転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第47話 零号因習村破壊RTA(1/4)

 俺達は、これから破壊する朽土果の因習村を「零号因習村」と称して。

 その破壊に乗り出した。

 まず最初にやるべきことは、道具の回収だ。

 今回は調査が目的だったので、大抵の武器を事務所に置いてきている。

 具体的には、拳銃とか。

 事務所はリツの領域なので、干渉を受けることはない。

 加えて異界の中から転移することも可能だ。

 そうして転移で事務所に戻ってくると、なにやら荷物が色々と届いていた。

 

「これは……宗屋さんが手配してくれたのか」

 

 俺からの手紙を読んで、急いで用意してくれたらしい。

 宗屋さんのところに置いてある道具を、こっちに移しただけではあるのだけど。

 こんな夜中に手配してもらって、申し訳ない気分だ。

 その分、今回の事件をきっちり終わらせて、その後借りを返さないと。

 リツの暴走の分まで含めてな。

 

「よし、全員荷物は積み込んだな?」

「問題ありません!」

『ふん、我はもとより、道具など必要ないがな』

 

 というわけで、全員がフル装備。

 俺も旅用の服装からいつもの服装に着替えて、準備万端だ。

 問題は、普段の服装ってラフなものとは言えスラックスとかだから、こっちの方が旅装より動きにくそうなことだな。

 まぁ、使い慣れているというのが大事なのだ。

 

「……絶対に、帰ってくるのよ」

「わかってるって、心配しないでくれ、リツ」

 

 そうして、リツから言葉を受け取って。

 俺達は――目的の場所へと更に転移する。

 そこは、

 

 

『……帰ってきたんだ、私の故郷』

 

 

 シオンちゃんが生まれた村だった。

 なぜここに転移するのかと言えば、俺達が知っている朽土果を信奉する神の社がここにしかないからだ。

 これから俺達は、すでに制圧した朽土果信奉の神の社を使って朽土果にアクセスする。

 ついでに、あるものを回収するためにも、ここへやってくる意味があった。

 

『……誰もいないね』

「そりゃまぁ、今は異界化してるからな。現実の村とはまた別の次元にあるんだよ」

 

 静まり返った村を眺めて、シオンちゃんが呟く。

 まぁこの時間だから、誰も歩いていないのは当然なのだが。

 それにしたって人の気配がなさすぎるということだろう。

 実際、ここには人が誰もいないのだから当然だ。

 あくまで、実際の世界を模した異界。

 向こうも、ここから俺達が侵入してくるつもりだということくらいは読めているのだ。

 

「というわけでここから戦闘になる。相談通り、俺はシオンちゃんの護衛兼援護。ミクモちゃんとロウクが敵を蹴散らす。これで」

「むしろ霊媒師さんも護衛していきますよ! 龍人形も数に限りがあるんですから!」

『クハハハ! 我に勝てぬもの、なし!』

 

 俺に前に立つミクモちゃんたちが宣言すると同時。

 周囲に影の蜘蛛が湧き出してきた。

 こいつらは穢土蛇が呼び出したような影の蛇の亜種だな。

 ここはもとは海士蜘蛛の領域だったから、それを朽土果が乗っ取って使っているのだろう。

 といっても、現状今の朽土果は本体が封印されている。

 敵の強さ自体は大したことがない。

 問題は――

 

「解ってると思うけど、対策なしだと二人は朽土果に洗脳されてしまう。対策が破られないように注意すること!」

「解ってますワン!」

『おいこいつ、ちょっと洗脳され掛かってないか?』

 

 穢土蛇の因習村と同じく、妖鬼に対する洗脳が発生すること。

 ロウクは言うまでもなく、なんかすでに当たり前のこととして皆が受け入れてるけど、未だにミクモちゃんには犬耳尻尾が生えてるからな。

 色々調査した結果、アレも消そうと思えば消せることが解ったんだけど。

 面白い特性を持っていることが判明したので、そのままにしていた。

 その特性は、後で披露するとして――

 

「こほん、参ります!」

 

 ミクモちゃんが、両手両足に呪符をまとわりつかせる。

 それがなんというか、犬の手と足っぽいものに成ったかと思うと。

 すごい勢いでミクモちゃんが突撃していった。

 呪符を使って戦うのは、ミクモちゃん本来のスタイル。

 そこになにか、犬っぽいスタイルを加えたのが今のミクモちゃんだ。

 これは先述の”面白い特性”のおまけみたいなものなのだが、結果としてミクモちゃんの運動性能は以前と比べて大きく向上していた。

 すごい勢いで、鉤爪を振るって影の蜘蛛を薙ぎ払っていく。

 

『我のお株を奪うな、ミクモ貴様!』

 

 そして、ロウクも突撃――は、せず。

 口を大きく開くと、体内から()()を熱線のようにぶちかました。

 なんでも、リツに神力をぶち込まれた結果、それをある程度操れるように成ったらしい。

 結果として、怪獣めいた熱線遠距離攻撃を会得することができた。

 それでいいのかと思わなくもないが、器用になったしいいんじゃないかな……

 こちらも影の蜘蛛を、一気に薙ぎ払っていく。

 殲滅力で言えば、ロウクのそれはミクモちゃん以上と言えるだろう。

 そもそも、一号妖鬼のロウクはスペックがミクモちゃんより高いのだから当然と言えば当然だが。

 

「よし、ここは突破できそうだな。進もうシオンちゃん」

『う、うん』

「――案内してもらえるか、君の家に」

 

 そして、俺達は移動を開始する。

 最初の目的地は、シオンちゃんの家。

 最初に来た時は転移で倉庫しか漁らなかった、あそこだ。

 

 

 ◯

 

 

「それにしても、数多すぎですよっ!」

『倒しても切りが無いな、面白いように吹き飛んでいくのは愉快だが』

 

 海士蜘蛛の影は、数をどんどん増していた。

 向こうも、どんどん本腰を入れ始めているな。

 

「ロウク、アレをやろう」

『いきなりか。ええい、気は乗らんが致し方あるまい』

 

 早速だが、この状況を攻略するために用意した手札の一枚目を切るとしよう。

 俺がそう呼びかけると、ロウクは高らかに吠えた。

 

『ォオオオオオオオオオオッ!!』

 

 即座に、ロウクから”何か”が溢れ出す。

 それは神力だ。

 どんどんと、その神力は膨れ上がっていく。

 一言で言うなら、半透明のロウクが膨れ上がっていくのだ。

 これは、ロウクが自分の身体を縮尺させる技能を利用したもの。

 発想元は穢土蛇の見掛け倒しだ。

 神力を使って自分を大きく見せるというもの。 

 ただし、ロウクがそんな見栄だけの使い方で満足するはずはなく。

 

『オオオオオッ!』

 

 それは、海士蜘蛛の影を勢いよく吹き飛ばした。

 神力と妖力を混ぜ合わせ、”魔”に対してだけ効果が発生するようにしたのだ。

 つまり、実質巨大化して”魔”を攻撃できる。

 殲滅力が一気に上るだけでなく、物理的な破壊が一切起こらないところがいい。

 純粋に、霊的存在だけを吹き飛ばすのに向いていた。

 

「よし、このまま行くぞ!」

「はいっ!」

『うう、緊張する……!』

「悪いが()()()くれ、シオンちゃん!」

 

 それだけではない。

 俺達は巨大化した半透明のロウクに”乗る”。

 シオンちゃんが呪符の貼り付けられた物体に触れるように。

 呪符などを身に着けていれば、人間でもこの半透明のロウクに触ることが可能だ。

 ようするに、俺達はこれから――

 

「すまんが、このあたりで陽動を頼むぞロウク」

『我の活躍を、誰も見ていないのは不満だ!』

 

 ロウクを残して、ロウクの上を歩きシオンちゃんの家に向かうのだ。

 強引なショートカットである。

 結果としてロウクはここに単騎で残り、影を引き付けることになる。

 家の中で色々と調査をしないといけないから、影がこっちに寄ってくるのは困るのだ。

 ロウクが気乗りしていなかったのは、自分の活躍を褒めてほしかったからである。

 可愛い奴め。

 

「終わったら、美味いものたらふく食わせてやるから!」

『言ったな! 忘れぬぞその台詞! 絶対にだ! 絶対にだからなぁ!』

 

 そんな声を聞きながら、渡りやすいようずしーんと大地に倒れた半透明ロウクの上を俺達は通過。

 シオンちゃんの家へと到達した。

 

 

 ◯

 

 

「では、私が敵を引き付けておきますから、お二人で調査おねがいします」

『ラジャっす、頑張ってミクモちゃん』

「頼んだ、ミクモちゃん」

 

 家についたら、更にミクモちゃんとも別れる。

 迫りくる影の蜘蛛を、ここでミクモちゃんがせき止めるのだ。

 俺達は礼を言って中に入る。

 そこは、なかなか立派な門構えの家だ。

 田舎の権力者って感じの雰囲気。

 

『……アタシとあいつ二人で暮らすには、広すぎる家だったよ』

「そっか。……使われてない部屋も多いみたいだね」

 

 家の中は、そこまで散らかってはいない。

 というか、元々物が少ない感じだ。

 何でも父親は金に困っていたようで、家の家財をどんどん売っていたらしい。

 もしかしたら警察が手を加えてる可能性もあるのだが、シオンちゃんを見ている感じそんな様子はなさそうだ。

 多分、この異界は海士蜘蛛が消滅する前をベースに作られている。

 

『アタシの部屋は、こっち』

「お邪魔します」

 

 中は広めの和室で、勉強机と本棚が置いてある。

 本棚には古めの漫画が幾つか。

 勉強机は……見た感じなにもないけど。

 

『勉強机の棚に細工がしてあってさ、二重底になってるんだよね』

 

 なるほど、と頷く。

 ちょっと調査すれば、すぐに違和感に気づける感じだ。

 おそらく、シオンちゃんの父親は確認すらしなかったのだろう。

 

「中にはシオンちゃんが書いた日記と――」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が眠ってる』

 

 そうして、俺達は取り出した日記と御札を見比べる。

 日記の方は、シオンちゃん目線でのこの村に対する情報が書かれているそうだ。

 こっちは本人から内容を聞いているため今は気にする必要はない。

 問題は、御札の方。

 

『何か、後からやってきた人の役に立つものがないかって探して、やたらと目についたんだよね』

「札の感じからして、()()()()()()効果がありそうだな」

 

 詳しくは後でミクモちゃんに見てもらわないとわからないけれど。

 俺だって、何年も霊媒をやってきた身。

 ちょっとくらいなら、こういうものもわかる。

 おそらくは、これが朽土果の言っていた”細工”だろう。

 

「これを使うと、零号の”魔”を封印する際のプロセスを再現できるみたいだ」

『人柱と”魔”を同じ場所に封じ込めるんだっけ』

 

 シオンちゃんの言葉に頷く。

 ようするに、これでシオンちゃんと海士蜘蛛を封印するつもりだったのだ。

 そしてその封印を利用して、自分を封印している零号妖鬼とすり替える。

 そんな算段だったのだろう。

 

「だが、色々スキップした結果、こうしてこの場に残ってしまった」

『異界を作る時に、排除するとかできなかったのかな』

「できないだろうな、()()()()()()()()()()()んだから」

 

 本来ならそれでも問題はなかったはずなのだ。

 因習村を破壊しに来た誰かが見つけるはずなのだから。

 だが、そうはならなかった。

 故に――

 

 

「これが、朽土果打倒の鍵になるぞ」

 

 

 俺達は、最後のピースを手に入れた。




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