転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第50話 零号因習村破壊RTA(3/4)

 上を見上げる。

 なにもない黒い闇の中に、確かに地上への入口がある。

 アレだけの巨大な”神”が通り抜けたのだ、孔の一つくらいは開くだろう。

 んで、俺はこれからあの穴を目指して浮上しなければ行けないわけだ。

 ただその前に、一つ気になることがあるのだが。

 

「……ロウクの姉君がいないな」

 

 俺が封印の中に入り込んだ時点で、ロウクの姉君は黄泉の外へと押し出されているはずだ。

 しかし、周囲にそれらしき存在は見当たらない。

 俺に”魔”の存在を察知する能力があれば、また違うのだろうが。

 残念ながら、俺の感知能力は下手するとシオンちゃん以下だ。

 逃げていった朽土果は俺の想定していた中で最も能力が高い。

 おそらく地上はリツが出張るくらいの死線になっているはず。

 ここで、姉君に意識を向けている時間は残念ながらない。

 

「……すまん、姉君」

 

 元々、こうなることは覚悟の上。

 俺もロウクも、朽土果を討伐したら次は姉君のことだと決めている。

 なのでまずは外へ向かうことを優先するべきだ。

 とはいえ、どうやって?

 ここから地上へはあまりにも距離がある、

 飛べない俺が、果たしてどうやってあそこへ向かうのか。

 答えは簡単。

 

「頼むぞ、龍人形」

 

 飛べるやつに乗って移動すればいい、単純な話だ。

 龍人形は基本宙に浮かんでいる。

 やろうと思えば、空だって飛べる。

 リツの転移やロウクに運んでもらうほうが圧倒的に早いだけで。

 ただ――

 

「……やっぱ遅いな」

 

 龍人形の移動は遅かった。

 いや、どっちかというと龍人形は移動者の移動力に依存するのだ。

 ミクモちゃんやロウクが最高速度で移動すれば、それに追随するし。

 俺が空へ浮かべと念じれば、俺の全速力くらいの速度で浮上する。

 まぁ、遅い。

 というわけで、加速させないといけない。

 具体的には……

 

「悪いな、少し光るぞ」

 

 俺は、閃光手榴弾の安全ピンを抜き放ち、放った。

 途端、閃光が黄泉を包んで、その()()が龍人形を打ち上げる。

 

「おおお!」

 

 なんとか龍人形にしがみつき、高速で浮き上がる背から落ちないようにする。

 閃光手榴弾に爆風なんてものはないが、神力を含むこいつが”魔”にぶち当たった場合は別だ。

 特に龍人形と閃光手榴弾は同じリツの神力で出来ている。

 他の”魔”だとそのまま消し飛んでしまうが、龍人形だけは単純な推進剤として利用することが可能なのだ。

 何より、今後の戦闘だともうこの閃光手榴弾を使用するような格の敵が相手ではない。

 ここで使い切るのが、最善と言えた。

 それでも……

 

「結構遠い……な!」

 

 何度も閃光手榴弾を投下しながら、しかし未だにたどり着かない天井を見上げる。

 遠い、ある程度時間がかかるのは想定内だが、流石に悠長なことはしていられないぞ?

 とはいえ、そういう時の保険は当然ある。

 多分、そろそろロウクがしびれを切らす頃だろう。

 と、思っていると。

 

『うおおおおおおお!?』

 

 ロウクがすごい勢いで上から振ってくる。

 ちょっと待て、この高さでキャッチ失敗するとロウクが奈落に落ちていくぞ!?

 黄泉の底には死への恐れが蔓延している、ヘタレのロウクがそう長く耐えられるものか!

 

『た、助けてくれ霊媒師いいいいいい!』

「こ、こんなところで作戦失敗するのだけは勘弁してくれよ!」

 

 くそ、何かいい方法はないのか。

 ……あるな。

 

「ロウク! 今から()()()()()! 着地の態勢を取れ!」

『ぬおおお! わ、解ったぁ!』

「それと……()()()()()()()よ!」

『ぬ!?』

 

 叫んで、俺は再び閃光手榴弾を投下した。

 するとそれが爆発し、光が闇の中に瞬く。

 ()()()()()を取り込んでいるロウクは、当然ながらこの閃光手榴弾で傷つくことはない。

 光は短時間で消えてしまうものの、一瞬足場にしてこちらへ飛び移るくらいはできるだろう。

 

『ぬおおおおお! 目がああああ!』

「気合でこっち来い!」

『霊媒師いいいい! 覚えてろよおおお!』

 

 そしてロウクは目をやられた。

 ごめん。

 とはいえ、なんとか龍人形にロウクは飛び乗ることができたので、問題はないだろう。

 

『し、死ぬかと思ったぞ』

「一度死んでるんだよ。ほら、さっさと脱出するぞ」

『うむ。しかし……遅いな』

「ただでさえ遅いところに、重荷が増えたからな。ここからはロウクに乗って移動するぞ」

 

 言いながら、俺は呪符を取り出して自分とロウクを結んでいく。

 呪符は勝手にくっついて繋がるので、これで最低限の命綱になるだろう。

 そして――

 

「次に、ロウク。新しいエネルギー源だぞ」

『貴様、さっきそれで自壊して死んだ我になんという仕打ちだ』

 

 そして閃光手榴弾をロウクに()()()もらう。

 リツの神力エネルギーの塊だ、あまり量を与えすぎなければ単純なバフになる。

 

「一回死ねば、使っていい総量も把握できてちょうどいいだろ? 次からはマジで死ぬから気をつけような」

『うむ……ところで、これで地上に出たら我は黄泉還りを経験していることになるのか?』

「さぁ……ならないんじゃないか? 死の畏れはほとんど経験してないだろうし」

 

 なんて話をしながら、俺達は地上を目指して飛び上がるのだった。

 

 

 ◯

 

 

 急ぎ、地上へと向かう。

 ロウクが妖力と神力を混ぜるという方法を見せた。

 とすれば、リツとミクモちゃんが取る行動は自然と読める。

 あの方法を使えば、俺達が地上へ帰還するまで耐えられるはず。

 

 そうして、俺達は地上へと出た。

 待っていたのは――

 

「リツ! ミクモちゃん! シオンちゃん!」

「……遅いわよ!」

 

 三人がひとまとめになって、龍人形がそれを守護している状況だった。

 ロウクがいなくなるまでは三人で散らばっていたが、どういうわけか。

 単純だ。

 

「でも、ロウクのやり方でこっちはなんとか耐えきれましたよ。あんな方法あるなら、教えてくれればよかったのに!」

『いやぁ、教えたらどっかで無茶すると思うよ……ミクモちゃん』

「うぐ……」

 

 そんな話をしながら、ミクモちゃんは龍人形に霊力と妖力を注ぎ込んでいる。

 そう、リツとミクモちゃんは霊力と妖力を龍人形に混ぜることでその強度を増したのだ。

 すでにかなりの龍人形が塵となり、残った龍人形も限界を迎えているものの。

 耐えきったのだ。

 この瞬間まで。

 

 であれば、ここからの流れはすでに決まっている。

 

「とはいえ、ありがとう。ここまで耐えきってくれて」

「ふん、当然よ。私まで出張ったのだから、勝てない理由はどこにもないわ」

「そうだな――勝とう、朽土果に」

 

 後はあいつに、引導を渡すだけだ。

 ここからの作戦は決まっている。

 俺が乗ってきた龍人形を含めた、残った龍人形に皆を任せ。

 ()()()()()()

 

「朽土果!」

 

 そして、呼びかける。

 すると朽土果の視線がこっちを向いて――

 

 動きを止めた。

 

「地獄の底から、帰ってきたぞ。お前を倒すために」

 

 そしてその言葉を聞いた瞬間。

 朽土果の咆哮が、喚き散らすように放たれた。

 それは、まさに死の概念。

 触れた瞬間にあらゆる生命が死に絶える、根源的な死だろう。

 

『霊媒師さん!』

 

 シオンちゃんが叫ぶ。

 このまま、ここに突っ立っていれば、俺は死ぬ。

 わかりきっていることだ。

 ――それは俺が、死への畏れを感じれば、の話だが。

 

 

()()()()()

 

 

 迫りくる咆哮に手をかざし、それが死の概念に触れた瞬間。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

『――――』

 

 その瞬間。

 何一つ、今起きた現象が理解できない、とでも言うように。

 朽土果が停止した。

 

「不思議か? 別に、俺にとっては何も不思議なことじゃない。なにせ、お前の与える死の概念は――」

 

 一歩、朽土果へ近づく。

 朽土果が――()()によって、後ろに引いた。

 

()()によって引き起こされるものだからだ」

 

 そう、死の神が与える概念的な死。

 それはその概念を浴びた人間が畏れることによって発生する。

 俺に、死への畏れは存在しない。

 こいつがどれだけ俺を”殺そう”と思っても、俺は死なない。

 

「つまりお前にとって、俺はこの世で最も”最悪”の天敵ってことだよ。朽土果」

 

 その瞬間。

 

『―――――――――!!』

 

 死の咆哮を撒き散らしながら、俺に向かって朽土果が手を振り下ろしてきた。

 純粋な物理攻撃、これなら俺を踏み潰すことができる、と。

 そう判断したのだろう。

 故に。

 

 

 直後、その腕が跡形もなく吹き飛んだ時、朽土果は何を思ったか。

 

 

 そう、木っ端微塵に。

 何も残さず。

 腕が完全に消し飛んだのだ。

 

『――――?』

 

 朽土果が、完全に停止している。

 思考を、感情を、行動を。

 理解できない、と。

 何をしたのか? 答えは単純。

 発砲だ。

 俺の手には、拳銃が握られている。

 霊力と妖力と神力のハイブリッド。

 零号霊魂タツメにすら効果のあるそれは、しかし。

 以前と比べても、ずいぶんと威力が高いように思えた。

 

「違うな。威力が高いんじゃない」

 

 けれど、その考えは誤りである。

 威力が高いのではない。

 

「お前が脆いんだ。畏れという感情に」

 

 朽土果が脆いのだ。

 弾丸の威力は、”魔”の霊的エネルギー三種を混成している。

 それと同時に、神魔は精神に依存する生き物だ。

 畏れを感じているものに、強く影響を受ける。

 俺という、朽土果にとっての畏れの源泉が放った超高威力の弾丸は。

 さぞかし朽土果にとっては脅威だろう。

 故に。

 

「悪いが、俺と相対した時点でお前は詰んでるんだ」

 

 俺は近づきながら、拳銃を向ける。

 朽土果の腕自体はすぐに再生できる。

 辺りに素材となる土が文字通り山程存在しているからだ。

 だが、だからといって恐怖心は拭えない。

 俺が近づく度に、朽土果は畏れを増していく。

 

 一歩、また、一歩と距離を詰めて。

 

 やがて、朽土果の巨体を射程に捉えた時。

 その弾丸は、致命の一撃を与えるに十分な威力へと達していた。

 

「なぁ、朽土果」

 

 銃を構え、銃口を向け、引き金に手をかける。

 怯える朽土果に、俺は一言。

 

 

「お前はなぜ、人を殺すんだ」

 

 

 そんな言葉とともに、銃弾を放つ。

 朽土果の足が、それで消し飛び。

 倒れてきた朽土果に続けて放った弾丸は。

 朽土果を一掃していった。




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