転生して霊媒師になった俺、やたらと退魔師や妖にビビられる   作:暁刀魚

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第53話 因習村のあとしまつ

 ――それから、俺達はその後の対応に奔走した。

 まず何よりも起きた事態の周囲への報告。

 突如として零号神魔の異界が発生して対応に追われていたら、いきなり日本全土が死に覆われた。

 覆われていた時間は数分ほどで、深夜だ。

 正直、さほど大きな影響はなかった。

 

 それでも、影響がなかったわけではない。

 例えば死が訪れている瞬間に車を運転していた人間とか。

 幸いにも、朽土果が起こす”死”は時間すらも殺してしまう。

 運転中に数分”死んで”いたとしても、車の動きすら死んでいるから事故が起きることはない。

 せいぜい、一瞬違和感があったと思ったら何故か時間が数分飛んでいるくらいだ。

 これに関しては、作戦を立てた時点でリツと確認していたことである。

 零号神魔の作る異界は、その中で発生する”ルール”以外は概ね同じものだからな。

 リツの場合は眠りで、朽土果は死。

 それ以外に違いはない。

 

 ともかく、朽土果の”死の異界”が破壊されれば、幸いにも死者は零だった。

 中には死に対する”畏れ”を感じた霊感の強い人間もいるだろうが。

 しばらくすれば、その感覚は忘れられていくことだろう。

 もし、それで精神に異常をきたしてしまっても、記憶を退魔師の人に操作してもらえば問題ないだろう。

 逆に言えば、これから精神に異常をきたしてしまった人を探して、記憶を操作する仕事が退魔寮には発生するわけだが。

 それに関しては、頑張ってくださいというほかない。

 

 説明は俺達だけでなく、宗屋さん、ロウクのご両親。

 そして御鏡のご当主――ミクモちゃんの親父さんによって行われた。

 特に御鏡のご当主はあちこちを飛び回って奔走し、解決に尽力してくれた。

 ミクモちゃんに無茶をさせてしまったことと、ミクモちゃんが成し遂げたことに報いるため……だそうだ。

 なんでも、この機会に腹を割ってミクモちゃんがご当主に色々と話をしたらしい。

 家でも気が休まらないこと、学校で疎外感を感じてしまうこと。

 小さくても、悩みは悩み。

 全てぶつけることにしたようだ。

 

 それとあの後、旅館をチェックアウトしてからシオンちゃんへ会いに行った。

 「何でもしていい秘密基地」をどうすればいいのか、悩んでいるようで。

 その様子は、以前と特に変わりはない。

 異界を作って、周りに迷惑をかけないようにとだけ伝えて、一度別れた。

 あの様子ならシオンちゃんは何も問題ないだろうし。

 簡易的なリツの祠も建てさせてもらったから、転移で何時でも会いに行けるだろう。

 

 んで、俺個人は特にこれといって何か変化があったわけではなかった。

 後始末に忙しく奔走し、リツからは文句を言われ。

 ロウクは特に何もせず事務所で丸くなってるし。

 ミクモちゃんは、なんだか毎日が充実しているようだ。

 

 多分、明日もそんな日常は続いていくのだろう。

 きっと、その次の日も。

 そして、そのまた次の日も。

 それは決して、ただ楽しいことだけではないだろうけれど。

 明日が続いていくというその事実が、きっと何よりも大きな”意味”なのだと思うから。

 

 おはようございますと、口にして。

 明日への一歩を、踏み出すのだ。

 

 ああ、それはそれとして。

 後始末が終わったら、次は()()()()()()のことに、取り掛からなくちゃいけないだろうな。

 

 

 ◯

 

 

 ――少女は、闇の中にいた。

 砂蔵シオン、新たに大地を司る神となった少女は今、黄泉を見渡していたのだ。

 新たな家となった、山奥の秘密基地から。

 なにやら黄泉に降りれる”孔”を発見し、自分は大地と死の神なのだから大丈夫だろうと思って、覗き込んだ。

 結果――

 

『くらいよー! 怖いよー!』

 

 少女は畏れを成していた。

 確かに、死を司る神である以上、死の畏れへの耐性はある。

 だが、それ以外の耐性は存在しないのだ。

 そして黄泉にはびこる畏れは決して、死に対するものだけではない。

 あらゆる畏れが、そこら中に溢れている。

 来るのではなかったと、急いでシオンは入ってきた孔を目指していた。

 そんな時である。

 

 

「ねーえ、新しい神様ぁ。ちょっといい?」

 

 

 そんなシオンに、話しかける者がいた。

 

『ぴぃ! 助けてー!』

「あちょっと、逃げないでよぉ!」

 

 逃げ出すシオン、話しかけた何者かは慌ててその前に回り込む。

 シオンは更に怯えた。

 

『貴方誰!? どうしてこんなところにいるの!?』

「えー? 誰ぇ? そうだなぁ、もしかしたら知ってるかもしれないけどぉ」

 

 そこにいたのは、黒髪の少女だった。

 とてもとても長い黒い髪。

 年の頃はリツと同じくらい。

 そんな少女は――

 

 

()()()はねぇ、タツメっていうんだよ!」

 

 

 自身のことを、タツメと名乗った。

 シオンは、その名前を知っている。

 

『タツメ……って! 霊媒師さんにやられた悪い幽霊!』

「もー、その言い方はやめてよぉ」

『って、貴方成仏したんじゃなかったの!? なんでこんなところにいるのさ!』

「なんでって……()()()()()()ここにいるんでしょ? ここ、黄泉。死後の世界でしょ?」

 

 な、なるほど? とシオンは首を傾げる。

 正直良く解らなかった。

 

「お馬鹿さんと話をするのって、疲れるなぁ」

『だ、誰がバカだってぇ!?』

「もう、そういうのいいから。……まぁでも、成仏したなら来世に生まれ変わるのは普通なことよねぇ。でもタツメって、すっごくすっごく強い幽霊だから、なかなか生まれ変われなくってぇ」

『トイレに詰まってるんだ!』

「ああ!?」

 

 タツメは切れた。

 流石にシオンは自分が悪いと思ったので謝った。

 

「こほん。それで本当なら、そろそろ生まれ変われるはずだったんだけど。そうも行かなくなっちゃったのよね」

『と、言うと?』

「これは忠告なんだけど、早く黄泉から離れたほうがいいよぉ? なにせ――」

 

 そうして、タツメは視線を遠くに向けて――

 

 

「最強の零号妖鬼が、黄泉の国で暴れてるから」

 

 

 直後。

 

 

 ――()()()

 

 

 黄泉の国すべてが、大きく、激しく。

 

 その時、シオンはその揺れに”畏れ”を覚える。

 

 朽土果の権能を受け継ぎ、零号神魔となったはずのシオンが。

 それどころか――

 

 シオンに忠告をした零号霊魂、タツメですら――その揺れに、大きな”畏れ”を抱いていたのだ。

 

 朽土果の事件は、ここに幕を閉じた。

 しかし、もう一つの事件は、まだ始まってすらいない。

 人柱として封印された零号妖鬼。

 ロウクの姉君。

 最強と呼ばれたその怪物は、今もまだ、そこにいる。




というわけで、短いですが二章終了です。
評価、感想、いただけますと幸いです。
また、書籍の続刊も出ます。
つまり因習村が書籍になります。
色々と改稿する予定なので、よろしくお願いいたします!
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