その神様をどうにかしそうなのは解りますが」

 

 ミクモちゃんの言葉に、シオンちゃんが首をブンブン縦にふる。

 まぁ、ただ会いに行くならともかく。

 一年に一度、時間をとって定期的に会いに行くなんてこと。

 リツが許したりはしないだろうな。

 

『ところで、なんでこんなところにリツ様の社があるんスか?』

「偶発的なものだよ。色々あって、東京にリツの分社を建てなくちゃいけなくなったんだが、宗屋さんがビルを持ってるからって屋上を提供してくれたんだ」

 

 もともと、ビルの屋上に商売繁盛を祈願して神社を建てることは珍しくない。

 それを応用して、俺はある目的のためにリツの分社を建てて一年に一度メンテナンスをしているのだ。

 

「あー、それで社がかなり新しい感じなんですね」

「出来立てホヤホヤだよ。築五年ってところかな」

 

 今のリツの社が再建されたのはそれより少し前なので、リツの社としてはこれが一番新しかったりする。

 

「それでリツ、社の方は問題なさそうか?」

「ええ、特に変化はなし。ちょっと不気味なくらいにね」

「俺の目から見ても、社に特別何かが起きた形跡はないしな」

 

 んで、俺とリツが二人で社の点検を行っていく。

 といっても霊的なことはほとんどリツの領分だし。

 点検も他所から仕入れた呪符などで、勝手に終わる。

 俺がやることと言えば、畏れを感じない俺の観点から社の状態を観察することだけだ。

 結果――

 

「ん、これは――」

『ところで、そもそもどうしてリツ様はここに東京出張所を建てたんスか?』

「出張所て」

 

 さながら東京リツ様出張所ってところか。

 気づいたことは、一旦後回しにして苦笑しながらシオンちゃんの方を見る。

 不満そうなリツを眺めながら――

 

 

「因習村が発生したんだよ、この東京で。この社はそれを抑えるための要石みたいなものさ」

 

 

 ――そう。

 この社もまた、因習村に関係があるのだ。

 

「都会で」

『因習村』

「ですか?」

 

 まぁ、聞いた人はこうやって首をかしげるだろうけど。

 ところでなんでセリフを分割したんだ?




ミクモちゃんの耳に関してですが、退魔師には認識阻害の術があり、一般人には見えていません。
なので日常生活には支障はないです。
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